2021/04/23 昼前

真城朔
春の公園、金曜日のお昼頃。
真城朔
青い空の下、薄紅色の小さな花弁がゆるやかな風にそよいでいる。
夜高ミツル
満開にはまだ少し早く、
夜高ミツル
それでもこうして花見を楽しむには十分。
真城朔
天気もすこぶるよろしい感じ。
真城朔
気持ちのよい目覚めでお弁当を作ることができた。
夜高ミツル
公園の中心からは少し離れた辺りにシートを広げて、二人で腰を下ろす。
真城朔
ここは遊具からも離れているので子供が来ても邪魔にならない。
真城朔
ちょうどよし。
真城朔
ちょっと上を見れば桜の枝も見えて……
真城朔
「お花見……」
真城朔
レジャーシートに腰掛けてそのまま、ぽつりとこぼす。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
桜を見上げていたのが、真城へと視線を移す。
真城朔
「お花見」
真城朔
「だね」
夜高ミツル
「花見だな~」
夜高ミツル
花、というものが、真城にとって
夜高ミツル
よくない思い出を呼び起こすのではないか……と、
夜高ミツル
以前は結構気を払っていた。
真城朔
すぐに連想して表情を曇らせることの多い真城だが、
夜高ミツル
公園の写真を送るにも、花が咲いてるところは避けたり……
真城朔
花に関しては、存外そうでもなかった。
真城朔
少しだけ。
真城朔
遠い目をすることはあっても、
真城朔
それでも比較的、よく笑う。
真城朔
今も嬉しそうに桜を見上げ、
真城朔
ミツルに身を寄せている。
夜高ミツル
それが分かってきて、今はこうして二人で桜を見上げている。
真城朔
そよそよ……
真城朔
春の風に目を細めている。
真城朔
「桜」
真城朔
「咲いた……」
夜高ミツル
「咲いたなあ」
夜高ミツル
「先週は全然だったのにな」
真城朔
「きゅうに咲く……」
夜高ミツル
「急に咲くなぁ」
真城朔
「気づいたら」
真城朔
「終わってたり」
真城朔
「とかも……」
夜高ミツル
「見頃短いしなあ」
夜高ミツル
「雨とか振ったらマジですぐ終わるし……」
真城朔
頷いている……
真城朔
「晴れてて」
真城朔
「よかった」
真城朔
ぽかぽか……
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「暖かいし」
夜高ミツル
身を寄せ合っているのでさらに暖かい。
真城朔
「春……」
真城朔
「先週よりも」
真城朔
「もっと、春」
真城朔
春になっている。
夜高ミツル
「春だなあ」
夜高ミツル
「でも週明けとかまた結構冷えるっぽいからな」
夜高ミツル
「今日にしてよかった」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく頷く。
真城朔
「週明け」
真城朔
「…………」
真城朔
「大変かも」
真城朔
「だし……」
夜高ミツル
「だな」
真城朔
「怪我とか……」
真城朔
あってほしくはないけど……
真城朔
…………
真城朔
ない……
真城朔
しょぼ……
夜高ミツル
「怪我、は」
夜高ミツル
「気をつけるよ、ちゃんと」
真城朔
頷く。
夜高ミツル
頷いた頭を撫でる。
真城朔
撫でられる……
真城朔
手のひらに頭を寄せた。
真城朔
動物的仕草。
真城朔
すり……
夜高ミツル
撫でている。
真城朔
撫でられているうちにちょっとずつ表情が緩んでくる。
真城朔
撫でられるとうれしい。
夜高ミツル
真城がうれしいとうれしい……
真城朔
「お弁当」
真城朔
「食べる……?」
夜高ミツル
撫でて乱れた髪を整えながら、
真城朔
用意したし……
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「食おう」
真城朔
「うん」
真城朔
整えられている。
夜高ミツル
細い髪を指ですいて、手を離す。
真城朔
少しだけ名残惜しげに頭を振れさせたが、
真城朔
すぐにリュックへと手を伸ばした。
真城朔
おにぎり 水筒……
夜高ミツル
ミツルも自分のリュックに手を伸ばす。
夜高ミツル
中から弁当箱を取り出して、広げる。
夜高ミツル
中身はほぼほぼ前回と同じ。
真城朔
一週間ぶり二回目の手作りお弁当。
夜高ミツル
鶏の唐揚げ、ミニハンバーグ、ブロッコリー、プチトマト。
夜高ミツル
今回はそれに加えて卵焼きが入っている。
真城朔
黄色い彩りの追加だ!
