ラタス
街だ。
リリオ
街だなぁ。
ラタス
交易の拠点にある街で、たくさんの人で賑わっている。
ラタス
おおよその施設や店がある。
リリオ
特に街に用事がある訳ではないが、野宿しなくて済むのはいいことだ。
ラタス
用事がないんですか?
リリオ
買い物とかする用事はないかな……
ラタス
「まずは飯だな」
リリオ
「それと酒だろ?」
ラタス
「もちろん」
ラタス
適当に目についた店に行く。おおよそ、一階が酒場で、2階が宿屋になっているあれだ。
リリオ
あれだなぁ
ラタス
末裔に適当に料理と酒を頼む。
リリオ
なんだか女三人で話し合った覚えがある店だ。
リリオ
気まずい。
ラタス
「なんでそわそわしてるんだ」
リリオ
「いや~~~~」
リリオ
「これ言ったほうがいいのか?
言わないほうがいいのか?」
ラタス
「なにがだよ」
ラタス
「それ言ってる時点でだいたい言うことになるだろ」
リリオ
「そうだな~」
リリオ
「あそこのテーブルで」
指差す。
リリオ
「誰がラタスとやるか相談した」
ラタス
吹き出す。
ラタス
「相談の結果の3人プレイか」
ラタス
「相談の結果の3人プレイか~」
リリオ
「大変だったな~」
リリオ
「2回も言うなよ~」
ラタス
「そりゃどーーーかんがえてもお前が身を引いて行かせたやつだな!?」
リリオ
「あっはっはっはっは」
リリオ
「いや~、こよみが意外と鋭くて……」
リリオ
「苦戦したけど、まぁ?
僕にかかればちょちょいのちょいさ」
ラタス
「自慢げに言うな」
ラタス
「童貞に優しくしろ!」
リリオ
「あっはっはっは」
リリオ
「その後ラタスにすごい文句言われた」
ラタス
「だろうな!」
リリオ
「荷が重いって」
リリオ
「そりゃ~そうだよな~」
リリオ
「あはははは」
ラタス
「そのあいだお前は何してたんだよ」
リリオ
「普通に寝てたけど?」
ラタス
「ふーん」
リリオ
「泣いてたりした方がよかった?」
ラタス
「いやあ、まさか」
ラタス
「まあ、いいか」
リリオ
「えー、言いかけたなら言えよ」
ラタス
「どうせ泣いててもお前は言わないからな」
ラタス
「聞くだけ無駄だな~って思っただけだ」
リリオ
「それもそうだな」
リリオ
「でも、泣いてないのは本当。だって僕が仕向けたことだしね」
ラタス
「そうかよ」
ラタス
「それじゃ二人を寄こしたのは正解だったのかもな」
リリオ
運ばれてきた酒を飲む。
リリオ
「どうかなぁ」
リリオ
「正解だったと思うし、後悔はなかったけど、なぜか今ここに2人はいない」
ラタス
「何故だろうなあ」
ラタス
グラスを傾けて酒を呷る。
リリオ
「……やっぱり4人で来るべきだった」
リリオ
「そう断言できない」
リリオ
「それが嫌だな~って思ってる」
ラタス
「ははは」
ラタス
「……結局のところ」
ラタス
「べきって言葉で話せば」
ラタス
「この世界で生きてはいけない」
ラタス
「そうだろ」
リリオ
「そうだな」
リリオ
「べきって言葉で話すなら、そもそも救世主は存在しないべきじゃない?」
リリオ
「他の世界から人間を呼んだりしないで、自分たちでなんとかするべきだ」
ラタス
「可能ならな」
リリオ
「可能なら、そうするだろうね」
ラタス
「そもそも、末裔達が自分で呼んでるわけでもないだろうし」
リリオ
「誰が呼んでるんだ」
ラタス
「さあなあ」
リリオ
「末裔にも結構迷惑かかってるのにな~」
ラタス
「公爵家あたりに聞いてみてくれよ」
リリオ
「聞く暇ができたら聞いてみるよ」
ラタス
薄い酒をガンガン飲む。
リリオ
「ちょっとペース早くないか?」
ラタス
「酔ってるくらいがちょうどいいこともあるってことだな」
