メインフェイズ サイクル3

GM
では、メインフェイズサイクル3! これで最後のサイクルですね。
GM
我こそは初手! という方はいらっしゃいますか?
隠岐 乞
はい!
GM
すばやい乞ちゃん!
GM
では初手お願いしましょう。

サイクル3 隠岐乞

GM
どのようなシーンにされますか?
隠岐 乞
乞のお気に入りの場所、木の上で夕日を眺めています。ぼやーと。
GM
いいですね。
隠岐 乞
幼い頃から考え事をしたいとき使う、秘密の場所ですが命さんだけは知っています。
命さんとシーン希望です。
古縁塚 命
登場します。
GM
じゃあ乞さんから始めてもらって、命さんに登場してもらうとよいかな
隠岐 乞
赤い空。鴉がかぁと鳴いて線を引く。
川のせせらぎ。秋風の揺らす木の葉の掠れ。

表は騒がしい。日毎、報告される災事は増えている。
この場所だけは昔と変わらず、平穏が保たれている。
うそみたいに。
隠岐 乞
「……」

川を見下ろす太い木。大人ひとりは入れる洞が口を開けている。しなやかな枝に身を預け、茜空を眺めていた。
隠岐 乞
むかしみたいに。
古縁塚 命
「……ここに居たんだ」
古縁塚 命
むかしみたいに。
古縁塚 命
そうしている乞ちゃんの傍に、影が一つ差す。
隠岐 乞
「どうぞ」
隣は空いている。ひとりのための特等席。
隠岐 乞
「来るって、知ってたよ」
古縁塚 命
「うん」
一つ答えて。空いているそこへと座る。
古縁塚 命
「僕も、ここに来てるって思ってた」
隠岐 乞
そっか、と笑う。
誰にも邪魔されず考え事をしたくて、没入しすぎてしまうとき、乞の使うひみつの場所。
隠岐 乞
空が青く沈む前に迎えに来てくれる人がいた。
隠岐 乞
「ね。にーちゃん」
古縁塚 命
「なんだい?」
隠岐 乞
「子供の頃さ、なんでもできる気がしたの」
古縁塚 命
「…うん」
隠岐 乞
「忍術も忍具も。その気になればなんだってやれるし、あっといわせるものをつくれるって」
古縁塚 命
「そうだね。乞ちゃんは子供の頃から…とっても器用だった」
隠岐 乞
「うん……。にーちゃんが褒め上手だから、張り合いをもらってたんだなって」
隠岐 乞
「でも器用なだけじゃできないことだらけだ」
隠岐 乞
「……かくしごとだって、ずっとは隠せなかったし」
古縁塚 命
「……そうだね」
古縁塚 命
それについてはつっこまないよ。
隠岐 乞
………
隠岐 乞
不意に耳に届く細かな羽音。近づいて、大きくなる。蜂だ。
隠岐 乞
掌を差し出す。それは止まり、羽ばたきを止める。
隠岐 乞
PC4古縁塚命さんの秘密を抜きます。判定:経済術。
GM
了解しました。では判定をどうぞ。
隠岐 乞
2D6>=5 (判定:経済力) (2D6>=5) > 6[2,4] > 6 > 成功
隠岐 乞
『蜂が音声報告した』という体で、命さんに羽琉さんの秘密1も渡します
GM
では、まずは命さんの秘密をお渡ししますね。乞さんと、感情共有で羽琉くんにも。
GM
貼りました。
GM
羽琉くんの秘密は公開になりますね。
GM
【秘密:天立羽琉】
あなたは超然たる晴嵐路花楽に負かされ続ける一方で、誰よりも近くで触れ合い、晴嵐路花楽が当たり前に笑う姿を見てきた。
あなたは晴嵐路花楽が神などではなく自分たちと同じ人間であることを信じている。
それを証明するためには、晴嵐路花楽に敗北というものを教えてやらなければならないと思っている。
あなたの本当の使命は【晴嵐路花楽が人間であることを証明する】である。
隠岐 乞
羽音止めた"鳥"が囀るのは天立羽琉の秘密。それから、もうひとりの。
隠岐 乞
「…………」
古縁塚 命
「乞ちゃん」
古縁塚 命
「……夕焼けが綺麗だね」
隠岐 乞
蜂は羽ばたき赤い空へ溶けていく。
古縁塚 命
決して知らせないつもりだったそれを。
決して知らせないつもりだった相手に知られたことを悟りながら。
隠岐 乞
滲んだ赤へ。
古縁塚 命
落ち行く夕日を見ながらそうつぶやく。
隠岐 乞
「汚い色がよかった」
古縁塚 命
「……そう?」
古縁塚 命
「………僕は」
隠岐 乞
「うん」
古縁塚 命
「乞ちゃんと見るこの景色が好きだから」
古縁塚 命
「綺麗で良かったなって、そう思っているよ」
隠岐 乞
手を重ねる。
古縁塚 命
重ねられた手に、手を重ねる。
古縁塚 命
大丈夫。ここに居るというように。
隠岐 乞
「あーしも……、」
隠岐 乞
あたたかい。
隠岐 乞
ここに居る。わかっている。
隠岐 乞
「好きだなんて、軽く言わないでほしかった」
隠岐 乞
子どもだな。子どものことばしか吐ける気がしなかった。
古縁塚 命
「……それでも」
古縁塚 命
「言いたいから…言っちゃったな」
古縁塚 命
ごめんねと謝ったなら。きっと傷つくだろうから。
古縁塚 命
ただ本心をありのままに口にする。
古縁塚 命
この言葉は嘘偽りのない自分の言葉なのだから。
隠岐 乞
口をへの字に曲げて、重ねた手の力を強める。
隠岐 乞
「ねえ。世界ってなに」
古縁塚 命
「居場所だよ」
古縁塚 命
「…でも、そう思えるかはその人次第だ」
隠岐 乞
「あーしの居場所、ここだけど」
古縁塚 命
「…………そうだねぇ…」
隠岐 乞
此処だけど。
隠岐 乞
「にーちゃんは?」
隠岐 乞
何処にいたいの。
古縁塚 命
「僕は」
古縁塚 命
「…………」
隠岐 乞
目を伏せる。
隠岐 乞
この時間が、永遠に続けばいいのに。
古縁塚 命
沈黙。答えるべき答えは決まっているのに。
隠岐 乞
応えのないまま。夕暮れのまま。
古縁塚 命
乞ちゃんが相手だからだろうか。
口にすることを少し、躊躇ってしまった。
隠岐 乞
「……言わなくても、いーよ」
古縁塚 命
「………ごめんね」
古縁塚 命
それは、何に対してか。
古縁塚 命
悲しそうに目を伏せると、夕焼けの最後の一筋に照らされる乞ちゃんを見て。
隠岐 乞
「いいよ」
隠岐 乞
平気だ。傷ついてなんか、ない。
隠岐 乞
傷ついてなんか。
古縁塚 命
手を握って。夕日を見て。
隠岐 乞
重なる熱に。顔を見れなくて。
古縁塚 命
「………許してくれなくていいよ」
古縁塚 命
「…その代わりに…」
隠岐 乞
聞きたくなかった。だけど、聴かなきゃ。
隠岐 乞
「うん」
古縁塚 命
「僕のことを一生恨んでもいいから」
古縁塚 命
「一緒に、この夕焼けを綺麗だって思って欲しい」
隠岐 乞
許さないし、恨んであげる。
隠岐 乞
それで。
隠岐 乞
ふ、と息を吐いた。笑うみたいに。
隠岐 乞
上半身がぐらんと後ろに倒れて。足だけ木の枝にかけたまま、視界が半回転。
隠岐 乞
「にーちゃん、」
隠岐 乞
顔の見えないまま声だけは明るい。
古縁塚 命
「なんだい?」
古縁塚 命
顔の見えないままその声は穏やかで。
隠岐 乞
「あーし……、こっから落ちても死なないけど。死なないけど、」
隠岐 乞
「死んだら、だれかがあーしの代わりしてくれる?」
古縁塚 命
「……………………………」
古縁塚 命
枝の上で。とてもとても、困り果てたような雰囲気。
古縁塚 命
「………………」
古縁塚 命
そうして。考えた様子で。
古縁塚 命
「無理、だなぁ…」
古縁塚 命
降参というように、正直な気持ちを伝える。
隠岐 乞
「あはは、」
隠岐 乞
「あーしは許すし、恨まないし、……」
隠岐 乞
あなたが背にする夕日を。
隠岐 乞
「綺麗だと思ってあげる」
隠岐 乞
「だけど、」
隠岐 乞
一緒の夕日じゃない。
隠岐 乞
両手は地へ垂れ下がり。ちょっと起き上がれない。
隠岐 乞
「一緒が、いい?」
古縁塚 命
「………さっきの質問をされたら、簡単に良いとは言えなくなっちゃったな」
隠岐 乞
「ふ~ん」
古縁塚 命
「…色んなことがあるけどさ。気持ちは大事だから」
古縁塚 命
「…それでも」
隠岐 乞
「…………ん」
古縁塚 命
「乞ちゃんに、僕が見る世界を好きになってくれたら…嬉しいよ」
隠岐 乞
あなたの背にする夕日はきれいだ。
隠岐 乞
「命さんの見たものを、綺麗と感じる」
隠岐 乞
「だけどね、だけど……、」
隠岐 乞
「隣ひとつ分空いたもののことも、考え続けるだろうな」
隠岐 乞
腹筋に力を入れて、ぐるんと。
古縁塚 命
手を差し伸べる。これもまた、いつかの光景。
隠岐 乞
屈託なく笑って掴み取る。いつものように。
隠岐 乞
元通りの視界に見つめる茜。
隠岐 乞
ありがとうは言わない。笑顔を返す。
古縁塚 命
赤い空。かぁと鳴いた鴉はもう向こうの遥か。
古縁塚 命
川のせせらぎ。木々を揺らす秋風はひんやりとしてきていて。
古縁塚 命
この場所だけは昔と変わらず、平穏が保たれている。
古縁塚 命
昔と変わらない夕陽が、世界を照らしている。
古縁塚 命
今、この時ばかりは。
古縁塚 命
2人分の影が、夕陽を受けて伸びていた。
隠岐 乞
肩に一人分の重み。重なって。
隠岐 乞
秋風が冷やす頬を庇う。
隠岐 乞
「…………諦めたかったな」
隠岐 乞
つぶやき、ひとつ。
隠岐 乞
今、この時ばかりは言えること。

