お茶会 ラウンド1

GM
それでは、お茶会に入りましょう。
GM
クエストを開示します。
クエストNo.1 ラタスに追いつく
概要 :ラタスに追いつく
目標値 :8
消滅条件 :成功するか、お茶会終了と同時に消滅
成功 :クエストNo. 2を開示する / ラタスの心の疵に触れられるようになる
失敗 :3日経過する。その上で、HPを3減らすことで成功したことにしてもよい。
GM
1日目。
GM
お茶会ですが、行動順は任意です。
GM
任意ですが、ここはダイスで決めたい、と思ったら提案してください。
GM
お茶会MOD『PK追加行動』により、横槍はされません。
GM
代わりにPKは2回行動し、合計5回行動します。
GM
お茶会MOD『情報秘匿』により、PKの情報は開示されません。

行動 こよみ

1日目

GM
南方。
GM
それは4人がこれまで来た道だ。
GM
南に向かうならば、これまで来た道を辿る旅になるだろう。
GM
どんな道程かもおおよそ知っているし、否応にも、あなたがたのこれまでを思い出すことになるだろう。
こよみ
がたごとと。
こよみ
南に向かう隊商の馬車に相乗りさせてもらって、
こよみ
救世主、女三人、揺られている。
こよみ
こよみはなんとか泣き止んだものの、馬車の隅で蹲るようにしている。
こよみ
泣いて喚いて大騒ぎして、がなんとか馬車に乗ることで落ち着いた。
こよみ
落ち着いたものの時折涙を滲ませてはだぶだぶの袖でそれを拭っている。
ユキ
その隣にちんまりとユキが並ぶ。
GM
隊商を成す末裔は、あなたがた救世主に話しかけない。
GM
ただ黙々と進んでいく。
リリオ
普段なら泣いている仲間を気にかけるところだが、黙って手紙を読み直している。
リリオ
手紙には、初めに読んだ時以上の情報はない。
GM
護衛としてありがたがられる一方で、救世主に裏切られれば抗うすべもない。
GM
あなたがたに対してよそよそしい視線が向けられているのは確かだった。
こよみ
別にそんなのはずっとへっちゃらで、
こよみ
だって、4人でいたから。
ユキ
でも今は……
GM
それに、こういうときに場の空気をなごませるのは、ラタスとリリオの役目だった。
GM
冗談の一つや二つを言って、敵ではないと示して打ち解ける。
リリオ
今はそこまで気が回らない。そもそも、いつもラタスの軽口に乗っかっているだけで、自分は大したことをしていない。
リリオ
ラタスは人好きのする男だった。
リリオ
本人は自分のことを適当だと評していたが、そんなことはない。
よく気が利いて、よく周囲を見ている男だ、と思っている。
リリオ
自分は他人に踏み込む最初の一歩が踏み出せない。ラタスはそれをよく知っていたように、思っている。
ユキ
自分たち4人はラタスを中心として回っていたのだ。
ユキ
いなくなると、それがよく分かる。
こよみ
その中で一番の無力で、役立たずなのがこよみだ。
こよみ
だってもともとこよみ抜きでも回っていた。
こよみ
この中で一番最後に仲間に入れてもらったのがこよみで、
こよみ
一番のお荷物で、泣き虫で、頭が悪くて、手間がかかって、
こよみ
裁判でだって、壁になることと癒やすことが辛うじてできるけど、
こよみ
相手を打ち倒す力なんてほとんどない。
こよみ
仲間を舐める口を精一杯に開いて噛みついたところで、
こよみ
そんなの決定打には全然ならない。
こよみ
小さいのに力持ちのユキちゃんみたいに、
こよみ
とっても頭がいいラタスやリリオちゃんみたいに、
こよみ
かっこよく動くことなんて、こよみにはできない。
こよみ
できなくてもみんなは一緒にいてくれた。
こよみ
受け入れてくれて、優しかったから、こよみはなんとか頑張ってきた。
こよみ
小さな失敗を繰り返しても許してもらいながら、
こよみ
なんとか、どうしようもない、ほんとうに取り返しのつかない失敗だけは、どうにか避けてきた。
こよみ
避けてきた、つもりだったのに。
こよみ
「…………」
こよみ
「ユキちゃん…………」
ユキ
「……何?」
こよみ
泣いて泣いて泣くだけないた末の掠れた声。
こよみ
「こよみ、……」
ユキ
体育座りに膝を抱えて、隣のこよみを見上げる。
こよみ
ユキと同じに膝を折って座り込んでいるが、膝を抱える手は口元に添えられている。
ユキ
頭一つ分以上の身長差は別に座っても埋まったりしない。
こよみ
あいも変わらずでこぼこで、でもこうして並んでいるのはなんだか落ち着いた。
こよみ
それでも今は埋められないほどに心細い。
こよみ
欠け落ちたものがある。
こよみ
「こよみ、こよみね」
こよみ
「こよみ、まちがっちゃった……?」
ユキ
「……まぁた」
ユキ
「そういうことばっかり言う」
こよみ
「だってえ……」
こよみ
じわ、と涙をにじませる。
こよみ
「ラタス、行っちゃった」
こよみ
「行っちゃった」
ユキ
「……うん」
こよみ
「こよみ、置いてっちゃった……」
