ラタス
交易の拠点にある街で、たくさんの人で賑わっている。
リリオ
特に街に用事がある訳ではないが、野宿しなくて済むのはいいことだ。
ラタス
適当に目についた店に行く。おおよそ、一階が酒場で、2階が宿屋になっているあれだ。
リリオ
なんだか女三人で話し合った覚えがある店だ。
リリオ
「これ言ったほうがいいのか?
言わないほうがいいのか?」
ラタス
「それ言ってる時点でだいたい言うことになるだろ」
ラタス
「そりゃどーーーかんがえてもお前が身を引いて行かせたやつだな!?」
リリオ
「苦戦したけど、まぁ?
僕にかかればちょちょいのちょいさ」
リリオ
「でも、泣いてないのは本当。だって僕が仕向けたことだしね」
ラタス
「それじゃ二人を寄こしたのは正解だったのかもな」
リリオ
「正解だったと思うし、後悔はなかったけど、なぜか今ここに2人はいない」
リリオ
「べきって言葉で話すなら、そもそも救世主は存在しないべきじゃない?」
リリオ
「他の世界から人間を呼んだりしないで、自分たちでなんとかするべきだ」
ラタス
「そもそも、末裔達が自分で呼んでるわけでもないだろうし」
ラタス
「酔ってるくらいがちょうどいいこともあるってことだな」
リリオ
ラタスを無視して、ピッチャーで水を持ってきてもらう。
ラタス
亡者の肉のなにやらのつまみを頬張っている。
ラタス
「それとも、お前にも酔ってるくらいがちょうどいいことがあったりするのか?」
ラタス
「お前はその予知夢とやらで、だいたい知ってるんだろ」
ラタス
何を知ってて、何を知らないのかは、知らないが。
リリオ
「大体は知ってるけどさ、聞いてて楽しい話と、居心地が悪い話ってあるじゃない」
リリオ
「今は居心地悪くないから、そんなに飲まずに済んでるわけ」
リリオ
「いいことだな~、死ぬまで機嫌よくいきたい」
リリオ
「まぁ、どっちにしても麓までは行くよねぇ」
ラタス
「引き返すっていうなら、こよみとユキを頼むよ」
ラタス
「そのうえで、好きにしろ、と言わせてもらうさ」
ラタス
「おれの希望は言った。その上で、お前が好きにしたらいい」
リリオ
「今から死ぬ、愛した人の言葉を無視できる訳がない」
リリオ
先に酒を注文しておく。
足りなくなる気がしてきた。
ラタス
「本当に伝えたいことはそうじゃない、だろ」
リリオ
「本当に伝えたいことってなると、死ぬなよバカになるけど」
リリオ
「あと……めんどくさいことになる前に、誰か1人をとっとと選んでおけよとか……」
リリオ
「好かれてるの分かっててほったらかしにするなよとか……」
ラタス
「お前があえて無視してると思ってたんだが」
リリオ
「いや、なくなかったか……?
ない……気がする……」
ラタス
「そのつど気付かないふりみたいなのしてたろ!」
リリオ
「それ、本当に気付いてなかったんじゃないのか……?」
リリオ
「そもそも、僕は2人で旅してた時からラタスのことが好きで……」
ラタス
水を飲む。飲み過ぎたのだろうか? これは本当に水だろうか?
リリオ
「本当は、ずっと2人でいたかったんだけど……」
リリオ
酒を飲む。これ最後まで話さなくてもいいんじゃない?いやでも言いかけたの途中でやめるなって言ったしな~。
リリオ
「でも、ユキもこよみも困ってそうだったからぁ……。仲間に誘ったんだけど……」
ラタス
つまんだ豆が口に運ばれないままずっとつままれっぱなしになっている。
リリオ
「にぎやかになったし、裁判も楽になったし、2人を誘ってよかったとは思ってる」
ラタス
「でもまあ、なんか結論から言うとこの世界がクソすぎるってことにならないか?」
リリオ
「あと好き勝手やられる末裔のことも考えて欲しい」
リリオ
「せめて頑張れば戻れるくらいにしてほしい」
リリオ
「…………そういえば、好きに責めていいって言ってたな」
リリオ
「まぁ、個別に言える状況でもなかったけど」
リリオ
「どうせ僕は、君に何をされても許してしまう」
リリオ
「どう愛してるか違うって話、聞かなきゃよかった」
ラタス
「それだけ本当は話すべきことがたくさんあった」
リリオ
「だから、独占欲こじらせてこんな事になっちゃっただろうが」
リリオ
2d6+3>=9 (2D6+3>=9) > 7[3,4]+3
> 10 > 成功
リリオ
言われたまま水を飲もうとしたが、一回酔っておかないとキツそうだったのでやめておく。
リリオ
しばらくそうしていたが、のろのろと頭を上げる。
ラタス
