行動 ラタス5

GM
ラタスの語った通り、一行は『狂飆の頂』へ挑む。
GM
すさまじい風の吹きすさぶ山岳。
救世主の力をもってしても過酷な岩山。
GM
崩落しそうな足場が行く手を阻む。
思ったようには進まない旅路。
ラタス
1d6 (1D6) > 6
GM
道中シーン表から狂飆の頂シーン表に移り変わっています。
GM
6.風が凪いだ。束の間の休息をとるか、あるいは今のうちに先を急ぐか。
ラタス
吹きすさんでいた強風が少し途切れる。
ラタス
帽子を押さえていた手を緩めた矢先、一陣の風が吹いてそれを足場の外、深い谷へ舞わせた。
ラタス
「あっ」
フィルズ
「……っ」
透子
風に舞う帽子をただ見ている。
ルルキス
「あっあっ」
フィルズ
咄嗟に”引力”を発する。間に合えばその手の内に。
ラタス
ラタスのトレードマークだったそれは、風に弄ばれながら谷底へ──
ラタス
落ちなかった。
フィルズ
「…そら、もう手放すなよ」
フィルズ
無事掴み取った帽子をラタスへと差し出す。
ラタス
「あぁ」
ラタス
今更。今更だ。
帽子ひとつのことだった。
ラタス
一瞬、谷底へ身を投げ出そうとした危うい引力を、引き戻すものがある。
ラタス
「……この期に及んで帽子ひとつ気にしちまうとはね」
フィルズ
「そいつはお前のトレードマークだからな」 
ラタス
埃を払って被り直す。
らしくない油断だった。
フィルズ
帽子一つ。今のフィルズはそれでさえ失いたくはない。
フィルズ
始めから、よぎっていた懸念があった。そしてそれは当たってしまっていた。
フィルズ
だからこそ、この旅を良いものにしようと願っていた。最後のその時が来るまでを最良にしようと願っていた。
フィルズ
故に、帽子一つ。それでさえ決して失いはしない。やがて至る亡者化への運命、その時以外に何も奪わせなどしない。
ラタス
ラタスの衣服は堕落の国に来てからも変わっていない。
ラタス
どれほど砂塵にまみれてもその黒さを保っている。
疵に由来する被服。
ラタス
ひとつ、咽こむ。
それを革切りに人工肺が大きく動いて、咳を繰り返した。
ラタス
ラタスの肺は元の世界の汚れた空気に侵されている。
それは堕落の国に来てからも治ることはなかった。
ラタス
それこそがラタスの疵だから。
ラタス
思わず膝をつき、手探りでマスクを口元にやる。
透子
「……風も凪いでるし、少し休む?」
ラタス
「……どのみち、強行だっただろ」
[ ラタス ] HP : 16 → 15
ラタス
この先に行きたい。
そんな我儘を含んだ言葉。
透子
「もちろん、それはそうだけど……でもここで息を整えるくらい、いいでしょう?」
[ ラタス ] HP : 15 → 14
透子
まだ一緒に居たいという我儘なのかもしれない。
透子にはこれが優しさなのか自分の我儘なのかわからない。
ラタス
ラタスにも。
これが自分の我儘なのか。
みんなが自分に見せてくれた夢なのか。
ラタス
わからない。
[ ラタス ] HP : 14 → 13
ルルキス
「……」
フィルズ
「………………行こう。風が落ち着いている今ならば、私の力を移動の為だけに扱える」
[ ラタス ] HP : 13 → 12
フィルズ
今までは少なからず風を防ぐために使っていた。…しかし、今ならば足場の確保や、進むために回すことが出来る。
透子
空気が薄いからではないだろう。
ラタスの喉から漏れる呼吸音はますます苦し気になる。
ラタス
消耗しているのが自分でもわかる。
[ ラタス ] HP : 12 → 11
ラタス
楽しい旅だった。今もそれは変わらない。
目的地が近い。本当に大事なのはどっちだったか。
[ ラタス ] HP : 11 → 10
ラタス
胸に波のように渦巻く満たされたような気持ちに、迷う術がない。
