2021/10/12

noname
まあまあ狭めのビジネスホテル。
noname
いつも泊まっているホテルと大差はなく、まあ狭い方だけど、別にこんなもん、くらいの。
noname
取れたのはそういう部屋だった。
夜高ミツル
荷物を置いて、上着を脱ぐ。
真城朔
よいしょよいしょとハンガーにかけて……
真城朔
これまたちょっと狭めのユニットバスのとこで手を洗い……
夜高ミツル
じゃぶじゃぶ……
真城朔
寒くなってきたから大事。
真城朔
いつも大事だけど……
夜高ミツル
そろそろインフルエンザとか流行りだす頃。
真城朔
気をつけないとよくない。
真城朔
手を洗ったので、改めて二人でベッドに腰を下ろす。
真城朔
ぼふ……
夜高ミツル
二人分の体重に、マットレスが沈む。
真城朔
ぼんやりと身を寄せ合っている。
真城朔
「…………」
真城朔
くっつき……
真城朔
ミツルの服を掴んでいる。
夜高ミツル
真城の身体に腕を回す。
夜高ミツル
そのまま二人でベッドに倒れ込んでしまう。
夜高ミツル
ぼふ
真城朔
すぽ……
真城朔
倒れ込んだ拍子に、ミツルの胸に収まって顔を埋めた。
夜高ミツル
埋めさせて、頭を撫でている。
真城朔
撫でられている。
真城朔
心地良さそうに目を細めはするが、どこか浮かない表情。
夜高ミツル
その理由には心当たりがあった。
夜高ミツル
明日このホテルを発てば、県境を越えて千葉に入る。
夜高ミツル
そうすればすぐに目的地の八崎市に着く。
真城朔
そろそろおずおずとミツルの背中に腕を回している。
真城朔
服を握りしめる指先に、縋るような気配があった。
夜高ミツル
包み込むように、ぎゅっと抱きしめる。
真城朔
抱きしめられる。
真城朔
その温もりに甘んじている。
真城朔
ミツルの胸に頬を擦り寄せた。
夜高ミツル
八崎市。
夜高ミツル
自分たちの生まれ育った土地。出会った土地。
真城朔
真城が、
真城朔
特に多くの被害を出した土地。
夜高ミツル
進んで戻りたい場所ではないだろうことは容易に分かる。
夜高ミツル
けれど、心残りがあるだろうことも。
真城朔
少なくとも、帰ってみようという提案を拒みはしなかった。
真城朔
とはいえ平然としていられるわけでもない。
真城朔
今はこうして、ミツルの胸に顔を寄せて沈んでいる。
真城朔
甘えている。
夜高ミツル
改めてその意志を確かめるようなことはしない。
夜高ミツル
せめて不安を和らげるように甘えさせて、寄り添っている。
真城朔
寄り添われる熱に浸る。
真城朔
その温もりを好んで、ミツルの腕の中にいる。
夜高ミツル
胸に寄せられた丸い頭を撫でる。
真城朔
柔らかくすべらかな髪の感触がある。
夜高ミツル
旅の間に、少し伸びてきている。
夜高ミツル
そろそろ切った方がいいかもな……とかぼんやりと思う。
真城朔
ミツルの内心も知らず、撫でられるに任せている。
真城朔
二人揃ってぼんやりしている。
夜高ミツル
ぼんやりごろごろ……
真城朔
ぴと……
真城朔
密着している。
夜高ミツル
頭を撫で、指で髪を梳いて整え……
夜高ミツル
真城の頭に顔を寄せて、髪の毛に口づける。
真城朔
口づけを受け、
真城朔
ミツルを窺うようにゆっくりと顔を上げた。
夜高ミツル
頭を撫でていた手で頬に触れる。
真城朔
触れられる。
真城朔
瞼を伏せて、手のひらに頬を擦り寄せる。
真城朔
少し低い体温。
夜高ミツル
いつもの真城の体温。
夜高ミツル
固い手のひらに、その温度と頬の柔らかさが伝わる。
真城朔
触れられ慣れた手のひらに、無防備に頬を預けている。
真城朔
安堵に小さく息を漏らした。
真城朔
瞼を上げて、またミツルの表情を窺う。
真城朔
視線が合う。
夜高ミツル
視線が絡んで、見つめ合って、
夜高ミツル
そのまま、そっと顔を寄せる。
真城朔
受け入れた。
真城朔
いつものように。
真城朔
背中に回した指先に力が入って、
真城朔
より強く、求めるように縋りついていた。
noname
 
noname
2021/10/13 朝
noname
カーテンの隙間から光が漏れている。
真城朔
素肌の熱は胸の中に。
夜高ミツル
差し込む光に、もぞもぞと身じろいで