こよみ
「いっしょに」
こよみ
「いたくて、うれしいって、うれしい、うれしいってね」
こよみ
「きのう、言って、言ったよね?」
ユキ
「……そうね」
ユキ
「言った」
こよみ
「ラタスもリリオちゃんもユキちゃんも言ってて」
ユキ
「言ったのに……」
こよみ
「こよみだけじゃなくて……」
こよみ
「でも」
ユキ
「……ラタスのばか」
こよみ
「ラタス、ラタスいなくなっちゃったから」
こよみ
「ラタス……」
こよみ
「こよみ、まちがって、昨日のあのあと、なんか」
こよみ
「それで」
こよみ
「ラタス、こよみを嫌に」
こよみ
「嫌になっちゃったんじゃないかなって、こよみは」
ユキ
「……別に」
こよみ
「…………」
ユキ
「いつもどおりだったでしょ」
ユキ
「あたしたちも、ラタスも」
ユキ
「いつもとおんなじだった」
ユキ
「……そう、よね?」
こよみ
涙をこらえている。
こよみ
「ラタスは」
ユキ
ユキの瞳も不安に揺れている。
こよみ
「ラタス、やさしいラタスの」
こよみ
「やさしいラタスのままだった……」
ユキ
「……意地悪ラタスだったけど」
こよみ
涙に潤んだ瞳で、こよみもユキを見る。
ユキ
「まあいつもどおり、よね」
こよみ
頷く。
こよみ
「……ラタスが」
こよみ
「ラタス、ラタスがいなくなったの」
こよみ
「リリオちゃんも」
こよみ
「こよみもユキちゃんも」
こよみ
「間違えて、ない、よね?」
ユキ
「……うん」
こよみ
「それで」
ユキ
「そう、だよ」
こよみ
「それで、ラタスが、こよみたち」
ユキ
「何にも間違ったことなんか……」
ユキ
「なかった」
こよみ
「なんにも……」
こよみ
「なんにも失敗なんて、してない」
こよみ
「よね……?」
ユキ
「依頼を受けて、悪い救世主と裁判して」
ユキ
「勝って」
ユキ
「みんなで、ご飯食べて」
こよみ
頷いている。
ユキ
「こよみも、リリオも」
ユキ
「……あたしも」
ユキ
「何にも……」
こよみ
「うん」
こよみ
「なんにも失敗、してないよね……」
こよみ
ユキの心の疵『小さな失敗』を舐めます。
こよみ
愛で判定します。ティーセットを使用。
GM
はい。横槍はありません。
こよみ
ありがとうございます……
GM
7以上で成功。8以上でクエストも成功します。
こよみ
2D6+3+2>=7 愛で判定 ティーセットで+2 (2D6+3+2>=7) > 4[2,2]+3+2 > 9 > 成功
[ こよみ ] ティーセット : 2 → 1
[ ユキ ] 小さな失敗 : 0 → 1
ユキ
昨日のことを思い返す。
ユキ
お茶会。裁判。
ユキ
そこでの立ち回りも、その後の会話も。
ユキ
思い当たるような失敗は見つからない。
ユキ
……パンチしたのだって、別にいつもどおり、だし。
ユキ
それが嫌だったのかもしんないけど、
ユキ
でも、そうだったら直接言うでしょ。
ユキ
こんな消え方きっとしない。
ユキ
「……間違ってないよ」
ユキ
「あたしたち、なんにも」
こよみ
「うん……」
こよみ
「うん、うん」
こよみ
「まちがって、ない」
ユキ
「だから」
ユキ
「追っかけて、見つけて」
ユキ
「どういうつもりか、問い詰めてやんなきゃ!」
こよみ
「うん……!」
リリオ
ラタスの手紙を読み返す。
リリオ
『バカやろうどもへ。
今まで楽しかった。用事ができたからこれでさよならだ。
精々元気でやってくれ。それじゃ ―― ラタス』
リリオ
これを書いた時のラタスは、おそらく焦っていた。少ない時間で手紙をしたため、インクが乾くのも待たずに飛び出した。
リリオ
この手紙を信じるのなら、書いてあることが全てだろう。
リリオ
何か用事ができた。それも急用だ。
そして、自分たち3人には話せない用事。
リリオ
それでも、今まで楽しかった、と伝えようとしてくれた。
リリオ
元気でやってくれと。
リリオ
話せないような急用があるなら、放っておけばいいのに。
リリオ
ラタスには、自分たち3人に対する情があった、と思う。だからわざわざ、こんな手紙を残した。
リリオ
そして、追いかけるなとは書かなかった。
探すのは分かっていただろうに。
リリオ
焦っていてそこまで気が回らなかったのか、それとも、追いかけてもよかったのか。
リリオ
分からない。
分からないから、今こうして来た道を戻っている。
GM
隊商は荒野を進む。
GM
不意に、馬車が大きく反れて動く。
リリオ
「うわっ、と」
GM
何かに出くわして、警戒している様子。
こよみ
「みゃっ」
ユキ
「な、何!?」
リリオ
「亡者かもしれない。見に行こう」
GM
「救世主だ」
ユキ
「……!」
こよみ
「!」
リリオ
「!」
ユキ
「ラタス!?」
こよみ
ぴょんと立ち上がります。
リリオ
馬車から飛び出す。
ユキ
同じく飛び出す。
こよみ
「あうっ」
GM
「もしもがあるかもしれない、って、おい!」
こよみ