[ ラタス ] HP : 10 → 9
透子
フィルズの言葉に、しかし透子はラタスの傍を動こうとはしない。
ラタス
*透子の『強欲』を抉ります。
判定は才覚。
フィルズ
*横槍をします
GM
チョイスから。
フィルズ
choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
フィルズ
2d+3>=7 (2D6+3>=7) > 7[1,6]+3 > 10 > 成功
フィルズ
1d6 (1D6) > 3
ラタス
2d6+3-3>=7 (2D6+3-3>=7) > 9[4,5]+3-3 > 9 > 成功
ラタス
呼吸を整える。
人工肺のスイッチを切り替える。
ラタス
普段は使わない出力。
ラタス
「……いや、行く。確かに今がチャンスだ」
ラタス
立ち上がった。
透子
「…………」
透子
立ち上がったラタスをただ何も言わず見ている。
視ている。
ただ視ている。
フィルズ
透子と同じくする気持ちもある。…しかし、ラタスの願いを叶えてやりたい…と、フィルズはせめてその足取りに自らの力を与える。
透子
伊万里透子には視えている。

千里眼にはお見通し。

何故なら私は、本物だから。
透子
「………いかないで……」
透子
「……いかないで」
透子
「私には視えてる。ラタスもきっと、わかってる。……フィルズもルルキスも、そうでしょう」
ルルキス
「……」
透子
ラタスの一歩は重く、山頂はまだ遠い。
ラタス
「トーコ」
ラタス
手を差し出した。
ラタス
「手ェ繋いでやるから、もう少し頑張ってくれよ」
ラタス
あと少しなんだ。
お前なら視えるだろ?
透子
あと少し。
ラタスに触れられるのも。ラタスと話せるのも。4人旅なのも。
透子
ラタスの差し出した手に逡巡し、そして握る。
透子
だだをこねた子供が手を引かれてあやされながら歩くように。
ラタスと手をつなぐ。
GM
GM
1d6 (1D6) > 1
GM
── 22日経過。

行動 透子

透子
*才覚でフィルズさんを舐めます。
GM
判定をどうぞ。
透子
2d6+3=>7 (2D6+3>=7) > 8[2,6]+3 > 11 > 成功
[ 透子 ] 強欲 : 0 → -1
透子
*舐める対象は繋がりへの執着です。
[ フィルズ ] 繋がりへの執着 : 0 → -1
[ フィルズ ] 繋がりへの執着 : -1 → 1
透子
「……もういい」
透子
あやすように引かれていた手を自分から離す。
透子
「もう、一人で歩ける」
ラタス
ゆるやかに手を離す。
透子
「フィルズ、ルルキス」
ルルキス
「ん」
透子
「ルルキスはそっち」
透子
向かって右の手をさす。
透子
「フィルズはそっち」
フィルズ
「…ああ」 言われた場所へと。
透子
反対がわの手をさす。
透子
「……二人だって手ぐらい繋いでおきなさい」
ルルキス
「えっ」
フィルズ
「………ふっ なるほど」
落石か、危険の予知かと思っていたが…しかしそうではなかった。
透子
岩が落ちてくるわけでも、風が強く吹くわけでもない。
フィルズ
「そうだな……最後の旅だ。触れ合い進むのも良いだろう」
言われた通りに手を取る。
ラタス
2人の手を握る。
ルルキス
「モテモテですね、ラタスさん」フィルズと二人でラタスを挟んで。
ラタス
「あ~歩くの楽だ~」
ラタス
ふざけてみたりなどして。
ルルキス
「おや。背負ってあげましょうか?」
フィルズ
「ふっ 調子に乗って足を踏み外すなよ?」
透子
おどける三人を、少し後ろから見上げるように進む。
ラタス
手は2本しかない。
ラタス
「ルルキスがおぶるならトーコだなあ~」
ラタス
そうすれば4人いっしょって言えるんじゃないか?
