行動 ユキ

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ラタス
1d6 (1D6) > 6

27日目

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GM
狂飆の頂シーン表です。
狂飆の頂シーン表1D6
1 岩石の亡者だ! 風にびくともせず動き回っている。まともに戦うのは得策ではない。幸い、こちらには気付いていないようだ。このままやり過ごそう。
2 すさまじい砂嵐だ! ホワイトアウトし、立っているはずなのに前後左右どころか、上下すらもわからない。隣にいるはずの仲間にさえ声も届かない。
3 難所に突風が吹き付ける! 仲間が崖から転落する。一人で這い上がるのは難しそうだ。
4 崩落だ! 進もうとしていた先が崩れ落ち、砕けて風と散るのを見る。
5 洞穴だ。強風が落ち着くまでやり過ごそう。
6 風が凪いだ。束の間の休息をとるか、あるいは今のうちに先を急ぐか。
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GM
最後に救世主を殺してから27日目。
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GM
すさまじい風の中を進む。ただ立ち止まっているだけでも休む余地は与えられない。
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GM
強風だけではなく、滑りやすい足場に鋭利な岩、亡者。
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GM
稲妻が迸り、焼け焦げたあとを残す。
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GM
先は見えない。果たして本当に進んでいるのかも定かではない。
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GM
そんな中、洞穴を見つける。
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GM
今日はここで休んでおいたほうがよいだろう。
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ユキ
「…………や、」
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ユキ
「やっと休める…………」
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リリオ
「いや~~~」
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リリオ
「死ぬかとおもった」
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こよみ
「だ、だれか」
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リリオ
「つらい……道のりだった……」
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ユキ
洞穴に足を踏み入れて、へにゃへにゃと腰を下ろす。
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ラタス
「まじでやべーな」
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こよみ
「だれかつらいとかいたいとか、怪我とかない? ない?」
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こよみ
「傷、傷あったらね、こよみなんとかできるからね」
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ラタス
誰が行くって言ったんだ?
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ユキ
あんたよ!
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リリオ
流れるように地べたに横になる。
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こよみ
「こよみ舐められるからね、なんとかできるからね……」
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リリオ
ラタスだな~
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こよみ
ラタスだよぅ
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ユキ
「ん、ありがと……」
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ラタス
「おっじゃあ頼むわ」
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こよみ
「!」
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こよみ
「するっ」
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こよみ
ラタスへと駆け寄ります。
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こよみ
どてどた
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ラタス
肩から血を流しています。
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こよみ
「…………」
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リリオ
「結構派手にやったね」
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ユキ
「大丈夫……?」
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こよみ
そっとラタスの肩に手を添えます。
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ラタス
「死ぬかとおもったぜ」
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こよみ
添えて、目を伏せて身を乗り出し、
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リリオ
「ここで死なれちゃあ困るなぁ」
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こよみ
ぺろりと舐める。
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リリオ
「なんのために来たのやら」
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こよみ
一度、二度、三度。
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リリオ
舐めてるな~
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こよみ
舌先がラタスの傷を擽っては、
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ユキ
「……頂上まであとどれくらいなのかしら」
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こよみ
血が拭われ、その傷が癒えていく。
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ラタス
くすぐったいな~。
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こよみ
ぺろぺろ……
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リリオ
絵面がヤバいな~
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こよみ
ひとしきり舐めて傷が塞がったところでそっと顔を離します。
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ラタス
「全然わからないな、正直」
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ラタス
「ありがとな」
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こよみ
「ん」
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こよみ
「うんっ」
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ユキ
「全然かぁ……」
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こよみ
いっぱい頷いて。
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こよみ
「なが、長くて、長くても、道が長くても」
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こよみ
「傷はこよみ、こよみがなんとか、けっこうできる」
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ラタス
頭を撫でている。
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こよみ
「できるから」
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こよみ
「あぅあぅあ」
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こよみ
撫でられて耳がぴん! と立ちました。
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こよみ
「ゆっ」声が裏返る。
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こよみ
「ユキちゃん、も、リリオちゃんもっ」
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ユキ
今日が確か27日目。
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こよみ
「いたい」
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こよみ
「いたいあったら、あったら、こよみ」
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こよみ
「こよみなんとか……」
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こよみ
ぷしゅー……
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ユキ
もう残された時間はほとんどない。
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リリオ
あと3日で到着できない可能性も、なくはない。
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こよみ
へにゃへにゃになってしゃがみ込みました。
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ラタス
あるいはこうした休む余地というのも、本当はないのかもしれない。
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リリオ
「ありがとうこよみ」
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ユキ
「……あたしは後でお願いしようかしら」
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ユキ
「こよみも疲れてるでしょ」
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ユキ
「休みましょうよ」
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リリオ
「そうだね~」
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こよみ
「う、うん、うん」
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ラタス
しかし、山を進んでいる間、まともな会話はできない。
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こよみ
「じゃあこよみ、そうする」
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リリオ
「僕もうくたくただよ~」
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こよみ
「できることする、休むし、休んだらがんばるよ」
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こよみ
「こよみ」
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こよみ
「できることがんばるの……」
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ラタス
先を急ぐことと、限られた時間をともに過ごすこと、どちらが重要と言えるだろうか。
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ユキ
「……うん」
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こよみ
こよみには難しい問題だけれど、
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こよみ
こうして一緒にいられることは嬉しかった。
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こよみ
ずっと。
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こよみ
ずっと嬉しかったのだ。
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こよみ
今だって、嬉しい。
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こよみ
へたり込んだまま洞窟に背中を預ける。
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ラタス
煙がこもらないのを確認してから、火を焚く。
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ユキ
今の状況での正解も最善もユキには分からない。
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ユキ
分からないなら……したいようにするしかない。
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ユキ
多分そうなのだと思う。
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ラタス
風雨で冷えた手足を、火とお互いの身体で温め合っている。
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こよみ
こよみおっきいから熱源になるよぅ
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リリオ
「は~、こよみはあったかいなぁ」
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こよみ
「え」
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こよみ
「えへへへ……」
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こよみ
「こよみでリリオちゃんあったかいなら、こよみ、こよみうれしいよ」
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こよみ
「こよみあったかい!」
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リリオ
「こよみが嬉しいなら、僕もうれしいなぁ」
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ユキ
「…………」
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こよみ
いっぱい頷いている。
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ユキ
むぎゅ、とこよみに抱きつく。
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こよみ
「ん」
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こよみ
「ユキちゃんも、あったかい?」
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ユキ
「うん」
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ユキ
「あったかい」
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ユキ
「あったかいわ」
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こよみ
「えへ」
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こよみ