リリオ
「水飲む?」
ラタス
「大丈夫だ」
リリオ
ラタスを無視して、ピッチャーで水を持ってきてもらう。
リリオ
コップに注いだ水を置く。
リリオ
「はい」
ラタス
亡者の肉のなにやらのつまみを頬張っている。
ラタス
「ん」
ラタス
飲む。
ラタス
「お前はもう酒はいいのか?」
リリオ
「飲んでるよ~」
リリオ
「酔ってた方がいい?」
ラタス
「お前は酔ってもあまり変わらないからな」
ラタス
「それとも、お前にも酔ってるくらいがちょうどいいことがあったりするのか?」
リリオ
「酔ってないと耐えられない時はあるかな」
リリオ
「あんまり聞きたくない話を聞く時とかね」
ラタス
「聞きたくない話か」
ラタス
「でも、あれだろ」
ラタス
「お前はその予知夢とやらで、だいたい知ってるんだろ」
ラタス
何を知ってて、何を知らないのかは、知らないが。
リリオ
「大体は知ってるけどさ、聞いてて楽しい話と、居心地が悪い話ってあるじゃない」
リリオ
「今は居心地悪くないから、そんなに飲まずに済んでるわけ」
ラタス
「機嫌がいいのはいいことだな」
リリオ
「いいことだな~、死ぬまで機嫌よくいきたい」
ラタス
「死ぬまでね」
リリオ
「そうだな」
ラタス
「狂飆の頂、お前も登るのか」
リリオ
「え~?どうしよっかな~」
リリオ
「まぁ、どっちにしても麓までは行くよねぇ」
ラタス
「まあ、決めることもないか」
リリオ
「そうだねぇ」
リリオ
「その時の気分次第ってことで」
ラタス
「まったくご機嫌なこった」
リリオ
「そうだな、僕は今ご機嫌だ」
ラタス
「引き返すっていうなら、こよみとユキを頼むよ」
リリオ
「…………」
リリオ
「やだ」
ラタス
「やだか」
リリオ
「いいよ」
ラタス
「どっちだよ」
リリオ
「一回やだって言いたかった」
ラタス
「かわいいな」
リリオ
「…………」
リリオ
酒のおかわりを注文する。
ラタス
「居心地悪くなってるんじゃねえ」
リリオ
「引き返すなら責任は取るよ」
リリオ
話をそらした。
リリオ
いや、戻したのか?
ラタス
「そのうえで、好きにしろ、と言わせてもらうさ」
リリオ
「…………」
ラタス
「おれの希望は言った。その上で、お前が好きにしたらいい」
ラタス
「全部放りだしたって、責めたりはしねー」
リリオ
「無視できる訳ないだろ」
リリオ
「今から死ぬ、愛した人の言葉を無視できる訳がない」
ラタス
酒を飲む。
リリオ
「それはお前にもわかるはずだ」
リリオ
先に酒を注文しておく。
足りなくなる気がしてきた。
ラタス
「違うな」
ラタス
「それは違う」
ラタス
「本当に伝えたいことはそうじゃない、だろ」
ラタス
「お前が好きにしたらいい」
リリオ
「えー?」
ラタス
「そういうことだ」
リリオ
「本当に伝えたいことってなると、死ぬなよバカになるけど」
ラタス
「ははは」
ラタス
「それはそうだな」
リリオ
「あと……めんどくさいことになる前に、誰か1人をとっとと選んでおけよとか……」
リリオ
「好かれてるの分かっててほったらかしにするなよとか……」
ラタス
「えっ」
ラタス
「それはそもそも」
ラタス
「お前があえて無視してると思ってたんだが」
ラタス
「違うのか?」
ラタス
「4人でいたときから……」
リリオ
「は!?」
リリオ
「そういう……何かあったか!?」
ラタス
「あったろ!」
リリオ
「あったかな……?」
ラタス
「はーーーっ」
リリオ
運ばれた酒に口を付ける。
リリオ
「いや、なくなかったか……?
ない……気がする……」
ラタス
「あったろ!!」
ラタス
「そのつど気付かないふりみたいなのしてたろ!」
リリオ
「ええ……?