夜高ミツル
ミツルがたまに作る、ちょっと甘めの卵焼き。
真城朔
真城は甘いのが好きなのでうれしい。
真城朔
おしぼりで手を拭いて拭いて……
夜高ミツル
拭き拭き……
真城朔
手を合わせ。
夜高ミツル
「いただきます」
真城朔
「いただきます」
真城朔
桜の木の下で唱和。
夜高ミツル
ロケーションは違うけど、いつもどおり。
真城朔
二人で作って食べるごはん。
真城朔
箸を取って、卵焼きを割ります。
真城朔
半分をいただく……
夜高ミツル
箸を取ったままそれを見ている……
真城朔
ぱく。
真城朔
もぐもぐ……
夜高ミツル
まじまじ……
真城朔
「ん」
真城朔
「お外でもおいしい」
夜高ミツル
「よかった」
真城朔
もう半分もとっちゃいます。
夜高ミツル
一応味見はしてて……ちゃんとできてるのは分かってたけど……
夜高ミツル
ちゃんと喜んでもらえてるとすげー嬉しい
真城朔
ミツのおいしい卵焼きを外のぽかぽか陽気の中で食べているのでうれしい
真城朔
「ミツも食べよ」
夜高ミツル
「あ、うん」
夜高ミツル
真城が食べてるのを見て嬉しくなっていた……
夜高ミツル
ハンバーグを一つ取って、食べる。
真城朔
前こねたやつ。
夜高ミツル
前回作ったのを今日のために冷凍しておいた。
真城朔
同じ味だろうとはわかってるけど……
夜高ミツル
「うまい」
夜高ミツル
ハンバーグを飲み下して、にっこりと笑う。
真城朔
「うん」
真城朔
よかった……になる。
真城朔
冷凍してから解凍してもおいしかった。
真城朔
俺もたべよ……
真城朔
箸を伸ばして 半分にして
夜高ミツル
真城が捏ねてくれたからおいしい
真城朔
ぱく……
夜高ミツル
じ……
真城朔
もぐむぐ……
真城朔
目が合った。
真城朔
笑う。
夜高ミツル
ミツルも笑う。
真城朔
もぐむぐ咀嚼して飲み込んだ。
真城朔
おにぎりを取りながら……
夜高ミツル
暖かくなってきたからか、最近真城が楽しそうで嬉しい……
真城朔
「桜」
真城朔
「満開とか、いつかな」
夜高ミツル
「26とか7とか」
夜高ミツル
「そんなんだったはず」
夜高ミツル
唐揚げに箸を伸ばす。
夜高ミツル
次の満月が27日。
真城朔
「バッティング……」
真城朔
してる……
夜高ミツル
「だなぁ……」
真城朔
おにぎりのホイルを開けながら……
夜高ミツル
「でも、見にくらいは来たいよな」
夜高ミツル
「花見までは無理でも、散歩ついでに……」
真城朔
考え込み……
夜高ミツル
パク、と唐揚げを口に。
真城朔
「昼に」
夜高ミツル
むぐむぐ……
真城朔
「ちょっとだけ……?」
夜高ミツル
頷いている。
真城朔
唐揚げを食べるミツルを見てます。
夜高ミツル
前回の唐揚げは、分担の結果ほとんどミツルが作ったけど
夜高ミツル
今回は真城がしてくれた。
真城朔
ミツルが卵焼きを焼いている間に……
真城朔
ぐるぐるまぜまぜ
夜高ミツル
真城が測ったり混ぜたりしてくれた唐揚げを食べています。
真城朔
どきどき……
夜高ミツル
飲み下して、
夜高ミツル
「おいしいよ」
真城朔
「おいしい?」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「うまい」
真城朔
「……うん」
真城朔
「よかった」
真城朔
ミツルに身を寄せる。
真城朔
箸を伸ばして、小さめの唐揚げを取った。
夜高ミツル
身を寄せ合う。
夜高ミツル
外だが……
真城朔
春の陽気にうかれた……
真城朔
うかれているな……
夜高ミツル
当人たちは気にする気配もなく……
真城朔
唐揚げを食べていますが……
夜高ミツル
食べるのを見ている。
真城朔
目が合った。
真城朔
頷いた。
夜高ミツル
頷く。
夜高ミツル
おにぎりに手を伸ばす。
真城朔
唐揚げを食べ、剥きかけたおにぎりを改めて食べ……