サイクル3 晴嵐路花楽

晴嵐路 花楽
世界が、揺らいでいるのを感じる。
晴嵐路 花楽
異常な数の妖魔の跳梁跋扈、増える被害、災厄の予感。
晴嵐路 花楽
この世界は、限界を迎えつつある。
晴嵐路 花楽
「……各地で、被害が出ているのですね」
晴嵐路 花楽
この世ならざるものたちの囁きも、今はどこか悲鳴じみて。
その飛び交う言の葉に耳を傾けながら、見知った名前を拾い上げます。
晴嵐路 花楽
羽流くんから、命さんの秘密の情報を頂きたいです。こちらが勝手に拾い上げる感じの演出で。
天立 羽琉
命さんの情報をお渡しします~!
晴嵐路 花楽
お願いしますっ!
GM
はい! では命さんの秘密を公開いたします。
GM
【秘密:古縁塚命】
あなたは現代のシノビガミである。
あなたは、成人の儀が晴嵐路花楽が完全無欠のシノビガミへと為るための儀式であることを知っている。
しかし、まだまだ若い晴嵐路花楽にこのような重荷を背負わせてしまうことを申し訳なく思っている。
あなたはプライズ『天帝の眼』を所持している。
晴嵐路 花楽
「……複雑なことにばかり思いを馳せていると、乞さまのお顔が思い浮かぶのは甘えかもしれませんね」

貴重な、年の近い同性の友人でしたからね。
ふっと、顔を思い浮かべて。
気がつけば、ふらり、影も残さず、姿もなく。
晴嵐路 花楽
時の流れるがままに、一転。
晴嵐路 花楽
気がつけばもう、満月の足音が近づいてくるのを感じる秋の夜でした。
冷たく滑らかな月明かりが照らす学校の廊下は人の気配もなく、静かな青に沈む海の底のよう。
晴嵐路 花楽
「乞さま、急にお誘いしてしまってすみませんでした。
……どうしても一度、”がっこう”なるものが見てみたかったものですから」

訪れたのは、貴方がかつて通っていた母校の校舎。
人影もない夜の高校でした。
晴嵐路 花楽
「誰もいませんね」

大勢の子供が通っている、という触れ込みでしたが、今はその気配もなく。
初めて触れるリノリウムの床の感触は、どこか他人行儀に感じられます。
隠岐 乞
ぺたりぺたり。
夜に反響する音はよく通り、此処は海ではないと教えるのです。
隠岐 乞
「いいよ~? 花楽ちゃんからお願いしてもらえて嬉しかったし!」

見回りもだれも憚ることなく声を出して呑気に散歩する様子であるのは忍者というべきか。
隠岐 乞
「みんなが通うのは明るい時間なんだよね~。夜は家に帰って寝る時間。忍じゃない子ばかりだから」
晴嵐路 花楽
「我儘を言ってしまい、申し訳ないと思ったのですが……そう言って頂けると、少し、気持ちが軽くなります」

狐面の奥に、ホッとした気配をにじませます。
隠岐 乞
教室を脇に歩く。足取りに迷いなく、どこか目的地でもあるのでしょうか。
晴嵐路 花楽
「朝が来て、明るくなって、日が差すとみな……ここで勉学に励むのですね」

深海に沈んでいくような非日常。
普段なら決して触れることもない世界。
それでも、貴方の背中を追いかけていると、ここが現実の中なのだとよくわかります。
隠岐 乞
「我儘なんて気にしなくていいのに。うりゅーなんて……、」
ひそ。

「花楽ちゃんのいないところだと気が抜けちゃって、甘えたになるんだから」
乞ちゃんの自室お掃除での小言めいたこととか……。
晴嵐路 花楽
「……………………まあ」
隠岐 乞
にひ。
晴嵐路 花楽
まあ、まあ、まあ。
ひそひそ、深夜の学校にふさわしい小声で内緒話。
隠岐 乞
「おねーちゃんみたいに思っていいぞ」
なんてね。
隠岐 乞
とある教室を前にぴたり、足を留めます。
晴嵐路 花楽
「……………………でも。羽流さまがそうして、このような”がっこう”や……様々な場所に、わたくしの知らない顔を……”居場所”を持っていることは、わたくしは嬉しく思います」

貴方に合わせて、ぴたり、足を留め。
隠岐 乞
「……………そっかあ」

困った感情の滲む笑顔を見せて、そして廊下の窓越しに広げた掌が教室のなかを示す。
隠岐 乞
「ここがうりゅーの教室。昼間に通ってる、"居場所"のひとつだね」

掌の直線上にある机。整頓された中のそこが羽琉の席だと。
晴嵐路 花楽
「ここが……羽流さまの、”居場所”」

”世界”。
隠岐 乞
「ひとつの教室にいろんな子が集められて、机ひとつひとつに"居場所"を持ってる。うりゅーも……、」
晴嵐路 花楽
「……みな、ここで暮らし、ここで生活し……ここで日々を過ごしているのですね」

過ごし続けて欲しい。
続いて欲しい。
そのために、どうすれば、何ができるのか。
隠岐 乞
仮面向こうの眼差しはなにを映すのだろう。
日々を生きていた15歳だった私には見えないものを見て、考えて。博愛に祈るのだろうか。
晴嵐路 花楽
「乞さま、……乞お姉さま」

お言葉に甘えるなら。

「……わたくしは、」
晴嵐路 花楽
「わたくしは、この世界を、守りたいのです」
隠岐 乞
「しってるよ」
隠岐 乞
盗んで見た記録。"世界"とシノビガミのこと。天立羽琉と晴嵐路花楽の関係。
晴嵐路 花楽
「命お兄様ではダメなのです。羽流さまでも乞お姉さまでも、他の誰でも」

この世で、もっとも強きものこそが、それを背負うべきなのなら。

「……わたくしは生まれてこの方、ただそこにいるだけで多くの方を不幸にしてきた気すらします。大勢の先生がわたくしをおそれて逃げ出し、最近では羽流様も、手合わせをすることはすっかり、なくなりました」
隠岐 乞
「うん」
晴嵐路 花楽
「それでも、もし、わたくしがこの世に生まれる意味があったとするのなら」

誰よりも強く生まれてきた理由があるのなら。

「それは、皆を、守れたときだと思うのです」
隠岐 乞
相槌を打つ。口を挟まない。自分のことをつまびらかに語るのを防がないために。
晴嵐路 花楽
「力をお貸しください、乞お姉さま。世界を、羽流さまを、守るための力を」