「ロマンチストそうだから、ムードが大事で、ゆっくりと順序立てて――」
ラタス
水差しに水を貰って、部屋に持ち込んでいる。
ラタス
グラスに注いで、サイドテーブルに二つ置く。
リリオ
「そういえばさ、ラタスは僕のこと知ってたんだろ」
ラタス
身体を横倒しにして、リリオの太ももに頭を乗せる。膝枕だ。
リリオ
「最初の頃、女だってバレたらどうしようかな~って、結構心配してたんだぞ」
リリオ
別の部屋とかになると、泊まりにくくなるしな~
ラタス
とはいえ、堕落の国に猶予はあまりなく、4人でも同じ部屋に泊まるのがしょっちゅうだ。
ラタス
脚をベッドに乗っけて、膝枕されたまま仰向けになる。
リリオ
「堕落の国は最悪だったけど、君と過ごした時間は楽しかった」
リリオ
ラタスの顔を触る。ヒゲをじょりじょりしたり、頬を撫でたり、眉毛をなぞったり。
リリオ
「褒め言葉としてありがたく受け取っておくよ」
リリオ
美しい姉に比べられて、リリオは母から容姿を嘆かれることが多かった。
ラタス
こうして手の平で、指で触れていると、自分のものになった感じがして良い。
リリオ
自分でも、きつい目つきをしていると思う。髪を切ってからは、男に間違われることも多い。
リリオ
でも、ラタスがきれいだと思ってくれるなら、よかった。
リリオ
「君は相変わらず、無駄に整った顔をしている」
ラタス
「かっこつけたセリフを言うときかっこつくからな」
ラタス
親指の腹でリリオの唇の柔らかさを確かめる。
リリオ
ラタスの肉付きの薄い頬を撫でる。輪郭をなぞって、唇に触れる。
ラタス
それから猫のように不意に身体の向きを変え、リリオの腹に顔を押し当てる。
リリオ
やめろと言うが、おかしそうに笑うだけで止めはしない。
ラタス
顔をうずめたまま、服の下から手を滑り込ませ、背中に触れる。
ラタス
人を殺すときの手触りがこの手について離れない。
ラタス
だから生きているお前を触れて、触れて、今だけは。
ラタス
ゆっくりとベッドに押し倒し、入れ替わるように身体を起こす。
ラタス
両腕をベッドについて見下ろす。長い金髪が滑り、リリオの肌にかかる。
ラタス
キツく抱擁するときに、邪魔になるだろうか。
ラタス
両手で頭に触れて、指先は髪に滑り込ませる。
ラタス
留め置いた分の感情を発露するように、執拗な口付け。
ラタス
それから顔を上げ、片手で髪をかき上げる。うっとうしい。
リリオ
「無駄にかっこいいから、いたいけな乙女達が騙されるんだな~」
ラタス
言いつつも、今こうして見下ろしているのはおれで、それがたまらなく支配欲を満たす。
リリオ
自分が上に行こうと思っていたが、まぁいいか、と思ってしまった。
リリオ
「思う所はあるけど、これもラタスの一部だ」
ラタス
人工肺のついた胸に対して、リリオの胸を見下ろす。
リリオ
控えめな脂肪と、しっとりした皮膚が手のひらに吸い付く。
ラタス
感触を楽しむようにしばらくやわやわしている。
ラタス
触れて悶える身体と声は、刃先を肌に突き立てるのに似ている。
ラタス
自分の手のなかのささいなもので、相手を支配する。その暴力の痺れるような快感。
リリオ
暴力であるのなら、こんなに熱っぽい視線は注がれない。
ラタス
支配する、踏み込む、侵襲する、その一連に愛おしさと快を見いだす資質がある。
ラタス
わずかにでも誤れば殺してしまうのではないかという空想が頭について離れない。
リリオ
リリオは富裕層の娘だ。肉付きは悪くない。しかし薄い骨格の手触りは、脆い。
リリオ
ラタスに比べると小さい心臓は、少し早いリズムを刻んでいる。
ラタス
生きたままの心臓を、直接触れて確かめることはできない。
ラタス
だから代わりに、指が、舌が、その胸を這う。
リリオ
ラタスがたまに見せる猟奇が怖い。
そう思っている。
リリオ
しかし、怖いだけで、嫌いではない。
直接猟奇で触れないのなら、なおさら。
リリオ
飲み込みやすく糖衣がかけられた猟奇に、体を震わせる。
リリオ
今ここで死んでしまえたらいいのに。
そう思ったけれど、口にしなかった。
リリオ
「ラタスも僕のものになった、って思っていいのかな?」
ラタス
「まだもらってないものを、これからもらう」
ラタス
ズボンを剥ぎ、逸る気持ちを抑えて下着姿を見下ろして眺める。
リリオ
「奪ったものを愛でる男を好きになったのは、よかったな」
ラタス
名前は、愛の言葉は、何度口にしてもいい。何度耳にしてもいい。
[ リリオ ] ラタスの寵愛 : 0 → 1