エピローグ:葛火焔郎&藻鹿乃子1

GM
今日も、暖かい。
GM
眩しすぎない太陽が空から世界を見守っている。
GM
いつもの場所、
GM
あの日二人で話した川辺。
GM
せせらぎの音。
藻鹿乃子
待ち合わせ場所に使っていた、いつもの場所。
いつもは先に鹿乃子が待っていたけれど。
今日は少しだけ遅れている。
葛火焔郎
穏やかな日差しを浴びながら、風に吹かれて。
葛火焔郎
ぼんやりと天を仰ぐ。
葛火焔郎
成人の儀を越えてから。潺を見送ってから。
葛火焔郎
こうして天を仰ぐ時間が長くなった。
葛火焔郎
今日も、暖かい。
葛火焔郎
相変わらず寒さには弱いが、身体の内側から凍えるようなことはなくなって。
葛火焔郎
それが、自分の失うものを数えさせる。
藻鹿乃子
「……ほむろ」
藻鹿乃子
後ろから声。
葛火焔郎
「お」
葛火焔郎
「かの、」
葛火焔郎
振り向く。
藻鹿乃子
おずおずと近寄って隣に座る。
藻鹿乃子
「……人間の、わたし……」
藻鹿乃子
「……ヘンじゃないかな」
葛火焔郎
「…………」
葛火焔郎
「ヘンでもいいよ」
葛火焔郎
「ヘンじゃないけど」
藻鹿乃子
輝きそのものの髪の色は褪せ、
石のように磨かれた紅い眼は水底のように凪いでいた。
藻鹿乃子
「よかったぁ……」
葛火焔郎
未だ包帯を巻いた手を伸ばし、ぎこちなく頬に触れ。
葛火焔郎
その目をまじまじと見る。
藻鹿乃子
「ひゃ」
藻鹿乃子
「……」
葛火焔郎
「なに」
藻鹿乃子
「なにって、いうか……」
藻鹿乃子
「前から、ひゃ……ってなってたの」
葛火焔郎
「え」
葛火焔郎
口ごもる。
藻鹿乃子
「ほっぺ触られたときとか、手繋いだときとか……」
藻鹿乃子
「手ぬぐいでぬぐってくれたときとか、もっと……いっぱい、昔から」
葛火焔郎
「……そうかあ」
葛火焔郎
うり、と緩く握ったままの拳で頬を撫でて。
藻鹿乃子
されるがまま。
葛火焔郎
「鹿乃子も、やっぱり」
葛火焔郎
「ふつうの女の子だな」
藻鹿乃子
「こ」
藻鹿乃子
「ころしもんく、っていうんだよ。それ」
葛火焔郎
「えー?」
葛火焔郎
「女の子はふつうじゃだめなんじゃないのか」
藻鹿乃子
「ほむろの前でなら……いいの!」
葛火焔郎
「いいのか」
葛火焔郎
「俺には鹿乃子は特別だけどな」
藻鹿乃子
笑顔のままへにゃりとうずくまる。
藻鹿乃子
「ころしもんくだってぇ……」
葛火焔郎
うずくまった……
藻鹿乃子
どんな顔していいか。
わかんないよ~……!
藻鹿乃子
耳まで赤い。
葛火焔郎
そのすべてを、見ている。
葛火焔郎
真っ直ぐ、とは。少し違う眼差しで。
藻鹿乃子
かつて神性に抑え込まれていた少女が。
花ひらくように淡く、笑っている。
藻鹿乃子
指の隙間から見ていたが、観念したように顔を上げた。
藻鹿乃子
「えりまきしてないと……」
藻鹿乃子
「もっとどきどきしちゃう……」
葛火焔郎
「あったかくなったから」
藻鹿乃子
おおよそ2倍のどきどきが襲っている。
葛火焔郎
「いらなくなった」
藻鹿乃子
「もう、寒くない……?」
葛火焔郎
「うん」
葛火焔郎
「でも、俺」
葛火焔郎
「鹿乃子といるときはいつも暑いくらいだよ」
藻鹿乃子
はわ……。
藻鹿乃子
「……」
藻鹿乃子
湯気があがりそうなくらい、赤くなって。
藻鹿乃子
「……こないだみたいに」
藻鹿乃子
「いきおいで膝貸してくれる?って」
藻鹿乃子
「言おうと思ったのに……」
藻鹿乃子
顔を手で覆って何も言えなくなってしまった。
葛火焔郎
「まだ返してもらってないから」
葛火焔郎
「おまえのだよ」
葛火焔郎
膝を叩く。
藻鹿乃子
……!
