クライマックスフェイズ
斑雲 密月
相変わらず、胸が痛くなるような静寂が揺蕩う、木造の病院の中で。
向き合っている、貴方と二人。
斑雲 密月
「時計の針を戻せるのなら、私は、貴方と出会うべきではなかったんです」
斑雲 密月
「……本当は、始まるべきじゃなかった。間違えたんです。私は。……私たちは」
斑雲 密月
「私は、随分とこの、道を間違った迷路に迷い込んだまま、ずっと」
斑雲 密月
「……………………ずっと、キラキラとした、夏の日差しに焦がれてしまった」
斑雲 密月
「きらきらとした……昔、子供の頃憧れたような、宝物のような日々を」
斑雲 密月
「”貴方”のような人が、背負って良いものではないのだから」
斑雲 密月
静かな、穏やかな、物悲しい夏の足音がする。
如月 飛波
「密月さん。貴女に出会えて良かったと思っているんです」
如月 飛波
「私は夏の日差しの眩しさも。青々と伸びる草木のことも」
如月 飛波
「そんな美しいものを。
そんな、細やかな美しさを何一つとして見ずに。
気付かずに」
如月 飛波
「ただ、忍務を果たすべく、生きていました」
如月 飛波
「そんな私こそが、この”罪”を背負うには相応しい」
如月 飛波
窓から入り込む日差しだけが季節を指し示して。
けれど、虫の声すらしない夏の世界で。
如月 飛波
パチリ、パチリと木が弾ける音が混じりだした、”かつて安穏だった終わりゆく場所”で。
如月 飛波
「例え、貴女がそれを許せずとも。
その”罪”は確かに私が頂きましょう」
GM
穏やかな日々を過ごした場所が、惨撃の舞台が、焔に呑まれてゆく。
GM
極地:宇宙や深海、溶岩、魔界など。ラウンドの終わりにGMが1D6を振り、経過ラウンド以下なら全員1点ダメージ。ここから脱落したものは変調表を適用する。
[ GM ] ラウンド : 0 → 1
[ 如月 飛波 ] がダイスシンボルを公開。出目は 2 です。
[ 斑雲 密月 ] がダイスシンボルを公開。出目は 3 です。
斑雲 密月
2D6>=5 (判定:骨法術) (2D6>=5) > 4[1,3] > 4 > 失敗
斑雲 密月
2D6+1>=5 (判定:骨法術) (2D6+1>=5) > 3[1,2]+1 > 4 > 失敗
如月 飛波
2D6>=5 (判定:骨法術) (2D6>=5) > 8[2,6] > 8 > 成功
GM
接近戦ダメージ1点と、後の先による射撃戦ダメージ1点が入ります。
GM
密月は射撃戦ダメージを受ける分野を選択してください。
[ 斑雲 密月 ] 頑健 : 1 → 0
[ 斑雲 密月 ] 器術 : 1 → 0
[ 斑雲 密月 ] 忍具 : 3 → 2
如月 飛波
2D6>=5 (判定:骨法術) (2D6>=5) > 5[1,4] > 5 > 成功
如月 飛波
2D6>=5 (判定:骨法術) (2D6>=5) > 12[6,6] > 12 > スペシャル(【生命力】1点か変調一つを回復)
GM
ダメージは変わらず接近戦ダメージ1点に射撃戦ダメージ1点。
如月 飛波
RCT ランダム分野表(6) >
妖術
GM
密月は射撃戦ダメージ1点を受ける部位を選んでください
[ 斑雲 密月 ] 妖術 : 1 → 0
[ 斑雲 密月 ] 忍術 : 1 → 0
斑雲 密月
白衣から再び、ダーツナイフを取り出そうとして構えようとしたところで、ふと、貴方と目が合い。
斑雲 密月
一瞬の迷いに気を取られ、反応できず。
横から舞い込んだ火の粉で手元を狂わせ、姿勢を崩します。
如月 飛波
その隙は決して見過ごされるものではない。
如月 飛波
これまで決して自らは動かなかった飛波は、ここで初めて踏み込んで。
如月 飛波
一息に2連。その動きを、抵抗する力を奪い去るように組み伏せて。”骨”を外す。