そう言って、深く、深く、腰を折り頭を下げ。
晴嵐路 花楽
感情判定をお願います。
GM
了解しました。特技はどれにしますか?
晴嵐路 花楽
学校に忍び込んでいるので、隠形術で。
GM
了解です。では判定をどうぞ。
晴嵐路 花楽
2D6>=5 (判定:隠形術) (2D6>=5) > 7[2,5] > 7 > 成功
GM
成功!
GM
ではお互いETをどうぞ。
隠岐 乞
ET 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス)
晴嵐路 花楽
ET 感情表(4) > 忠誠(プラス)/侮蔑(マイナス)
隠岐 乞
友情
晴嵐路 花楽
忠誠
GM
花楽から忠誠、乞から友情。シートに記入しておきますね。
GM
では続きをどうぞ。
隠岐 乞
「あーしの年齢になっても生まれた意味なんて考えない人の方がずっと多いのに。花楽ちゃんはさ、とっても……えらいね」
隠岐 乞
困ったように笑って、前方から思いっきり……ぎゅっ! と抱きしめます。
晴嵐路 花楽
「……おねえさま」
晴嵐路 花楽
狐面の奥で、声が、揺れて。
隠岐 乞
「かしこまらなくっても妹のお願いを断るわけないじゃん。他ならぬ花楽ちゃんの頼みだし……」
晴嵐路 花楽
「……偉くは、ないのですよ。わたくしは、ただ、自分がしたいことを……自分の願いを、押し通そうとしているだけなのですから」

たとえそれが誰を傷つけようとも、誰に望まれなかろうとも。
はねのけて、自分の願いを通すだけなのですから。
隠岐 乞
「ん~~~、えらいぞ~~~」

声だけは賑やかに。手付きは穏やかに、桜色の髪をやさしく撫でます。
晴嵐路 花楽
人に。
髪を撫でられたのは、一体、いつ以来のことだったでしょうか。
ただただ、うつむき。
時折、肩を震わせ。
隠岐 乞
「自分がやりたいことがわかったら、叶えて、いいんだよ」

花楽ちゃんのおかげでたくさん楽しくさせてもらった。協力する理由なんてそれで十分。
隠岐 乞
生まれた意味なんて考えることなく毎日を生きる人がいる。たくさん。数え切れないほど。
目の前のあなたはただひとり、向かい合って、考え続けてきたのだろうな。
隠岐 乞
「……ひとつだけ、聞いてみてもいいかな」
晴嵐路 花楽
「……なんでしょうか?」
晴嵐路 花楽
声を、整え。
隠岐 乞
「こわいものって、ある?」

夜の底へ落ちるやさしい問いかけ。
晴嵐路 花楽
「……………………あります」

深い黒の中に足を踏み外さないよう、目をそらしていた場所へ足を踏み出すように、誘われるように声を揺らし。
晴嵐路 花楽
「けれども」
晴嵐路 花楽
「……それを言葉に出すことは、わたくしには許されません」
隠岐 乞
「そうかなあ」
晴嵐路 花楽
「そうですよ」
隠岐 乞
「だって」
晴嵐路 花楽
「……きっと」
隠岐 乞
「だれも見ていないよ」
隠岐 乞
「きっと、誰も気づかない」
隠岐 乞
「あーしたちふたりきりだから」
晴嵐路 花楽
「……………………」
隠岐 乞
「あーしはひとりぼっちがこわい」
晴嵐路 花楽
「……わたくしは」

神は、人の世に現れない。
神は、人の子に顔を見せない。
神は、人の手の届く場所にはどこにも存在しない。

「わたくしは、世界を守れないがことが、」

だってそこに、”人間”なんていないのだから。

「ただ、それだけが”怖い”」

本当に?
隠岐 乞
「そっかあ」

世界を。だれかの居場所を。怖いと感じるのは。
隠岐 乞
「あーし、ね。命にーちゃんのことをね……、ずっと、ずっと考えすぎてて。……今の花楽ちゃんよりもう少しだけ小さいころ」

「いつか心がにーちゃんでいっぱいになったら、そうしたらにーちゃんのことだけを考えすぎて……、こころから化け物になっちゃうんじゃないかなって。
 にーちゃんにも顔向けできないようなことしでかしそうで、とても、こわかった」

学校に逃げた理由。居場所を求めた理由。
隠岐 乞
「…………」
晴嵐路 花楽
「……それなら、」
晴嵐路 花楽
「……それなら、わたくしと乞さまは、きっと」
晴嵐路 花楽
「……”仲間”です」

人ならざる、化け物へ。
晴嵐路 花楽
「……わたくしの願いが、世界を壊してしまわないよう」
晴嵐路 花楽
「……………………ただただ、それだけが、”怖い”」
隠岐 乞
「大丈夫だよ」
隠岐 乞
保証はない。
隠岐 乞
「もしも壊しちゃったら一緒に謝ろ。おねーちゃんだから先頭にだって立てるもの」
晴嵐路 花楽
「……お姉さま……」
隠岐 乞
ばけものなかまでおねーちゃん。
それが孤高の彼女の支えになるなら。
隠岐 乞
「なあに?」
晴嵐路 花楽
「……………………いっしょに、たたかいましょうね」

やくそく。
隠岐 乞
「うん。いっしょに」

やくそく。
隠岐 乞
あなたの願いのために。ちっぽけな私のできること。
晴嵐路 花楽
あなたの世界のために。かいぶつである私のできること。
GM
誰も見ていない夜闇で交わされた、二人のやくそく。

サイクル3 天立羽琉

GM
では……次は3手番目ですね。どなたが行かれますか?
GM
羽琉くんとのことで!
GM
どのような感じにしますか?
天立 羽琉
それでは、晴嵐路のお屋敷からは少し離れた森の中で。
幼い頃に花楽ちゃんとの勝負の舞台にも成ったことのある、日の差す開けた空間に花楽ちゃんと一緒を誘って来ようかと思います。
お話がしたい。
GM
はい。ではGMから軽く書き出ししようか。
天立 羽琉
お願いします!
GM
涼やかな秋の風に、サラサラと木の葉が揺れる。
GM
晴嵐路の屋敷から少し離れた森の中。
GM
木漏れ日を浴びながら、二人歩いてゆく。
天立 羽琉
「…この辺りも昔と変わらないね。
丈が少し伸びたりもしてるけど、生えてる花も草木もみーんな覚えがあるや。」

歩きながら周囲を見渡して、隣を歩く幼馴染に言葉を投げる。
晴嵐路 花楽
「はい。なんだか大変、懐かしいような……すこし、昔を思い出すような気持ちになります」

隣を歩きながら、穏やかな時間を噛み締めています。
懐かしい思い出が蘇るような時間。
天立 羽琉
「ね。花楽と競争だー!とか言って、森の中を構わず走ったりしてさ。
だいたい、あの辺りの陽だまりをゴールにしてたっけ?」

木々の間から漏れ出る、一層に明るい場所を指差した。
晴嵐路 花楽
「まあ……懐かしい、そう、あの辺りの……目印がありませんでしたか? たしか、ほら、切り株が」

記憶をなぞるように、指先を視線で追い。
見つけた切り株の年月を感じさせる風合いに、時の流れを思わず数えます。
天立 羽琉
「お、そうだったそうだった!
多分あの切り株がそうだよね?」

木漏れ日に照らされる切り株を見付けて、声を上げて。

「ちゃんと、残ってるものだね…
流石に、もうだいぶ古惚けちゃってはいるけれど……」
晴嵐路 花楽
「……こんなに小さな切り株だったのですね。お会いしたばかりの頃は、もっと……二人でも座れるものでしたから」

今は苔むした様相もそうですが、二人並んで座るのはとてもではないですが難しそうです。

「……わたくしも、羽流さまも。変わらないようなつもりのままでしたが……こうして懐かしい場所を歩くと、気がつくことが沢山、あります」
天立 羽琉
「そうだね…
いつも通りに過ごしていただけのつもりだったのに…気が付いたら時間が経っていてさ。
変わってから初めて気が付くことも多くて……」

苔むした切り株を指で撫でながら、そう笑って。
天立 羽琉
「なーんて言ってると、ご年配の方たちみたいだね。
若いくせに年寄り臭いぞー!って乞姉さんに叱られそうだ。」

はははと笑って。

「ね、昔を懐かしむのも良いけどさ。
花楽は、これから先…何かしてみたいことってある?」
晴嵐路 花楽
「まあ。……ふふ、でも……わたくしは羽流さまのそういう……皆様の伝統や、受け継いできた時間を大切にされる姿勢、とても素敵だと思っていますよ」

天立も晴嵐路も、古き良き家柄。
その積み重ねた時間を疎かにしない姿勢はとても素晴らしいことだと頷いてから。

「……この先、ですか?」
晴嵐路 花楽
未来の話。
今ではないこの先の話。

……成人の儀より先の話?