頭をぶつけてから遅れて出ていく。
GM
「何もケンカを売れって……!」末裔はあなたがたを呼び止めようとします、が。
リリオ
「大丈夫!穏便に済ませられるようにはするよ~!」
ユキ
静止を振り切る。
こよみ
当然聞いていません。
ユキ
「ラタス!」
リリオ
手を振りつつ、駆けてゆく。
GM
荒野。
こよみ
袖を振りながらどたばた走る。
GM
黒い姿が歩いている。
こよみ
「ら」
こよみ
「ラタス!」
GM
背は高く、
GM
大股気味の歩調。
ラタス
「よう」
ユキ
「──ラタス!!」
リリオ
「ラタス……」
こよみ
「ら」
こよみ
「ラタス」
こよみ
「ラタス、ラタス」
こよみ
「ラタスだあ……!」
ユキ
「ば、」
ユキ
「ばかばかばか」
ユキ
「ばかラタス!」
こよみ
「ラタスだ~~~~~」
ユキ
「よう、じゃないわよ!」
リリオ
ユキとこゆみがラタスに駆け寄るのを、少し離れて見ている。
ユキ
「き、急に」
ユキ
「あたしたちのこと」
ユキ
「置いて、って」
リリオ
「つれないじゃないか、ラタス。一人で行ってしまうなんて」
こよみ
「ラタス」
こよみ
「ラタス、こよみたち」
ユキ
「……っ、」
こよみ
「こよみたち、まちがってないよね?」
ラタス
「ははは、悪いな」
こよみ
「ちがうよね? ちがうんだよね?」
こよみ
「ラタス」
こよみ
「ラタスは……」
ラタス
「いや」
こよみ
「え」
ラタス
「間違いといえば、そうだな」
ユキ
「……え?」
こよみ
「え、えっえ」
こよみ
「ら」
ラタス
マスクを装着する。
こよみ
「ラタ、ス?」
ラタス
「ついてくるべきじゃあ、なかったな」
リリオ
「…………」
ユキ
「な、に」
ユキ
「どういう、意味よ」
こよみ
「ラタス」
こよみ
「ラタス?」
ユキ
「……ねぇ!」
ユキ
「なんなの!?」
ユキ
「用事って何!?」

行動 ラタス1

リリオ
ラタスが装着したマスクを見ている。
ユキ
「なんであたしたちを置いてったの!」
こよみ
袖で口元を覆ったまま立ち竦んでいる。
ラタス
「おれは急いでるんだ。お前らに構っている暇はない」
ラタス
「質問に答えるつもりもない」
こよみ
「な」
こよみ
「なんで、なんで、なんで、なんで?」
ユキ
「……っ、」
こよみ
「なんで、ラタス、なんで?」
こよみ
「いっしょは」
ユキ
「説明くらいちゃんと、」
ユキ
「しなさいよ!」
こよみ
「いっしょはだめなの、ラタス、ラタスはいっしょ、いやになった?」
こよみ
「せつめい」
こよみ
「そう、説明が、せつめいを、こよみたち、だって」
ラタス
「わからないか」
こよみ
「う」
ラタス
「わからないなら、わからせてやるよ」
ユキ
「分かんない!」
こよみ
「え?」
ラタス
黒い煙。
リリオ
「……説明したくないんだろうなってのは、分かるよ」
ユキ
ラタスに詰め寄ろうとした瞬間、
ラタス
ラタスが常套手段とする煙幕。
リリオ
立ち上る黒い煙。
ユキ
「……っ!」
こよみ
煙に包まれるのも構わずに立ち尽くしている。
ラタス
黒いコート、黒い得物。輪郭は煙に紛れて曖昧になる。
リリオ
「それと、本気だってことも」
ユキ
煙幕に撒かれる。
こよみ
「ら」
こよみ
「ラタス……」
ユキ
何?
ユキ
なんで? なんで? なんで?
ラタス
「わかっているなら」
ユキ
これ、こんなの、
リリオ
「ユキ、こよみ、警戒しろ」
ユキ
まるで
ユキ
あたしたちが
ユキ
ラタスの敵みたいじゃん。
こよみ
「え、えっ」
こよみ
「え」
ラタス
「あれで忘れてくれればよかったろ」
こよみ
「けい」
こよみ
「警戒?」
こよみ
リリオを振り返る。
ユキ
「う」
こよみ
ラタスに背を向ける。
ユキ
「うう……」
リリオ
「忘れて欲しいなら、忘れてくれって書いてくれなきゃ」
こよみ
「警戒って、リリオちゃん」
こよみ
「なにを……」
こよみ
なにも。
リリオ
「そうだなぁ」
こよみ
ここには敵なんていないのに。
こよみ
こよみの大好きな相手しかいないのに。
ユキ
「……っ、分かんないよ!」
リリオ
「今のラタスはちょ~っと頭がぼんやりしている。だから攻撃してくるかもしれない」
ユキ
「なんにも、分かんない!」
こよみ
「ら」
リリオ
「でもラタスは強いから、本気で警戒しないと殺されちゃうかもしれない」
ユキ
涙が滲むのは煙のせいか、それ以外か。
こよみ
「ラタスが、攻撃?」
こよみ
「こよみたちを?」
ラタス
黒い煙の中、気配が動く。
リリオ
「大丈夫、今だけだよ」
こよみ
「でも、でも、ラタス、好きって」
こよみ
「みんなのこと……」
こよみ
「今」
ユキ
「やだ、」
ラタス
*こよみの大きな失敗を抉ります。
ユキ
「やだやだ」
こよみ
「今、だけ?」
こよみ
「なんで?」
リリオ
「今だけ、僕を信じて」
こよみ
「なんでそんなことが言えるの?」
ラタス
*才覚で判定。横槍はありますか?