如月 飛波
軸を逸らせば、完全に外されきらずには済むだろう。自ら骨を嵌め直すことも出来るだろう。
如月 飛波
…但し、それでも密月のその動きは確実に鈍る。
[ GM ] ラウンド : 1 → 2
[ 如月 飛波 ] がダイスシンボルを公開。出目は 2 です。
[ 斑雲 密月 ] がダイスシンボルを公開。出目は 2 です。
GM
行動順を決めましょう。2d6で低い方から動きます。
如月 飛波
2d6 (2D6) >
6[2,4] > 6
斑雲 密月
2d6 (2D6) >
7[2,5] > 7
如月 飛波
2D6>=5 (判定:骨法術) (2D6>=5) > 6[1,5] > 6 > 成功
斑雲 密月
2D6+1>=5 (判定:骨法術) (2D6+1>=5) > 9[4,5]+1 > 10 > 成功
斑雲 密月
■奥義
《月に斑雲》
指定特技 :伝達術
エフェクト:クリティカルヒット/滅び/射程低下
効果・演出:取り出したダーツナイフが真円を描く。順番に、どこか奇術的に、読めない軌跡を描きながら。月の満ちる時間が、来た。
如月 飛波
■奥義
《朧柩》
指定特技 :結界術
エフェクト:絶対防御/くらまし/防御低下
効果・演出:特殊な薬品とチャクラをかけ合わせた自身の血液を操り、硬質化させることによりあらゆる攻撃を防ぐ。
斑雲 密月
GM、奥義破り判定の前に兵糧丸を使用います、回復部位は妖術です
[ 斑雲 密月 ] 妖術 : 0 → 1
[ 斑雲 密月 ] 忍具 : 2 → 1
GM
了解です。秘密を公開して回想シーンを演出してください。
斑雲 密月
「今でも時々、何が正しくて、自分が誰だったのか」
斑雲 密月
「……………………でも、本当は、そんなものはどうでも良かったのかもしれません」
斑雲 密月
「私は、医者です。傷つき、混乱した貴方を助け、癒やし」
斑雲 密月
【斑雲 密月の秘密】
あなたには分かっている。罪を犯したのは実は彼ではない。あなただ。
PC1は、あなたが病院の人々を殺戮したショックからか記憶に混乱をきたしている。事件の記憶の中の犯人、つまりあなたを、自分自身と取り違えてしまっているのだ。
主治医として、彼が自ら思い出せるよう少しずつカウンセリングを続けていたが、タイムリミットが迫っている。
あなたは決断した。彼の記憶を修正し、思い出させねばならない。もう手段は選ばない。彼に憎まれ追われることになろうとも、それがあなたへの罰となり贖罪の手段となるだろう。
あなたの【本当の使命】は、あなたからPC1にプライズを渡し、かつ最終的なプライズの所持者となることだ。
斑雲 密月
2D6-2+3>=7 (判定:召喚術) (2D6-2+3>=7) > 8[4,4]-2+3 > 9 > 成功
GM
では4点のランダムダメージが飛波に入ります。内2点は頑健に入りますね。密月はRCTを2回振ってください。
斑雲 密月
RCT ランダム分野表(5) >
戦術
斑雲 密月
RCT ランダム分野表(5) >
戦術
[ 如月 飛波 ] 頑健 : 2 → 0
[ 如月 飛波 ] 戦術 : 1 → 0
[ 如月 飛波 ] 器術 : 1 → 0
GM
では、RPの方をやっていきましょう。飛波さんからどうぞ。
如月 飛波
組み伏せた勢いのまま、次いで手刀を放ち密月を無力化しようとする。
斑雲 密月
させない。
どれだけ我が身が軋もうとも、シノビの技術はそれを可能にする。
斑雲 密月
かわし、抜け出し、広がった白衣の裾から飛び出すのは、四本のダーツナイフ。
それぞれが、意志を持つように貴方を穿つ。
斑雲 密月
「……私は、貴方に、それしかしてあげられることがない」
如月 飛波
超至近距離からの、意識の外から繰り出される4撃。
如月 飛波
