エピローグ

GM
動きを止めた亡者の身体が傾ぐ。
GM
透子の手に握られた黒いナイフへその身を預けるようにして。
GM
最初から決まっていたように。
透子
ずぶりと手に伝わる感触。
透子
倒れこむ亡者の体に刻まれる最期の疵。
GM
ラタスが自分の心だといったそれに。
GM
運命のように。
GM
生きて帰ってほしいと願ったままに。
GM
誰がとどめを穿ったわけでもなく、その瞬間が過ぎ去った。
GM
ふいに、雲を巻く風が凪ぐ。
GM
雲間に穿たれた青い窓がひらけてゆくのが見える。
ルルキス
「……、………………」
ルルキス
亡者の終わりを見て、小さく息が零れた。
ブラッドスクーパー
「どうした」
GM
亡者はいつも通りのどこか斜に構えた声音──間違いなくラタスの声で尋ねます。
ブラッドスクーパー
「ルルキス、トーコ、フィル」
ブラッドスクーパー
「なんつー顔してるんだよ」
フィルズ
「……今のお前にだけは、言われたくないな」
軽口を、返す。
ブラッドスクーパー
亡者に心はない。──はずだ。
この声が、疵が連れてきた思い出の一欠けらなのか。
フィルズ
「………護りきったぞ」
フィルズ
それが、ラタスの言葉なのか。名残なのかは分からない。
フィルズ
…けれど、あいつなら…こんなこともあるか…と誇らしげに笑い、伝える。
透子
「……ねぇ、売らないで良かったでしょ」
透子
「私はなんでもお視通しなの」
透子
「………こうなることも」
透子
「…………さよなら、ラタス。今でも、愛してる」
ルルキス
「……」
ルルキス
「いやです」
ルルキス
「いやですよ」
ルルキス
「……いやだっ、いやです、行かないで!」
ルルキス
「なんで、置いてくんですか」
ルルキス
「私たちのことを、置いて、行っちゃうんですか!」
ルルキス
「……なに、最後までかっこつけてんですかっ……」
ルルキス
「やだ」
ルルキス
「こんなの、やだあ……!!!!!」
ブラッドスクーパー
亡者は赤く濡れたナイフの指で空を指す。
ブラッドスクーパー
黒い毛皮が煙のように散って亡者の身体はただの煙に変わってゆく。
ブラッドスクーパー
どこまでも続く青い空に。
あんまりすぎるほどの晴天に。
ブラッドスクーパー
「見えるだろ、あの青い窓が」
ブラッドスクーパー
「お前たちはあれを越えていくんだ」
ブラッドスクーパー
黒煙になる身体の隙間から6ペンスコインがこぼれ落ち、散らばる音。
ブラッドスクーパー
「そうだろ、バカやろうども」
ルルキス
「……っ、ぐすっ、ふっ、ふっ……」
GM
その涙を風が撫でる。
GM
黒煙が触れゆく。
ルルキス
……本当は、彼の願いの成就など、あまり願っていなかった。
ルルキス
行ってほしくなかった。引き留めたかった。
ルルキス
たとえ共に亡者に堕ちたとて、この旅が少しでも長く続けばよかった。
ルルキス
しかし取り残されて、彼は先に行ってしまう。
ルルキス
人生は続くのはこちら側だけ。
ルルキス
この亡者の言葉は、まるで呪いのようだ。
透子
「……バカはどっちよ」
透子
そうつぶやいてルルキスと片手を繋ぐ。
GM
ただ風が髪を、服を揺らす。
煤が残す言葉の代わりに黒く痕をつけてゆく。
ルルキス
「……っ」
ルルキス
指を絡める。強く握る。繋がりへと執着するように。残ったものへとすがりつくように。
透子
手を伸ばす。残るフィルズに。
繋がりを求めるように。子供が子供にせがむように。
フィルズ
透子の手を取り、握る。
フィルズ
「……っ…」
涙を零すルルキスを見て、自らも…ラタスに伝えたい思いを、口にしそうになる。
GM
コインが陽の光にきらめく。
フィルズ
けれど、それはしない。彼女たちの想いが手向けとなるならば…自分が渡すべきは違うものだから。
フィルズ
ラタスを、見る。
GM
掻き消えるように黒い姿が消えて。
GM
手の中にある黒いナイフが最後、散るように消えて。
GM
ただ、海の音のような風の音だけが響いている。
フィルズ
「………決着は、それで良いんだな…?」
GM
*ラタスは死亡する。
フィルズ
幾度となく交わしたやり取り。些細なことでも勝負をしてきた。…そうして、それは”まだ”続いていく。…そう言うように。
フィルズ
「……果たしてみせるさ。お前との、勝負なのだから」
GM
空がどこまでも青く続いている。
こんな堕落の国の世界の果てで。
GM
貝殻がひとつだけ頂に転がっている。
ルルキス
何年も積もり積もった節制。
ルルキス
泣いたことはなかった。
ルルキス
心を殺して、人を殺した。
ルルキス
けれど、親しい人を殺すのは、初めての経験だった。
ルルキス
声が枯れるまで泣いた。
ルルキス
滲む視界に映るのは空。
ルルキス
どこまでも青い空を、見上げて泣いた。
透子
子供が3人、手を繋いで空を見上げる。
透子
1人はずっと泣いていて。
透子
1人はとっても我儘で。
透子
1人は勝負してばかり。
透子
青い窓を見上げて、3人の子供が立っている。
GM
青い窓の見える庭。
GM
心の疵に導かれたような旅。
GM
手を繋ぐ3人の子供たちが、手を繋ぐ4人になって。
いつしか、思い出づくりの旅になった。
GM
やきつくような空の青が。
馬鹿な男の、しょうがない男の胸の内を語るように。
GM
輝いている。
GM

  Dead or AliCe

 青い窓を見上げて

GM

END
GM
GM
ラタス ハセ
GM
ルルキス せつこ
GM
透子 月夜
GM
フィルズ 笛氷
GM
Special Thanks 見学者のみなさん
GM
シナリオ 水面
GM
システム・デザイン うた
GM
堕落の国へ生きる人々