こよみ
「なん、で」
こよみ
「なん……」
ユキ
*横槍を入れます
リリオ
「本当にラタスが僕たちのことを好きなら、うっかり殺したら後悔するじゃないか」
[ ユキ ] HP : 20 → 19
ユキ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
ユキ
2d6+3>=7 猟奇 (2D6+3>=7) > 4[2,2]+3 > 7 > 成功
ユキ
1d6 効果量 (1D6) > 4
ラタス
2d6+3-4>=7 (2D6+3-4>=7) > 4[3,1]+3-4 > 3 > 失敗
こよみ
「う、うん」
こよみ
「する、するけど、ラタス」
こよみ
「ラタス、こよみたちのこと、好きだけど」
ラタス
こよみの背後をとり、黒い得物を振るう。
こよみ
「でも、でもっ」
ユキ
「……っ!!」
リリオ
結構苦しい言い逃れをしているな、とは思う。
こよみ
こよみは未だ立ち尽くし。
ユキ
「……こよみ!」
こよみ
ラタスに背を向けたまま。
こよみ
「!」
リリオ
「!」
ユキ
金属のぶつかる音。
こよみ
振り返る。
ユキ
ユキの手には、いつもの得物が握られていて、
こよみ
こよみの目の前で、その得物が火花を散らす。
ユキ
それがラタスのナイフを弾いた。
GM
打ち払われ、宙に舞うナイフ。
リリオ
ラタスのナイフは、迷いを見せなかった。
ユキ
「……ほんっとに、」
ユキ
「いつも、どおり」
こよみ
金属と金属がぶつかりあった時に生じる鮮烈な輝きが目を灼いて、
ユキ
「だから……」
ユキ
「バレバレ、なのよ」
ラタス
黒い煙が風に棚引く。
リリオ
「……ナイス、ユキ」
ラタス
「……」
こよみ
けれど、それは届かない。
こよみ
「ら」
こよみ
「ラタス……」
こよみ
ユキちゃんが守ってくれたから。
こよみ
ユキちゃんが、ユキちゃんは、
こよみ
ラタスはわからないけれど、
ユキ
いつもと同じ。
ユキ
敵を殺す手段で、
こよみ
ユキちゃんはこうしていつも通り。
ユキ
それがこよみを襲った。
ユキ
「……ばか!!」
こよみ
こよみを守って、立ってくれている。
ユキ
「ばかばかばか」
ユキ
「意味分かんない、こんなの」
こよみ
「ゆ」
こよみ
「ユキちゃん……」
こよみ
「ユキちゃん、ユキちゃん」
こよみ
「リリオちゃん」
こよみ
「ラタス……」
ユキ
涙を滲ませながら、こよみを庇うように立っている。
ユキ
手には巨大なハサミ。
ユキ
敵と戦う武器を持って。
リリオ
ユキに並んで、こよみを守るように立つ。
ユキ
「……もう、いい」
こよみ
小さな小さなユキが自分の前に立つのを見下ろして、
ユキ
「あったまきた」
こよみ
その前にリリオも立ち塞がって、
ラタス
「……かなわないな、お前には」
こよみ
ラタスが、遠くなる。
ユキ
「ぶん殴って、おとなしくさせてやるわ!」
ラタス
ナイフを手放し、両手を挙げてみせる。
ユキ
「…………」
ラタス
「お前のそれに頭をかち割られるわけにはいかないからな」
ユキ
涙の滲む瞳で、ラタスを見ている。
リリオ
「啖呵を切った割に素直じゃないか」
こよみ
「ラタス」
こよみ
「ラタス、行かない? だいじょうぶ?」
こよみ
「こよみ、こよみなおすよ」
ラタス
「……お前らがおれを本気で引き留めたら、どうとでもできる」
こよみ
「悪いとこ直して、いやなとこ減らして、がんばって」
こよみ
「がんばって……」
こよみ
「…………」
ユキ
「そうよ、こっちは三人」
ユキ
「あんたは一人」
ユキ
「諦めて、全部話しなさいよ……」
リリオ
「僕からも、素直に話すことをおすすめするよ」
こよみ
「う、うん、うんっうん」
ラタス
「手紙に書いた通り、急いでるんだ」
こよみ
「う……」
ラタス
「とりあえず、歩くぞ」
ユキ
「……うん」
GM
隊商には置いてかれている。
GM
すでに荒野の遠くだ。
リリオ
「あ~あ、徒歩か~」
ユキ
構えたままだったハサミを下ろす。
こよみ
「あっ……」
リリオ
「まぁ、聞かせてくれるならなんでも」
こよみ
「……うん」
こよみ
「ラタス」
こよみ
「ラタス、いっしょなら……」
ユキ
それからやっと隊商に置いていかれたことに気づいて、
リリオ
南の方向に歩き出す。
こよみ
「いっしょで、お話して、聞いて、それで」
こよみ
「できるならこよみ、こよみ、歩くよ」
こよみ
「いっぱい歩く、歩けるからね」
ユキ
でもまあ、いつもの四人が揃って……
こよみ
「こよみ歩けるから……」
ユキ
「……ん」
こよみ
「ね」
ユキ
「あたしも」
こよみ
「歩けるよね」
リリオ
3人から離れすぎないように、でも心持ち速歩きで。
ユキ
「がんばってはやく歩く……」
ラタス
マスクを外し、
ラタス
「それは助かるな」
こよみ
こよみの1歩、ユキ2歩ぶん。
ユキ
置いていかれないためには必然的に小走りになる。
ユキ
ててて……
こよみ
どたどた
リリオ
「ユキ、疲れたらおんぶするからね」
ユキ
「大丈夫だもん!」
リリオ
「そうか、ユキはがんばり屋さんだなぁ」
こよみ
「…………」
リリオ
「ま、でも無理しすぎないように」
GM
というわけで、シームレスにラタスのシーンに入ってしまいましたが、諸々を開示します。
こよみ
はい……
GM
まずはクエスト。
クエストNo.2 ラタスの思惑
概要 :ラタスが去った理由を聞き出す
目標値 :7
消滅条件 :成功するか、お茶会終了と同時に消滅
成功 :クエストNo. 3,4,5,6を開示する