「えへへへ……」
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こよみ
「ユキちゃんもリリオちゃんもあったかいよ」
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こよみ
「くっついてるとあったかいの」
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ラタス
会話を笑いながら聞いている。
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こよみ
「あったかくて、うれしいよ、うれしいの」
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こよみ
「こうしてると、こよみうれしい!」
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ユキ
「……ラタス、あんたもこっち来なさいよ」
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こよみ
「!」
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こよみ
ぴん……
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ラタス
「ああ」
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ラタス
よっこいせ、と身体をねじ込む。
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こよみ
「ぴゃ」
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こよみ
「ぴゃあぁ……」
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ユキ
「リリオもそのままにしてるのよ」
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ユキ
「どっか行っちゃダメよ」
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リリオ
「え~?」
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こよみ
言われるまでもなく固まっています。
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リリオ
「しょうがないな~」
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こよみ
あわあわ……
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ラタス
「あったけえな」
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こよみ
固まりながらも身を寄せ合っている。
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こよみ
ぎゅ
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こよみ
「ら」
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こよみ
「ラタスも」
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こよみ
「あったかいよ……」
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リリオ
自分が少しスペースを空けようと思っていたのだが、釘を刺されてしまった。
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ユキ
「……四人じゃないとダメよ」
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こよみ
「よにん」
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リリオ
「まぁ、このくらいならいいけど」
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リリオ
あんまり良くないけど。
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こよみ
「よっ」
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ユキ
「うん」
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こよみ
「よにん、が」
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こよみ
「いいよ!」
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こよみ
遅れてユキに乗っかって主張し始めました。
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ユキ
こよみを囲むように、4人で暖を取る。
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ユキ
*こよみの底なしの愛され願望を舐めます
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こよみ
うれしいうれしい……
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ユキ
猟奇です 振ります
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ユキ
2d6+3>=7 猟奇 (2D6+3>=7) > 6[4,2]+3 > 9 > 成功
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ラタス
成功だな。
[ こよみ ] 底なしの愛され願望 : 0 → 1
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こよみ
いっぱいうれしい……
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こよみ
大好きな人と、大好きな人と、大好きな人。
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こよみ
みんな集まってるとなおさら大好き。
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こよみ
うれしい。
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ユキ
仲間はずれも誰もいない。
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こよみ
こうしてくっついていると、受け入れられている、というのが分かる。
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ユキ
四人でいっしょに。
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リリオ
「別に僕も、こういうのならいいんだけど」
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リリオ
「こういうのじゃないのはな~」
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ラタス
「こういうの」
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リリオ
「ははは」
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こよみ
「わっ」
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こよみ
「え」
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こよみ
「よ」
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こよみ
「よかった、よ!」
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こよみ
何かを主張し始めました。
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リリオ
「よかったなら、よかった」
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こよみ
「ね、ねっ」
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こよみ
「よかったよね、ユキちゃんっ」
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ユキ
「ええ」
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ラタス
おれはどういう顔をしていればいいんだ??
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ラタス
よかったなら、よかったな~
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ユキ
頷いて、こよみにすり寄る。
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こよみ
「えへへ」
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ラタス
よかったisよかった
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こよみ
「えへへへへ……」
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リリオ
よかったんだな……
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こよみ
ユキに頬をすり寄せる。
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ユキ
「……もっとはやく」
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ユキ
「こうできてたらよかった」
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こよみ
「…………」
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こよみ
「で、でも、でもでも」
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こよみ
「今」
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こよみ
「今こうできて、こよみ、こよみは嬉しいよ」
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こよみ
「今できないより今できてるほうが、ずっといいよ」
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こよみ
「ずっとずっと……」
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ユキ
「……うん」
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ユキ
「うん」
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ユキ
「そうね」
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ユキ
「そうだわ……」
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リリオ
「そうだな~」
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ラタス
「そうだな」
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こよみ
いっぱい頷く。
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こよみ
「ラタス」
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こよみ
「ラタスといっしょに来られて」
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こよみ
「よかった、よ……」
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ラタス
「ありがとう」
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ラタス
「一人で勝手に出てって悪かったな」
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ラタス
「やっぱり一緒に旅した方が楽しかったわ」
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ユキ
「本当よ」
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リリオ
「それはマジで反省しろ」
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ユキ
「あたしたちを置いてくなんて!」
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こよみ
「でも」
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こよみ
「いまは一緒だから」
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こよみ
「こよみ、ゆるす!」
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ユキ
「も~、こよみは甘いんだから……」
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ラタス
「寛大だな~~~」
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ユキ
「……でもこよみがそう言うなら、あたしも許してあげるわ」
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こよみ
「うんうん」
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リリオ
「二人ともやさしいな~」
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リリオ
「ラタス、ちゃんとお礼言うんだぞ」
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ユキ
「そうよ、こよみに感謝するのよ」
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ラタス
「ありがとう」
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こよみ
「えへへえへへへ」
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こよみ
「どういたしまして!」
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こよみ
胸をはりました。
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こよみ
ばいん……
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リリオ
でかい。
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ユキ
揺れてる……
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ラタス
でかい。
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こよみ
気にせずにこにこ笑っています。
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ラタス
指が沈むほどだったな~。
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ユキ
コラ!
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リリオ
コラコラ~
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こよみ
さわってもらって嬉しかったよぅ
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ラタス
こんなのってあるんだな~って思いました
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こよみ
体験していただけて何よりでした。
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ユキ
すごすぎて比べて落ち込む気にもならなかったわ……
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ラタス
もはや違う何かだったもんな
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こよみ
みんなちがってみんないい!
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リリオ
僕は何も知らない。知らないぞ。
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ラタス
このシーン乳で終わりか!?