藻鹿乃子
しばしどうしようもなく恥じらっていたが、観念したように潜り込む。
藻鹿乃子
「……わ、たしも」
藻鹿乃子
「ほむろのだからね……」
葛火焔郎
「…………うん」
葛火焔郎
髪に触れる。その頭に角はなく。手は容易に届く。
葛火焔郎
あまりにもちいさな頭が、華奢な首が、触れている感触。
藻鹿乃子
一瞬緊張したように、こわばって。
すぐにそれは手入れされた髪のように解けていく。
藻鹿乃子
だいすきな人の手や指や、体温を感じている。
葛火焔郎
手は届いた。だが、それは自分の思い描いていたものとはかけ離れていて。
葛火焔郎
どうにも、参っている。
藻鹿乃子
ずっと夢見てたものだ。
心のずっと奥のやわらかいところで。
藻鹿乃子
ずっと。ずっと。
こうしたかった。
葛火焔郎
「鹿乃子、」
葛火焔郎
「目、見せて」
葛火焔郎
膝の上の顔を覗き込む。
藻鹿乃子
「う、……ん……」
藻鹿乃子
おずおずとまぶたをひらく。
藻鹿乃子
瞬き。
葛火焔郎
水というには苦く、空というにはあたたかく。
葛火焔郎
静かな、やわらかな、夢見る少女の瞳。
葛火焔郎
勝てない。どうしてか。
藻鹿乃子
まなざしを触れ合わせるだけで。
口から心臓が飛び出そうになってしまう。
藻鹿乃子
あんなに長かった、17年の沈黙よりも。
ずっと今この瞬間の沈黙の方が長く思えるほど。
藻鹿乃子
見つめている。
葛火焔郎
激しく燃えていた瞳はいまやその熱を和らげ、
葛火焔郎
燃やすよりも、僅かに夜を照らす揺らめきとなって。
葛火焔郎
「うん、……ヘンじゃない」
葛火焔郎
「鹿乃子、ってかんじだ」
藻鹿乃子
チョコレートのように心を優しくとかす甘い熱が。
彼の瞳のなかで燃えている。
藻鹿乃子
「ん……」
藻鹿乃子
その名前で呼んでくれる日をずっと待ってた。
葛火焔郎
勝ち取るべきだった名前を呼んでいる。
葛火焔郎
その矛盾を、しかし、受け入れて。
藻鹿乃子
わたしの、わがままなお願いを聞いてくれた。
藻鹿乃子
「ほむろ……」
藻鹿乃子
「だいすき……」
葛火焔郎
「ん」
葛火焔郎
「俺も」
葛火焔郎
かがみ、軽く鼻先を合わせる。
藻鹿乃子
真っ赤な顔で、くすぐったそうに笑う。
藻鹿乃子
髪が揺れて、ばらの香りが舞った。
葛火焔郎
燃え盛る炎の中で嗅いだそれよりもずっと柔らかく甘い。
葛火焔郎
「鹿乃子の欲しいものなら、なんでもあげたいよ」
葛火焔郎
スモアでも。マジェステでも。人生でも。愛でも。命でも。なんでも。
藻鹿乃子
もう少し、このまま。
と言おうとして、顔を上げてそっと耳元で囁く。
葛火焔郎