2本までは血晶にて防ぐことが出来たが、けれど、それでも。残る2本は飛波の背中へと深々と突き刺さる。
如月 飛波
体内から溢れる血もまた血晶となり、内から押しだされるようにしたナイフを床へと落とすと密月を見据える。
如月 飛波
「…貴女にはもう、多くをしてもらった」
如月 飛波
だからこそ。それを握るべきなのは自分だ。
そう伝えるようにまっすぐに見る。
GM
何も起こりません。脱落する人もいないでしょう。
[ GM ] ラウンド : 2 → 3
[ 如月 飛波 ] がダイスシンボルを公開。出目は 2 です。
[ 斑雲 密月 ] がダイスシンボルを公開。出目は 2 です。
如月 飛波
2d6 (2D6) >
10[4,6] > 10
斑雲 密月
2d6 (2D6) >
6[1,5] > 6
斑雲 密月
奥義を使用します、クリティカルヒット/滅び/射程低下/伝達術
如月 飛波
2D6>=8 (判定:経済力) (2D6>=8) > 2[1,1] > 2 > ファンブル
GM
逆凪ですが、ラウンド終了時に適用なのであんまり関係ないですね
GM
では絶対防御の破りの判定を……結界術から-2ですね
斑雲 密月
2D6-2>=7 (判定:召喚術) (2D6-2>=7) > 10[5,5]-2 > 8 > 成功
斑雲 密月
RCT ランダム分野表(5) >
戦術
斑雲 密月
RCT ランダム分野表(1) >
器術
斑雲 密月
RCT ランダム分野表(2) >
体術
斑雲 密月
RCT ランダム分野表(4) >
謀術
GM
えーと 器術戦術が任意ですが、どっちにしろ全部潰れますね。
[ 如月 飛波 ] 戦術 : 0 → 1
[ 如月 飛波 ] 忍具 : 2 → 1
GM
戦術、体術、謀術が潰れます。器術は任意ですね。
如月 飛波
2D6>=5 (判定:骨法術) (2D6>=5) > 11[5,6] > 11 > 成功
斑雲 密月
2D6>=5 (判定:骨法術) (2D6>=5) > 11[5,6] > 11 > 成功
斑雲 密月
一度距離を置いた貴方と、再び、まっすぐに向かい合い。
その真摯な視線を見つめ返して。
斑雲 密月
「私は、他の生き方を、シノビとしての技術以外を知りません」
斑雲 密月
広がる白衣の裾を掴み。
再び、四本のダーツナイフが。
如月 飛波
自らの身を切り裂くナイフの軌跡よりも。
自分を想い、案じてくれる儚げなその笑顔が目に入ってしまって。
如月 飛波
気がつけば、その全てを体で受けていた。
如月 飛波
切り裂かれた体は血を流し。
それは自らの忍術によるもの以上に零れ落ちていて。
如月 飛波
体に走る痛みよりも。
それを負わせたことを痛む彼女の顔を見て、困ったように笑う。
如月 飛波
そんな痛みを与えていることに痛みを覚える。
如月 飛波
けれど、それでも戦いを止めることは出来ない。
如月 飛波
けれど、それでも止めたいと願ってしまったのだろうか。
如月 飛波
互いに痛みを覚えながらの一撃は届かず、燃えて崩れる屋根によって、2人の距離は再び遠ざけられた。
[ 如月 飛波 ] 体術 : 1 → 0
[ 如月 飛波 ] 忍術 : 1 → 0
[ 如月 飛波 ] 謀術 : 1 → 0
[ 如月 飛波 ] 戦術 : 1 → 0
[ GM ] ラウンド : 3 → 4
[ 如月 飛波 ] がダイスシンボルを公開。出目は 1 です。
[ 斑雲 密月 ] がダイスシンボルを公開。出目は 3 です。
斑雲 密月
2D6>=5 (判定:手裏剣術) (2D6>=5) > 3[1,2] > 3 > 失敗
GM
了解です。秘密を公開して回想シーンを演出してください
如月 飛波
「…他者の痛みに傷つき。
混乱した心に寄り添い、癒やす」
如月 飛波
「…そんな貴女は確かに、誰よりも医者らしい医者でした。あまりにもそれは”理想的”すぎるほどに」