真城朔
塩にぎり……
真城朔
もくまぐ……
夜高ミツル
真城に少し遅れて、おにぎりのホイルを剥いてかじる。
夜高ミツル
むぐむぐ……
夜高ミツル
おにぎりは今日もまるい。
夜高ミツル
ちなみにミツルが作っても大差ない形になる。
真城朔
まるまるころころ
夜高ミツル
まるが一番作りやすい。
真城朔
かじっておいしければよし……
真城朔
ハンバーグの残り半分を食べている。
夜高ミツル
おいしい!
真城朔
飲み下し……
真城朔
「冷凍」
真城朔
「できて、これ」
真城朔
「楽だし……」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
飲み込んで、
夜高ミツル
「また作る?」
真城朔
「っても」
真城朔
「いいかも……?」
真城朔
どうだろ……と首を傾げました。
夜高ミツル
「作るか~」
夜高ミツル
「ナツメグ買ったしな」
真城朔
「おっきいやつ」
真城朔
「とかも、作る?」
真城朔
ナツメグあるしなら……
夜高ミツル
「そうだな」
夜高ミツル
「普通の大きさで……」
真城朔
「作り方」
真城朔
「調べてみよ」
真城朔
「今度……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
おにぎりの残りを頬張りました。
夜高ミツル
頷いてる。
真城朔
むぐむぐ
真城朔
こくこく
夜高ミツル
「唐揚げもまたしたいなー」
夜高ミツル
「温かいうちにも食べたいしな」
夜高ミツル
「冷めててもうまいけど」
真城朔
口の中にお米が入っているので頷いてます。
夜高ミツル
水筒に手を伸ばして、お茶を注ぐ。
夜高ミツル
くぴくぴとそれを飲んで、
夜高ミツル
空になったカップに再度お茶を注いで、真城の傍に置いた。
真城朔
お米を飲み込んで、お茶を取ります。
真城朔
とりあえず一口飲む。
真城朔
ふー。
真城朔
「唐揚げ」
真城朔
「……っぽくは、ちょっとないけど」
真城朔
「おいしいもんね」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「夕飯とかにも」
真城朔
「食べられそうで……」
夜高ミツル
「今日の真城が作ってくれたのもうまい」
真城朔
「……うん」
真城朔
嬉しそうに笑ってお茶の残りを飲みます。
真城朔
ほうと息をつく。
夜高ミツル
卵焼きを一つ取ってかじる。
真城朔
息をついて、ミツルへとまた身を傾けました。
真城朔
軽く体重がかかる。
夜高ミツル
昔初めて作ったとき全然形にならなかったんだよなー、とか思い出す。
真城朔
真城は挑戦したことない……
真城朔
いつかしてみたいきもちもある……
真城朔
でもミツの卵焼きがたべたい……
夜高ミツル
なんとなく、これくらいはできなければという気持ちで練習して作れるようになったものだけど
夜高ミツル
今真城が喜んでくれてるから、作れるようになっててよかったなと思う。
真城朔
喜んでます。
真城朔
喜んでいるし、くっついている……
真城朔
くっつき……
真城朔
「…………」
夜高ミツル
くっついてる。
真城朔
そわ……
夜高ミツル
くっつかれながら、卵焼きを飲み下した。
真城朔
ミツルを見ています。
夜高ミツル
目が合う。
真城朔
「…………」
真城朔
「……ミツ」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「…………」
真城朔
おず……
真城朔
もぞ……
真城朔
「……寝て」
真城朔
「いい?」
夜高ミツル
ぱち、と目を瞬かせ
真城朔
そわもじ……
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「いいよ」
真城朔
「…………」
真城朔
ふにゃり笑った。
夜高ミツル