至極、真面目な顔で頷く。
葛火焔郎
ほんの軽く、触れあうだけの拙さで。
葛火焔郎
唇を重ねた。
藻鹿乃子
乙女の小さな願いは。
またしても果たされてしまった。
藻鹿乃子
これからも。
果たされない日はないと、心の底から。
藻鹿乃子
ときめいている。
葛火焔郎
その願いに向かって身を投げる。
果たせなかった悲願の苦さを供連れに。
葛火焔郎
これからは。
愛おしい願いの、ひとつひとつを叶えていこう。
葛火焔郎
そんなふうに、愛している。

エピローグ:葛火焔郎&藻鹿乃子2

GM
流れ落ちる水飛沫のひとつひとつが、暖かい陽光に眩しくきらめく。
GM
滝壺の近く。
GM
かみさまの、よくいたところ。
GM
陽射しに照らされたその場所で、こどもたちが今日も遊ぶ。
藻鹿乃子
かみさまじゃなくなっても、お転婆ぶりは相変わらず。
誰よりも先にその場所へぴょんぴょんと向かっていく。
葛火焔郎
新品の釣り用具やら、母に持たされたお弁当やらを抱えて。
少しあとから、ゆっくりとした足取りでその背を眺めて歩く。
葛火焔郎
「晴れてよかった」
煤木野灰吏
焔郎と半分こした荷物を抱えて歩く。
煤木野灰吏
「だなー」
藻鹿乃子
少し行った先で手を振りつつ。
藻鹿乃子
「このあたり!」
葛火焔郎
「ん」
藻鹿乃子
いちばん水がきれいで穏やかなところ。
あの子と女子会しちゃった秘密の場所。
煤木野灰吏
手を振る鹿乃子の元へ歩み寄る。
藻鹿乃子
清流にしゃがみこみ、手をそっと差し入れて。
くるくるとゆっくり右に回す。
藻鹿乃子
サチちゃんとお話しするときの合図。
サチ
水流の揺らぎ
煤木野灰吏
一旦荷物を下ろして、しゃがみこんだ鹿乃子の後ろから水面を覗く。
サチ
程近くに人の気配を感じ取り、それ自体が水流であるかのように優雅に
葛火焔郎
ひときわ濃い水のにおいに目を細める。
サチ
少し離れた場所から頭を水面にのぞかせる
藻鹿乃子
もう前みたいにお話はできないけど。
大事なおともだち。
葛火焔郎
いつか潺と話したときに見かけた姿。
藻鹿乃子
「あのこがサチちゃん」
煤木野灰吏
「噂の」
葛火焔郎
「うん、会ったことあるよ」
サチ
一度潜り、今度は河原まで。
煤木野灰吏
「御祀さんのガールフレンド」
サチ
濡れた身体をそのままにぴょこと陸に上がる。
藻鹿乃子
「うん、ガールフレンド」
葛火焔郎
「ガールフレンドか……」
サチ
髭をひくつかせて、人を見上げる。
葛火焔郎
人に慣れている、というよりは。
葛火焔郎
この場だから応えくれるのだろう。
煤木野灰吏
……あの晩御祀さんと一緒にうちに入り込んでた子か……?