如月 飛波
「…だからこそ、貴女に罪は相応しくない」
如月 飛波
「献身が過ぎるが故に、負うべきでない罪まで貴女が負うべきではない」
如月 飛波
「…罪を犯したのは、他ならぬ私なのだから」
如月 飛波
【如月 飛波の秘密】
実はあなたこそがこの病院の医師である。
あなたはある理由(PLの任意)からこの病院の人々を殺した。その場に居合わせたショックからか、PC2は記憶に混乱をきたした。PC2の中で、匿われた忍者であるPC2と、その主治医であるあなたが逆転してしまっているのだ。
あなたが患者を演じているのは治療の手段だった。ごく僅かずつ事件の情報を伝えることで、PC2の状態を探っていたのだ。
そして判断し、決断した。PC2の記憶を修正し、思い出させねばならない。もう手段は選ばない。PC2に憎まれ追われることになろうとも、それがあなたへの罰となり贖罪の手段となるだろう。
あなたの【本当の使命】は、あなたからPC2にプライズを渡し、かつ最終的なプライズの所持者となることだ。
如月 飛波
2D6+3>=10 (判定:結界術) (2D6+3>=10) > 12[6,6]+3 > 15 > スペシャル(【生命力】1点か変調一つを回復)
GM
えーっと 変調はないのでまず好きな分野を1点回復させてください
[ 如月 飛波 ] 体術 : 0 → 1
GM
集団戦攻撃のスペシャルなので、任意の変調を入れることができます。
GM
後の先で射撃戦ダメージ1点も入りますね。密月はダメージを受ける分野を選んでください
[ 斑雲 密月 ] 謀術 : 1 → 0
斑雲 密月
戦わず、引いてくれたなら。
怪我など、せずにいてくれたら。
斑雲 密月
それでも、再び、ダーツナイフに手を伸ばそうとして、
斑雲 密月
明らかな迷いで、手から、ナイフが滑り落ちる。
斑雲 密月
声にならない噛み殺した驚きが、”どうしようもない”ミスなのだと伝えてくる。
如月 飛波
「はは……それなら、お互いに忍なんて向いていなかったのかもしれません」
如月 飛波
忍になど生まれず。ただの飛波と密月同士で出会えたなら。このようなことをせずとも良かった。
如月 飛波
”瀕死の素振り”を止めて。
愛する人のミスを逃すこともなく。
如月 飛波
これまでに散々撒き散らした血を硬質化させて、背後から密月のことを穿つ。
如月 飛波
それは、例え身を躱そうとも躱しきれぬ一撃で。
”重大な損傷”を体へともたらす。
如月 飛波
「…罪を明け渡すと。私に任せると言ってください」
如月 飛波
「…そうすればこの戦いは終わる。罪は負うべき者の手に渡って、貴女はまた安穏に生きることが出来る」
GM
1d6 ワクワク極地ダイス (1D6) >
5
[ GM ] ラウンド : 4 → 5
[ 如月 飛波 ] がダイスシンボルを公開。出目は 4 です。
[ 斑雲 密月 ] がダイスシンボルを公開。出目は 3 です。
如月 飛波
2D6>=5 (判定:骨法術) (2D6>=5) > 8[4,4] > 8 > 成功
斑雲 密月
2D6>=5 (判定:骨法術) (2D6>=5) > 8[2,6] > 8 > 成功
GM
了解しました。重傷のダメージを受けますが、まずは判定からどうぞ。
斑雲 密月
2D6>=5 (判定:骨法術) (2D6>=5) > 4[1,3] > 4 > 失敗
[ 斑雲 密月 ] 戦術 : 1 → 0
GM
RCT 飛波 ランダム分野表(1) >
器術
GM
RCT 密月 ランダム分野表(1) >
器術
[ 如月 飛波 ] 妖術 : 1 → 0
[ 斑雲 密月 ] 妖術 : 1 → 0
[ GM ] ラウンド : 5 → 6
GM
木造の病院を包み、熱が二人のシノビの肌をジリジリと焦がす。