「……………………すみません、考えたことも……なかったものですから……」
天立 羽琉
「ふふ、積み上げた伝統と歴史を学んで継いでいくことも嫌いでは無いのだけどね。

それはまた別として、さ。
してみたいことも、僕はちゃーんとあるよ!」

"それは何かと言うと…"
溜めを作り、小さく勿体ぶるように言葉を継いで。
天立 羽琉
「僕はね。
花楽と一緒に、おしゃれ勝負がしてみたいんだ!」

すっと背筋を正しながら、ビシッとポーズを決めた。
晴嵐路 花楽
「……おしゃれ、勝負」

きょとんと、呟き。

「……………………おしゃれというのは、その……例えば、今、羽流さまがなさっている格好のような……?」

まじまじ、改めて貴方の装いを眺めて。
天立 羽琉
「そ、僕みたいな格好のこと。
自分で服を選んで組み合わせて、自分だけの服装を作るんだ。

本当は、さ。
成人の儀までに、勝負を申し込もうと思ったんだけど――」
天立 羽琉
「―だけど、今の花楽じゃ…ね。
普段の格好が悪いと言うではないけれど……
やっぱりさ、前提が公平がじゃないから。」
天立 羽琉
そう言うや、帽子のつばをひょいと摘まみ上げて。
隣に立つ花楽の頭に、そっと被せようと。
晴嵐路 花楽
被せられた帽子を、確認するように手のひらでペタペタと感触を確かめて。
晴嵐路 花楽
「……そう……ですね……わたくし、その……おしゃれ、というものがどんなもので……たとえば、そういうお洋服が”おしゃれ”なのか……あまり存じ上げておりませんから……」

オロオロ、オロオロ。
晴嵐路 花楽
「……………………乞お姉さまに相談しないと、右も左も……」

セコンドについてもらうのは、許されるんでしょうか?
天立 羽琉
「大丈夫、大丈夫!
僕だって、最初は初心者だったしさ!
乞姉さんから借りた本でたくさん勉強したんだから!
それに、古縁塚さんもお洒落な本ならたくさん持っていたし……」

セコンドが付くのも当然何も問題はない。
誰しも、最初は一から学んでいくのだ。
天立 羽琉
「そうやって、たくさんの服を見て知って……
花楽なりのお洒落を探して欲しいなって、そう思うんだ。
どういう形であれ、きっと花楽の気に入るお洒落が見付かると思うからさ。」
晴嵐路 花楽
「な、なるほど、羽流さまもそう言えばご本を読んで勉強されたのですよね。命お兄様がそういったご本をお持ちなのはビックリしましたが……」

でも、普段から同じような装いの命が実はそういった方面に詳しいのなら、自分にもできないことではないのかも?
ただ、おしゃれ、というものは物差しが分かりづらくて、どうすれば技工の高低が測れるのかは一見して分かりづらかったのですが。
晴嵐路 花楽
「……………………もし、わたくしがその……いつもと、違う服を着ていても……笑わないでくださいますか?」
天立 羽琉
「……笑うって、どうして?」

言葉の意図が掴めない様子で、そう問い返す。
晴嵐路 花楽
「……その……洋装は、似合わないかもしれませんから……」
天立 羽琉
「似合わない……花楽に?」
晴嵐路 花楽
「は、はい……着たこともございませんし……慣れぬものですから……」
天立 羽琉
「…あはは!」

笑った。
晴嵐路 花楽
「……ど、どうしてお笑いになられたのですか!? わ、わたくし、とっても真剣に悩んでいるのですよ……!!」

オロオロ、オロオロ。
天立 羽琉
「ふふ、ごめん花楽。
だってさ、予想もしないことを言い出すから…
何だか、不意を突かれちゃってさ。」

ごめんね、ともう一度謝罪の言葉を告げて。
天立 羽琉
「…大丈夫。笑ったりなんてしないよ。
だって、花楽が頑張って選んだ服だもの。」

力強く、そう述べて。

「約束する。」
晴嵐路 花楽
頭の上の帽子に、そうっと触れながら。

「……………………約束ですよ?」
晴嵐路 花楽
「ぜったいに、ぜったいに笑わないでくださいね?」
天立 羽琉
「うん、絶対。
天立 羽琉の名前に掛けて、ここに誓うよ。」
晴嵐路 花楽
「……いつか、」
晴嵐路 花楽
「……いつか、そんな日が来たら」
晴嵐路 花楽
「きっと、しあわせですね」
晴嵐路 花楽
きっと、とか、いつかとか。
確かなものが何もない。
天立 羽琉
「……うん。」
天立 羽琉
「きっと、いつか……約束だから。」
天立 羽琉
言葉に心を載せて、意気で花楽ちゃんの秘密の判定をしようと思います。
GM
いいですね! 感情修正はありますか?
天立 羽琉
欲しいです!
晴嵐路 花楽
感情修正を送ります。
GM
はい。では+1で判定をどうぞ。
天立 羽琉
2D6+1>=5 (判定:意気) (2D6+1>=5) > 8[4,4]+1 > 9 > 成功
GM
成功!
GM
では、このまま全体公開になりますね。
GM
【追加の秘密:晴嵐路花楽】
あなたは神となって世界を救わなければならないと考えているが、同時に、天立羽琉とは完全に隔絶した存在になってしまうことに恐れを抱いている。
あなたは天立羽琉が自分に勝ち、自分を殺し、そして一緒に死んでくれるのならば、人間のまま死ぬのも悪くないと思っている。
天立 羽琉
音も無く、サングラスを装着する。
瞳に浮かぶ動揺を、悟られないようにするために。
天立 羽琉
吸い込んだ息と共に、何かが伝わって来たような気がした。
それは冷たい風の内に、温い空気の玉を包んだかのような不思議な心地で。

黒い閾の向こうにある花楽の面に、引き寄せられるように視線が向いていた。
晴嵐路 花楽
花が。
晴嵐路 花楽
舞っている。
どこからか、風に吹かれて。
晴嵐路 花楽
「……」

風に飛ばされないよう、帽子を大切そうに抑えて。
天立 羽琉
「…成人の儀、かあ……」
晴嵐路 花楽
「……もうすぐ、ですね」
天立 羽琉
「そうだね……」

吐き出す息と共に、言葉を零す。
晴嵐路 花楽
「……こどものころは」

言葉とともに、様々な思い出を振り返りながら。

「楽しかった。何もかもが新しくて、手を伸ばせば、駆け出せば、何にでもなれそうな気がして……」
晴嵐路 花楽
「……けれど」
晴嵐路 花楽
「……わたくしたちも。もう、大人になる時間なのですね」
天立 羽琉
「大人になる、かあ……」

噛み締めるように、言葉を反芻して。

「正直な所を言うと、さ。
まだ実感が無いっていうか……
少しだけ気乗りのしない部分もあって、さ。
そのことは、考えないようにしてたんだけど……」
晴嵐路 花楽
「わたくしは」
晴嵐路 花楽
「……ずっと、その日だけを考えて生きてきました」
晴嵐路 花楽
「……ただの一度も、忘れたことはございません」
天立 羽琉
「…僕は、さ。
人に成る儀式なんて、そんな名前が付いてるから……
もしかすると…花楽も、ヒトに成れるんじゃないかと思っていて……」
天立 羽琉
「だけど…
まさか、カミになるための儀式だなんてね。
ヒトとして残れるのは、僕らの内の一人だけか…
或いは…なのに……」
晴嵐路 花楽
「……………………わたくしはずっと。自分がシノビガミの血をもっとも濃く引くものだから、それを理由に世界を救うものなのだと思っておりました」

人類という、続いていかなければならない系譜への忠誠なのだと。

「……今は、少し。違うと思っていて」
晴嵐路 花楽
「……わたくしは」
晴嵐路 花楽
「……羽流さまと、命お兄様と。乞お姉さまと。大好きな人々を守るために、誇り高く生まれたのだと思っています」
天立 羽琉
「花楽」
晴嵐路 花楽
「……はい」
天立 羽琉
「僕は……」
天立 羽琉
きゅっと唇を噛み締める。
晴嵐路 花楽
「……貴方に」
晴嵐路 花楽
「……お会いできてよかった」
晴嵐路 花楽
「それだけで、わたくしは」
晴嵐路 花楽
「……それだけで、良かったのです」
晴嵐路 花楽
「これ以上のことは、なにも」
天立 羽琉
「花楽、僕は……」
天立 羽琉
「花楽が居なくなるのも――
花楽を残して僕が居なくなるのも――」
天立 羽琉
「本当は…どちらも嫌なんだ……」
晴嵐路 花楽
「……………………羽流さま……」
天立 羽琉
項垂れそうになるのを堪えて、花楽の顔を見据える。
天立 羽琉
「…僕の望みは、いま言った通り。
花楽が望んでいることは…何?
本当に、さ。
あとは、もうみんなと別れるだけで満足なの?」
天立 羽琉
「僕は…花楽の気持ちが知りたいんだ……」
晴嵐路 花楽
「……」
晴嵐路 花楽
「……………………わたくしは……」
晴嵐路 花楽
一瞬だけ。
ひどく、凄まじい風が吹き付けて。
視界を奪われるようなそのさなかに、ひらりと。
晴嵐路 花楽
「……どうして」
晴嵐路 花楽
「……楽しい時間は、ずっとは続かないのでしょうね」
晴嵐路 花楽
「……わたくしが人の子であったのなら」
晴嵐路 花楽
「……人間であったのなら」
晴嵐路 花楽
「……………………こんなにも、淋しい思いをしなくてもよかったのかしら?」
晴嵐路 花楽
風が、止み。
晴嵐路 花楽
「羽流さま」
晴嵐路 花楽
「……どちらかを選べと迫られるなら。何かを失わねば大人になれないのというのなら」
晴嵐路 花楽
「……わたくしは、選びます。わたくしが、ただしく神となり、羽流さまも、みなさまも、全ての人々を正しく守ることを」
晴嵐路 花楽
「……他の何よりも、守るべきものがあるのだから」