失敗 :ラタスの行動を追加
ユキ
うう
リリオ
はーい
GM
またラタスの心の疵。
青い窓の見える庭:ラタスの過去、憧憬。忘れられない場所、残してきたもの
汚れた手:ラタスの現在、傷心。重ねてきた犠牲、変わらないもの
GM
以上です。
GM
ラタスの心の疵に触れる場合、こちらの開示が重要になるので、触れ方がわからなくても大丈夫のようにしますので大丈夫です。
リリオ
南に向かい歩みを進める。
ユキの歩幅を考慮しつつも、できるだけ急いで。
リリオ
何を急いでいるのかは分からないけど。

行動 リリオ

リリオ
* ラタスの心の疵『青い窓の見える庭』を抉ります
GM
はい。
GM
シーンはどうしましょう。
道中シーン表1D12
1 ここはあなたが初めて仲間と出会った場所だ。あの日は確か――。
2 明け方。朝霧の中で目を覚ます。先に起きて、火をつついてる人がいる。
3 揺れる荷台。通りがかりの隊商に護衛として乗せてもらう。揺れる荷台で風を受ける。
4 突然の雨。近くにあった洞穴で雨宿り。あの亡者を倒したときも、そういえば――。
5 村。あなたがたが亡者を倒し救った村は、救世主の帰還を喜びで受け入れる。
6 今日は見通しがいい。真っ直ぐ伸びる道がどこまでも続いている。
7 がらんどうの館。そこに住まう救世主を以前倒した。末裔達はどこにいったのだろう。
8 口笛。仲間がなんとなしに吹いたそれが、今をあの日と結びつける。
9 街。以前と変わらぬ賑わいを見せている。
10 三叉路。今来た道。以前に来た道。あのときは選ばなかった道がある。
11 闇夜。たき火がパチパチと燃え爆る音。語り合うのにうってつけの夜。
12 ここは仲間が死んだ場所だ。急ごしらえの墓だったが、まだちゃんと残っている。
リリオ
荒野で!
リリオ
* ティーセットを使用します
リリオ
横槍ないですか?
GM
ないです。
リリオ
ないのか~~~~~~~~~~
リリオ
2D6+3+2 (2D6+3+2) > 2[1,1]+3+2 > 7
GM
*ファンブル! PCがお茶会中の判定でファンブルを起こした場合、所持している小道具を1つランダムに失います。
GM
日刻みの時計しかないですね。失いました。
リリオ
はい…………
[ リリオ ] 日刻みの時計 : 1 → 0
[ リリオ ] ティーセット : 1 → 0
GM
またラタスは行動回数が増えます。
リリオ
え~~~~ん
リリオ
荒野を歩きながら、こよみやユキの泣き言を聞いたりして、適当なところでラタスに話を振る。
リリオ
「それで、そんなに急いでどこに行く訳?
そろそろ話してくれてもいいんじゃない?」
ラタス
「そうだな」
こよみ
「…………」
ラタス
「おれはこの『狂飆きょうひょうの頂』ってとこにいく」
ラタス
古い地図を指の背でとんとんと叩く。
リリオ
地図を見る。
こよみ
「きょう……?」
ユキ
ユキの視点からでは見えない……。
リリオ
「で、そこに何が?」
こよみ
背中側から背伸びして地図を覗き込もうとします。
こよみ
覗き込んではみるが、見てもわからない……
ラタス
「この地図」
ラタス
「この山を中心に、ぐるっと円が書いてあるだろ」
リリオ
地図を見る。円が書いてある。
こよみ
「んーと……」
ラタス
「この範囲に、すさまじい風が吹いている」
ユキ
むむむ……
こよみ
地図は読めなくても図くらいは分かる。頷いています。
こよみ
「えっとね、地図に山があってね」
こよみ
「そこを囲う感じでね、書いてあるの」
こよみ
ユキに説明をしている。わかるはずがない。
ユキ
「……あ」
ラタス
「山を中心に尽きることの無い、台風? とかいうのがあるんだな」
ユキ
「ありがと……」
ユキ
分かんないけど……
リリオ
「それで?」
ラタス
「台風? 嵐? よくわからんが……」
ユキ
「台風……」
こよみ
「???」
リリオ
「多分行って見ればわかるやつだよ」
ラタス
「それで、その中心に、青空があるって噂でさ~」
リリオ
2人にものすごいざっくりした説明をする。
ラタス
「おれはそれを観に行く」
ユキ
「……台風の目があるってこと?」
こよみ
こくこくとリリオに頷きます。
リリオ
「青空」
ラタス
「目?」
こよみ
「たいふうのめ?」
ユキ
「えっと……」
ユキ
急に注目されてわた……になってる。
こよみ
「目が合うの?」
リリオ
ユキを見ている。
リリオ
「風に目が‥‥?」
ラタス
「こわ」
ユキ
「こう……台風ってすごく強い風がぐるぐるって吹いてて……」
こよみ
「こっちを、見てるの?」
ユキ
「でも真ん中は風がないの」
ユキ
「それを、目って言うのよ」
ユキ
そんな感じだったはず……
ラタス
「ほーん」
こよみ
「風なのに、風がない?」
リリオ
「へー」
ユキ
「あたしのいた世界だと、それを上から撮ったりできるんだけど……」
こよみ
「???」
リリオ
「上から……?」
ユキ
「真ん中だけね、穴になってて雲がないの」
ユキ
「うん」
ラタス
「お、それじゃあほんとっぽいな」
こよみ
「上……」
こよみ
空を見上げる。
ラタス
「聞けてよかった」
リリオ
「雲の上から、雲の下を」
ユキ
「……でも、台風ってできてしばらくしたら消えちゃうのよ」
ユキ
「動くし……」
ユキ
「ラタスの行きたいところのと、おんなじじゃないかも」
こよみ
「この地図のたいふうさんは、動かない、動かないのかな?」
ラタス
「動かないらしいぜ」
こよみ
「動かない特別さん?」