全然分からない……」
リリオ
「それ、本当に気付いてなかったんじゃないのか……?」
ラタス
「……」
ラタス
「ちょっとショックを受けているぞおれは」
リリオ
「それはごめん」
リリオ
酒を飲む。気まずい。
ラタス
「酒が進むことだなぁ」
ラタス
ごくごく。おいしいなあ。
リリオ
「不本意ながらな……」
リリオ
ごくごく。う~んもっと強い酒ないかな~!
リリオ
「そもそも、僕は2人で旅してた時からラタスのことが好きで……」
ラタス
「?」
ラタス
「??」
ラタス
「え?」
ラタス
水を飲む。飲み過ぎたのだろうか? これは本当に水だろうか?
リリオ
「本当は、ずっと2人でいたかったんだけど……」
リリオ
酒を飲む。これ最後まで話さなくてもいいんじゃない?いやでも言いかけたの途中でやめるなって言ったしな~。
リリオ
「でも、ユキもこよみも困ってそうだったからぁ……。仲間に誘ったんだけど……」
ラタス
つまんだ豆が口に運ばれないままずっとつままれっぱなしになっている。
ラタス
「まああれはほっとけないよな……」
リリオ
「うん……」
リリオ
「にぎやかになったし、裁判も楽になったし、2人を誘ってよかったとは思ってる」
ラタス
「そうなんだよな」
ラタス
「ふたりのことも、気に入ってるよ」
ラタス
「大事に思っている」
ラタス
「でもまあ、なんか結論から言うとこの世界がクソすぎるってことにならないか?」
リリオ
「なるな~」
ラタス
「なんだよ30日ルールって」
リリオ
「本当に意味がわからない」
ラタス
「悪意丸出しすぎるだろ」
リリオ
「呼ばれる方の身にもなってほしい」
リリオ
「あと好き勝手やられる末裔のことも考えて欲しい」
ラタス
「招待というか拉致だもんな」
リリオ
「しかも帰る方法はほぼ無いんだもんな」
リリオ
「せめて頑張れば戻れるくらいにしてほしい」
ラタス
「ほんとだよ」
リリオ
「…………そういえば、好きに責めていいって言ってたな」
リリオ
「もう一個文句言っていい?」
ラタス
「……いいよ」
リリオ
「夢の中で、お前はさ……」
リリオ
「こよみと、ユキにも愛してるって言って」
リリオ
「僕にも愛してるって言って」
リリオ
「お前……」
リリオ
「お前な!?」
リリオ
「ってなるだろ!!」
ラタス
「いや、愛してはいるだろ、3人とも」
リリオ
「うるさい!ごめんなさいと言え!」
ラタス
「はいはいごめんなさいごめんなさい」
リリオ
「誠意がゼロだな~~~!!」
ラタス
「愛してはいる」
リリオ
大きくため息を吐いて、ジョッキを煽った。
ラタス
「ただ」
ラタス
「どう愛しているかは違うつもりだ」
ラタス
机に置かれたリリオの手に手を重ねる。
リリオ
手をちらりと見て、反対の手で酒を注いだ。
リリオ
一回飲む。
リリオ
「そういうのは言ってくれ……」
リリオ
「まぁ、個別に言える状況でもなかったけど」
リリオ
少し迷って、重なる手に指を絡めた。
ラタス
いくらかの沈黙。
ラタス
「悪いな」
リリオ
「いいよ」
リリオ
「どうせ僕は、君に何をされても許してしまう」
ラタス
「それは、どうしてだ?」
リリオ
「……愛しているからだけど?」
ラタス
「ああ」
ラタス
「何度聞いても」
ラタス
「どんな酒よりも酔いが回る」
リリオ
「そういう!所だぞ!!」
リリオ
「嘘童貞!!」
ラタス
「おれも、お前になら何をされても許せる」
リリオ
「…………」
リリオ
酒を飲もう。お酒はおいしいな。ごくごく。
ラタス
「理由は聞かないのか?」
リリオ
「これ飲んだら聞く」
リリオ
ジョッキが空になる。おかわりを頼んだ。
ラタス
どちらが飲み過ぎなのか……。
リリオ
「…………」
リリオ
「なんで……?」
ラタス
「そりゃ」