貴方の命を、居場所を。
天立 羽琉
「花楽…それは……」
晴嵐路 花楽
そのために、自分が、人間の”大人”になれなくても。
天立 羽琉
「…それが花楽の答えなんだね。
進む道を選び取って、先に進んで行くことが……」
晴嵐路 花楽
「はい。わたくしは……たとえ、自分が、そこにいないとしても」
天立 羽琉
「それなら、僕も……」
晴嵐路 花楽
「……大人になった羽流さまが、そこに、いてくださるのなら。その未来だけを見て、わたくしは、前に進みます」
天立 羽琉
「僕も、花楽の背中に追い付いて…そして……」
天立 羽琉
「…君だけに、淋しさを背負わせるもんか……
だって君は本当は…人間として生きたいんだから!」
晴嵐路 花楽
「……………………」

沈黙
晴嵐路 花楽
「……強く、願いましょう、羽流さま」

どちらも、まるで子供の我儘のような、譲れない願いでしたからね。
子供時代の、最後の我儘を振りかざして。

「わたくしたちはお互い、相反する願いを持つもの。わたくしは、ただ、自分がしたいことを……自分の願いを、押し通そうとしているだけ。他の何を退けても、他の何と戦ってでも」
天立 羽琉
「そうだね……
僕の願いは、僕の願いだ……
それでも、僕がそうと決めたことだから。」
天立 羽琉
「これだけは…花楽に譲るわけには行かないよ。」
晴嵐路 花楽
頷いて。
晴嵐路 花楽
「……帽子を、ありがとうございました」

少しだけ。
ほんの少しの間だけ。
神様であることを忘れて。

「おしゃれをする気持ち、すこしだけ、味わえた気がします。……楽しい時間でございました」
晴嵐路 花楽
貴方にそうっと、帽子を差し出します。
天立 羽琉
「ううん、良いよ。
また被りたくなったら、いつでも貸すからさ。」

言いながら、帽子を受け取って。
晴嵐路 花楽
「……帰りましょう、羽流さま」

もう、あの頃のようには戻れないけれど。
天立 羽琉
「…うん、帰ろうか。花楽。」

それでも、いつかの頃のように。
その手をそっと、隣に差し出して。
晴嵐路 花楽
その手を、とって。
今だけは。
もう少しだけは。
天立 羽琉
繋いだ手と手。
並んで進む歩調は、あの頃のまま。
ずっと、ずぅーっと変わらずに。
晴嵐路 花楽
変わってしまったものも、変わらないままのものもあるけれど。
大事に思っている気持ちだけは、あの頃のまま。
晴嵐路 花楽
時間だけが、未来に。

サイクル3 古縁塚命

古縁塚 命
…それから、暫くして。
惜しむように過ごす日々も、惜しむ気持ちとは裏腹に変わりなく過ぎていき。
古縁塚 命
もう、成人の儀まではあと僅か。
残すは数日ばかりとなって。
古縁塚 命
「…はい。お茶が入ったよ」
古縁塚 命
この日は晴嵐路家のいつもの場所で、”4人で過ごせる最後の日”として集まっています。
隠岐 乞
「今日のお菓子は金つばで~す」
茶菓子の準備も万端です。……これまでと変わりなく。
晴嵐路 花楽
「……ありがとうございます、命お兄様、乞お姉様」

大事に大事に受け取ります。
一つずつの仕草を確かめるように、いつもより丁寧にゆっくりと。
天立 羽琉
「わ、美味しそう。
ありがとうございます、古縁塚さん。
それに乞姉さんも。」

何一つ変わらぬ振舞いで、茶を啜る。
古縁塚 命
「どういたしまして」
お礼の言葉に笑って席に着いて。 
古縁塚 命
「それじゃあ、頂きますをしようか」
古縁塚 命
いつもと同じような時間。
いつもと同じようなやりとり。
…”だからこそ”、それを刻むように行う。
天立 羽琉
「(頂きますの前にお茶に手を付けちゃった…)」
晴嵐路 花楽
洗練された所作で手を合わせて。

「……頂きます」
天立 羽琉
「はい、頂きます!」

勢いで誤魔化し。
古縁塚 命
「うん、頂きます」

にこやかに手を合わせて、小さく頭を下げて。
隠岐 乞
"それ"を言葉にするものはなく。
だから今に求められている言葉は、

「いただきます」

頭を下げて早速茶菓子に手をつける。
隠岐 乞
うりゅ~くんの失態に目ざとく気づいた乞はうりうりとからかったりしたのでしょう……。
古縁塚 命
皆が頂きますをすれば命もお茶に手を伸ばし。ほぅ…っと息を吐けば、幸せそうに笑った。
天立 羽琉
誤魔化し切れなかった…
晴嵐路 花楽
「……嗚呼、おいしい。今の季節らしいお味で」

羽流がお茶に手を付けてしまったことには気がついたようですが、くすくす笑って見ないフリ。
こういうのは、自分の担当ではないでしょうからね。
いつも通り、微笑ましく見守るばかり。
古縁塚 命
そんな、”いつも通り”の和やかな時間から始まって。
隠岐 乞
「うりゅ~、用意できたぞ~」
天立 羽琉
「うん? なになに?
僕まだ食べてる途中なんだけど……」

言いながらも、そちらに顔を向ける。
隠岐 乞
視界に広がるのは忍生ゲーム★Excellent!
立体的なステージ、精巧な車に乗ってステージを駆け回る、道中は光って音も鳴る、話題作です。
隠岐 乞
女子高生に大人気です。
隠岐 乞
「今日のために乞ちゃん、取り寄せたんですね~。ふっふー」
古縁塚 命
「あっ、忍生ゲームの最新作だ。これ面白そうだからやりたかったんだよねぇ」
晴嵐路 花楽
「……まあ、忍生げぇむ……ほし……」

アルファベットが読めないらしく、ほし……で止まっています。
おほしさま。なるほど?
古縁塚 命
流石は乞ちゃんだ、なんて小さく拍手をします。
天立 羽琉
「わ、すごい! 本物だ!?
よく手に入ったね、乞姉さん!
あまりに人気過ぎて異界から取り寄せないと手に入らない、なんて噂まであるのに!」
晴嵐路 花楽
「……そ、そんなに人気なのですか……!?」

すごいものなのでは……?
と、ビックリしている様子が狐面の奥からも伝わってきます。
隠岐 乞
「ちょ~~っとばかし、うりゅーのおじいさまのツテを使ったり蔵を漁ったり天井……ふふふ、ふふん」

ごまかしました。
晴嵐路 花楽
「天井……」

天井?
天立 羽琉
「へ、へぇ~……
それ、ちゃんとお爺様にも話を通してるんだよね?
大丈夫だよね??」

ちょっと不安。
古縁塚 命
「………また乞ちゃんは…」

苦笑をしています。
隠岐 乞
「かぐらちゃん見てこれボタンを押すとひかるんだよ~」

ごまかしています。
晴嵐路 花楽
「……!!
し、知ってます!!
これが噂の……ええと……げぇみんぐ……!!」

どこで手に入れた知識なのか、間違っているとも言い難い微妙な知識を披露します。
古縁塚 命
「……取り敢えず」
古縁塚 命
出どころは後で確認して、必要ならフォローをするとして……。
古縁塚 命
「折角面白そうなゲームを用意してくれたんだから、早速遊んじゃおうか」 
天立 羽琉
「そ、そうですね。出所はともかくとして……
花楽も、すっかり興味を持ったみたいですし。」
古縁塚 命
花楽ちゃんが興味津々になっているのを見て、そんな風に話を進めます。
隠岐 乞
「まずですね~……車を選ぶところから勝負は始まってて……これは速度4倍で走れる代わりに障害物に弱くてたまに横転して……」