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リリオ
ラタスがレビュー始めるから……
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ユキ
こよみのやわらかい身体に寄りかかって、目を閉じる。
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ユキ
正解も最善も分からない。
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ユキ
分からないまま、四人寄り添い合っている。
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ユキ
あの夜、リリオを一人残して三人で夜を過ごしたのが、ずっとユキの心に引っかかっていた。
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ユキ
リリオが断固として拒否した結果ではあったけど……。
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ユキ
それでも、ユキもラタスもこよみもリリオが好きで、
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ユキ
リリオも、ユキたちを好きだと言ってくれる。
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ユキ
四人で一緒にやってきた。
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ユキ
だから、一人を仲間外れにしたまま終わりたくなかった。
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ユキ
ユキとこよみをラタスと過ごさせるのが、リリオのしたかったことなら、
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ユキ
こうして四人で一緒にいるのが、ユキのしたいことだ。
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ユキ
そうして大好きな人たちのぬくもりを感じながら、つかの間の眠りに落ちた。

行動 ラタス6

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GM
1d6 (1D6) > 5

30日目

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GM
風が吹きすさんでいる。
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GM
砕けた岩の破片が風に乗って肌を裂く。
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GM
先は見えず、目を開けてもいられない。
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GM
轟音、閃光。
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GM
この世の終わりのような光景。
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GM
不意に、風が止む。
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GM
まだ頂上まで遠い。
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GM
今日中に辿り着くことは恐らく不可能だ。
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ラタス
「この調子じゃ、間に合わないな」
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こよみ
「え」
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リリオ
頂上を見上げる。
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ユキ
「…………そ、んな」
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リリオ
「そうだねぇ」
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こよみ
「…………」
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ラタス
「次にこうして話せる時間がとれるかもわからない」
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ラタス
「ここで終わりにしておくか」
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こよみ
「お」
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こよみ
「おわり」
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リリオ
「……」
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ユキ
「終わり、って……」
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こよみ
リリオを見る。ユキを見る。
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こよみ
ラタスを見る。
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ラタス
「いい旅だったぜ~ずっと楽しかった」
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ユキ
「…………」
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リリオ
「……楽しかったねぇ」
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こよみ
「も、っ」
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こよみ
「もうちょっと」
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リリオ
「僕も、楽しかった」
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こよみ
「がんばっ、て、もうちょっと」
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こよみ
「…………」
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ユキ
「……あたしも」
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こよみ
訴える声に、今は無邪気な確信がない。
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こよみ
どこかで。
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ユキ
「あたしも、楽しかった、わ……」
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こよみ
悟ってしまっている。
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こよみ
「…………」
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こよみ
耳が垂れる。
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ユキ
視線を地に落としかけて、上げる。
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こよみ
「こよ」
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ユキ
顔を見ることさえ、あとどれ程できるか分からない。
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こよみ
「こよみ、もっ」
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こよみ
「いっぱいいっぱい、いっぱい」
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こよみ
「いっぱい」
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こよみ
「たのしかった、たのしかったよ」
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こよみ
「たのしくて」
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ラタス
「ああ」
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こよみ
「うれしかったよ……」
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ラタス
「もとより、ハッピーな終わりなんて期待してはいなかった」
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ラタス
「生まれてこの方な」
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こよみ
ぎゅ、と胸元で手を合わせる。祈ることのできない手を。
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ラタス
「どっかで野垂れ死ぬのが関の山だと思っていたんだが」
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ユキ
「…………」
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リリオ
「…………」
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ラタス
「こんなに満たされたものになるとは思っていなかったぜ」
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ラタス
「ありがとうな」
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ユキ
「…………っ」
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こよみ
祈りも当然に届かず、結局いつものように口元を覆った。
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ユキ
「う、」
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ユキ
「うー……」
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リリオ
ラタスは、もっと幸福になれたはずだ、と思う。
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リリオ
あの時、もっと早く救世主を倒せていれば。
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ユキ
「ラタス、ラタス……っ」
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リリオ
あるいは、肺を病んでいなければ。
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こよみ
「ラタス……」
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ユキ
「助けてくれて、ありがとう」
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ユキ
「ラタスとリリオが拾ってくれなかったら、あたしきっと死んでたよ」
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こよみ
「っ」
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こよみ
「こ、こよみ」
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こよみ
「こよみも……」
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こよみ
「いっぱいいっぱい、ひどいことされて」
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こよみ
「うれしいことだって、きっと全然なかった……」
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ユキ
「いっぱい、いっぱいラタスに助けてもらった……」
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ラタス
「そうだなぁ」
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こよみ
「みんなが」
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こよみ
「みんなが、いてくれた、から」
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こよみ
「こうして……」
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ラタス
「右も左もって感じだったもんなぁ」
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ユキ
「うん……」
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ラタス
「急にクソみたいな世界に来て、大丈夫なわけないもんな」
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リリオ
「いいことしたな、ラタス」
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ラタス
「ほんとうにな」
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ユキ
「怖かった……」
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こよみ
「ラタスもユキちゃんも」
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こよみ
「リリオちゃんも、だよぅ……」
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ユキ
「怖かったよ……」
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ラタス
「ずっとよく頑張ってきたと思ってるぜ」
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ユキ
「でも、でもね」
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ユキ
「ラタスと、リリオが助けてくれて」
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こよみ
涙を落とすユキを背中側から抱えます。
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ユキ
「こよみが、あたしのことかっこいいって言ってくれて、ね」
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ユキ
「一緒だったから、あたし」
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ユキ
「大丈夫だった……」
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こよみ
ぎゅっと寄り添っている。
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ラタス
「おれも助けられた」
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ユキ
自身を抱え込むこよみの腕を、ぎゅっと掴む。
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ラタス
「戦いとか、そういうもんだけじゃなくて」
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ラタス
「生きている理由がおれには必要だったように思う」
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ユキ
「生きてる、理由……」
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こよみ
「ラタスが生きてる、理由?」
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リリオ
「生きてる理由かぁ」
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ラタス
「出会ってなかったら死んでたのはおれのほうかもな」
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こよみ
「な、ならっ」
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こよみ
「会えて」
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こよみ
「会えてよかった、よかったよ」
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ユキ
「……うん」
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こよみ
「会えてよかったよぅ……」
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ユキ
「よかったぁ……」
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リリオ
「そうだね、会えてよかった」
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ラタス
「こよみもなあ。おまえはもっと自信をもっていいんだ」
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こよみ
「みゅ……」
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こよみ
ラタスに声をかけられてごしごしと目を拭って、
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こよみ
泣き腫らした瞳でラタスを向く。
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ラタス
「でもまあ、お前は強いというか、したたかなやつだからな」
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こよみ
「つよい」
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こよみ
「したたか」
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ラタス
「リリオとユキのこと、支えてやってほしい」
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こよみ
「こよみ」
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こよみ
「ラタスにとって、こよみは、そう?」
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ラタス
「そうだよ」
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ユキ
ユキの小さな手が、こよみに縋っている。
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ラタス
「おれもこいつらも、けっこうお前に甘えてるんだぜ」
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こよみ
「…………」
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こよみ
「ラタスがそう言うなら、…………」
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こよみ
途中、
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ラタス
特にリリオな?