枕にしやすいように、ちょっとシートの端に寄る。
真城朔
開けてもらった空間にすすすと身を傾け……
真城朔
ころんと転がり
真城朔
ミツルの膝に頭を預ける。
真城朔
横向きに……
真城朔
ちょっと頭を上向きにして
真城朔
ミツルの顔を見上げる。
夜高ミツル
膝の上に寝転んだ真城を見下ろしている。
真城朔
笑った。
真城朔
「ミツ」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「こう、してると」
真城朔
「ミツと桜」
真城朔
「両方見れる……」
真城朔
背中越しにそよそよと揺れる桜の枝を見ている。
夜高ミツル
「お得だな~」
夜高ミツル
と言ってから、少し照れたように笑う。
真城朔
「お得……」
真城朔
うれしい
真城朔
仰向けになっちゃった。
真城朔
昼の公園で……
夜高ミツル
ミツルの方はというと、ずっと眼下の真城を見つめている。
真城朔
目が合っている。
真城朔
「……ミツも」
真城朔
「後で」
真城朔
「する……?」
夜高ミツル
「しよっかな」
夜高ミツル
真城の髪に触れる。
真城朔
心地よさそうに目を細める。
真城朔
「桜」
真城朔
「空」
真城朔
「きれい」
真城朔
「だよ」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
髪をすいて、頭を撫でて
夜高ミツル
「……あ」
真城朔
「?」
夜高ミツル
「影」
夜高ミツル
「桜の形」
真城朔
「…………」
真城朔
手をかざしかけ……
真城朔
何をどうすればいいかわからず下ろした。
夜高ミツル
「だから、俺も」
真城朔
「落ちてる?」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
頷く。
夜高ミツル
「真城と桜、両方見えてるなあって」
真城朔
「…………」
真城朔
「えへへ」
真城朔
「よかった」
夜高ミツル
「お得だ」
真城朔
「おとく……」
真城朔
かな……? になってる
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「……でも」
真城朔
「逆も、いいよ」
真城朔
「だから……」
真城朔
あとで……
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「あとで交代な」
真城朔
「うん」
真城朔
「交代する」
真城朔
言いながら今はミツルの膝に。
真城朔
ぼんやり……
夜高ミツル
やわらかく頭を撫でている。
真城朔
撫でられるたびに嬉しそうにする。
真城朔
頭をすりよせ……
夜高ミツル
それを見て、ミツルも笑う。
真城朔
笑い合っている。
真城朔
「ミツ」
夜高ミツル
暖かな春の風が吹いている。
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「ミツに、さわられると」
真城朔
「うれしい……」
夜高ミツル
「……ん」
夜高ミツル
「俺も」
夜高ミツル
「こうして真城に触ってるの、好きだな」
夜高ミツル
言ってまた頭を撫でる。
真城朔
「……うん」
真城朔
「うん……」
真城朔
「それも」
真城朔
「うれしい……」
夜高ミツル
真城が嬉しいと嬉しい。
真城朔
ミツルの膝の上で目を伏せてうっとりしている。
夜高ミツル
逃れられないつらい記憶が多すぎる真城だから、
夜高ミツル
たとえ少しの間だけでも、忘れさせられているならそれが嬉しい。
真城朔
まさに昏い過去を置いてきてしまったかのように、
真城朔
今はミツルの膝に頭を預けてまどろんでいる。
夜高ミツル
嬉しい気持ちや、楽しい思い出や、幸せな記憶だけを真城にあげたい。
夜高ミツル
暖かな掌で、慈しむ手つきで真城に触れている。
真城朔