早速花楽ちゃんへ説明をしています。遊ぶ気満々です。
隠岐 乞
大人になったらこうして遊ぶことも、不始末のフォローももらえないかもしれませんからね。遊ぶときはしっかり遊ぶ!
晴嵐路 花楽
「車にも、種類があるのですね……!」

説明を聞きながら、相変わらずひとつひとつに大げさに驚き、ゲームの中の世界にキラキラと目を輝かせたことでしょう。
その素振りは初めて遊ぶ子供のものなのに、賽子を握ればあら不思議、天運が負けを許さない出目が続くのですけれど。
隠岐 乞
「あら~命おにいさまにうりゅーくん。私達の背を見てばかりでは追いつけませんわよ~」

花楽ちゃんに同乗してライド勝ち馬です。
晴嵐路 花楽
「追いつけませんわよ~!」

子供は悪いところばっかり、すぐ真似しますからね。
古縁塚 命
「あはは…仲良しだねぇ」
天立 羽琉
「あ~絶妙な所で追い付けない!
こっちもすごく良い流れに乗ってるはずなのに~!」

二人の後を羽琉カーが必死に追い掛ける。プップー。
古縁塚 命
「でも僕も負けてられないな。…そろそろ”このカード”を切る時が来たみたいだ」
晴嵐路 花楽
「まぁ……命お兄様、まさか”あの”禁じ手を……!?」

実は何をするのかよく分かっていません。適当なこともたまには言います。子供なので。
天立 羽琉
「…うん?
古縁塚さん、何か持っていましたっけ……?」

後方不注意。
隠岐 乞
「ウッ……!」

胸を抑えてうずくまります。演技過剰。
古縁塚 命
命がそう言って不敵に笑って取りだしたるは大逆転カード!出目と進路を操作して、向かう先の分岐点…大富豪ルートに入っていった!
晴嵐路 花楽
「ね、乞お姉様!?
大丈夫ですか!?」

胸を抑える貴方の演技に負けじとタダ乗りです。
古縁塚 命
「……乞ちゃん。流石にその演技は……」
隠岐 乞
「やられた……! このままじゃ追い抜かれちゃう……。こうなったら花楽ちゃん、私達も"あの手"を使うわよ!」
隠岐 乞
うずくまったまま、震える手がカードへ手を伸ばします。
晴嵐路 花楽
「”あの手”ですねお姉様……!
叶うなら、この技、使いたくはありませんでしたわ~!」

ノリノリで一緒に手を伸ばします。
隠岐 乞
ちゃきん。合わさる手が引くのは──……
天立 羽琉
「うわ、大逆転カード!?
それって確率1024分の1でショップの福袋から出るって言う希少も希少のカードじゃないですか! いつの間に!」
隠岐 乞
【忍法:砂塵の術】
フィールド全体を砂漠化し、弱い緑は死滅。花屋の価値は下がり、障害物補正のついていない車は軒並み速度0.1倍です。
隠岐 乞
「これが私達の……、大逆転カードよ!!」
隠岐 乞
こんなこともあろうかと車選びからたっぷり説明したのです。
晴嵐路 花楽
「わたくしたちが、最強ですわ~!」

いえーい、ピース。
最近乞ちゃんに教えてもらった決めポーズでご満悦です。
天立 羽琉
「!!?
ちょっと待って、それアリなの乞姉さん!?
僕の車、エンジンしか強くしてないから効果覿面なんだけど!? もう歩いた方が速そうな車になっちゃったんだけど!?」

大逆転どころか順位大暴落してる車が一台。
隠岐 乞
「勝ち負けは仕込みから決まるものよ、羽琉。覚えておきなさい」

決めポーズのダブルピース。いえーい。
天立 羽琉
「わー…あっという間に、皆の車が遠く遠く離れて行く……」
古縁塚 命
「むっ…流石だね乞ちゃん。
まさかこの状況を最初から見越していただなんて」
古縁塚 命
「だが諦めちゃいけないよ羽琉くん!
1台1台があの2人には敵わなくても、2台で力を合わせればきっと勝てるさ…!!」
古縁塚 命
”合流カード”……発動!!!
隠岐 乞
「ムッ! わるい予感が命にーちゃんの方からびびびと来てるわ……!」
晴嵐路 花楽
「まあ!
ふふっ、面白くなってきましたですわ~!」
天立 羽琉
「それは…合流カード!
二人で合わせて能力が二倍!
報酬は山分けの、協力カードの頂点ですね!
よーし、これなら今度こそ……」

なお、悪い効果も二人一緒に及ぶ模様。
古縁塚 命
そんなこんなで逆転をしたり。
またまた逆転をされたり。
………時として無法が行われたり。
古縁塚 命
一進一退の攻防を繰り広げて、最後の最後に勝者の座に納まり栄光を手にしたのは…
隠岐 乞
「お~っほっほ。高みの座をいただきましたわよ~」
高笑い、そして勝利の……ピ~ス!
晴嵐路 花楽
「お~っほっほ。わたくしたちの勝ちですわ~!」

二人並んで、勝利の……ピ~ス!
古縁塚 命
「良いところまではいったんだけど、惜しかったねぇ」

こちらは敗者のとほほ顔。
天立 羽琉
「くっ……
まさか二人一緒だと、速度0.1の効果が相乗して速度0.01倍になるなんて……
古縁塚さんのお陰ですぐに脱せたけれど、あそこが勝負の決まり手だったかも……」
古縁塚 命
「あれにはびっくりしたねぇ」
古縁塚 命
なんて、勝負の感想を述べたり。勝者を称えたり。
古縁塚 命
何にせよとても楽しかったのは間違いがない。
天立 羽琉
「むー……
とは言え、あれを除いても花楽と乞姉さんのペアが強かったのもありますけれど……
二人とも息ピッタリだったものなあ……」
古縁塚 命
「まぁまぁ。今日は時間もあるし、ゲームはまだ他にもあるから、次で勝てば良いさ」
隠岐 乞
「楽しかったね~。それじゃ次はなにしよっか? さあさ、お選びなすって」

持ち寄った玩具を携帯収納忍具から取り出して並べて。遊びの時間はもうしばらく続きます。
古縁塚 命
そう。今日は”特別な日”。
4人で過ごせるのはこれでもう最後だからと、晴嵐路家でのお泊りをする日なのでした。
晴嵐路 花楽
「……皆様、今日はわたくしの我儘に付き合ってくださってありがとうございました」

どうしても。
今日だけは昔のように、みんな一緒がいいからと、いつもなら渋い顔の命にもお願いして。
並べてもらったお布団は、四人分。
昔、まだ花楽も羽流も幼かった頃にだけ見られた光景でした。
古縁塚 命
「…ううん。僕も本当はこうして過ごしたかったから。花楽ちゃんが切り出してくれて、むしろ嬉しかったな」
古縁塚 命
”最後くらい”…という言葉は意図的に外して。
この時にはふさわしくないから。
隠岐 乞
「ねっ。お泊りなんていつぶりかな。こういう機会ってつくらないと得られないもの」

"またしたいね"の言葉は続けずに。
天立 羽琉
「うん、こちらこそ楽しかったよ。
泊まりで遊ぶなんて、本当に久しぶりだったしさ。
時間も忘れるくらい夢中になったのも、久しぶりで……」
天立 羽琉
「(あれ?
そう言えば、お風呂入ったっけ……?)」

本当に時間を忘れていた様子。
***
そんな風に話をしていれば、襖を僅かに開けて風呂の用意が整ったとの声がかかる。
隠岐 乞
布団に座ってこそこそ花楽ちゃんとおはなししている様子。
古縁塚 命
「あ、それじゃあ頂いちゃおうか。
羽琉くん…折角だし一緒に入る?」
古縁塚 命
声がかかれば羽琉くんへとそう声をかけて。
手ぬぐいだとかそういったものを用意しています。
晴嵐路 花楽
もしょもしょ。
お布団に乞と二人、並んで座って盛り上がっております。
天立 羽琉
「そうですね。
先に花楽と乞姉さんが入るかな…と思いましたけど、
二人とも、今は立て込んでいるみたいですし。」
隠岐 乞
過熱する内緒話。耳を済ませば説明書を手に繰り広げるなんらかの知的玩具の話が漏れ聞いたでしょう……。
隠岐 乞
「いってらっしゃい」

それでも二人の様子は気配に察していたようで、手を振り見送ります。内緒話はまだまだ続きますが……。
晴嵐路 花楽
夢中になってほう……ほうほう……!
と、狐面の奥で目を光らせていたとかいなかったとか……?
っとと、そこで慌てて。