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こよみ
首を振る。
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こよみ
また目を袖で何度も拭ってから、
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リリオ
特に僕か~
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こよみ
何度も頷いた。
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こよみ
「こ、こよみ、こよみっ」
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こよみ
「つよくて、したたか」
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リリオ
「確かに、こよみに甘えている部分はあるな」
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こよみ
「そうなる、そういる」
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こよみ
「そうしたい」
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こよみ
「こよみが、そうしたい……」
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こよみ
「リリオちゃん」
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こよみ
「いっぱい甘やかすもん」
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こよみ
「こよみできるもん、やるもん、したいもん」
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こよみ
「したい」
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こよみ
「したいよ……」
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リリオ
「はは、ありがとう」
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こよみ
「……うん」
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こよみ
リリオに頷いて、ユキを抱きしめる。
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ユキ
「リリオはすぐかっこつけるんだもんね……」
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こよみ
「そう、だね」
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リリオ
「そうかな~?」
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こよみ
「そうだよ……」
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こよみ
「だから」
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こよみ
「ちゃんと、リリオちゃん、大丈夫なように」
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こよみ
ラタスを見る。
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こよみ
「こよみ、こよみがんばるよ」
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こよみ
「がんばりたいって思うよ……」
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ラタス
「おう。頼むな」
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こよみ
「……うん!」
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リリオ
「ご迷惑おかけいたします」
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ラタス
「それとあれだな~~」
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ラタス
「やっぱり最後に童貞卒業できてよかったな!」
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リリオ
「ははは」
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こよみ
「…………」
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ラタス
「最高だったな~」
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ユキ
「…………」
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こよみ
「よ」
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こよみ
「よかった……」
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こよみ
「それは、うん、よくて、よかった」
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リリオ
よかったか~
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ユキ
「………………そう」
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ラタス
よくてisよかった
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こよみ
「ラタス、ラタスが最高、だったら」
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こよみ
「うれしい、うれしいよ」
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こよみ
「うれしいの……」
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ラタス
最高isうれしいな~
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ユキ
「………………」
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リリオ
荷が重いとか言っていたのは黙っておこう。
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ユキ
小さく頷いた。
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ラタス
「それこそ一人じゃどうにもならないことだからな!」
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ラタス
笑う。
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こよみ
「う」
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こよみ
「うん……」
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ラタス
一人じゃヤれないからみんなと来られてよかったぜ~
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ユキ
「…………ん」
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ユキ
「よかったなら、よかったわ…………」
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ラタス
「いや~、ははは」
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ラタス
「大切にしてるやつに想われてうれしくねえはずがねえよ」
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ラタス
「そう想われるっていうのは」
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ラタス
「本当にありがたいことだ」
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ユキ
「…………!!」
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ラタス
それが選ぶということだ。
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こよみ
「っ」
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ラタス
ただ時間を共にしていると言うことそれだけで
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ラタス
選び、選ばれてそこにいる。
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こよみ
耳を立ててラタスを見る。
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ユキ
「そ」
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ユキ
「そう…………」
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こよみ
「こっ」
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こよみ
「こよみ、も」
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ユキ
「そう…………」
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こよみ
「…………」
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ユキ
「…………」
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こよみ
「ラタスが、大切、で」
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こよみ
「好きで」
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こよみ
「だから、だからっ」
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こよみ
「ありがとう……」
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ユキ
「あたしも、よ」
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ユキ
「ラタスがね」
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ユキ
「ラタスが、大切に思ってくれて」
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ユキ
「すごく、うれしい……」
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ユキ
「うれしいわ……」
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ラタス
頷く。
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ラタス
頭を撫でる。
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ラタス
軽い口付けをする。
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こよみ
あわわ……
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こよみ
ユキがされてるのを見て思わずユキをぎゅっとします。
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ラタス
今去るときになってわかる。
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ラタス
想い出はあるほど良い。
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ユキ
「……っ、」
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ユキ
ぼろぼろと涙をこぼしながらそれを受け入れて、
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ユキ
腕を回して、口づけを返す。
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こよみ
気持ちユキを持ち上げてそれを支えます。
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ラタス
「ありがとう」
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ユキ
「うん……、」
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ユキ
「…………好きよ」
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ユキ
「好き、ラタス」
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ユキ
「大好き…………」
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こよみ
「こよみ、も」
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こよみ
「ラタスすき……」
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ラタス
「ああ、光栄だ」
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こよみ
「好きだよぅ……」
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ラタス
「愛してるぜ」
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こよみ
「ぅう~~~~」
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ユキ
ラタスに比べれば短い腕を懸命に伸ばして、背中に回す。
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リリオ
3人を見て、微笑んでいる。
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ユキ
ぬくもりを、人工肺の駆動音を記憶に刻み込む。
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ラタス
触れ合うほどに、まだ生きている、息をしているというのがわかり合う。
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こよみ
ユキの背中には柔らかい肉、押しつけた頬には硬い管の温もり。
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ユキ
生きている。
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ユキ
まだ四人でいる。
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ラタス
ここにいて、少しでも何かが伝わり、残ることを願っている。
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ラタス
一挙一動、一言一息に惜しむ気持ちがある。
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リリオ
ユキを抱えるこよみに近づく。
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リリオ
背中をぽんぽんと叩いた。
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こよみ
「り」
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こよみ
「リリオちゃぁん……」
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こよみ
意味もなく名前を呼ぶ。
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リリオ
「うん」
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ユキ
全部、全部覚えていたい。
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ユキ
出会ってから今までの全部、この時間の全部を。