夜高ミツル
ぼんやりと瞼を持ち上げる。
真城朔
ミツルの胸の中でくったりと体重を寄せている。
真城朔
汗で固まって乱れた髪。
真城朔
脱力した肩の頼りない薄さ。
夜高ミツル
乱れて張り付いた髪を、指先でそっと整える。
真城朔
汗で少しぱさついている。
夜高ミツル
備え付けのデジタル時計を見る。
真城朔
触れ合わせた肌と肌も、少し湿ってべたついた感触。
夜高ミツル
チェックアウトの時間までは、まだ余裕がある。
真城朔
ミツルの胸の中、静かに寝息を立てている。
夜高ミツル
まだ起こさなくてもいいだろうと判断して、布団をかけ直す。
夜高ミツル
そして、改めてその細い身体を抱きしめる。
真城朔
布団に包まれて尚、別の熱を求めてやまぬように、
真城朔
体重はミツルに寄せられている。
夜高ミツル
真城はただでさえ朝に強くないし、昨夜は……
夜高ミツル
昨夜は何時に寝たっけ……
夜高ミツル
覚えてないということは、そういうことだ。
夜高ミツル
時間に余裕があるならゆっくり寝かせてやりたい。
真城朔
ミツルの厚意のままにすやすやと眠っている。
夜高ミツル
ただでさえ、今日はこのあと八崎に戻るわけで……。
夜高ミツル
丸い頭を静かに撫でる。
真城朔
小さめの丸い頭を撫でられる。
真城朔
眠っていても、或いは眠っているからこその無意識に、頭がミツルの手のひらに擦り寄る。
真城朔
いつもの仕草。
真城朔
いつもどおりの。
夜高ミツル
擦り寄せられる頭を撫でる仕草もいつもどおりに。
真城朔
穏やかな朝の時間。
夜高ミツル
いつもどおりの時間を過ごしながら、この後のことに思いを馳せる。
夜高ミツル
八崎に戻るのは、お世話になった人たちに挨拶をするため。
夜高ミツル
そして何より、真城の家を見に行くためだ。
真城朔
その全てが、いつかは通らなければならないことだった。
夜高ミツル
今を逃せば、次はいつ千葉に戻れるか分からない。
真城朔
あれから一年。
真城朔
区切りとしても丁度いい。
真城朔
真城もそう思ったからこそ、ミツルの提案に頷いたのだろう。
夜高ミツル
D7が今は積極的に真城を追っていない……
夜高ミツル
正確には、追えていないことも、仲間を通して知っている。
真城朔
そうするべき時が来た。
真城朔
そのことを二人で納得している。
真城朔
ただ、どうしても平然とはしていられないだけ。
真城朔
感情を呼び起こすものがあるだけ。
真城朔
それから逃れたくて、溺れてしまいたくなっただけ。
夜高ミツル
不安を少しでもごまかせるなら、それでいい。
夜高ミツル
真城を取り巻いてきた様々な問題を根本的に解決することは、結局ミツルにはできはしない。
夜高ミツル
真城のしたことはなくならない。死んだ人たちも帰らない。
夜高ミツル
真城を許せない人だっているだろう。
真城朔
その事実をどうしようもなく思い知って、
真城朔
その上でこうしてミツルに甘やかされている。
真城朔
罪の上塗り。
真城朔
そのように、自覚している。
夜高ミツル
それでも、そうしてほしいとミツルは願う。
夜高ミツル
ミツルが真城を許すことを、甘やかすことを、受け入れてほしいと。
真城朔
一年をかけて、その願いは聞き届けられてきた。
真城朔
だからこうしてミツルといる。
真城朔
ミツルの胸の中で眠っている。
真城朔
もぞ、と
真城朔
小さく身じろぎをした。
夜高ミツル
ん、と真城の様子を窺う。
真城朔
それからもしばらくじっとしていたが……
真城朔
ゆっくりとその頭が上がる。
真城朔
夜色の眠たげな瞳が、ぼんやりとミツルを映していた。
夜高ミツル
「おはよ、真城」
夜高ミツル
まだ眠たそうにしている真城に声をかける。
真城朔
ぼや……
真城朔
「……お」
真城朔
「はよ……」
真城朔
うつらうつらとミツルに応える。
真城朔
眩しげに、眠たげに、目を細めている。
夜高ミツル
眠そうだな……
夜高ミツル
「お茶でも淹れるか」
真城朔
まぶしくてねむい……
真城朔
ぼんやりとミツルに頷いた。
夜高ミツル
頷いて、頭を撫でる。
真城朔
なでられ……
夜高ミツル
それからのそのそとベッドを降り……
真城朔
