2021/04/29
真城朔
古マンションに作られた闇病院の壁はどこか薄暗い。
夜高ミツル
腕に繋がれた点滴が小さく音を立てて揺れた。
真城朔
どうにか吸血鬼を討伐することは叶ったがミツルは入院、
夜高ミツル
「俺は真城を心配するし、一人で行かせたりしない」
夜高ミツル
未だ力の入らない手で、真城の手を握る。
夜高ミツル
「いざとなったら、狩りを放り出して二人で逃げたっていい」
夜高ミツル
「それを言ったら、真城だって俺に帰れって言ってた」
夜高ミツル
「…………嫌でも、どうしようもないことだって、ある」
夜高ミツル
「真城はきっと、自分の身体のことが怖くて、嫌で」
夜高ミツル
「俺は多分、それをちゃんと分かってやることはできない……」
夜高ミツル
「…………もちろん、しないよう気をつける」
夜高ミツル
「どこかの誰かと、俺は幸せになんかなれない」
夜高ミツル
「一緒にいたいのも、何かしてやりたいのも」
夜高ミツル
「幸せにしたいのも、一緒にいて幸せになれるのも」
夜高ミツル
「真城が一緒にいてくれるのが、俺は何より嬉しいよ」
夜高ミツル
「それくらいは、流石に俺も分かってるよ」
夜高ミツル
「……真城が隣にいないのは、考えられない」
夜高ミツル
「真城の人生をもらってるって言ったけど」
夜高ミツル
「そんで春になったらまた桜見てさ……」
真城朔
未だ弱々しいミツルの握力さえ振り解けずにいる。
夜高ミツル
血を流した身体の体温はいつもより低い。
夜高ミツル
弱々しい力で、けれど確かな決意を込めて真城の手を握っている。
夜高ミツル
「俺のほしいものをくれるのは、真城だけなんだ」
真城朔
ぼろぼろと落ちた涙がミツルの手のひらを濡らしていく。
真城朔
嗚咽を押し込めようとして、それにずっと失敗している。
夜高ミツル
手を離して、代わりに真城の背に腕を回す。
真城朔
弱々しい抱擁を受けて、ミツルの熱を感じている。