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こよみ
「ユキちゃんも、ラタスも」
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こよみ
「こよみも」
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こよみ
「リリオちゃんも」
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こよみ
「いる……」
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ユキ
「いる……」
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リリオ
「いるよ、ここに」
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こよみ
「うん、うん、っ」
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こよみ
「いる」
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こよみ
「いるの……」
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こよみ
今は。
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こよみ
まだ、ここにいる。
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こよみ
ここに今、確かにいる。
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こよみ
存在している。
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こよみ
四人で。
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ユキ
「ラタス」
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ユキ
「リリオ」
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ユキ
「こよみ……」
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ユキ
確かめるように名前を呼ぶ。
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ラタス
頷く。
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ラタス
きつく抱きしめる。
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ラタス
痛いほどに。
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ユキ
「……っ、」
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ラタス
今どんなに強く抱きしめていても、抱きしめたままでいられない残酷さ。
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ラタス
空は暗く、雲は逆巻いている。
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ユキ
痛くてもいい。
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ユキ
抱きしめていてもらえるなら。
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ユキ
どれだけ痛くても。
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ラタス
感傷と想い出が、その残酷さに抗い残るものであると願っている。
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ラタス
次いで、こよみを抱きしめる。
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こよみ
「ぅ」
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こよみ
「う~~~~」
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こよみ
「ラタス……」
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こよみ
腕を伸ばして、ユキごとラタスを抱き返す。
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こよみ
縋る指先はなくとも。
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ユキ
ふぎゅ。
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こよみ
幸いにして腕は長いから、抱擁は叶う。
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リリオ
サンドイッチにされてるな~
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こよみ
この図体に今はひときわ感謝をする。
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ユキ
二人に挟まれてる~~~
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ラタス
いつぞやの構図だな~
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リリオ
知らない話だな~
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こよみ
こよみはもう、この方が落ち着くのだ。
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ユキ
息苦しいけど、二人の間から抜け出そうとはしない。
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こよみ
感じられるだけのものを感じていたい。
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ユキ
こうしていられるのだって、残り僅かな時間だから。
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ユキ
少しでもたくさん、少しでも長く。
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こよみ
そのままこよみの方から、ラタスの唇にキスをする。
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ラタス
受け入れる。
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こよみ
いつぞやと同じ熱を確かめる。
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こよみ
重なり合うものがある。
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こよみ
そのことに充足を得て、
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こよみ
もっと欲しいと思うけれど。
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こよみ
それを抑えて身を引いた。
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こよみ
「ラタス」
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こよみ
「好きだよ……」
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ラタス
「ああ」
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こよみ
「いっしょに」
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こよみ
「いっしょにいてくれて」
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こよみ
「ありがとう……」
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ラタス
「おれもだ。ありがとな」
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こよみ
「うん、……っ」
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こよみ
「うん……」
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ラタス
「お前の愛は」
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ラタス
「お前が与えたいと思ったやつにだけ、与えろ」
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こよみ
「…………っ」
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こよみ
「こよみの、与えたい……」
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ラタス
「適当なやつにくれてやるには、上等すぎる」
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こよみ
「う」
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こよみ
「ううぅ」
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リリオ
「それは、本当にそう」
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こよみ
嗚咽に涙を滲ませる。
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ユキ
「そう、そうよ……」
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ユキ
「あたしたちの大事なこよみなんだから……」
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こよみ
「こよ、っ」
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こよみ
「こよみ」
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ユキ
「こよみもこよみを大事にしないとダメなのよ……」
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こよみ
「与えたくて」
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こよみ
「与えたくて、だから、リリオちゃんとユキちゃんと」
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リリオ
「そうそう。僕たちの大事な人を、適当に扱ったら許さないよ」
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こよみ
「ラタスに……」
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こよみ
「あ」
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こよみ
「あううぅ~~~~」
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こよみ
「た、っ」
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こよみ
「たいせつに、する」
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こよみ
「たいせつに……」
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こよみ
「こよみ、ちゃんと」
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ユキ
こよみの身体に腕を回して、泣いている。
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こよみ
「したたかに、つよく、ちゃんとして」
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ユキ
「そうよ……」
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こよみ
「たいせつに、たいせつに」
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こよみ
「たいせつなひとを、愛する、から」
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こよみ
「そうするから……」
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ユキ
「そう……」
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ラタス
頷く。
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ユキ
「大切にしないと怒るわよ……」
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リリオ
「こよみは偉いな」
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こよみ
「え、えら」
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こよみ
「えらくなる!」
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こよみ
「おこられない、ように」
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こよみ
「ラタス」
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こよみ
「ラタスが、っ」
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こよみ
「安心」
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こよみ
「できるように……っ」
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こよみ
「う」
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ラタス
「ああ」
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こよみ
「ううぅ――……」
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ユキ
「…………」
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ラタス
最後に強く抱きしめ、手放し。
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ラタス
リリオに向き合う。
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こよみ
名残を惜しむように顔を上げて、
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こよみ
けれど堪える。
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こよみ
ぎゅっとユキを抱きしめた。
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ユキ
こよみに縋り付く。
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ラタス
「リリオ」
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リリオ
「はぁい」
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ラタス
「おれはずっと」
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ラタス
「お前がみじめに嘆いたり」
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ラタス
「情けない泣き言を言うのを」
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ラタス
「ずっと見たかったんだぜ」
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リリオ
「ははは」
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リリオ
「ご期待に応えられなくて申し訳ない」
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ラタス
「取り繕うことも忘れて」