流石にまた横たわったらまずいという意識があるのか、もぞもぞと上体を起こしている。
夜高ミツル
備え付けのケトルを取って洗面台へ。
真城朔
ぼー……
夜高ミツル
水を注いで戻ってくる。
真城朔
ベッドに座り込んだまま、ミツルの動作をぼんやり見守っている。
夜高ミツル
台座にセットし、コンセントを差す。
真城朔
ぼや……
夜高ミツル
静かな駆動音を聞きながら、マグカップを取って並べる。
真城朔
鳥の声が聞こえる。
夜高ミツル
ティーパックは緑茶しかないようだったので、それを開ける。
夜高ミツル
カップにセット。
真城朔
外は曇り空。
真城朔
雨が降るか降らないかといったところか。
夜高ミツル
降らない方が移動が楽ではあるが……
夜高ミツル
今日はそこまで長距離を運転するわけではないので、まあ大丈夫だろう。
夜高ミツル
降ったらその時はその時。
真城朔
旅暮らしなどそんなもの。
夜高ミツル
とはいえ仲間たちとは予定を取り付けてあるので、そこに遅れるわけにはいかないが……。
夜高ミツル
その日にさえ間に合えばいいということでもある。
真城朔
臨機応変に……
夜高ミツル
少しぼんやりしているとすぐにお湯が沸く。
夜高ミツル
マグカップに順番にお湯を注ぎ……
夜高ミツル
こぽぽ……
真城朔
ぼやや……
真城朔
透明なお湯が注がれるのを見ている。
夜高ミツル
注ぎ終わって、ケトルを台座に戻す。
夜高ミツル
まだ色の薄い緑茶を持って真城の隣へ。
真城朔
両手を差し出す。
夜高ミツル
マグカップの縁を持って差し出す。
真城朔
受け取りました。
真城朔
両手でマグカップを持って、軽くふうふうとしている。
夜高ミツル
ミツルも息を吹きかけてお茶を冷ます。
夜高ミツル
沸き立つ湯気がほこほこと温かい。
真城朔
秋の朝にはありがたい温かさ。
真城朔
時間をかけて熱を冷まして、慎重に口をつける。
真城朔
ずず……
真城朔
ほう、と息をついた。
夜高ミツル
温かいお茶を啜る。
真城朔
二人で並んで座りながら。
真城朔
お茶の熱と互いの熱で暖を取っている。
真城朔
布団の中の温もりを抜け出して、今日一日の活動へ。
夜高ミツル
ちら、と窓の外に視線を移す。
夜高ミツル
「……雨」
夜高ミツル
「降らないといいけどな」
真城朔
「うん……」
真城朔
ぼんやりと頷いている。
真城朔
ずず……
真城朔
「早めに」
真城朔
「出る?」
真城朔
「降らないうちに……」
真城朔
言っていて、結構今更であることに気付きつつある。
真城朔
目が覚めてきているので……
夜高ミツル
結構のんびりした。
真城朔
させてしまった。
夜高ミツル
「まあ、とりあえずシャワーはしないとだし……」
真城朔
「……ん」
真城朔
こく……
夜高ミツル
「降ったらまあその時はその時で……」
夜高ミツル
レインコートは常備してるので、よっぽど土砂降りじゃなければまあ……
真城朔
「その時で……」
真城朔
「どうにか……」
真城朔
ずずず……
真城朔
ほう……
夜高ミツル
一応天気予報見とくか……
夜高ミツル
腰を上げて、テーブルの上のリモコンを取って戻る。
真城朔
じ……
夜高ミツル
テレビを点けて、適当にチャンネルを回す。
真城朔
関東に戻ってくるとさすがに見慣れた番組が並ぶ。
夜高ミツル
時間的にどこかでは天気予報してるだろ……
真城朔
案の定、天気予報をやっている局があった。
真城朔
本日は曇りときどき雨、明日は晴れ。
夜高ミツル
「ときどき雨くらいなら、まあ……って感じだな」
真城朔
マグカップを両手で抱えたまま頷いている。
真城朔
普段だったら一日くらい休んでいくか……になったかもしれないが……
夜高ミツル
もう八崎までそこそこ近いし……
真城朔
あまりぐだぐだしているよりは、という感じ。
夜高ミツル
「とりあえずさっさと向こう行って」
夜高ミツル
「雨がひどそうだったらホテル入って明日から動く感じかな……」
夜高ミツル
「降ってなければ予定通り、今日見に行こう」
真城朔
「……ん」
真城朔
「そうしよ……」
真城朔
頷いているうちに、お茶を飲み終わる。
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「ごちそう」