葛火焔郎
おどろかさないように気を使いながら、膝に手を置いて毛に覆われた顔を覗き込む。
サチ
伸び上がる
藻鹿乃子
「サチちゃん、紹介するね」
藻鹿乃子
「わたしの、大事な……“おともだち”、と。
そのお兄さんだよ」
サチ
瞬き。
サチ
水かきのついた前足を浮かせたまま
サチ
焔郎を見て
サチ
灰吏を見た
葛火焔郎
「葛火焔郎、です」
葛火焔郎
改まって頭を下げる。
煤木野灰吏
「煤木野灰吏です~」
煤木野灰吏
「よろしくな、サチちゃん」
サチ
瞬く
煤木野灰吏
しゃがみこんで、挨拶する。
葛火焔郎
毛が生えているなあ。
サチ
においをかぐように鼻をひくつかせ
サチ
前足を地面に下ろし、足元をぐるりとまわった
葛火焔郎
おお……と、少し関心した顔。
煤木野灰吏
お~……
藻鹿乃子
「よろしく!って」
藻鹿乃子
「言ってると思う」
藻鹿乃子
たぶん……。
煤木野灰吏
「なるほどなぁ」
葛火焔郎
「よろしく」
藻鹿乃子
「前はもっとお話しできたんだけどね」
藻鹿乃子
しゃがみこみ。
葛火焔郎
その言葉を疑わない。
サチ
鹿乃子の膝に濡れた前足をのせる
藻鹿乃子
「でも、いいの」
藻鹿乃子
鼻先を近づける。
サチ
顔をあげると、髭がひくと動いた
藻鹿乃子
「ふふ」
煤木野灰吏
「鹿乃子ちゃんには初めての女友達になるのか」
葛火焔郎
じ、とその様子を見つめて。
藻鹿乃子
「うん」
葛火焔郎
潺の膝にくつろぐ姿を思い出す。
藻鹿乃子
「サチちゃんもわたしにいっぱい色んなこと教えてくれてね」
煤木野灰吏
里に年の近い女子いないんだもんな~と、二人の仲睦まじく戯れる様子を眺める。
藻鹿乃子
「せせらぎの秘密もいっぱい知ってるかも」
煤木野灰吏
「へぇ」
サチ
きゅ、とひと声
煤木野灰吏
「それは気になるな」
藻鹿乃子
知ってる?
首を傾げてみる。
藻鹿乃子
きゅ。
煤木野灰吏
「恥ずかしい秘密の一つや二つ、あればぜひ知りたいもんだな」
煤木野灰吏
もっともあの人がそんなもの残していくとも思えないが……
葛火焔郎
「にいちゃんの秘密も知ってるかもな」
煤木野灰吏
「ああ…………?」
サチ
鹿乃子に合わせるように首をかしげる
葛火焔郎
つられて軽く首を傾げた。
サチ
膝から降りてきょろと見渡し
サチ
丸い瞳で灰吏を見る
煤木野灰吏
目が合った。
葛火焔郎
「ほら」
葛火焔郎
「知ってるって」
煤木野灰吏
「えぇ?」
葛火焔郎
適当を言っている。
煤木野灰吏
「心当たりありませんけど~?」
サチ
瞬く
藻鹿乃子
「サチちゃんはなんでも知ってるもんね」
サチ
きゅ
煤木野灰吏
「ていうか俺のこたぁいいんだよ」
煤木野灰吏
「御祀さんの秘密だろ」
煤木野灰吏
なんかあるんだろ~?とサチの顔を覗き込む。
サチ
瞬く
サチ
きゅ、と鳴くと
サチ
川まで走り、水に飛び込んだ
葛火焔郎
「あ、」
煤木野灰吏
「ありゃ?」
葛火焔郎
「灰吏にいちゃんがいじめた」
煤木野灰吏
「マジか……?」
煤木野灰吏
「そんなつもりでは…………」
サチ
暫くして、戻ってくることには
サチ
その口に、白金の花の髪飾りをくわえている。
サチ
伝えるすべもないが、滝の裏にある両親の墓に、供えられていたものだ。
煤木野灰吏
戻ってきた……よかった……
藻鹿乃子
「サチちゃん、それがせせらぎの秘密?」
サチ
それを、鹿乃子の前に置く
藻鹿乃子
そっと受け取る。
葛火焔郎
「くれるのか」
藻鹿乃子
水のにおいがする。
煤木野灰吏
「髪飾りか。きれいだな」
サチ
きゅ
煤木野灰吏
「鹿乃子ちゃんによく似合いそうだ」
葛火焔郎
「うん」
藻鹿乃子
「きっとせせらぎの大事なものだけど」
藻鹿乃子
いいの?
