ラタス
1d12 シーン表 (1D12) >
10
ラタス
10 三叉路。今来た道。以前に来た道。あのときは選ばなかった道がある。
ラタス
野球拳の村から南下し、今まで通った道へ合流する。
ラタス
「おれは一人で出てったんだろ、手紙を置いて」
リリオ
「それで、ラタスが好きにやるなら、こっちも好きにやるってついていった」
ラタス
「まあそうじゃなきゃ3Pにはならねえな……」
リリオ
あの時は、3人で追いかけることに迷いはなかった。
リリオ
何が起こるか分からなかったから、それ以外の選択肢なんてなかった。
リリオ
分かっていたとしても、この道は選んではいけない道だ。
ラタス
今頃あいつらはどうしているだろうな、という言葉を噤む。
ラタス
何かに追いつかれないように、小さな目的地を設定する。
ラタス
選択や、残したものにただ向き合い続けるには長すぎる。
ラタス
「なんかこう、水がいっぱいあるんだろ、すごく」
リリオ
「色々な生き物もいる。水の中を泳ぐ魚とか、壁に張り付いて生きる貝とか、カラフルないそぎんちゃくとか」
ラタス
「おれを脅かそうとしてもそうはいかねえぞ……」
リリオ
「あとは、水に塩味がついてる。だから飲めないんだ」
リリオ
こいつ……かわいい所あるのでは……?
という気持ちになっている。
ラタス
おれとしては閉所の方が化け物に有利とれるが……
リリオ
「まぁ、堕落の国の海はちょっと違う感じかもだけど、せっかくだし行ってみよう」
リリオ
「今とは違うルートを通ったから、海に行く余裕がなかった」
ラタス
順調な道程を辿っている。野球拳の村で気を良くした商人が、結構なところまで運んでくれたからだ。
ラタス
「上にあるらしいものは、だいたい噂になるもんだ」
リリオ
別に、海は珍しいものではなかった。
毎年付き合いで連れて行かれて、つまらない人付き合いをさせられて、愛想を振りまくだけの場所。
リリオ
「本当に、プレートなんてなくなればよかったのにな」
ラタス
「でもまあ、おれたちにとってそれは、初めからあったものだ」
リリオ
「想像できないものは、見てみたくなるじゃないか」
リリオ
だから今、ラタスに海を見せたいと思っている。
ラタス
「もっと早くこうしようと思えば、出来たんだよな」
ラタス
「死に際に振り返って後悔するほどのことでもない」
ラタス
それを果すための生きる理由に値したことだろう。
リリオ
それほどの何かが、ラタスにあればよかった。
リリオ
「いや、非童貞だと思い込まされていたのは悪いことかもな」
リリオ
「お前、勘違いさせるようにしてただろ!?」
ラタス
「それこそ早いところ男に抱かれておけばよかったろ!」
リリオ
「そんなことユキやこよみに本気で思うのか!?」
リリオ
「はぁ……、なんか1人で付いてきてよかった気がしてきた」
ラタス
こよみの世話をユキはひとりで出来るだろうか。
リリオ
「そうだなぁ。それだったら、追いつくといいけど」
リリオ
救世主や亡者に襲われていないだろうか。
2人だけの裁判は、随分と勝手が違うだろう。
ラタス
白兎の末裔に、よい導きをもらっているといい。
ラタス
「お前が一人でついてくることを選んでくれて嬉しかったんだぜ」
ラタス
「2人を連れてきた方がよかった。正しかった。普通に考えればそうする」
リリオ
「それはそうだ。どう考えてもそっちの方がいい」
リリオ
「2人も傷付けずに済むし、戦闘も人数が多い方がいい」
リリオ
「2人を置いていくメリットなんて、何もない」
ラタス
「死に際に振り返って後悔することがあるなら」
ラタス
「お前がそんな正しくないようなことをすること」
ラタス
「想像できないものは、見てみたくなるだろ?」
リリオ
「そうだねぇ、確かに。
夢なんて見なかったら、絶対にしなかった」
リリオ
「それを……、こよみや、ユキよりも優先した」
ラタス
2d6+3>=7 (2D6+3>=7) >
7[1,6]+3 > 10 > 成功
ラタス
リストに書かれなかったものはたくさんある。
ラタス
そもそも書きようのないものを書くことはできない。
ラタス
捨て置いて、もう手に入るとは思っていなかったものを、
ラタス
高潔でも美しくもない、正しくもない残酷な選択肢にしか、
リリオ
正しくない自分を、ラタスが見たがったから。
リリオ
「多分僕は……、ユキやこよみほど、君に恋していない」
リリオ
「恋愛感情でいっぱいになれていない。
君には友情も、仲間としての信頼も感じている」
リリオ
「依存と言ってもいいかもしれない。
そんなものは、しまっておいた方がいいんだ」
リリオ
「でも、だめだね。
これだけ執着でいっぱいになっちゃったら……、もう、愛してるとしか言えないよ」
ラタス
リストに書かれなかったものはたくさんある。
[ リリオ ] 強欲 : -1 → 0
リリオ
* ラタスの心の疵「青い窓の見える庭」を舐めます。判定は才覚
リリオ
2d6+3>=7 (2D6+3>=7) >
4[3,1]+3 > 7 > 成功
リリオ
2d6+3>=7 (2D6+3>=7) >
6[5,1]+3 > 9 > 成功
リリオ
周囲は背の高い岩に囲まれて、海は見えない。
ラタス
「なんか……洗ってない服のにおいだな……」
リリオ
「聞いた話によると、死んだ生物の腐敗臭だとかなんとか」
リリオ
「謎のドロドロした緑色のものとか打ち上げられてたりするし」
リリオ
「だから、よく分からないものは素手で触らないように注意しよう」
リリオ
「コップに入った水を揺らすと、波が立つだろ?」
リリオ
「海は水が多いから、そういう波も大きくなる。音がこんなに遠くまで聞こえるくらいにね」
リリオ
「正直、説明しながら見に行くほどいい所か?って気持ちになってきてる」
リリオ
「怖いもの見たさなら、ちょうどいいかもな~」
ラタス
「びろびろしてるとしか言いようがなくないか?」
リリオ
「あ、ほらほら、あった!緑色のドロドロ!」
ラタス
「うれしそうに危険なドロドロを見つけ出すな~」
ラタス
「ドロドロやプルプルが大好きみたいになってるぞ」
リリオ
「え~?別に大好きってわけじゃないんだけど……、あ!ほら岩にへばりついてる貝もある!」
リリオ
貝に触れると、ぽろりと取れた。
中身は死んでいたらしい。
リリオ
「堕落の国は、貝にも生きにくい世界らしい……」
リリオ
「まぁ、仕方ない。
それよりどう?海の感想は」
リリオ
「海水に触るなら、靴脱いでからにしなよー」
リリオ
「噂では、触ると離れない8本の腕を持つ怪物とかもいるとか」
リリオ
自分も靴を脱いで、裾を上げて波打ち際に行く。
リリオ
「こんなに何かに怯えるラタスを見るの、初めてかも」
リリオ
「ごめんごめん、かけるつもりはなかったんだって~」
リリオ
「くそ……ここまで来たら腹を括るしかないか……」
リリオ
砂地を蹴り、駆ける!