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ラタス
「ダッセぇところが見たかった」
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リリオ
「いや~」
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リリオ
「最後までカッコつけられてよかったな~」
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ラタス
「そのお綺麗な態度を乱暴に引き剥がして」
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ラタス
「その下に何があるのか暴いて」
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ラタス
「見てやりたかった」
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リリオ
「あっはっはっはっは」
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リリオ
「そう思われていたとはな~」
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リリオ
「言ってくれれば、ちょっとは見せたかもよ」
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ラタス
「へぇ」
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ラタス
「いや……」
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ラタス
「いやおれ言ったろ!」
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ラタス
言った言った。
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リリオ
「言ったっけ?」
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リリオ
「じゃあ言い方が悪かったのかもな」
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ラタス
「ははは」
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ラタス
「そうだなぁ」
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ラタス
「……上層と下層を隔てるプレートのように」
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ラタス
「その下にあるものを」
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ラタス
「矛盾やら、粗やらをほじくり返して」
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ラタス
「傷つけてやりたかったぜ」
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リリオ
「…………」
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ラタス
「あ、そうだ」
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ラタス
「あのナイフ、まだ持ってるか」
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リリオ
「もちろん」
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ラタス
「あれ、ちょっと見せてみろよ」
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リリオ
「?」
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リリオ
懐から、革に包まれたナイフを取り出す。
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ラタス
リリオのナイフを持つ手を掴む。
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ラタス
自分の人工肺を取り、放り捨て
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リリオ
「お」
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ラタス
そのナイフを握った手をたぐり寄せ、
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リリオ
「え」
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こよみ
「!?」
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ラタス
己の胸にそのナイフを突き立てる。
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ユキ
「え」
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リリオ
「ら」
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ユキ
「あ」
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リリオ
「ラタス!」
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ユキ
「あ、あ……!」
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こよみ
「……っ」
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リリオ
「おい、ラタス、お前、お前……!」
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ラタス
「おれの心臓をお前にくれてやる」
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リリオ
「馬鹿!」
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こよみ
「そ、それっ」
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こよみ
「あ」
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こよみ
「ぅ」
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リリオ
ナイフを引いたらいいのか、そのままにした方がいいのか。
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こよみ
ラタスとリリオの間に割って入れず、その場に立ち竦む。
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ユキ
「ら、ラタス、ラタス」
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リリオ
手を離すこともできず、ラタスを見る。
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ユキ
「肺が」
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リリオ
「馬鹿、馬鹿!」
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ユキ
「ナイフ、が」
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こよみ
「…………」
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リリオ
「お前、なんでこんな!」
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ラタス
「馬鹿は、お前だろう、がよ」
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ラタス
「馬鹿は、お前だ」
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リリオ
「なんでだよ!」
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ラタス
「バカやろうが……」
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リリオ
「なんで……」
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リリオ
いや
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リリオ
全然分からない訳ではない。
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ラタス
血が滴り、溢れる。
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ラタス
まだ強く手を握りしめている。
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リリオ
これは自分が招いた結果だと、思う。
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リリオ
握られた手が震える。
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ユキ
目を見開いて、息を呑んで、こよみに縋っている。
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ラタス
二人の手が、一つの果実のような塊となっていて、赤く濡れている。
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こよみ
ユキをぎゅっと抱きしめている。
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ユキ
ラタスとリリオをじっと見つめている。
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こよみ
抱きしめながら、二人を見ている。
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ラタス
「最期だ」
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ラタス
「聞かせてくれ」
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ラタス
何も平等ではない。
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ラタス
わからないというのなら、聞かせてくれと命じる。
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ラタス
目の前の命は救われず、あなたが殺した。
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ラタス
*リリオの高潔な魂を抉ります。
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こよみ
*横槍を入れます
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こよみ
Choice[猟奇,才覚,愛]
 (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
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こよみ
2D6+3>=7 (2D6+3>=7) > 7[4,3]+3 > 10 > 成功
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こよみ
1d6 (1D6) > 4
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ラタス
2d6+3-4>=7 (2D6+3-4>=7) > 9[3,6]+3-4 > 8 > 成功
[ こよみ ] HP : 19 → 18
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ラタス
真っ直ぐリリオを見ている。
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こよみ
こよみはつよい。
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こよみ
つよくてしたたか。
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こよみ
だから、これがラタスがしたいことで、
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こよみ
もう後がないのなら。
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こよみ
それは見届けないといけないことだって、
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こよみ
こよみはわかった。
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こよみ
でもこよみは知ってるよ、わかってるよ、
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こよみ
リリオちゃんがリリオちゃんを許せなくても、
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こよみ
こんなのだめだって思っても、
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こよみ
リリオちゃんが優しくてこよみたちみんなのことが好きで、
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こよみ
こよみたちのためにいっぱいいっぱい色々考えてくれてること、
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こよみ
それは変わらないの、こよみは分かってるよ。
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こよみ
わかってるの。
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こよみ
わかってるから、リリオちゃん。
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こよみ
リリオちゃん、
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こよみ
だいじょうぶだよ。
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こよみ
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ユキ
リリオの手にしたナイフが、ラタスの胸に突き刺さっている。
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ユキ
ラタスがそうさせた。
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ユキ
そうした。
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ユキ
なんでこんなことするのか、あたしにはちっとも分からない。
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ユキ
でもあたしたちに残された時間は残り少なくて、
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ユキ
あたしもこよみも、ラタスとの最期の時間はもうもらった。
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ユキ
わかんない。
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ユキ
わかんないけど、
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ユキ
ラタスとリリオのお別れには、きっとそうするのが必要なのね。
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ユキ
だったら邪魔しないよ。
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ユキ
ぎゅっとこよみを抱きしめる。
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ユキ
邪魔しない。邪魔しないから。
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リリオ
「ラタス、ラタス……」
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リリオ
繋いだ手から、赤い血が滴る。
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リリオ
どちらにしても、長い命ではなかった。
どちらにしても、別れるはずだった。
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リリオ
でも、こんな形ではなかったはずだ!