ラタス
「特別さんだなあ」
リリオ
「そういう地形なのかな……。それとも誰かの心の疵?」
こよみ
「特別さんに、会いに行くの?」
リリオ
「まぁ、今更変なことがあっても驚かないけど」
ユキ
「……あ、ていうか、それに!」
ユキ
「危ないわ!」
ラタス
「そうだなあ」
ユキ
「台風の時は外に出ないものよ!」
ユキ
「みんな知らないんでしょう!」
こよみ
「あぶないの?」
こよみ
しらない……
リリオ
しらない
ユキ
「危ない!」
リリオ
「風が吹いてるだけなのに?」
ユキ
「ただの風じゃないの」
ユキ
「人も飛んじゃうくらいの風が吹くのよ」
こよみ
「ぴえ……」
こよみ
「あぶない特別のたいふうさん」
ラタス
「そりゃあぶねーな」
リリオ
「人が……飛ぶ風!?」
こよみ
「あぶない特別のたいふうさんに、ラタス、一人で会いに行こうとしてたの?」
ラタス
「じゃあ、なおさら連れてくわけにはいかないだろ」
リリオ
「そんな風があったら、空も飛べるし、不浄な空気も一掃できるじゃないか……」
こよみ
「でもでもっ」
こよみ
「ひとり、ひとりはもっと……」
ユキ
「物が飛んできてぶつかったり……はここだとなさそうだけど」
ユキ
「ラタスも行っちゃだめよ!」
ラタス
「いや」
ラタス
「行く」
こよみ
「みゅう……」
ユキ
「……なんで」
リリオ
「妙に頑固だな」
ラタス
「それを変えるつもりはない」
こよみ
「こよみたち」
こよみ
「こよみたちも、いっしょに……」
こよみ
「いっしょ、いっしょにいくの、だめだった?」
こよみ
「間違いって、さっき言って、ラタス、言ってたけど……」
ラタス
「そーーーうだなぁ」
こよみ
「…………」
ユキ
じ……
リリオ
「……」
ラタス
「ほっといたほうがいいぜ、おれんこと」
リリオ
「それを見に行ったら、何か利益があるのか?
それとも、見に行きたいだけなのか?」
こよみ
「ふえ」
ユキ
「…………はぁ?」
こよみ
「なんで、なんでそんなこと、ラタス、そんなこと言うの?」
こよみ
「いっしょがいいよ、いっしょがいい、こよみいっしょがよくて」
ユキ
「……そうよ、一緒」
こよみ
「昨日だってみんな、みんな言って、みんないっしょがいいって、だから」
ユキ
「危ないけど」
ユキ
「あたしたち四人だったら、どうにか……」
ユキ
「なんとかなるかも、だし」
ラタス
リリオの返答には答えず、
ラタス
「逃げたりはしねーよ。無理だってわかったからな」
ラタス
「だが、その道中」
こよみ
「う、うん」
ラタス
「どっかで諦めてくれることを期待している」
リリオ
小さくため息を吐く。
こよみ
「あ」
こよみ
「あきらめない、よ!」
ユキ
「……なによ、それぇ」
こよみ
「あきらめない、こよみあきらめないよ、あきらめないもん」
こよみ
「あきらめないよね?」
こよみ
「ユキちゃんもリリオちゃんも……」
リリオ
「よし!ユキ、こよみ」
ユキ
「あったりまえじゃない!」
こよみ
「!」
ユキ
リリオを見る。
こよみ
見ます。
リリオ
「ラタスは勝手にするらしいから、僕達も勝手にしよう」
ユキ
「!」
ユキ
「そう、そうよ」
リリオ
「たまたまラタスと行き先が同じでも、仕方ないと思わない?」
こよみ
ぱち、と瞬き。
ユキ
「ええ!」
こよみ
「ん、うん、うん」
こよみ
「ある、あるよね、あるよ、うん」
ユキ
「あたしも、あたしたちも、そこに行く!」
こよみ
「いっしょに、いっしょにいたからね」
ラタス
「はっ」
リリオ
「見てみたいよね、すごい風」
こよみ
「見たい!」
ラタス
「……好きにしろよ」
こよみ
「おめめ、気になる!」
こよみ
「好きにする!」
ユキ
「好きにするわ」
リリオ
「好きにしろってことは、いいよってことだよね」
こよみ
「ねっ」
リリオ
「ほら、ラタスのお許しも出たぞ」
こよみ
「ゆるされた~!」
ユキ
「……ん!」
ユキ
「これでまた四人ね!」
こよみ
「みんな、みんないるよ、いる」
こよみ
「みんないる!」
リリオ
「よーし!『狂飆の頂』に行くぞ~!」
こよみ
「おー!」
ラタス
「……」
ユキ
「お~!」
ラタス
「……おう」

行動 ラタス2

GM
1d6 (1D6) > 3

4日目

GM
道中シーン表を振ります。
GM
1d12 (1D12) > 12
GM
12 ここは仲間が死んだ場所だ。急ごしらえの墓だったが、まだちゃんと残っている。
ラタス
荒野を歩き続けて3日。
ラタス
「……寄り道するか」
こよみ
「よりみち」
リリオ
「急いでるんじゃなかったのか?」
ラタス
「”あの”あたりだろ」
ユキ
「…………」
ラタス
街道を反れる。
こよみ
「あの……」
リリオ
別に同行する必要はない。
先に目的地に向かってもいい。
ラタス
オールは、5人目の仲間だ。
リリオ
しかし、目的地の目的がラタスである以上。
そういう訳にもいかない。
ラタス
ともに旅した時間は一番短い。
ラタス
一週間足らずか。
リリオ
オールのことは、あまり好きではなかった。
リリオ
だからといって、嫌いだった訳じゃない。
オール
回復の力を行使する女だった。
リリオ
そりゃあ、一時は仲間だった訳だから。
ユキ
期間は短いけど、仲間だった。
こよみ
こよみはオールとはあまり関わりがなかった。
こよみ
既にユキとリリオに世話をかけることに慣れきっていたし、
こよみ
なにより、こよみは人見知りだったから。
こよみ
一週間しか一緒にいない相手と劇的な経緯もなく仲良くなるのは難しかった。