「あ、おふたりとも、いってらっしゃいませ!」

気がついたように声をかけます。
古縁塚 命
「うん、お先に」

この様子じゃ暫くは続きそうだな…と見つつ、手を振り浴場へと向かいます。
天立 羽琉
「お先に、お湯を頂いてくるね。」

そう言いながら、軽く手を振って。
命と共に浴場へ向かおうとする。
古縁塚 命
そうして迎えば。貸切風呂のような離れの浴場へと辿り着きます。
古縁塚 命
服を脱ぎ。体を洗い…そうして湯に浸かり…。
古縁塚 命
「いいお湯だね」

※着ているように見えますが心の目で見てください
天立 羽琉
「は~~。
程よく熱くて心地良いですね。
流石は晴嵐路のお家だなあ……。」

ビバノンノン。
天立 羽琉
「僕、こうして誰かと一緒に湯船に入るのは久しぶりです。」
古縁塚 命
「僕もだよ。子供の……本当に小さかった頃以来かな」
古縁塚 命
呟きにはそう答えて。
気持ちよさそうにしながら、格子窓から覗く月を見上げ鼻歌を歌う。
天立 羽琉
「はは、それじゃ僕と同じですね。
僕の家でも、ほんの小さな頃を除くと、自分のことは自分でするようにと言われてきましたから。」

肩まで湯に浸かりながら、心地よさそうにそう答えて。
立ち昇る湯気を眺めながら、頬を緩ませる。
天立 羽琉
「…それにしても。
強かったですね、花楽と乞姉さん。
今日初めて触ったゲームも多かったのに、まるで往年のコンビみたいに立ち回っていて。
僕、ちょっと驚いちゃいました。」
古縁塚 命
「そうだね。花楽ちゃんなんかは大分乞ちゃんの影響を受けたようだったけれど…僕もびっくりしちゃった」 
天立 羽琉
「あはは、古縁塚さんもそう思いました?
花楽だけでも十分すごかったんですけれど……
何て言うかな?
気付いたら…まるで二人が、お互い何を考えてるのか分かってるみたいに動いてて……」
古縁塚 命
「まるで本当の姉妹みたいだったよね。…もしかしたらそれ以上かも」
天立 羽琉
「そうそう、そんな感じでした。
一方の僕らは…協力しようとする意志はありましたけれど……
少しだけ、思い切りが足りなかったかもですね。」
古縁塚 命
「そうだね…。思い切りだとか、勢いとかは…負けちゃっていたなぁ」
古縁塚 命
羽琉くんの言葉にはそんな風に苦笑をして。
古縁塚 命
それから、立ち昇る湯気を暫く見たあとに。…不意にその先にいる羽琉くんの眼をまっすぐに見て。
古縁塚 命
「………………羽琉くんはさ」
古縁塚 命
「…”自分がどうしても叶えたいもののためにそれ以外を切り捨てる”ことは出来るかい?」 
天立 羽琉
不意に、真っ直ぐに向けられる瞳。
その細い瞼から伝わる空気を感じ取って。
湯船の中で、背筋を伸ばした。
天立 羽琉
「……それは…………」

その言葉が何を意味するかは、すぐに分かったけれど。
続く言葉は、躊躇いに飲まれて中々出でず。
古縁塚 命
「…………この答えだけは」
古縁塚 命
「今、君が言わなくてはいけない。
口にしないといけない」
古縁塚 命
「…でないと、きっと掴みたいものが掴めなくなってしまうよ」
天立 羽琉
「…………はい。」

言葉に頷くと共に、小さく息を吸い込んで。
細く大きく、呼吸を重ねる。
天立 羽琉
「……僕は…………」
天立 羽琉
「…本当は、まだ迷いがあります。
花楽のため、そして自分自身のために、真っ直ぐ進むことは決めたのですけれど……」
天立 羽琉
「それでも……
僕自身の覚悟のために、誰かを犠牲にするような真似は…… 本当に、しても良いことなのか分からなくて……」
古縁塚 命
「…しても良いこと以外をするのは怖いかい?」
古縁塚 命
「その怖さは…」
古縁塚 命
「それをしなかった時に訪れる結果と、どちらが怖い…?」
古縁塚 命
「よく、考えてごらん?」
天立 羽琉
「……分からないです……
良いとか、悪いとか言うことじゃなくて……
僕は花楽に絶対に消えて欲しくないと、そう思っているけど……
だけど、古縁塚さんにだって……そんな風に思う人はいる筈だから………」
天立 羽琉
「それに、古縁塚さんだって……
本当は、犠牲になんてなりたく無いんじゃないですか?

それなのに、僕は自分の気持ちだけで貴方に全てを押し付けるような………
そんな真似をして、自分が許せるのか…それが、分からなくて………」
天立 羽琉
「…怖いと、そう思うんです……」
古縁塚 命
「……………」
古縁塚 命
その答えを聞いて。
古縁塚 命
「……君は、優しい子だね。
…皆の気持ちを考えることが出来る、とても良い子だ」
古縁塚 命
少しだけ悲しそうな。まぶしそうな。そんな表情を浮かべて。……手を伸ばして、頭を撫でる。
古縁塚 命
「…でもね。これに関しては僕自身も”そう”しようと思って、望んでいることなんだ」
天立 羽琉
「古縁塚さん……」

ふうわりと頭を撫でられながら、小さくう俯く。

「それは…どうして、ですか……?
僕が進む道を選んだように、貴方にだって別のやり方を考えることも出来る筈…ですよね?」
古縁塚 命
「どうして……か」
古縁塚 命
その問いを受けて。すぐには答えずに少しだけ考え込む。
古縁塚 命
「………考えて。考えて。考え抜いた先に、これしか見つけられなかったから……かな」
古縁塚 命
「それをする恐怖と。しないことへの恐怖と。
自分のこととか。誰かのことだとか。
全部、全部、色々と考えて………」
古縁塚 命
「何度考えても、結局その答えになった」
天立 羽琉
「でっ、でも……
妖魔のこととか、世界のことだって……
あんな儀式なんか…あんなものをせず、僕たちで力を合わせて…お父様やお爺様たちにも手伝って貰えば、何とかなるかも知れないじゃないですか!
他に手段がある…かも知れないのに……」
天立 羽琉
「なのに……
花楽も…乞姉さんも…………
まるで、もう何も迷っていないみたいに振舞って………
本当に…本当にそれしか方法が無い、みたいに……」
古縁塚 命
「………そうだね」

それは”同意”ではなく。ただ、気持ちを受け止めるための言葉。
古縁塚 命
「きっと、他にも手段はあるのかもしれない。
探せば、見つかるのかもしれない」
古縁塚 命
「……でも、それを見つけ出す時間はもう、ないんだよ」
古縁塚 命
自分たちを案じてくれる優しい少年の、優しい心に。
それを告げるのは心が痛むけれど。
古縁塚 命
けれど、真実だから。伝えなくてはならない。
天立 羽琉
「……はい。」

先ほどの言葉とは裏腹に、落ち付いた声色を返す。
他の可能性を考えれど、どうにも成らないことは当人も分かっていたこと。
それでも、縋れる物があるなら手を伸ばさずにはいられなくて。
古縁塚 命
「…羽琉くんは優しいね」
古縁塚 命
その落ち着いた声色に。
落ち込んでいるであろう気持ちに申し訳無さを感じながら。
天立 羽琉
「…そんなことは無いですよ。
今だって…こうして、自分の気持ちでばかり騒いで……」
古縁塚 命
「…いいや、優しいよ。
だって…現実がどうにもならなくても…その気持ちだけでも確かに救われるものがあるんだから」
天立 羽琉
「でも…僕は……」

こくり、小さく喉を鳴らす。

「僕は……
古縁塚さんみたいに……
いつも落ち着いて、誰に対しても穏やかに振舞える人になりたかったです…… 」
古縁塚 命
「ふふ…嬉しいな。憧れてくれてるんだ?」
古縁塚 命
その言葉には少し冗談めかして、笑って言って。
古縁塚 命
「でも、僕だって元からこうだったわけじゃあないさ。小さい頃は……今と全然違ったりするんだよ?」
天立 羽琉
「……そうなんですか?
とてもそうは見えないと言うか……
乞姉さんからも聞いたことが無かったですから。
あんまり信じられないんですけど……?」
古縁塚 命
「恥ずかしくて人には言っていないからね」
古縁塚 命
そう言って、昔を思い出したようにして……。
古縁塚 命
「………昔の僕は……人と接する時の態度こそはそこまで変わらなかったけれど、中身は常に花楽ちゃんが神様モードをしている時みたいな感じで………」
古縁塚 命
「なんていうか、周りの人をあんまり信じていなくて……そこから愛嬌をごっそりと減らしたような感じで……………」
古縁塚 命
「………まぁ、途中で…そんな風にしているのが馬鹿だなぁって思って…やめたわけだけれど…」
天立 羽琉
「神様モードと言うと……
ああ、あの花楽が神事を行っている時の……」
天立 羽琉
「……何だか、本当に何もかも違ってたんですね。
今の古縁塚さんとは掛け離れすぎてて……
乞姉さんに話したら『嘘吐くなー!』って頭を突かれそうな気がしちゃいます。」
古縁塚 命
「ふふ。僕が変わったのはその乞ちゃんがきっかけだったんだけれどね」
古縁塚 命
内緒だよ、と。しぃ…と指を立てながら。
天立 羽琉
「へー…乞姉さんが、ですか?
ふふ、本人が聞いたらどんな顔するでしょうね……。」