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リリオ
救いたかった命なのに、諦めようと思ったのに
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リリオ
どうして、この手で
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リリオ
手を離そうとしても、強く握られている。
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リリオ
殺したくなくても、もう心臓は突かれてしまった。
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ラタス
あなたの手に滴るのは、今までラタスを活かしてきた血だ。
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ラタス
体温そのものだ。
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リリオ
体温が失われてゆく。
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リリオ
ラタスの命が、地にこぼれる。
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リリオ
どうして。
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リリオ
「ラ……」
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リリオ
「タ、ス……」
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リリオ
涙がこぼれる。
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リリオ
「いやだ、いやだ」
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リリオ
子供のように、首を横に振る。
手を離そうともがく。
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ラタス
「リリオ」
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リリオ
「いやだ、死ぬな」
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ラタス
「あの夜は、冗談って済ませてやったが」
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ラタス
「これは、冗談じゃないんだぜ」
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リリオ
「ほかに、ほかのことでも」
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リリオ
「ほかのことでもいいだろ!」
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リリオ
「だいたい、ぜんぶお前が悪い!」
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リリオ
「お前が選んだのは、僕じゃないだろ!」
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リリオ
「僕達だ!」
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ラタス
「……じゃあ、こう言ってやればよかったか?」
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ラタス
「愛している」
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ラタス
手を放さない。刃は深く突き立てられたまま。
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リリオ
「違う!」
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ラタス
滴り落ちる血の量が減っていく。
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リリオ
「違う違う!」
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リリオ
「ユキとこよみはお前のことが好きだ!」
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ラタス
「ああ」
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リリオ
「でも僕は欲深いから」
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リリオ
「3人で分けたりなんてできない」
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リリオ
「だから、僕はいいって」
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リリオ
「分け合える人だけで分け合えばよかったのに」
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リリオ
指が血でぬめる。
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ラタス
「ふっ、はは」
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リリオ
「僕はそれを望んでいたのに」
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リリオ
「切実に!」
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ラタス
「馬鹿だな」
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ラタス
「それを、さっさと、言えばよかったんだ」
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リリオ
「言ってどうなるんだよ!無視してくれるのか!?」
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ラタス
ナイフを深く突き立てたまま、もう一方の手でリリオの後頭部を抱え、引き寄せ、抱く。
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リリオ
「う」
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ラタス
溢れて冷めた血の冷たさを分かち合う。赤い滴りの模様を転写する。
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リリオ
「いやだ」
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ラタス
強く抱こうとするほどに心臓を傷つける。
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リリオ
わずかに身を捩る。
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リリオ
これ以上傷付けたくない。
ラタスを殺したくない。
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ラタス
言葉には応えない。
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ラタス
口付けだけを残す。
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リリオ
「…………う」
avatar
リリオ
「いやだって」
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リリオ
「言ったのに」
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リリオ
「ラタスなんて」
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リリオ
「きらいだ……」
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ラタス
その言葉に満足げに笑い、
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ラタス
ふっと力が抜ける。
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リリオ
「ラタス!」
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GM
もたれかかり、動かない。
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GM
返答はない。
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リリオ
「ラタス、ラタス!」
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リリオ
腕の中の男に呼びかける。
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リリオ
肺を失い、心臓を貫かれた男。
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リリオ
下層で生き、肺を病み、この手で殺した男。
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ユキ
「ラ……タス…………」
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こよみ
そっと二人の元へと赴く。
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リリオ
体重を支えきれず、ずるずると地面に膝をつく。
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リリオ
「ラタス、いやだ、ラタス」
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こよみ
途中で腕を緩め、ユキを解放する。
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ユキ
「…………」
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リリオ
「死ぬな、死ぬな!」
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リリオ
「愛しているんだよ!」
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ユキ
こよみから腕を離されて、一人で立つ。
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リリオ
「死ぬなよ、ラタス!」
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GM
その言葉が届いたかはわからない。
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GM
それに応えるものはない。
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こよみ
「…………」
avatar
ユキ
動かなくなったラタスに触れる。
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こよみ
リリオもユキもラタスごと、
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こよみ
腕を伸ばして抱え込む。
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リリオ
「うう……、うう~~」
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ユキ
「……っ、」
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リリオ
ラタスの躯を抱きしめる。
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GM
身体はただ冷たくなるばかりで、泣くあなたの頭を撫でたり、抱いたりすることはない。
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GM
今このときまでに分かち合い、交わし合ったものが全て。
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ユキ
後ろからこよみに抱きしめられて、ラタスとリリオの服をぎゅっと掴んだ。
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リリオ
「馬鹿」
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リリオ
「馬鹿!」
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リリオ
「お前は大馬鹿だ!」
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ユキ
覚えてる。
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ユキ
あの温かさも、今のこの冷たさも、
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ユキ
ずっと覚えてるから。
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リリオ
ユキとこよみも泣いている。
2人を泣かせている。
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こよみ
「…………っ」
avatar
こよみ
でも、
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こよみ
リリオとユキがラタスに熱を与えるのなら、
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こよみ
こよみは二人に熱を与えるのだ。
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こよみ
ラタスに託されて、望まれたことを、
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こよみ
こよみの与えたい相手に、
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こよみ
この愛を。
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ユキ
「ラタス、ラタス、ラタス……っ!」
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こよみ
「ラタス」
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リリオ
一度くらい、自分も頭を撫でて欲しかった。
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こよみ
「ラタス……」
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リリオ
格好つけていて、そんなことにはならなかったけれど。
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リリオ
自分だけを愛していると言われたかった。
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リリオ
本当は、一番最初みたいに、2人だけで旅を続けたかった。
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リリオ
でも、ユキに一緒に行こうと言ったのは自分で。
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リリオ
こよみに一緒に行こうと言ったのも自分だ。
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リリオ
困っていたように見えたから、放っておけなかった。
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リリオ
だから
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リリオ
この気持ちは、ないものとして扱おうと決めたのに。
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リリオ
仲間が幸福で平穏であって欲しい。
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リリオ
そのためには、どんな事だってするのに!