[ 如月 飛波 ] がダイスシンボルを公開。出目は 1 です。
[ 斑雲 密月 ] がダイスシンボルを公開。出目は 4 です。
GM
えーと 実はこのタイミングで兵糧丸で重傷を回復することができますが
斑雲 密月
ありがとうございます……兵糧丸を使います
GM
重傷回復には回さないようなので、まずは判定をどうぞ。
斑雲 密月
2D6>=5 (判定:骨法術) (2D6>=5) > 4[1,3] > 4 > 失敗
GM
RCT 重傷ダメージ ランダム分野表(6) >
妖術
[ 斑雲 密月 ] 体術 : 1 → 0
[ 斑雲 密月 ] 妖術 : 0 → 1
[ 斑雲 密月 ] 忍具 : 1 → 0
[ 如月 飛波 ] 戦術 : 0 → 1
[ 如月 飛波 ] 忍具 : 1 → 0
如月 飛波
2D6>=5 (判定:記憶術) (2D6>=5) > 8[2,6] > 8 > 成功
如月 飛波
KWT 怪変調表(6) >
呪い:修得している忍法の中からランダムに一つを選び、その忍法を修得していないものとして扱う。この効果は、修得している忍法の数だけ累積する。各サイクルの終了時に、《呪術》で行為判定を行い、成功するとこの変調はすべて無効化される。
GM
続いて射撃戦ダメージ。こちらは密月の任意です
[ 斑雲 密月 ] 妖術 : 1 → 0
「あなたは(1)[3日前]、[敵対勢力の実験場であったこの病院を壊滅させる忍務を果たす]ために、この病院の人々を全て殺した。あなたは[これまで過ごした日々が終わることを、積み上げた穏やかな思い出が壊れることを恐れながら、それでもシノビの宿命から逃げられず]彼らを殺した。
目の前の相手だけは殺さなかった。(4)[境遇を自分と重ねて情が移りすぎてしまっていた]からだ。記憶の混乱の治療にはもっと時間を掛けたかったが、今日までが限界だった。あなたは[手にかけることの出来なかった相手を生かす為に、無理矢理にでも記憶を取り戻させて逃がすことにした]。
これこそが、これだけが、(6)[ 真実 ]である。」
GM
飛波は今書き換えを行って公開することができます。
如月 飛波
深手を負い、攻撃もままならなくなった密月へと歩み寄ると、自らの血で密月の体を包み込む。
如月 飛波
それは命を奪うように締め付けることもなく。
如月 飛波
ただ、これ以上激しく動くことのないように。
これ以上密月の体から血が溢れることのないように、労るようにして行われる”血の抱擁”。
如月 飛波
それは優しくて。
けれど、決して抜け出すことは出来ない。
如月 飛波
そうして、身動きの取れなくなった密月を抱きかかえると、燃え盛る病室を抜け出して歩いて行く。
如月 飛波
歩きながら。腕の中の彼女へと語りかける。
如月 飛波
「私は元々、この病院を壊滅させるために送り込まれた忍者でした」
如月 飛波
この病院で過ごした思い出が焼け落ちていく中を歩きながら。ポツリ、ポツリと。
如月 飛波
「…けれど。ここに居た人たちの多くは殺されて良いような人ではなくて」
如月 飛波
「そんな人達を騙しながら、己を偽りながら過ごす日々にいつしか耐えられなくなっていて」
如月 飛波
「そんな中で、同じ忍である貴女に出会えて。互いの境遇を語ることで、理解りあえて」
如月 飛波
「…それが、一体どれだけ私の救いになったことか」
如月 飛波
医師として過ごした診察室の前を通り過ぎて。
何度も振る舞われた食事が作られていた調理室の前を通り過ぎて。
如月 飛波
「……けれど、行うべき忍務が消えたわけではなかった。忍務を果たさないわけにはいかなかった」
如月 飛波
「…”この病院に居る、全ての人物を殺す”」
如月 飛波
「けれど、貴女を殺すことだけはどうしても出来なくて」
如月 飛波