意外なような、そうでも無い様な。
不思議と込み上げる話題に、小さく頬を震わせて。

「はい、内緒にします。」

こくりと頷いた。
古縁塚 命
「多分、複雑な顔をするんじゃないかなぁ。
…あと、多分軽く報復をしてくると思う」

もしも聞かれていたらの反応を想像して、クスクスと笑って。
天立 羽琉
「ははは、そうですね。
それはもう、こわ~いお仕置きが待っていそうで……」

つられるように、口を抑えながらクスクス笑い。
古縁塚 命
「乞ちゃん、照れ隠しにそういうことをするところがあるよね」

そんな風に言い合いながら、お互いに笑う。
古縁塚 命
「羽琉くん。…大切な誰かとの出会いっていうのはさ。
思った以上に自分のことを。思った以上に人生を変えてくれるんだ」

笑ってから、少しだけ過去を思い返すように天井を見上げて。そう呟いて。
古縁塚 命
「…羽琉くんにとって、花楽ちゃんはそんな相手かな?」
天立 羽琉
「ん……それは、その………」

再び投げ掛けられた言葉に、笑いを止めて。
軽く目を泳がせる。
天立 羽琉
「………………そう…だと、思います……」

緊張を孕みながら、言葉を吐き出す。

「思い返して見ると………
僕の思い出の中には、いつも花楽が傍にいて……」
天立 羽琉
「……もしも、花楽と出会わなかったら………
なんてことが、想像も出来ないくらいですから…………

だから、たぶん……
僕にとっても同じなのかなと、そう思います……」
古縁塚 命
「……うん」

その答えを聞いて、そう想ってくれていて良かったと頷いて。
古縁塚 命
「…もしも、花楽ちゃんが完全なシノビガミになったら。
この世界から消えて、皆の記憶からも消えてしまうという話を前にしたよね…?」

その上で、これから起こり得る未来についてを話す。
天立 羽琉
「……はい、全て伺いました。
それが、成人の儀の目的であることも……」
古縁塚 命
「僕はね。…それは、死に別れるよりも辛いことだと思うんだ」
古縁塚 命
「どれだけ大切でも、かけがえがなくても。
決して失いたくないと想っていても」
古縁塚 命
「忘れてしまったら、その花楽ちゃんが居た場所を埋めることさえ出来やしない。
…忘れてしまったって、花楽ちゃんが居た場所に穴は残り続けるというのに」
古縁塚 命
「…それを、もう届かない場所から花楽ちゃんは見ることになる」
古縁塚 命
「………僕はそれをさせたくない。
例え、自分の命を使ってでも」
天立 羽琉
「…………」
天立 羽琉
「…古縁塚さん……」
天立 羽琉
「…実は今日、晴嵐路のお屋敷に来る前に……
家族から、数日後の儀式に向けた支度の品々を預かりました。
新しい道着と、ご先祖様伝来の白鞘の刀。
来たる日に向けて、僕のために用意をしていてくれたそうです。」
天立 羽琉
「皆、多くは話しませんでした。
ただ僕の思うようにやれと、それだけで……」
天立 羽琉
今一度、湯船の中で背を正し。
真っ直ぐに、命の顔を見据えて言う。
天立 羽琉
「正直な所を言えば、まだ全ての迷いを振り切れてはいません。
それでも……
他に選択が無いことも理解をしたつもりです。」
天立 羽琉
「古縁塚さんもそう思うから、ということは大きな支えになりますけれど……
それでも、ただそれだけが理由では無くて……
手放したくないものの為には、僕も戦わなければいけないと思うから……」
天立 羽琉
「古縁塚さん。お願いします。
僕と…一緒に戦って下さい。
僕たちが過ごして来た世界と…そして、花楽のために。」
天立 羽琉
背筋を伸ばしたまま、深く頭を下げた。
湯面に、顔が付きそうな程に。
古縁塚 命
その言葉に、命もまた背筋を伸ばして。
大人と子供ではなく、一人の”シノビ”として。
一人の”男”として眼の前の少年をじっと見据える。
古縁塚 命
「こちらこそ、よろしくお願いするよ。
羽琉くん。…僕たちは共に同じ願いを持った仲間同士だ」
古縁塚 命
「……どうか、互いが果たしたい願いの為に…その刃を僕に貸して欲しい」
古縁塚 命
そう言って。こちらも頭を下げる。
共に、深く。深く。
天立 羽琉
「…ありがとうございます、古縁塚さん。
僕も力の限り、戦い抜くつもりです……
決して、儀式に迷いは持ち込みませんから……」
天立 羽琉
深く下げた顔の下、
差し込んだ指で、自らの瞼の横を軽く撫でる。
古縁塚 命
そうして、約束を交わして。
古縁塚 命
頭を上げて、ぽつりぽつりと。
互いの大切な相手とのこれまでのこと。
これからのことを少しだけ語って。
古縁塚 命
「…ただいま」
古縁塚 命
離れの部屋へと戻ってくる。
湯上がりでほかほか。湯気が漂っています。
天立 羽琉
「はは、お待たせ。
気持ちが良くて、つい長風呂しちゃった。」

命の後に付いて、部屋に入った。
晴嵐路 花楽
「あ、お兄様、羽流さま、おかえりなさい!」

ほかほかになって帰ってきた二人を、暖かく出迎えます。
隠岐 乞
「おかえり。けっこ~長かったね?」

花楽と乞の間に広がる紙束を見ればこちらはこちらでどんなやり取りをしていたか、察せるかもしれません……。
古縁塚 命
「お互いにこういう風に誰かと入るとかがなくってさ。つい…話が弾んじゃってね」
古縁塚 命
そう答えながら目に入ったのは、何かしら2人で楽しんでいたような痕跡。

昼間のゲームもそうだったけれど、随分と仲良くなってくれていて嬉しいな…と感じる。
天立 羽琉
「ですね。
普段はあまりしないお話が…たくさん出来て、すごく楽しかったです。」
隠岐 乞
視線を受けて、ん? と笑い返す。
心配ご無用。実の姉妹のように仲良しですよ、と。
古縁塚 命
お風呂でのお話。
花楽ちゃんはやっぱり羽琉くんにとって…かけがえのない存在だ。
古縁塚 命
それは勿論、僕や乞ちゃんに…その他の人だって。当然、そうで。
古縁塚 命
花楽ちゃん自身も、こんな風に日々を楽しめるような子に育ってくれて。
古縁塚 命
手番行動の宣言。”花楽ちゃんという一人の少女の居場所はこの世界だ”と示すために、意気で居所を抜きます。
古縁塚 命
そう思ってくれている人は感情修正をくれると嬉しいな。
GM
だそうです。
隠岐 乞
感情修正しません。
天立 羽琉
修正を送ります。
同じ願いを持つ者として。
GM
では、+1ですね。判定をどうぞ。
古縁塚 命
2D6+1>=5 (判定:意気) (2D6+1>=5) > 8[2,6]+1 > 9 > 成功
GM
成功ですね。
GM
感情共有により全員が花楽の居所を得ます。
GM
が、感情共有により受け取ることを拒否することもできます。
隠岐 乞
受け取ります。
天立 羽琉
受け取ります。
GM
はい。では全員が得ることになりますね。
GM
RPの続きをどうぞ。
古縁塚 命
きっと、そんなことは。
わざわざ確かめなくたって、当たり前のことなんだ。
古縁塚 命
そんな当たり前のことが、当たり前のようにはならないから。
古縁塚 命
僕たちは皆、思い思いに覚悟を固めないといけない。
古縁塚 命
けれど、それは。
今日この日だけは忘れようと皆で決めた日だから。
古縁塚 命
「今日はさ、夜更かしも…しちゃおうか」
古縁塚 命
抱いた覚悟を胸に秘めて。
”いつも通りの”。いつもよりも”特別な夜”をただ過ごそう。
GM
GM
メインフェイズが終了。クライマックスフェイズに移行します。