ラタス
「愛してるからな」
リリオ
「どう愛してるか違うって話、聞かなきゃよかった」
ラタス
「予知も完璧じゃないみたいだなぁ」
リリオ
「本当に酔いが回る……」
リリオ
「さっきまで結構平気だったのに」
ラタス
「普通に飲み過ぎって線もある」
ラタス
水の注がれたグラスを渡す。
リリオ
水を飲む。
リリオ
確かにこんなに飲んだのは久しぶりだ。
ラタス
「全部、でも、そうだな」
ラタス
「それだけ本当は話すべきことがたくさんあった」
ラタス
「手紙一つで去ろうとして、悪かったな」
リリオ
「そうだよ」
リリオ
「僕は君と、話足りなかった」
リリオ
「全然、話足りなかったんだ……」
リリオ
「だから、独占欲こじらせてこんな事になっちゃっただろうが」
ラタス
「お互い、小手先ばかりが上手いからなぁ」
ラタス
ははは。
ラタス
「こよみを見習うべきだな……」
リリオ
「見習うべきだな……」
リリオ
愛型の愛、見習う所が多いな~
リリオ
* 特に何もせずクエストだけやります
リリオ
リリオ
2d6+3>=9 (2D6+3>=9) > 7[3,4]+3 > 10 > 成功
リリオ
はい
ラタス
はい
ラタス
「リリオ」
リリオ
「ん?」
ラタス
「今夜お前を抱く」
リリオ
「タイム」
リリオ
酒を煽る。
ラタス
こよみに見習いました。
リリオ
一杯飲み干した。
リリオ
「…………」
リリオ
「すいません、おかわり」
ラタス
じっと見ている。
リリオ
「今すごく居心地が悪い」
ラタス
「水も飲んでおけよ」
リリオ
言われたまま水を飲もうとしたが、一回酔っておかないとキツそうだったのでやめておく。
リリオ
「今手汗がヤバい」
リリオ
「一回手離していい?」
ラタス
「いいぜ」
リリオ
離した。手を拭く。
リリオ
おかわりが運ばれてきたので、飲む。
リリオ
できるだけ一気に。
リリオ
「ふう~……」
リリオ
テーブルに額を打ち付ける。
リリオ
「マジでか~……」
ラタス
「マジだな~」
リリオ
しばらくそうしていたが、のろのろと頭を上げる。
リリオ
長い、長いため息。
リリオ
ラタスの手に、再び指を絡ませる。
ラタス
応える。
リリオ
「いいよ、めちゃくちゃにして」
ラタス
「そういうのが好きなのか?」
リリオ
「どう見える?」
ラタス
「そ~だな~」
ラタス
「ロマンチストそうだから、ムードが大事で、ゆっくりと順序立てて――」
リリオ
「ははは」
リリオ
「僕が君をお姫様にしてもいいけど?」
ラタス
「おれにもプライドはあるんだぜ」
ラタス
「かっこつけさせてくれ」
リリオ
「え~、僕もかっこつけたいんだけど」
ラタス
「あ~聞こえないな」
リリオ
「え~」
ラタス
「じゃあ、あれだな」
ラタス
「お前がかっこつけられないくらいには」
ラタス
「頑張りたいところだ」
リリオ
絡めた手をすくうように取る。
リリオ
手の甲に口付けを落とす。
リリオ
「楽しみにしてるよ」
ラタス
「ああ」
ラタス
ラタス
後ろ手でドアを閉め、鍵を掛ける。
リリオ
部屋に入って、荷物や外套を置く。
ラタス
同じように身軽になって、伸びをする。
ラタス
「ふー」
リリオ
「飲みすぎた」
リリオ
ベッドに腰掛ける。
ラタス
「ほんとにな」
ラタス
水差しに水を貰って、部屋に持ち込んでいる。
リリオ
のろのろと靴紐を解いている。
ラタス
グラスに注いで、サイドテーブルに二つ置く。
リリオ
「お、気が利く」
リリオ
水を飲む。水はおいしいなぁ。
ラタス
ごくごく。美味しいなあ。
リリオ
「ふー」
ラタス
同じベッドに腰掛ける。
リリオ
隣に座ったなぁ。
ラタス
帽子もコートもなく、今はシャツ一枚。
リリオ
「そういえばさ、ラタスは僕のこと知ってたんだろ」
ラタス