「……忍の貴女ならば。貴女だけならば、逃すことが出来るかもしれないと、そう思って」
如月 飛波
「シノビの宿命に絡め取られながらも、全てを自らの手で壊しながらも、」
如月 飛波
「貴女だけは逃がす算段を立てて、その準備をしてました」
如月 飛波
それは、何百本もの針の穴に糸を通し続けるかのようなもの。実現は限りなく困難で、それを行える”機”も極僅かに潰える。
斑雲 密月
貴方の服の裾を、かすかに動く指先だけでつかみ。
如月 飛波
語りかけながら、病院の外に向かって。
向かおうとして。
斑雲 密月
「……………………あえて、よかった……」
斑雲 密月
「……………………こたえ、だったから……」
斑雲 密月
出口のない迷宮の先の、夏の日差しが待つ世界の先まで。
如月 飛波
空っぽな人生を照らすようなお日様のような人。
そんな貴女に出会うことが出来たのは、紛れもない幸福で。
斑雲 密月
間違いばかりだった、私の人生の中で、数少ない、”間違い”じゃなかったこと。
斑雲 密月
波の水が、きらきらと夏空の下を飛び舞うような。
輝くような、美しい夏の思い出でした。
如月 飛波
密月の言葉を聞いて。想ってくれているであろう心を感じて、胸の内に携えて。
如月 飛波
こうして過ごせるのも最期だからと、口を開く。
如月 飛波
「…こんな時に伝えるのはずるいかもしれませんが、それだけはどうしても伝えたかった」
斑雲 密月
どこにも行けない、未来のない、閉じた二人の夏の迷路に。
斑雲 密月
ちらりと、一瞬だけ見えた気がする、真夏の蜃気楼のような”出口”が。
斑雲 密月
「お慕い申し上げております、……飛波さん」
斑雲 密月
よかった。
今度こそ、”間違えて”いない。
斑雲 密月
迷った言葉の、思考の、迷路の答えが見つかって。
それだけは本当に、間違いのない、自分だけのキラキラとした、夏の日の記憶。
斑雲 密月
「……………………最後まで、お側に……」
斑雲 密月
すがろうとする指先には、もう、力は残されていないのだけれど。
如月 飛波
「…愛した方の、愛して下さった方の願いなら。
……お望みのままに」
如月 飛波
ここからどれだけ共にいられるか。
どれだけ2人の間に時間が残っているかは理解っている。
如月 飛波
その上でそう伝えて。
燃え盛る病院を背にして、想い出に別れを告げて。
如月 飛波
彼女を生かすための道を。
彼女と過ごすことの出来る僅かな時間を歩いて行く。
斑雲 密月
一分でも、一秒でも。
もうあと、幾ばくの時間が残されているのか。
斑雲 密月
不安になるばかりだった、出口のない日々を捨てて。
如月 飛波
代わりに、かけがえのない最期の時間を新たな想い出として刻んで。
如月 飛波
それは決して多くを拾い集めるものではないけれど、けれど、けれど飛波にとってはそれで十分過ぎる程で。
如月 飛波
そうして、2人の姿は森の中へと消えていく。
如月 飛波
あなたは(1)[3日前]、[敵対勢力の実験場であったこの病院を壊滅させる忍務を果たす]ために、この病院の人々を全て殺した。
如月 飛波
あなたは[これまで過ごした日々が終わることを、積み上げた穏やかな思い出が壊れることを恐れながら、それでもシノビの宿命から逃げられず]彼らを殺した。
如月 飛波
目の前の相手だけは殺さなかった。(4)[境遇を自分と重ねて情が移りすぎてしまっていた]からだ。
如月 飛波
記憶の混乱の治療にはもっと時間を掛けたかったが、今日までが限界だった。
如月 飛波
あなたは[手にかけることの出来なかった相手を生かす為に、無理矢理にでも記憶を取り戻させて逃がすことにした]。
如月 飛波
これこそが、これだけが、[斑雲 密月という女性に魂を救われた如月 飛波という男が捧げることの出来る”愛”]である。