2021/04/23 昼前
真城朔
青い空の下、薄紅色の小さな花弁がゆるやかな風にそよいでいる。
夜高ミツル
それでもこうして花見を楽しむには十分。
真城朔
気持ちのよい目覚めでお弁当を作ることができた。
夜高ミツル
公園の中心からは少し離れた辺りにシートを広げて、二人で腰を下ろす。
真城朔
ここは遊具からも離れているので子供が来ても邪魔にならない。
真城朔
レジャーシートに腰掛けてそのまま、ぽつりとこぼす。
夜高ミツル
桜を見上げていたのが、真城へと視線を移す。
夜高ミツル
よくない思い出を呼び起こすのではないか……と、
真城朔
すぐに連想して表情を曇らせることの多い真城だが、
夜高ミツル
公園の写真を送るにも、花が咲いてるところは避けたり……
夜高ミツル
それが分かってきて、今はこうして二人で桜を見上げている。
夜高ミツル
「雨とか振ったらマジですぐ終わるし……」
夜高ミツル
「でも週明けとかまた結構冷えるっぽいからな」
真城朔
撫でられているうちにちょっとずつ表情が緩んでくる。
夜高ミツル
鶏の唐揚げ、ミニハンバーグ、ブロッコリー、プチトマト。
夜高ミツル
今回はそれに加えて卵焼きが入っている。
夜高ミツル
ミツルがたまに作る、ちょっと甘めの卵焼き。
夜高ミツル
ロケーションは違うけど、いつもどおり。
夜高ミツル
一応味見はしてて……ちゃんとできてるのは分かってたけど……
夜高ミツル
ちゃんと喜んでもらえてるとすげー嬉しい
真城朔
ミツのおいしい卵焼きを外のぽかぽか陽気の中で食べているのでうれしい
夜高ミツル
真城が食べてるのを見て嬉しくなっていた……
夜高ミツル
前回作ったのを今日のために冷凍しておいた。
夜高ミツル
ハンバーグを飲み下して、にっこりと笑う。
夜高ミツル
暖かくなってきたからか、最近真城が楽しそうで嬉しい……
夜高ミツル
「花見までは無理でも、散歩ついでに……」
夜高ミツル
前回の唐揚げは、分担の結果ほとんどミツルが作ったけど
夜高ミツル
真城が測ったり混ぜたりしてくれた唐揚げを食べています。
真城朔
唐揚げを食べ、剥きかけたおにぎりを改めて食べ……
夜高ミツル
真城に少し遅れて、おにぎりのホイルを剥いてかじる。
夜高ミツル
ちなみにミツルが作っても大差ない形になる。
夜高ミツル
空になったカップに再度お茶を注いで、真城の傍に置いた。
夜高ミツル
「今日の真城が作ってくれたのもうまい」
真城朔
息をついて、ミツルへとまた身を傾けました。
夜高ミツル
昔初めて作ったとき全然形にならなかったんだよなー、とか思い出す。
夜高ミツル
なんとなく、これくらいはできなければという気持ちで練習して作れるようになったものだけど
夜高ミツル
今真城が喜んでくれてるから、作れるようになっててよかったなと思う。
夜高ミツル
くっつかれながら、卵焼きを飲み下した。
夜高ミツル
枕にしやすいように、ちょっとシートの端に寄る。
夜高ミツル
膝の上に寝転んだ真城を見下ろしている。
真城朔
背中越しにそよそよと揺れる桜の枝を見ている。
夜高ミツル
ミツルの方はというと、ずっと眼下の真城を見つめている。
夜高ミツル
「こうして真城に触ってるの、好きだな」
真城朔
ミツルの膝の上で目を伏せてうっとりしている。
夜高ミツル
逃れられないつらい記憶が多すぎる真城だから、
夜高ミツル
たとえ少しの間だけでも、忘れさせられているならそれが嬉しい。
真城朔
まさに昏い過去を置いてきてしまったかのように、
真城朔
今はミツルの膝に頭を預けてまどろんでいる。
夜高ミツル
嬉しい気持ちや、楽しい思い出や、幸せな記憶だけを真城にあげたい。
夜高ミツル
暖かな掌で、慈しむ手つきで真城に触れている。
夜高ミツル
もうすぐ月が満ちることも、今は忘れて。
真城朔
しばしその穏やかな時間を満喫していたが……
真城朔
少し足を崩して座って、ぱっぱっと膝を払う。
夜高ミツル
「こういうの、するのが好きでしてたけど」
夜高ミツル
じゃれ合って、くすくすと笑みをこぼす。