「ん、ああ」
ラタス
身体を横倒しにして、リリオの太ももに頭を乗せる。膝枕だ。
リリオ
「はは、甘えん坊だなぁ」
リリオ
頭を撫でる。
リリオ
「最初の頃、女だってバレたらどうしようかな~って、結構心配してたんだぞ」
ラタス
「なんかそんな気がしたから黙ってた」
リリオ
「ははは」
リリオ
「まぁ、結果よかったかもね」
ラタス
しばらく気付いてないふりをしてたな。
リリオ
別の部屋とかになると、泊まりにくくなるしな~
ラタス
「あれはあれで楽だったよな」
ラタス
とはいえ、堕落の国に猶予はあまりなく、4人でも同じ部屋に泊まるのがしょっちゅうだ。
リリオ
「楽だったねぇ……」
ラタス
頭を撫でられている。
ラタス
寝そうだ。
リリオ
「全然嫌じゃなかった」
ラタス
寝るなこれ。
リリオ
我が子を慈しむように、頭を撫でている。
ラタス
脚をベッドに乗っけて、膝枕されたまま仰向けになる。
ラタス
したからリリオの顔を見上げている。
ラタス
「楽しかった。今も昔もずっと」
リリオ
「そうだなぁ、それは同感」
リリオ
「堕落の国は最悪だったけど、君と過ごした時間は楽しかった」
ラタス
手を伸ばし、リリオの顔にぺたぺた触れる。
リリオ
「どうした?」
ラタス
輪郭や、鼻のかたちを確かめるように。
ラタス
「ん、触ってるだけ」
リリオ
「そうか」
リリオ
「じゃあ僕も触ろう」
リリオ
ラタスの顔を触る。ヒゲをじょりじょりしたり、頬を撫でたり、眉毛をなぞったり。
ラタス
じょりじょりだぜ。
リリオ
じょりじょりだな~
ラタス
「美人だな」
リリオ
「そんなことないと思うけど」
リリオ
「褒め言葉としてありがたく受け取っておくよ」
リリオ
美しい姉に比べられて、リリオは母から容姿を嘆かれることが多かった。
ラタス
「見れば見るほどきれいだ」
リリオ
「いやぁ、照れるなぁ」
ラタス
造形を確かめるように、まだ触れている。
ラタス
こうして手の平で、指で触れていると、自分のものになった感じがして良い。
リリオ
自分でも、きつい目つきをしていると思う。髪を切ってからは、男に間違われることも多い。
ラタス
そういうことを思う。
リリオ
でも、ラタスがきれいだと思ってくれるなら、よかった。
リリオ
「君は相変わらず、無駄に整った顔をしている」
リリオ
「無駄だな~」
ラタス
「無駄じゃないだろ~」
リリオ
「ちょっと盛りすぎだとは思うな~」
ラタス
「かっこつけたセリフを言うときかっこつくからな」
ラタス
「顔がいいと最高だぜ~」
リリオ
「はは、それはそうだ」
ラタス
じっとしたから見上げている。
ラタス
親指の腹でリリオの唇の柔らかさを確かめる。
リリオ
ラタスの肉付きの薄い頬を撫でる。輪郭をなぞって、唇に触れる。
リリオ
屈み込んで、口付けを落とす。
ラタス
目を閉じてそれを受ける。
リリオ
そのまま、頬や、額にも。
ラタス
静かにされるようにされている。
ラタス
それから猫のように不意に身体の向きを変え、リリオの腹に顔を押し当てる。
ラタス
じゃれて遊ぶように腹を柔らかく噛む。
リリオ
「はは、やめろやめろ」
ラタス
あぐあぐしている。
リリオ
「やめろってば~」
リリオ
やめろと言うが、おかしそうに笑うだけで止めはしない。
ラタス
顔をうずめたまま、服の下から手を滑り込ませ、背中に触れる。
リリオ
腹に顔を埋める、ラタスの髪を撫でる。
ラタス
身の細さ、背骨の形をなぞる。
リリオ
薄い皮膚の下に、華奢な背骨が並ぶ。
ラタス
人を殺すときの手触りがこの手について離れない。
ラタス
だから生きているお前を触れて、触れて、今だけは。
リリオ
シャツを脱ぐ。
ラタス
抱く。
リリオ
暗殺者の腕の中に収まっている。
ラタス
素肌で触れる腹の柔らかさ。