ルルキス
「強風が来たら全員まとめて吹き飛ばされそうですねえ」
ラタス
「悪戯な風さんだこと」
フィルズ
「…それならば、私がラタスを背負うのも悪くないな。近くに並び歩くならばまとめて守ってみせよう」
フィルズ
2人、おぶさり歩く。勿論冗談だが…本当にしてもいいと思った。
ラタス
「ここに来ておんぶレースか?」
透子
「……しばらく風は弱いままよ」
ラタス
楽し気に笑う。冗談でも、いや。冗談が楽しい。
透子
「ルルキスだと足が地面に当たっちゃうし……フィルズは髪がじゃまになるでしょ」
フィルズ
「おや…透子は私の力を忘れたのか?」
髪ならばいくらでもまとめることが出来る。
ルルキス
「お姫様抱っこという手もありますよ」
フィルズ
「……そら、天才の提案もある」
どうだ?と笑う。
透子
ふふ、と今日初めて笑った気がする。
透子
4人での最後の旅。
その最後に、自分だけがラタスの手を握っているのは嫌だった。
透子
欲しいものはほしいままに。なんでも手に入れてきた。
透子
でもそれは私のものになったからじゃない。
透子
ラタスにとって大事な仲間だから。
透子
私はそれを知っている。
透子
視なくとも、知っている。
透子
だから2人にも手を繋がせた。
透子
4人で仲間だから。
ルルキス
時間が迫っていることに、誰もが気付いている。
ルルキス
終わりに向かう足の重さに引っ張られないように、ラタスよりわずかに早く歩き、その手を引いていく。
ルルキス
少しでも、彼の歩みが楽になればいい。
ルルキス
「さて、あとひと踏ん張りですね!」
透子
「そうね。……後ろから押し支えたほうがいいかしら?」
透子
明るい雰囲気に冗談をあわせる。
フィルズ
「いいや、問題ない。それらは私がしてみせよう」
フィルズ
言いながら、仲間たちの足へと力を送る。
フィルズ
地を蹴る足には斥力を。目指すべき頂きに向けて引力を。
フィルズ
足取りは、フィルズの力により支えられる。仲間たちと共に往く最後の旅。その歩み。それを支えるためならば、いくらでも力を出せる気がした。
ラタス
手を引かれ、背を押され歩いてきた。
後悔は何一つない。
ラタス
この先へ。
GM
GM
1d6 (1D6) > 2
GM
── 24日経過。
[ フィルズ ] HP : 22 → 21
GM
風が吹き荒んでいる。
砕けた岩の破片が風に乗って肌を裂く。
GM
先は見えず、目を開けてもいられない。
時折の閃光は嵐の中に起きる稲妻だ。
この世の終わりのような光景。
GM
しかし――先行していたラタスが叫ぶ。
ラタス
「おい、嘘だろ……。おい、早くこい!」
フィルズ
「…どうした!」
GM
不意に、視界が晴れる。
明るい光が差し込んでいる。
ルルキス
「これは…」
透子
まぶしさに思わず目を細める。
GM
周囲をぐるりと囲みそびえ立つ雲の壁を視線で辿ると、青空。
GM
青い窓の見える庭。
ラタス
「間に合ったな」
ラタス
「お前らのお陰だ……」
ラタス
感慨深く青空を見上げる。
フィルズ
「……あれが、お前が目指していた空か」
フィルズ
間に合った…という言葉に、安堵をしながら呟く。
ルルキス
「……ふ」
ルルキス
「間に合っちゃった」
ルルキス
「私たちがついていけるのはここまで」
ルルキス
「……ここまで、ですね」
透子
「……そう、ね」
ラタス
「いい空だな」
透子
旅の途中視た、夢の中の青空。
青い窓の下。三人の子供。
ラタス
ラタスが思い描いていた空。
それよりもずっと深く、遠く、青い。
ラタス
3人に向き直る。
ラタス
「死ぬにはうってつけの日だ」
ラタス
「殺してくれるな?」
ラタス
「お前たちは、おれを殺してまた30日の猶予を得る」
ラタス
「おれは亡者となって、あの窓の向こう側に行く」
ラタス
自分の手を見る。
汚れた手。そうしなければ生きていけなかった疵。
ラタス
それでも、ここまで辿り着けた。
いい仲間に巡り合えた。
幸福だった。
ラタス
「おれの命はお前らに奪われるんじゃない。くれてやるんだ。だから、」
ラタス
「……生きて帰ってくれ」
ラタス
そうして、ルルキスを見る。