水しぶきが上がる。
ジャンピングラリアットだ!
リリオ
「ふっ……、僕を怒らせるからこうなるんだ」
リリオ
「一回真水で洗わないと、服の表面に塩が出てくるぞ」
リリオ
「そしてそんな量の真水は今ここにありません」
ラタス
「おれのコートが溶け込まなくなるだろ!!」
リリオ
「なんか薄汚れたコートを着てるだけの人になる!」
リリオ
「ラタス……君ともあろう者が、一本取られたようだな……」
リリオ
「海で見る夕焼けは格別だよ。
空が黄色や赤に染まって、真っ赤な太陽が水平線に沈む」
リリオ
「海は空を写して、同じ色になる。
視界の全てが温かい色になるんだ」
リリオ
「でも、反対を見ると空が暗くなり始めている。赤から紫、紫から青、青から暗い夜の色に」
ラタス
「もし見れたならお前がこうやって教えてはくれなかったろ」
リリオ
「まぁでも、そんな海じゃなくても見に来れてよかった」
リリオ
「この開けた感じとか、匂いなんかは説明しきれないからね」
ラタス
「曇った空でも海が光を反射して、まぶしいくらいだ」
ラタス
燃えるような落日もなく、ただ暗闇が訪れて、夜へ。
ラタス
「下層にあれやらこれやらがないことを、いちいち気に病んだりする必要はねえぞ」
リリオ
「これはいつもの綺麗事だけど、本心からの気持ちでもある」
リリオ
「僕は下層の人たちのために色々なことをしたけど」
リリオ
「浄水器を設置してみたら、水を売っている人が激怒して、浄水器を壊してしまった」
リリオ
「空気清浄機を置いてみたら、場所を巡って人が殺された」
リリオ
「望まない妊娠をした娼婦の相談に乗ってたら、元締めに怒鳴り込まれた事もあった」
リリオ
「2人仲良く乱暴されて、娼婦はずっと僕に恨み言を言っていた」
ラタス
暗闇や寒さのようにありふれた、悪意と欲望にまみれている。
リリオ
「そこでやめておけばいいのに、そのまま家の方に身代金とか要求しちゃってさぁ」
ラタス
この堕落の国では、撒いた種から植物の亡者が生まれるという。
リリオ
「僕がやることは、全然下層のためになっていなかった」
リリオ
「自分のためにしてただけなんだよ。
何もしないのが苦しいから」
ラタス
「下層のために活動しているヤツがいるって噂は口々にされていた」
ラタス
「それで生まれなかったものがないとは言えない」
リリオ
「ラタス、僕が君を好きなのは、そういう所だよ」
リリオ
「僕はずっと孤独だった。自分のためだと思っていても、心は消耗していた」
リリオ
「でも、君が友達になってくれて、君の考え方に触れて、なんだかすごく報われた気がしたんだ」
リリオ
「まぁ~、そこで終わっておけばよかったんだけど」
リリオ
「ラタスが女の子だったらよかったのにな~」
ラタス
「生きていくのには、飯と、暖かい寝床と、それと希望が必要だ」
ラタス
「おれにとって、上から漏れる空の光がそれだった」
リリオ
「堕落の国に来てから、僕の希望は君だった」
リリオ
「さっきも言ったけど、僕本当に人望なくてさ~」
リリオ
「上層の人からもあんまり好かれてなかったし、下層の人たちも声をかけてくるのは下心ある人ばっかりだし」
リリオ
「君に信頼してもらえたのも、友達になれたのも本当に嬉しかった」
リリオ
「それに、君はいつも明るくて、暖かくて、皆の中心で」
ラタス
たき火の燃える音と潮騒とが言葉と言葉の隙間を埋める。
ラタス
ここに至るまでの過程。それはきっと、世界を救うには値しない。
リリオ
世界を救うほどの力はない。
人一人を救うほどの力もない。
リリオ
手のひら一杯の海水くらいは、何か救えたかもしれない。
ラタス
そして夜に沈み行く堕落の国のなかで、今日は良い日だったと思いながら過ごせることの幸せは、
[ ラタス ] 青い窓の見える庭 : 0 → 1