ラタス
ここは仲間が死んだ場所だ。急ごしらえの墓だったが、まだちゃんと残っている。
ラタス
村を救えず、オールという一人の救世主を守れず取りこぼした。
ラタス
先日、海で話したようなことを、あいつはおれたちにもう言っていた。
リリオ
「わからなかった……。
よく聞く話だと思ってた」
リリオ
「オールは性格がいいからそう言ったんだって、そう思った」
ラタス
ただの励ましじゃなかったことが、今になってわかる。
リリオ
希望は必要だ。
それが直接救ってくれなかったとしても。
ラタス
「そうなんだよな。いいやつすぎるのがよくない」
リリオ
「こよみもユキも、ラタスはオールが好きだったんじゃないか、なんて感じだったけど」
リリオ
「レディの前でする話じゃなかったね、ごめん、オール」
リリオ
ここまでの道中で、なんとか集めた雑草の花を添える。
リリオ
「どうしたって、死んだ人間にできることは限られてる」
ラタス
あとしてやれることといえば、亡者となったオールを殺してやることくらいだ。
リリオ
「……夢では、好きな女がいたって言ってた」
リリオ
子供を養うということは、収入が必要になる。
ラタス
「上でゴタゴタに巻き込まれて、下層に堕ちてきた女だった」
リリオ
それはそうだ、肉付きもいいだろうし、肩書きが金になる。
リリオ
その余剰分の金を自分に回せば、それなりに生活はできただろうに。
ラタス
あるいはそうした多少の余裕や剰余を捨てるために、子供を養っていたように見えた。
ラタス
「……別に上で生まれたからって、責任を感じる必要はないのにな」
リリオ
自分が同じ状況になったらどうしていただろう、と思わずにはいられない。
リリオ
同じことをしたかもしれない。
もちろん、しなかったかもしれない。
リリオ
「そうは言ってもさ、何も感じない訳にはいかないよ」
リリオ
「でも、非情に見える人が家族思いだったりするのは珍しい話じゃない。誰にでもどこか優しいところがある」
リリオ
「……って、思いたいな~、と思ってるけど」
ラタス
冷酷な暗殺者の配役を演じていたのは、おれ自身がそうだ。
ラタス
「……何もわかっていなかった時期もあったよ」
リリオ
「腕がいい殺し屋には、支払う金も高くなる」
ラタス
「まあでも、その女に会ってからだな。疑問を抱いたのは」
リリオ
金のために人を殺していたラタス。
人を生かすために働いていた女。
リリオ
上層の人間ということに、引け目を感じていた女。
ラタス
「そいつが病気で死んで、おれは代わりにガキを育てることにした」
リリオ
サッと童貞もらってもらえばよかったのに……
ラタス
そうして、人を生かすために人を殺すことになった。
ラタス
暗く冷たい世界では、その区別は次第に曖昧になっていく。
リリオ
殺した相手にも家族がいただろう。
冷たくなった亡骸に、縋り付く子供もいたかもしれない。
リリオ
あるいは、子供を殺すこともあった、かもしれない。
リリオ
ラタスの子供たちも、そうやって親をなくした子かもしれない。
リリオ
そんな環境を作っているのは、上層の人間だ。娼婦の女が子供を養おうとしたことも分かる。
リリオ
わちゃわちゃするものの、強引には奪わずに適当な所で切り上げる。
ラタス
帽子は廃墟の吹きだまりに引っかかって止まる。
リリオ
わっしゃわっしゃになった頭を手放して、ぽんぽん、と軽く叩いた。
ラタス
あの女の腕を強引にとって、娼婦を辞めさせればよかったのか。
リリオ
正しくないことの中にしか、果たされないことはある。
リリオ
その時にラタスは正しい行いをしたから、自分の前にいる。
ラタス
正しさも、正しくなさも、等しく今に繋がっている。
ラタス
しゃがんだまま、額をリリオの身体に押しつける。
ラタス
自分が本当に重ねていたのは、あの女の育てていた子供だったのではないかと。
リリオ
予知夢を見たとはいえ、ラタスが口にしないことまでは分からない。
リリオ
ただ、ラタスに甘えられているのが嬉しかった。
ラタス
2d6+3>=7 (2D6+3>=7) >
10[4,6]+3 > 13 > 成功
[ リリオ ] ラタス : 0 → 1
リリオ
2d6+3>=7 (2D6+3>=7) >
12[6,6]+3 > 15 > 成功
ラタス
*二人でオールを倒すのは無理なのでは? 難易度を上げようと話していたがスペシャルが出たのでどうしたって勝つことになってしまったので頭を抱えているGMとPL
リリオ
前に4人がかりで倒せなかった亡者を2人で?