それが心地よくて、小さな吐息を漏らす。
真城朔
頭を寄せる仕草も今はなくて、
真城朔
すべてをミツルに委ねている。
夜高ミツル
もうすぐ月が満ちることも、今は忘れて。
夜高ミツル
ただおだやかに、ゆるやかに
夜高ミツル
二人の時間を楽しむ。
真城朔
しばしその穏やかな時間を満喫していたが……
真城朔
ぼんやりと瞼を上げて
真城朔
「ミツ」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「そろそろ」
真城朔
「かわる……?」
夜高ミツル
「もういいのか?」
真城朔
「うーん……」
真城朔
うーんと……
真城朔
「……あとで」
真城朔
「また」
真城朔
「して、くれれば……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
一旦交代したい……
夜高ミツル
頷いて、手をどける。
真城朔
ゆっくり起き上がった。
真城朔
真城も逆側に一旦寄り……
真城朔
離れるのちょっとさみしい……
真城朔
少し足を崩して座って、ぱっぱっと膝を払う。
真城朔
「はい」
夜高ミツル
準備してくれる様をじっと見て、
真城朔
手をかざすように。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
ゆっくりと真城の方に身体を倒す。
真城朔
どきどきわくわく……
夜高ミツル
真城の膝の上に寝転ぶ。
夜高ミツル
仰向け。
真城朔
見下ろす。
真城朔
視線が合う。
真城朔
おずおずとミツルの頭に手を添えて……
真城朔
「ど」
真城朔
「どう……?」
夜高ミツル
「真城と桜」
夜高ミツル
「両方見える」
真城朔
「うん」
夜高ミツル
少し上に真城の顔、その頭上に桜。
真城朔
どきどき……
夜高ミツル
「……きれいだな」
真城朔
「ね」
真城朔
「桜」
真城朔
「きれい」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
見様見真似の少しぎこちない手つきで
真城朔
ミツルの髪を撫でている。
真城朔
わしゃ……
夜高ミツル
心地よさそうに目を細める。
真城朔
「…………」
真城朔
笑った。
夜高ミツル
「……あと、なんか」
真城朔
「うん」
夜高ミツル
「こういうの、するのが好きでしてたけど」
夜高ミツル
「される側もいいな」
夜高ミツル
「嬉しい」
真城朔
「……うん」
真城朔
頷く……
真城朔
「俺は」
真城朔
「ミツ、に」
真城朔
「してもらえると」
真城朔
「うれしい……」
真城朔
から……
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「…………」
真城朔
見下ろしている。
夜高ミツル
見上げている。
真城朔
ミツルの髪にも桜の形の影が落ちている。
真城朔
桜を見て……
真城朔
ミツルを見て……
夜高ミツル
結構珍しい位置関係。
真城朔
ミツルに落ちた桜の影が、
真城朔
不意に影に覆われた。
真城朔
真城の顔が近づいている。
真城朔
唇が、
真城朔
重なった。
夜高ミツル
ミツルの顔にやわらかな髪がかかる。
夜高ミツル
目を伏せて、口づけを受け入れた。
真城朔
ふれるだけ。
真城朔
すぐに離れて、
真城朔
窺うような笑顔がミツルを見下ろしている。
夜高ミツル
見上げて、微笑んでいる。
夜高ミツル
寝転んだまま手を伸ばした。
夜高ミツル
白い頬に触れる。
真城朔
触れられて目を細めた。
夜高ミツル
「……はは」
夜高ミツル
思わず、というように相好を崩す。
真城朔
「ふふ」
真城朔
つられて真城も笑った。
夜高ミツル
じゃれ合って、くすくすと笑みをこぼす。
真城朔
晴天と桜の下、
真城朔
つかの間の、平和で幸せなひとときだった。