首をかしげてみる。
サチ
じっと見つめている
藻鹿乃子
「ありがとう」
藻鹿乃子
「大事にするね」
サチ
きゅ
葛火焔郎
「よかったな」
煤木野灰吏
焔郎を肘でつつく。
煤木野灰吏
「またハードル上げられたな」
葛火焔郎
「…………」
サチ
御供えしてくれた枯れない花だけど
葛火焔郎
「別にそういうんじゃ……」
サチ
獺のサチにはその意味が分からない
煤木野灰吏
「そっか~」
サチ
だから、きっと今度は
サチ
いなくなった両親ではなく、いなくなった潺のかわりになるのだと思っている
煤木野灰吏
焔郎を御祀さんに勝てない仲間に引きずり落とそうとしている。
サチ
きゅ
藻鹿乃子
せせらぎがそうしていたようにサチの頭をなでる。
サチ
ぐりぐり
葛火焔郎
俺は潺さんには勝てなくてもいいですし……
藻鹿乃子
いっぱいありがとう、の気持ちをこめて。
葛火焔郎
潺を、奪ってしまったとは、思っていない。思わないことにする。
葛火焔郎
「ありがとうな」
葛火焔郎
ただ同じように感謝を。
葛火焔郎
俺の方にも来てくれるかな、と手を伸ばしてみる。
サチ
瞬く
サチ
一度鹿乃子を見て
サチ
首を傾げ
藻鹿乃子
いいよ~
藻鹿乃子
にへにへ。
サチ
ぴょんぴょんと焔郎によっていって
サチ
なでろとばかり伸び上がる
葛火焔郎
「おわ」
煤木野灰吏
のびてる
藻鹿乃子
かわうそは……のびる!
葛火焔郎
おっかなびっくり、頭を撫でる。
葛火焔郎
しっとりと濡れた小さな頭。
サチ
ぐりぐり
葛火焔郎
いっぱい、ありがとう。
葛火焔郎
潺さんの残していったものは、あたたかいものばかりだ。
葛火焔郎
「これからも、鹿乃子の話し相手になってやってな」
サチ
きゅう
葛火焔郎
「うん」
葛火焔郎
ぐりぐり。
葛火焔郎
頭を撫でる。
サチ
灰吏を見る
煤木野灰吏
「お」
煤木野灰吏
「こっちにも来てくれるか? お嬢さん」
サチ
ぴょんと寄って行って
サチ
首を傾げる
煤木野灰吏
驚かせないようにゆっくりと、手を伸ばす。
サチ
鼻先で指に触れた
サチ
湿っている
煤木野灰吏
冷たい鼻先に触れる。
煤木野灰吏
「前にうちに来たことある、よな?」
サチ
瞬く
煤木野灰吏
「御祀さんと一緒に」
サチ
きゅー
煤木野灰吏
「だよな」
煤木野灰吏
鼻先から指を離して、頭を撫でる。
サチ
ぐりぐり
煤木野灰吏
濡れた毛皮の感触。
煤木野灰吏
「寂しくなったらうちに遊びに来ていいからな」
サチ
瞬く
サチ
きゅ、と一声
煤木野灰吏
「ん」
煤木野灰吏
「女の子が遊びに来てくれるなら俺はいつでも大歓迎だからな」
サチ
きゅきゅ
葛火焔郎
「潺さんのガールフレンドをナンパしないでください」
煤木野灰吏
「え~?」
煤木野灰吏
別にいいよなぁ?とサチの顔を見て笑って。
藻鹿乃子
「サチちゃんはお目が高いからどうかなぁ」
サチ
首を傾げる
煤木野灰吏
「ええ……?」
葛火焔郎
「ははは」
煤木野灰吏
こないだ俺のことかっこいいって言ってくれたのに…………
葛火焔郎
かっこいいかっこいい
藻鹿乃子
かっこいいよ
御祀 潺
かっこいいですよ
煤木野灰吏
ああ!?