真城朔
「さま」
真城朔
でした、とマグカップをテーブルに置き……
夜高ミツル
同じくテーブルに置く。
真城朔
「…………」
真城朔
「シャワー……」
真城朔
ミツルを窺う。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「真城からどうぞ」
真城朔
「……ん」
真城朔
小さく頷き……
真城朔
のそのそとベッドから降りる。
真城朔
ぺたぺた
真城朔
ユニットバスの方へ向かって、扉に手をかけて
真城朔
ミツルを振り返る。
真城朔
「じゃあ」
真城朔
「お先に……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
こくん……
夜高ミツル
軽く手を振る。
真城朔
胸元で小さく手を振り返して、
真城朔
扉を閉める。
真城朔
ちょっとしてシャワーの音。
夜高ミツル
あ、着替え……
夜高ミツル
真城の分も出しておこう。
夜高ミツル
自分と真城の着替えを出して、ベッドの上に置いておく。
真城朔
しゃばしゃば……
夜高ミツル
荷物が多くないので、シャワーしてる間に片付けておくとかすることがあんまりない。
夜高ミツル
スマホを取って、この後の道程を再確認したりする。
真城朔
そういうことをしているうちに……
真城朔
シャワーの音が止まり……
真城朔
少しして、
夜高ミツル
スマホを置く。
真城朔
ほかほかの真城が顔を出す。
真城朔
バスタオルを被っている。
夜高ミツル
「着替え」
夜高ミツル
「出しといた」
真城朔
「あ」
真城朔
「ありがと……」
真城朔
こくこく……
真城朔
頷きながらぺたぺた出てくる。
真城朔
交代。
真城朔
バスタオルで髪を拭きながらベッドの方へと。
夜高ミツル
入れ替わりに浴室へ。
夜高ミツル
「じゃあ俺もしてくる」
真城朔
「うん……」
真城朔
こく……
真城朔
わしわししながらミツルを見送る。
真城朔
じ……
夜高ミツル
見送られながら、浴室に入って戸を閉める。
夜高ミツル
使われたばかりの浴室は、まだ湯気がこもって温かい。
夜高ミツル
バスローブを脱いで、ささっとシャワーを浴びる。
夜高ミツル
しゃー……
夜高ミツル
頭を洗い身体を洗い……
夜高ミツル
一人なのではやい。
夜高ミツル
きゅっ、と栓を捻ってお湯を止める。
夜高ミツル
バスタオルを取って、わしゃわしゃと頭を拭く。
夜高ミツル
さっぱり……
夜高ミツル
大体水気が取れたところで、頭にバスタオルをかけて浴室を出る。
夜高ミツル
「上がったー」
真城朔
「ん」
真城朔
出迎える。
夜高ミツル
ぺたぺたとベッドの方へ。
真城朔
着替えは済んでいて、髪はまだ湿ってるけど、
真城朔
ベッドはなんとなくきれいに整えられている。
真城朔
荷物もだいたいまとまってるし……
真城朔
ミツがしてくれたから……
夜高ミツル
「ベッドきれいになってる」
夜高ミツル
言いながら、出しておいた着替えを取る。
夜高ミツル
履き履き……
真城朔
「すること」
真城朔
「ミツが、してくれた」
真城朔
「から……」
真城朔
別にこんなことしてもどうせホテルの人がきれいにし尽くすから意味ないんだけど……
夜高ミツル
気持ち的に……
真城朔
お世話になりました的に……
夜高ミツル
きれいに使って出ていったほうがいいよねという感覚がある。お互いに。
真城朔
ある……
夜高ミツル
もぞもぞと服を着込んで、改めて髪をタオルでわしゃわしゃと。
真城朔
じ……
真城朔
ベッドに腰掛けてミツルを見ています。
夜高ミツル
大体拭けた感じがするので手を止めて、タオルを下ろす。
夜高ミツル
ちら……と時計を見て
夜高ミツル
「ドライヤーかけよっか」
真城朔
「……ん」
真城朔
こく……
真城朔
頷く仕草は控えめだが、明らかにミツルが言い出すのを待っていた。
夜高ミツル
ドライヤーをかけるのも、すっかりいつもに組み込まれている。
真城朔
してもらえるものになってしまっている……
夜高ミツル
一度浴室に戻って、ドライヤーを取って戻ってくる。
真城朔
椅子に腰掛けている。
夜高ミツル