リリオ
* 小道具の調達はとうみつでお願いします。
リリオ
スペシャルはなんか……赤と白の鏡騒劇から選んでもいいってことだったので……アリスの証言で……
ラタス
特に策があるわけでもなく、しかし、何かに導かれるようにオールの元へ向かった。
リリオ
そりゃあ、2人で倒すのはちょっと無理すぎる。
リリオ
「人数少ないんだから、オールおまけしてくれないかな」
ラタス
「まあでも、運がよきゃ勝てるかもしんねーからな」
リリオ
「ラタスが童貞じゃなくなるのは残念だけど……」
ラタス
「おれの童貞になにがしかのプライスを見いだすな」
リリオ
「いや~、ラタスを童貞と罵るのが思いの外楽しくて」
リリオ
「乱暴されたっていうのは、そういうやつだよ」
ラタス
「一度もこう、許可に基づいた性交をしていない」
リリオ
「その後こう……普通のはどういう感じなんだろうと思って……」
リリオ
「遊び人と噂の男に声をかけてみたりはしたんだよ」
リリオ
「ラタスが童貞じゃなくなるのは、さみしい」
リリオ
「予知夢を見てからというもの、ラタスの優位に立てている気がするぞ」
リリオ
「だからまぁ、ラタスを拒む理由はないな~ってこと」
リリオ
夢で拒んだことは黙っておこう。
優勢をとり続けたいので。
ラタス
「そういえば夢じゃオールはどうだったんだ」
リリオ
「大きな鳥の亡者になってた。
4人で戦ったから、なんとかなったよ」
リリオ
「やっぱり飛んでるのが厄介だったね。
羽をなんとかしたい所だけど」
ラタス
「ワイヤーで脚を捕まえて、風切り羽根を落とそう」
リリオ
「自由に空を飛んでいる鳥を捕まえるのは大変だ。ある程度動きを読めないとキツいんじゃないか?」
リリオ
「まぁ、一回どんな感じか見るだけ見てみるか」
リリオ
アリスを導く兎。
追いかけた方がいいのだろうか。
リリオ
少なくとも、あれを追いかけてここまで来た。
GM
あなたは兎に追いつけないが、うさぎが落としていくように呟く言葉を聞く。
GM
『彼ら私に言うには彼女の所に行ったきみが――』
リリオ
ラタスに何か説明した方がいいのかもしれない。しかし、どう説明したものか。
GM
『彼は彼女に頼む、彼らを自由にしてやれ、かつて我々がそうであったように』
GM
『むかしきみは、私の考えだと障害だったはず、彼と我々自身と、それの間の』
GM
『彼女が彼らを好きだと彼に知らすな、なぜならこれこそずっと』
GM
『あとの連中みなに隠された、きみ自身と私との間の』
リリオ
言葉はとぎれとぎれで、何かが分かった訳ではない。
ラタス
リリオの脳裏にはっきりと思い浮かべられるデジャヴ。
ラタス
大きく羽ばたいて、潜るように嘴を前に降りてくる、その軌跡。
リリオ
今は2人。勝てる訳がない。
動きが読めず、空を飛ぶ鳥を捕まえられる訳がない。
リリオ
しかし目の前の亡者は、前に見た姿そのままで。
リリオ
あの時は必死だった。こんなにはっきりと覚えているはずがない。
リリオ
しかし亡者の動きが分かっているのなら、そう難しいことはない。
ラタス
完璧なタイミング。遅れてくる突風を適切な姿勢で往なして。
リリオ
ワイヤーを射出する。
適切なタイミングで、適切な位置に。
ラタス
ラタスも合わせて跳躍していた。その成功を信じていたように。
リリオ
こんなに上手く行くなんて信じられない。
導かれた。白兎に。
ラタス
そしてその一撃は、非力で小さなナイフとは思えないほど鋭利に羽を断つ。
リリオ
ラタスの黒いナイフが、亡者を引き裂くのを見上げる。
ラタス
ついぞ明かされることのなかった『秘密』が、
ラタス
赤く濡れた羽が、祝福の花びらのようにリリオに落ちる。
リリオ
「亡者になって、喜ぶタイプでもないしな~」
リリオ
「ラタス……、やっぱりこれは正しくないことだ」
リリオ
「こよみやユキを置いて、僕だけが君の時間を独り占めして、君の心残りをなくす旅をしている」
ラタス
そのことだけは、ラタスはすでにわかっている。