ルルキス
「……ええ」
ルルキス
「そのつもりですよ」
ラタス
そうして、トーコを見る。
透子
ラタスに近づき、小さく手招きをする。
ラタス
近寄った。
透子
頬にそっと口づけを。
ラタス
口づけられた頬の反対の頬で頬にすりつける。
ラタス
髭がじょりじょりとした。
ラタス
そうして、フィルズを見る。
透子
言葉は交わさず名残惜しそうにその身を離す。
フィルズ
「……結局、決着は着けられなかったな」
フィルズ
名残惜しそうに、けれど悲しみに伏せはせずに。
フィルズ
「……誓うよ。この私の名に賭けて。必ずや…生きて帰る」
フィルズ
…そう答えて、ラタスをじっと見る。
フィルズ
「お前と会えて、良かった」
フィルズ
様々な想い、それが胸に去来する。それを染み入らせながら…その一言に全てを託して告げる。
ラタス
頷いた。
ラタス
またルルキスに視線を戻して。
ラタス
「頼んだ」
ルルキス
「本当……」
ルルキス
「手のかかる子ですよ」
透子
ラタスからもルルキスからも、視線をそらすことはしない。
ただずっと、視ている。
ルルキス
フィルズと透子を見る。
ルルキス
「伝えたい事は、全て伝えられましたか?」
透子
無言で頷き、そしてラタスに小さく手を振る。
フィルズ
「……私は大丈夫だ。ここまでの日々で…既に語り尽くしている」
フィルズ
「見ていてやる。お前の旅路を」
フィルズ
ラタスに最後にそう告げると…あとは黙して2人を見る。
ルルキス
頷く。
ラタスの方へと向き直る。
ルルキス
「死に方……どんな方法がいいですか」
ラタス
胸にかかっているロザリオを指でつまんでどけて。
ラタス
「ここを狙って一思いにやってくれ」
ラタス
人工肺が差し込まれている胸の真ん中の傷口。
生きようと足掻いていた証の場所。
ルルキス
「やっぱり……」
ラタス
青い窓のように孔が空いている。
ルルキス
「……そこなんですね」
ラタス
笑う。
ラタス
まなざしが頷く。
ルルキス
頷く。
ルルキス
袖をまくる。
ルルキス
一瞬だけフィルズと透子を見て、すぐに視線をラタスの方へと戻す。
ルルキス
「ありがとう……」
ルルキス
「………………………………」
ルルキス
「さよなら」
ルルキス
手で、胸を貫く。
[ ラタス ] HP : 9 → 0
ラタス
刺し貫かれた傷口から。
ラタス
黒い煙が噴き上がる。
GM
ラタスの姿が変容していく。
ルルキス
すぐに手を引き抜く。
GM
あの夜、『ドブネズミみたいな暮らし』だったと自嘲していた。
GM
ネズミのような毛皮に覆われる。
ルルキス
「………………ほーら」
ルルキス
「やっぱり、分の悪い賭けじゃないですか……」
フィルズ
「……………っ…!」
亡者
指の内側から肉を突き破って生えるのは、彼が得物にしてきた短剣。
亡者
五指は刃物の爪となり、もはや触れる全てを引き裂くことしかできない。
亡者
手は血で赤く濡れ、黒々とした被毛に対して浮かぶように照っている。
亡者
その背に翼はなく、這う者に相応しい長い尾がのたうつ。
亡者
ガスマスクの目は、そこにはもう映らないはずの青空の色に染まっている。
ルルキス
「皆、構えて」
ルルキス
「……あなたには翼が生えていない」
ルルキス
「あなたの足は、高く跳び上がれる形をしていない」
ブラッドスクーパー
亡者“ブラッドスクーパー”はゆらりと頭を持ち上げて咆哮する。
ルルキス
「……逃げるなら見逃しましょう。向かってくるならば……」
ルルキス
「友との約束を、もう一度果たすことになります」
フィルズ
「…………生きて帰ってくれ…それが私達への最後の願いだったな」
フィルズ
「………何が起きようと、私は果たすぞ。それがお前への最後の手向けだ」
透子
伊万里透子は知っていた。
きっとすべてを、最初から。
透子
伊万里透子は視えていた。
その亡者の背に、翼はない。
透子
伊万里透子は言わなかった。
それが彼と、仲間のため。
透子
伊万里透子は偽った。
かつてのまがいもののように。
透子
「じゃあね、ラタス」
GM
馬鹿な男は逝った。
あなたがたの目の前にいるのは亡者だ。