葛火焔郎
「さーて」
葛火焔郎
「やるか、釣り」
煤木野灰吏
「…………おう」
藻鹿乃子
「うん!」
煤木野灰吏
サチから手を離し
煤木野灰吏
「見ていくか?」
煤木野灰吏
目を合わせたまま問いかける。
サチ
瞬く
サチ
周囲を見渡してから
サチ
灰吏の荷物にずっしりと乗った
サチ
そこそこ重いのである
藻鹿乃子
「もうちょっと上の方がおすすめだから」
藻鹿乃子
「頑張って……!はいり!」
煤木野灰吏
「……は~い」
葛火焔郎
「俺もうちょっと持つよ」
煤木野灰吏
「平気平気」
煤木野灰吏
シノビなので。
サチ
欠伸
煤木野灰吏
「レディを優しく安全にお連れしますとも~」
葛火焔郎
「さすが灰吏にいちゃん、頼もしい」
葛火焔郎
荷物を抱え、上流を目指して再び歩き出す。
煤木野灰吏
暖かな日差しを受けながら。
藻鹿乃子
いつもせせらぎが見回ってくれていたあたりを目指して。
藻鹿乃子
「せせらぎ、いっつもあの滝登ってたんだよ」
煤木野灰吏
「滝を……」
煤木野灰吏
見上げる。
藻鹿乃子
上流へ向かう山道で近くに滝の音を聞きながら。
葛火焔郎
「登ってたって」
葛火焔郎
「登って……?」
藻鹿乃子
「うん」
葛火焔郎
鯉の滝登りを想像している。
煤木野灰吏
「すごいな」
煤木野灰吏
素朴な感想が出た。
葛火焔郎
龍になるやつ……
葛火焔郎
「俺も崖は片手で登れるけど……」
藻鹿乃子
鯉の滝登りはわからないけど鮭の滝登りはわかる。
煤木野灰吏
「崖と滝じゃなあ」
藻鹿乃子
「わたしも滝登り大変だった」
葛火焔郎
「鹿乃子も登れるのか?」
葛火焔郎
練習したほうがいいか……
藻鹿乃子
「せせらぎほど上手じゃないけど……」
煤木野灰吏
それは止めるぞさすがに……
葛火焔郎
止めないでくれ 俺もやれる
煤木野灰吏
意地を張るな!
藻鹿乃子
「あ、あのへんだよ」
葛火焔郎
「お」
藻鹿乃子
上流のひらけたところが木々の隙間から見えている。
藻鹿乃子
「せせらぎご推薦の鮎スポット」
煤木野灰吏
「おー」
葛火焔郎
「鮎、そろそろ季節だって書いてあった」
藻鹿乃子
「初夏のお魚だもんね」
藻鹿乃子
おいしいよ!