オール
腰まで届く長髪。羽の背飾りがついたドレス。
ユキ
ユキは特に人見知りというわけでもなかったが、それでも一週間は打ち解けるには短かった。
こよみ
ただ、そう、きれいな人だなと思っていた。
ユキ
だけど死を嘆かずにいられるほど短くはない。
ユキ
仲良くはなかった。
こよみ
ラタスと並んで話す姿が、
こよみ
なんだか、
ユキ
だけど、もっと一緒にいれば仲良くなれたのかもしれない。
リリオ
オールは、姉に似ていた。
美しく、女性らしく、誰からも褒められた姉。
こよみ
とってもそれらしく見えていた。
こよみ
こういう女の人をラタスは好きになるのかな、とか。
こよみ
そういう風にも思った。
こよみ
そう、オールがいた頃はまだラタスへの想いを二人に打ち明けることもしていないで。
こよみ
二人だったら、とか、そういうことを考えて、一人で悶々としていたりもしたけれど。
こよみ
それでもやっぱり、死んだのは悲しかった。
ラタス
今向かっているのは、村、の廃墟。
ラタス
その村に住んでいる救世主だった。たまたま立ち寄ったおれたちは、村を困らせている亡者を倒すべく、オールに頼まれた。
ラタス
1人には身に余る強力な亡者で、しかし5人ならば倒せると。
ラタス
「……そうおもっていたんだがな」
こよみ
「…………」
リリオ
「…………」
ユキ
「……ん」
こよみ
こよみの癒しでは足りなかった。
こよみ
祈りは天には届かなかった。
リリオ
「強かったね、あの亡者」
ユキ
「……あたしが」
ユキ
「もっと、ちゃんと……」
こよみ
「そ、それを言うなら、こよみ」
こよみ
「こよみさえもっとちゃんと祈れて、こよみが」
リリオ
「誰が悪いなんてないさ」
こよみ
「こよみが一番……」
こよみ
「…………」
こよみ
耳が下がる。
オール
『あなたたちが来なかったら、そのまま滅びるだけの村だった』
ユキ
「…………」
オール
『あなたたちのお陰で、救われた命もあった』
リリオ
オールが死んだ時は、まるで姉が死んだような錯覚を覚えた。
オール
『だから、十分すぎるほど』
リリオ
姉と仲がいい訳ではなかったし、オールと親しくなれた訳でもなかった。
オール
『あなたたちが来てくれてよかった』
オール
『いてくれてよかった』
こよみ
オールが、
こよみ
オールはそう言ってくれたから。
こよみ
だから、こよみはそうだと自分に言い聞かせてきていた。
リリオ
でも、自分の死よりも村のことを気にするその女性は、死ぬべき人ではなかった。
ユキ
そう言ってくれたけど、
こよみ
あれは仕方がなかったのだと。
ユキ
でもやっぱり思わずにはいられない。
こよみ
あれで最善だったのだと。
ユキ
すべて上手くいっていたら。
ラタス
『オール!』
こよみ
力を尽くして力を尽くして、
ユキ
誰も死なないで、
こよみ
自分にできることは、十分に果たしていたのだと、そういう風に。
ユキ
協力して亡者なんか倒せてしまって、
ユキ
もしかしたらオールを加えて旅を再開したりして。
こよみ
でもこうしてこの場所に立つと。
こよみ
ごまかしがきかなくなってくる。
リリオ
死ぬべきではない人が死ぬことは、ある。
こよみ
ラタスがオールを呼ぶ声を覚えている。
ラタス
『……わかった』
こよみ
あの日、
ラタス
『じゃあな』
こよみ
あの時、
こよみ
ラタスはオールから、何を聞いていたのだろう。
ラタス
黒い煙幕を放つ。オールごと亡者を覆う。
ラタス
『逃げるぞ』
ラタス
ラタスは撤退を選択した。
ユキ
そんなこと、
リリオ
反対はできなかった。
ユキ
オールを置いて逃げ出すなんて。
リリオ
だって、どうにかできる相手じゃなかったから。
ユキ
それはユキの知っている正しさじゃない。
ユキ
でも、やっぱり、
ユキ
ここではラタスとリリオの方が正しいから。
こよみ
こよみにとっては頭のいいラタスの判断はいつも正しくて、
リリオ
死ぬべきではない人が死ぬとき、何をするのが正しいのだろう。
こよみ
リリオも反対しないのなら、それが間違いないのだ。
こよみ
そう思った。
ラタス
「なあ、あのとき」
こよみ
「……うん」
ラタス
「おれは正しかったか?」
こよみ
「ら」
こよみ
「らっ、ラタス」
ユキ
「……っ」
ラタス
死体は見つからなかった。
リリオ
「…………」
こよみ
「ラタスは、ラタス、ラタス、正しいよ」
こよみ
「ラタスは正しいよ……」
ラタス
あとから戻ってきて、墓を作った。
こよみ
「ラタス、ラタスが正しくなかったら」
ユキ
逃げ出して、のうのうと戻ってきて。
こよみ
「正しくないのは、みんなだよ」
こよみ
「みんな、みんなそうして、そうだから」
こよみ
「ラタスは正しいけど」
こよみ
「ラタスが正しくなかったら、正しくないのはラタスだけじゃない、じゃないよ」
こよみ
「みんなだよ……」
ユキ
墓なんか作って、しおらしく訪れて。
リリオ
ラタスに言葉を返さない。
こよみを否定も肯定もしない。
ユキ
「わかんない……」
ユキ
「わかんないよ……」
リリオ
答えを持っていない。
ラタス
*ユキの心の疵 正義感 を抉ります。
こよみ
*横槍入ります
こよみ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
こよみ
2D6+3>=7 (2D6+3>=7) > 8[3,5]+3 > 11 > 成功
こよみ
1d6 効果量 (1D6) > 2
こよみ
タイム!