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リリオ
「こんなふうに仕返しするなんて」
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リリオ
「ひどいよ、ラタス……」
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こよみ
「……うん」
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こよみ
「ひどい」
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ユキ
「うう…………」
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こよみ
「ひどい、ね……」
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こよみ
リリオの背中を撫でる。
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こよみ
半ばで切られた腕の手首で、リリオの背を。
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こよみ
「でも」
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こよみ
「ラタス」
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こよみ
「ラタスが、したかった」
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ユキ
「やっぱり、意地悪よ……」
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こよみ
「望んだ、こと、で……」
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ユキ
「ラタスって意地悪……」
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ユキ
「ばか……」
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こよみ
「うん……」
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リリオ
「知らない、知らないよそんなこと」
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こよみ
「ひどくて、いじわる、で」
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こよみ
「ばかで……」
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こよみ
「ラタス……」
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こよみ
「でも」
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こよみ
「…………っ」
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こよみ
「かなえ、られて」
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こよみ
「よかった……」
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ユキ
「……っ、」
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リリオ
「僕には」
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リリオ
「荷が、重すぎる……」
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こよみ
「うん」
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こよみ
「うん……」
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こよみ
「そ、うだね」
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こよみ
「すごく」
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リリオ
「こよみかユキならよかったのに」
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ユキ
「リリオ……」
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こよみ
「すごく、重くて」
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こよみ
「つらい……」
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ラタス
満足げな笑みをうかべたまま、
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GM
*ラタスは死亡しました。
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ユキ
「リリオ、リリオ……」
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ユキ
「あたしたち、」
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ユキ
「あたしたち、が、いるわ」
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ユキ
「いるからね……」
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こよみ
「ん、うん」
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こよみ
「うん」
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こよみ
「いる」
avatar
リリオ
「う」
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こよみ
「いる、よ……」
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こよみ
腕に力を込める。
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リリオ
「うう~~~……」
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こよみ
肌を擦り寄せる。
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ユキ
震える手で、リリオに触れる。
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こよみ
「いっぱ、い」
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ユキ
「もう、かっこ、つけすぎちゃ」
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ユキ
「だめよ」
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こよみ
「いっぱい」
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こよみ
「泣いて、いい、から」
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リリオ
ラタスの躯を強く抱き、ユキとこよみの体温を感じる。
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こよみ
「リリオちゃん」
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こよみ
「リリオちゃんも……」
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リリオ
冷えてゆく死者と、温かい生者に囲まれている。
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リリオ
ラタスを救えなかった。
[ リリオ ] 高潔な魂 : 1 → 0
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GM
そして。
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GM
ラタスの胸に空いた傷口から、黒い煙が漏れ出す。
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GM
黒いコートは煙の中で、その輪郭を曖昧にする。
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ユキ
「……っ!?」
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こよみ
「…………」
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リリオ
「ラ……タス……」
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ユキ
「あ…………」
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リリオ
腕の中の愛した男の輪郭が、溶ける。
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ユキ
「いや、いや、やだ…………」
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GM
コートの中にかけていた、十字架のネックレスだけが金色に揺れている。
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こよみ
「ラタス」
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GM
遠くの雷光を照り返す。
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こよみ
「ラタス、だいじょうぶだよ」
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こよみ
「だいじょうぶ……」
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こよみ
呼びかけるように、
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ユキ
「ラタス…………」
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こよみ
あるいは言い聞かせるように。
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GM
変容する。
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こよみ
そのさまを見つめている。
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リリオ
「いやだ……」
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リリオ
「いやだ、いやだ……」
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ユキ
「やだぁ…………」
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こよみ
こよみとユキとリリオをここまで連れてきたということは、
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リリオ
こうなる事は分かっていた。
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こよみ
きっと、そういうことなのだ。
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-
指の内側から肉を突き破って生えるのは、彼が得物にしてきた短剣。
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こよみ
ラタスの望んでいたことは。
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リリオ
そのつもりでここまで来た。
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ユキ
分かってたよ。知ってたよ。
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-
五指は刃物の爪となり、もはやなぞるものを引き裂くためのものでしかない。
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こよみ
自分を優しく撫でてくれた、
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こよみ
愛してくれた手が変容するさまを見る。
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リリオ
そのつもりでここまで来たのに!
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-
赤く汚れた手。
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ユキ
どんなに泣いても駄々をこねても、ラタスの面影は失われていく。
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こよみ
その手の主に呼びかける。
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こよみ
「こよみ」
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こよみ
「こよみ、ちゃんとするからね」
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リリオ
自分だけは落ち着いて、ラタスの望みを叶えようと思っていたのに!
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-
黒い被毛に覆われた身体には、尚も首飾りが揺れていた。
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ユキ
「ばか、ばか、ばか…………」
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-
罪を雪ぐ、犠牲を示すシンボル。
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ユキ
「ラタスのばかぁ…………」
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こよみ
変わり果てた姿。
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こよみ
でも、でも、知っている。
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こよみ
「ラタス」
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こよみ
彼だ。
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こよみ
愛してくれた、ひとだ。
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こよみ
こよみを選ばずとも、愛してくれたひとだ。
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マスクを被ったその目は、青い空を映し出している。
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ユキ
「飛んで、帰るんでしょうがぁ……」
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ユキ
「それじゃ、全然、」
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ユキ
「ダメじゃない……」
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リリオ
「お前は本当に馬鹿だよ」
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リリオ
「救いようがない大馬鹿だ……」
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ブラッドスクーパー
その背に翼はなく、這う者に相応しい長い尾がのたうつ。
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こよみ
「……ラタス」
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ブラッドスクーパー
被っていた帽子に似た耳が動く。
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ブラッドスクーパー
身体を起こし、ゆらりと頭を持ち上げて咆哮する。
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こよみ
その耳に届けるように、声を張る。
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こよみ
「愛してるよ」
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ブラッドスクーパー
殺意。
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ブラッドスクーパー
あなたがたは一度それをしてきた。
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ブラッドスクーパー
オールに。
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ブラッドスクーパー
同じように果す以外にないだろう。
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ユキ
拭っても拭っても、涙が溢れ出す。
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ブラッドスクーパー
裁判開始。
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ユキ
それでも立ち上がる。
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リリオ
2人を任された。
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リリオ
立ち上がらなければいけない。
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リリオ
これ以上、誰かを死なせる訳にはいかない。
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リリオ
一度ぎゅっと目を閉じて涙を拭い。
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リリオ
亡者を見上げた。
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リリオ
もう少し、カッコつけなければいけない。