葛火焔郎
「潺さんはいっぱい獲って来てくれてたけどな」
藻鹿乃子
「今日はのんびりだね」
煤木野灰吏
「うまく釣れるといいがなー」
葛火焔郎
「ん」
藻鹿乃子
手づかみではない真剣勝負。
サチ
荷物の上でうとうとしている
葛火焔郎
穏やかな日差しのもと、川のせせらぎを聞きながら。
葛火焔郎
「のんびりも、悪くないな」
煤木野灰吏
「そうだろ~」
煤木野灰吏
「焔郎はず~~っと鍛錬鍛錬修行修行」
煤木野灰吏
「手合わせ」
煤木野灰吏
「終わったらまた鍛錬……」
葛火焔郎
「そりゃ」
葛火焔郎
「まあ、……うん」
葛火焔郎
実は走り込みも鍛錬もまだ全然やっている。
藻鹿乃子
率先して清流の中ほどまでぴょんぴょんと分け入っていく。
藻鹿乃子
「ふふ、ここまで来れる?」
藻鹿乃子
仁王立ち。
煤木野灰吏
お転婆だな~
葛火焔郎
「行ったらあ!」
藻鹿乃子
「せせらぎいわく、流れを見極めるのが極意……」
藻鹿乃子
「釣りも負けないからね!」
葛火焔郎
意気で分け入る。冷たさの和らいだ流れのなか。
葛火焔郎
鹿乃子を追って。
葛火焔郎
「おう」
煤木野灰吏
荷物の脇に腰を下ろし、川岸から二人の姿を見守っている。
煤木野灰吏
「がんばれ焔郎~」
サチ
荷物の上に横たわったまま、その様子を見守る。
煤木野灰吏
「サチちゃんはどっちが勝つと思う?」
サチ
顔を上げ
煤木野灰吏
「俺は鹿乃子ちゃんかと思うんだが……」
サチ
同意するように、きゅ、と鳴いた
煤木野灰吏
「ははは」
葛火焔郎
追って、追いついて、足を滑らせそうになる。
藻鹿乃子
その手をとろうとして、一緒に転ぶ。
藻鹿乃子
「あはは」
藻鹿乃子
「鮎、逃げちゃうよお」
御祀 潺
焔郎が勝つ日はまだ遠そうですね
葛火焔郎
「ぐぬぬ」
藻鹿乃子
ひときわ嬉しそうに笑う。
葛火焔郎
「俺ももうちょっと潺さんに教えを請うべきだった……」
藻鹿乃子
「わたしが教えてあげる」
藻鹿乃子
「ほむろがわたしにいっぱい色んなこと教えてくれたみたいに」
葛火焔郎
「……そうだな」
葛火焔郎
不器用な笑みを返す。
藻鹿乃子
せせらぎの思い出がいっぱいの自然の歩き方を。
水の泳ぎ方、風のにおいのかぎ方。
花の種類、星の数え方。
藻鹿乃子
「ほむろ」
藻鹿乃子
「わたし、幸せ」
葛火焔郎
窓は今や大きく開かれて、彼女が満開の花のように笑う。
葛火焔郎
それだけで。もう。今は。
葛火焔郎
「うん」
葛火焔郎
「俺もだよ」
葛火焔郎
火傷の残る不格好な手で、小さな少女の手を握る。
藻鹿乃子
その手をやわらかく握って。
藻鹿乃子
「……いざ、尋常に勝負!」
藻鹿乃子
照れ隠しのように釣竿を渓流に振った。
葛火焔郎
「おう!」
GM
 
GM
シノビガミシナリオ『神様のヒマ潰し』
GM
これにて、おしまい
GM
最後に琴線をやりましょう。
GM
功績点会議のシメですね
GM
隠されている自分のダイスを、琴線をあげたいPCの目に変更してください。
GM
みなさまよろしいですか? さいかくにん。
御祀 潺
はい
煤木野灰吏
はい
藻鹿乃子
はい
葛火焔郎
よろしいです
GM
ではでは
GM
オープンプロット、琴線の開示をお願いいたします!
[ 藻鹿乃子 ] がダイスシンボルを公開。出目は 1 です。
[ 葛火焔郎 ] がダイスシンボルを公開。出目は 2 です。
[ 御祀 潺 ] がダイスシンボルを公開。出目は 3 です。
[ 煤木野灰吏 ] がダイスシンボルを公開。出目は 4 です。
GM
あら~~~
藻鹿乃子
んふふ
GM
ふふふ
GM
全員1点!
GM
最後まで仲良しか?
葛火焔郎
ふふふ
煤木野灰吏
なかよしだな~
藻鹿乃子
笑っちゃった
GM
みんな仲良しですねえ
御祀 潺
仲良しですね
煤木野灰吏
でもこうなる気がしてたんだよな
葛火焔郎
うん……
GM
では改めて
GM
シノビガミ「神様のヒマ潰し」
GM
これにておしまいです!
GM
ありがとうございました~!