こよみ
*ヤリイカを使用します
[ こよみ ] HP : 22 → 21
ラタス
2d6+3-2-2>=7 (2D6+3-2-2>=7) > 6[2,4]+3-2-2 > 5 > 失敗
こよみ
「ただしいよ……」
[ こよみ ] ヤリイカ : 1 → 0
こよみ
「正しいの、仕方ないの、どうしようもなくて」
こよみ
「がんばった、がんばってたもん、がんばって、みんなで」
こよみ
「ぼろぼろで……」
ラタス
「……そうだな」
こよみ
「だから、ただしくて」
ユキ
「…………」
こよみ
「ただしいよ」
ラタス
「……いや」
ラタス
「正しくなくていい」
ユキ
ラタスを見る。
こよみ
「…………」
ラタス
「そういうことだな」
こよみ
「……じゃあ、じゃあっ」
こよみ
「こよみ、こよみも、こよみ」
こよみ
「こよみも、そうおもう……」
ユキ
「正しくなくて……」
ユキ
「そんなの……」
ユキ
「それで、いいの……?」
リリオ
「……まぁ、他に取れる方法があったかっていうと微妙だしね~」
ラタス
「そうだなぁ」
ラタス
「まあ、あれだ」
ラタス
「この前、救世主殺したろ」
ユキ
「……?」
こよみ
「……うん」
リリオ
「……」
ラタス
「あれだって別に正しくはないからな」
こよみ
「…………」
リリオ
「正しくはないねぇ」
ユキ
「でも……」
ユキ
「でもでも、村の人たち、困ってて……」
こよみ
「たの、たのまれた、し」
こよみ
「たのまれたよ、ね?」
ユキ
「頼まれて、」
ユキ
「そう」
リリオ
「頼まれたねぇ」
ユキ
「そうよ」
こよみ
頷く。
ラタス
「頼まれたけど、正しくはねえよ」
ユキ
「……じゃあ」
ユキ
「何が」
ユキ
「どうするのが正しかったの?」
こよみ
「頼まれたこと、しない、しない方が」
こよみ
「正しかった?」
ユキ
「困ってる人を助けたのに正しくないの?」
リリオ
「正解はひとつじゃないってことさ」
こよみ
「…………?」
リリオ
「正解がない問題もある」
ラタス
「ベストと正しいってのは違うってことだ」
こよみ
「べすと……」
ユキ
「……」
ラタス
「まあ、わかるにはまだ早いか」
ユキ
「分かんない……」
ラタス
ユキの頭をくしゃりと撫でる。
ユキ
「んぎゃ」
こよみ
「あ」
ユキ
「うあ、あ」
ユキ
「せ」
ユキ
「セクハラ!!」
こよみ
「…………」
ラタス
「セク……?」
リリオ
「ははは」
リリオ
「嬉しいからもっと、だってさ」
ユキ
「はなせ~~!!」
ユキ
「言ってない!!」
こよみ
「…………いいなぁ」
ユキ
「ばか! リリオもばか!」
ラタス
髪をわしゃわしゃにする。
ユキ
「んあ~~~」
ユキ
てっぺん辺りの髪がぐちゃぐちゃになっている。
ユキ
ぐしゃ……
こよみ
いいなぁ……と思っています。
リリオ
「いっぱい褒められたねぇ」
ラタス
「よし」
ラタス
墓を整えた。
ラタス
「いくか」
ユキ
「あぅ……」
こよみ
「……ん」
リリオ
「そうだね」
こよみ
「行く、行こう、行こうね」
リリオ
ぽんぽん、とユキの背を叩く。
ラタス
「じゃあなオール」
こよみ
「…………」
ユキ
「う、」
ラタス
「……いや」
ユキ
背を叩かれ、ふるふると頭を振って。
ユキ
ちょっとは落ち着いて……。
ユキ
オールの墓を振り返る。
ラタス
訂正した言葉の先は言わず、歩き出す。
こよみ
ちらと墓標を振り返ってから、とぼとぼついていく。
ユキ
それから、歩き出したラタスを追って駆け出した。
リリオ
「ユキ」
リリオ
「できることと、できないことはあるよ」
ユキ
「……できることと、できないこと」
ユキ
「…………」
ユキ
「……ん」
リリオ
「だから、できる範囲で頑張っていこう」
ユキ
「……うん」
ユキ
小さく頷く。
ユキ
あの時、オールを助けることはできなかった。
ユキ
それでも、戦った。
ユキ
できることはした。
ユキ
多分、それは、
ユキ
戦うことすらせずに逃げ出すよりは
ユキ
少なくとも、正しいに違いない。