ラタス
ゆっくりとベッドに押し倒し、入れ替わるように身体を起こす。
リリオ
ラタスを見上げる。
リリオ
どうしても、人工肺に視線が行ってしまう。
ラタス
両腕をベッドについて見下ろす。長い金髪が滑り、リリオの肌にかかる。
ラタス
人工肺は今も無粋な音を立てる。
ラタス
罪に生かされている。
リリオ
罪がそこにある。
ラタス
キツく抱擁するときに、邪魔になるだろうか。
ラタス
口付けをする。長く、深く。
リリオ
視界を遮られてしまった。
ラタス
キスの合間の息継ぎを愛おしむ。
リリオ
首に腕を回して、受け入れる。
リリオ
ラタスを求める。
ラタス
両手で頭に触れて、指先は髪に滑り込ませる。
ラタス
体温、汗ばんでいるのを感じる。
リリオ
息継ぎ、しばし見つめ合い、また求める。
ラタス
留め置いた分の感情を発露するように、執拗な口付け。
ラタス
それから顔を上げ、片手で髪をかき上げる。うっとうしい。
リリオ
「……ふふ」
リリオ
「髪、邪魔そうだな」
ラタス
「すーげーじゃま」
ラタス
唾液で濡れた唇に張り付くのを取っている。
リリオ
張り付いた髪を取るのを手伝う。
リリオ
「なんで伸ばしてるんだ?」
ラタス
「かっこいいから」
リリオ
「あははは」
リリオ
「かっこいいなら仕方ないな」
ラタス
「かっこいい以外には特になにないぜ」
ラタス
「あ、割と暖かいのあるな~」
リリオ
「実際お前はかっこいいよ」
リリオ
「何度も言ってるけど」
リリオ
「無駄にかっこいいから、いたいけな乙女達が騙されるんだな~」
ラタス
「ははは」
ラタス
「かっこよさ独り占めだな」
ラタス
言いつつも、今こうして見下ろしているのはおれで、それがたまらなく支配欲を満たす。
リリオ
自分が上に行こうと思っていたが、まぁいいか、と思ってしまった。
リリオ
ラタスの背に手を回す。
リリオ
「う~ん、やっぱり人工肺が間に挟まる」
ラタス
「あとで取る」
ラタス
「息が浅くなるからな」
リリオ
「いいよ、そのままで」
リリオ
「思う所はあるけど、これもラタスの一部だ」
ラタス
「そうだな」
ラタス
人工肺のついた胸に対して、リリオの胸を見下ろす。
ラタス
手の全体で確かめるように触れる。
ラタス
手触りを確かめるようにやわやわする。
ラタス
「やらけーな!」
リリオ
控えめな脂肪と、しっとりした皮膚が手のひらに吸い付く。
リリオ
「ん……」
リリオ
「あんまり大きくなくて申し訳ないけど」
リリオ
言う割に、申し訳なさそうな口調ではない。
ラタス
感触を楽しむようにしばらくやわやわしている。
ラタス
いささか情緒にかける手付き。
リリオ
「ふふ、あはは」
リリオ
「くすぐったい」
ラタス
「ははは」
ラタス
そのまま指先で慰撫する。
リリオ
「ん……」
ラタス
細めた目でリリオの顔を見る。
ラタス
触れて悶える身体と声は、刃先を肌に突き立てるのに似ている。
リリオ
はぁっ、と深く息を吸う。
リリオ
ラタスの服の下にも、手を入れる。
リリオ
腹を、背を撫でる。
リリオ
体の輪郭を確かめるように。
ラタス
自分の手のなかのささいなもので、相手を支配する。その暴力の痺れるような快感。
ラタス
ラタスの身体は細く締まっている。
リリオ
暴力を受け入れる。
ラタス
栄養の不足した世界で育った。
リリオ
これは暴力ではない。
リリオ
暴力であるのなら、こんなに熱っぽい視線は注がれない。
ラタス
であるならば、猟奇。
ラタス
支配する、踏み込む、侵襲する、その一連に愛おしさと快を見いだす資質がある。
ラタス
「リリオ」
リリオ
「ん?」
ラタス
「呼んだだけ」
リリオ
「はは」
リリオ
「ラタス」
ラタス
舌が返事をする、言葉ではない形で。
ラタス
胸に顔を埋める。