コンセントを刺して、腰掛けた真城の後ろに立つ。
夜高ミツル
スイッチを入れる。
夜高ミツル
ぶおー……と風の音。
真城朔
ちょこんと座ってしてもらうのを待っている……。
夜高ミツル
しっとりと濡れた髪に温風を当てる。
真城朔
湿ってぺたんになった黒い髪。
真城朔
ミツルと対照的にあまり量はない。
夜高ミツル
黒髪に指で隙間を作りながら、温風を通していく。
夜高ミツル
ドライヤーの音が静かな部屋に響く。
真城朔
真城の髪は乾くのも早い。
真城朔
乾いて温まった髪のさらさらとした感触がミツルの指に伝わる。
夜高ミツル
全体がそうなっているのを確かめて、スイッチを切る。
真城朔
今回は真城もけっこうがんばってタオルドライをしていたし……
夜高ミツル
すぐ乾いた。
真城朔
スイッチが切られたので、振り返る。
夜高ミツル
風に乱れた髪を、するすると指先で整える。
真城朔
整えられ……
真城朔
心地良さそうに目を伏せた。
夜高ミツル
サラサラ……
夜高ミツル
その感触を楽しむ方に寄っていたことに気づいて、はたと手を止める。
真城朔
止められた。
真城朔
瞼を上げてミツルを見上げる。
夜高ミツル
「できた」
夜高ミツル
髪を乱さないように、頭を撫でる。
真城朔
「……ん」
真城朔
「ありがと」
真城朔
撫でられながら、小さく微笑む。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「そろそろ出ようか?」
真城朔
「うん」
真城朔
「どこかで食べて」
真城朔
「それで」
真城朔
「…………」
夜高ミツル
「……うん」
夜高ミツル
撫でる。
夜高ミツル
「とりあえず出て、飯食お」
真城朔
「……ん」
真城朔
頷いて、椅子を立つ。
真城朔
よいしょよいしょとリュックを背負い、一応忘れ物がないか再確認して……
夜高ミツル
見渡し……
夜高ミツル
元々荷物多くないから大丈夫とは思うけど……
夜高ミツル
念の為……
真城朔
ねんのため……
真城朔
充電器とか忘れやすい。
真城朔
大丈夫。
夜高ミツル
よし。
夜高ミツル
リュックを背負って、靴を履く。
真城朔
身支度OK。
真城朔
連れ立ってホテルをチェックアウトして、近場のファーストフードで朝食を摂る。
真城朔
食べ終わって店を出たら、外は変わらず曇り空。
夜高ミツル
すぐに降り出しはしなさそうだけど……という感じ。
真城朔
空を見上げてうーん……になっている。
夜高ミツル
「一応レインコート出しとくか」
真城朔
「うん」
真城朔
「すぐ着れる感じで……」
真城朔
くうに手を差し出したりしてる。
真城朔
振ってはいない……
夜高ミツル
「そうしよう」
真城朔
「俺」
真城朔
「持っとく」
真城朔
荷物からレインコートを探して引っ張り出しつつ……
夜高ミツル
「ありがと」
夜高ミツル
「頼む」
真城朔
こくこく……
真城朔
すぐ出しやすい場所に入れ直してます。
夜高ミツル
ミツルも自分の荷物からレインコートを取り出して、真城に渡す。
真城朔
受け取って同じ場所へと。
真城朔
これでよし。
夜高ミツル
ミツルのリュックはバイクの収納へ。
夜高ミツル
入れ替わりにヘルメットとグローブを取り出す。
真城朔
リュックを背負い直している。
夜高ミツル
背負い直すのを待って、ヘルメットを差し出す。
真城朔
差し出されたヘルメットを受け取る。
真城朔
よいしょと被り……
真城朔
ちゃんと顎で留めます。
夜高ミツル
自分もヘルメットを被って、きゅっとグローブをはめ……
夜高ミツル
準備ができたらバイクに跨る。
真城朔
遅れてミツルの後ろへと。
真城朔
跨って、腕をミツルの腹へと回す。
真城朔
握りしめた。
真城朔
真城の両手が、ミツルの腹部で組み合わされている。
真城朔
背中側から抱きつくような格好。
夜高ミツル
背中に真城の体温を感じる。
夜高ミツル
腕がしっかりと回されているのを確かめて、
夜高ミツル
「出るぞ」
夜高ミツル
声をかける。
真城朔
「……うん」
真城朔
「行こ」
真城朔
頷き返して、
真城朔
しがみつく腕に力を込めた。
夜高ミツル
それを感じながら、
夜高ミツル
ゆっくりとバイクを発進させた。