リリオ
「んぅ……」
リリオ
「もう」
ラタス
わずかにでも誤れば殺してしまうのではないかという空想が頭について離れない。
ラタス
それが良いと感じる。
ラタス
心臓が近い。
ラタス
拍動の音を聞いている。
リリオ
リリオは富裕層の娘だ。肉付きは悪くない。しかし薄い骨格の手触りは、脆い。
リリオ
ラタスに比べると小さい心臓は、少し早いリズムを刻んでいる。
ラタス
その速さが良い。
ラタス
生きたままの心臓を、直接触れて確かめることはできない。
ラタス
その血を味わうことはできない。
ラタス
だから代わりに、指が、舌が、その胸を這う。
ラタス
歯が甘く噛む。
リリオ
「あ」
リリオ
ラタスがたまに見せる猟奇が怖い。
そう思っている。
リリオ
しかし、怖いだけで、嫌いではない。
直接猟奇で触れないのなら、なおさら。
リリオ
飲み込みやすく糖衣がかけられた猟奇に、体を震わせる。
ラタス
満たされるものを感じる。
リリオ
「ラタス」
ラタス
ベルトを外す。
ラタス
「ああ」
ラタス
金具が音を立てる。
リリオ
「愛してるよ」
ラタス
「愛してる」
ラタス
「お前が好きだ」
リリオ
「ふふ」
リリオ
「それは初めて言われた気がする」
ラタス
「夢のおれは気が利かないな」
リリオ
「気が利かない童貞男だったなぁ」
リリオ
「ラタス」
リリオ
「きみが好きだよ」
ラタス
「うれしいぜ」
リリオ
「ラタスが嬉しいなら、よかった」
ラタス
「ああ、うれしい」
リリオ
「僕もうれしい」
リリオ
今ここで死んでしまえたらいいのに。
そう思ったけれど、口にしなかった。
ラタス
「リリオ」
リリオ
「ん」
ラタス
「脱がすぞ」
リリオ
「うん」
リリオ
小さく笑う。
リリオ
「いいよ、聞かなくて」
ラタス
「聞いた方が」
ラタス
「おれのものになったかんじが」
ラタス
「いい」
リリオ
「あはは」
ラタス
ベルトを外す。一つ、二つ。
ラタス
厳重に鍵の掛けられた箱のようだ。
リリオ
「僕は君のものだよ。残念ながらね」
ラタス
「おれは気の利かない童貞男だが」
ラタス
「奪うのは一流だからな」
リリオ
「ははは」
リリオ
ラタスの方に、手をのばす。
ラタス
されるようにされる。
リリオ
「ラタスも僕のものになった、って思っていいのかな?」
ラタス
「ああ」
リリオ
やわやわと、指先が弄ぶ。
ラタス
「でも、そうだな」
ラタス
「まだもらってないものを、これからもらう」
ラタス
「まだやってないものを、これからやる」
リリオ
「楽しみだ」
ラタス
ズボンを剥ぎ、逸る気持ちを抑えて下着姿を見下ろして眺める。
リリオ
自らの腕を抱き、僅かに顔を逸した。
リリオ
「そんなに見るなよ」
ラタス
「奪ったものは」
ラタス
「ひとしきり愛でるものだろ」
リリオ
「そう?」
リリオ
「奪ったものを愛でる男を好きになったのは、よかったな」
ラタス
笑う。
ラタス
下着に手を掛ける。
リリオ
肌が露わになる。
リリオ
薄暗い部屋の中、胸が小さく上下している。
ラタス
その無防備さが胸を打つ。
ラタス
「リリオ」
リリオ
「ん」
ラタス
「愛している」
リリオ
「愛してるよ」
ラタス
名前は、愛の言葉は、何度口にしてもいい。何度耳にしてもいい。
リリオ
「ラタス」
ラタス
「ああ」
リリオ
「好き」
リリオ
「愛してる」
リリオ
「大好き」
ラタス
その言葉に許されて、突き入れる。
リリオ
「あ」
ラタス
「ああ」
ラタス
「好きだ、リリオ」
ラタス
ラタス
ラタス
[ リリオ ] ラタスの寵愛 : 0 → 1
ラタス
ラタス
ラタス
ラタス
1d6 (1D6) > 4
ラタス
*それが22日目のこと。
ラタス
リリオ
* オールのクエスト報酬で水パイプ獲得