行動 透子

GM
透子さんの手番です。
透子
先に行動宣言します。
*ルルキスちゃんの”節制の反動”を舐めます。
*クエストNo.6を実行します。
GM
はい。
シーン表を振るか、自己演出などでやっていきましょう。
透子
はぁい。
透子
シーンは大きめの街に向かう場車内からお願いします。
GM
馬車が比較的ならされた道を行く。
あまり揺れないので、荒野の風景もどこかしら気持ちがいい気がする。
透子
洞窟でのやり取り以来どこかぎこちない雰囲気をまといながら馬車に揺られる。
いつもであればフィルズと取り合っていたラタスの横もあっさり明け渡した。
ラタス
フィルとコインタワーをやって遊んでいる。
フィルズ
ラタスと遊びに興じつつ歓談しながら馬車に揺られている。
透子
コインタワーをする二人を尻目に、一瞬崩してやろうかと思いつつ。
ひっそりとルルキスに声をかける。
ラタス
「そうだ、そのそのあたりになんかこう……」
透子
そう、この馬車に乗る前にメモの行程をどうこなすか、ある程度相談したのだった。
どれをこなすにしても地理的に便利のいい、大きな街へ向かう必要があった。
透子
海も近く、とり逃した亡者の情報も得やすく、大きな市場も、そして娼館もある。
GM
南の方にある大きな町からはいくつかの村や町への道が伸びている。
GM
そしてもちろん、目当ての店も。
透子
「ルルキス」

緊張感を含んだ、それでいて男二人には聞こえないような声で囁く。
ルルキス
「なんです?」
小さな声で返す。
ラタス
コインタワーに夢中になっている。
透子
ちらりと二人を見て、続ける。
フィルズ
難度の高い詰み方をしてラタスに見せつけている。
ラタス
負けねえ!という気持ちになっている。
透子
「……私たちは今、ラタスのメモをこなすために移動してる。そして南の街には……大きな娼館がある」

事実の確認から入る。
ルルキス
「ええ、はい」
透子
「そして着くなり、フィルズはこう言うでしょう。『さぁラタス、まずは女を抱きに行こうじゃないか』」
ルルキス
「そうですねえ」
透子
「……」

自分で言っておきながら少し黙る。ちりちりと不機嫌そうな気配を出しながら。
ルルキス
「それがどうかしましたか?」
透子
「………だからルルキス、街についたらフィルズを連れて遊びに出てちょうだい」
透子
「色街でも、食べ歩きでも、賭場でもなんでも」
ルルキス
「……」
フィルズ
負けないという意気込みを露わにするラタスにフィルズも真剣な表情を浮かべている。
ルルキス
「なに企んでんですぅ?」
透子
視える、というより視ずともわかる。
ラタス
腕が鳴るぜ……!
フィルズ
お前とならやはり熱くなれる……楽しいな……ラタス!!
透子
ルルキスが納得するような理由を話さないと、話には乗ってこないだろう。
ラタス
仲間になってからはこんな手に汗握る勝負、したことなかったな……。
透子
「………わざわざ言う必要、ある?」
透子
「……わかるでしょ。ラタスと二人きりになりたいのよ」
ルルキス
「ふぅーん…………?」
透子
「貴女にもどういう意味かわかるでしょう?」
ルルキス
「……ふっふ。仕方ないわがままですねえ」
ルルキス
「ええ、いいですよ。いいですとも。確かに、協力者は必要ですもんね」
フィルズ
ふ…今度こそは勝たせてもらうぞ、ラタス…! 
ルルキス
「透子さんがこんな余裕のない立場で正直に頼み事をするとは。しかも相手はまさかのルルキス!」
ルルキス
「珍しいものが見られました。私はフィルズさんを連れていくことにしましょう」
透子
消去法よ、という言葉は呑み込んだ。
透子
「ありがとう。遊ぶためのお金は出してあげるから。………一応、プランを聞いていい?」
透子
念のため。
透子
「貴女、遊び方とか……知ってる?」
透子
そういう様子は視えなかった。
ルルキス
「うーん……どうしようかなあ」
ルルキス
遊びには疎い。ようやく仲間と酒を飲む楽しみは覚えた。
ルルキス
けれど、この世界に来る前は、ずっと節制の日々。
ルルキス
勉強ばかりで、友もいなければ、ろくに外に出てもいなかった。
ルルキス
「……フィルズさんに、エスコートしてもらおうかな?」
透子
「……フィルズの遊び方も、偏ってそうな気がするのよね」
ルルキス
「あー」
透子
ルルキスの勤勉さは透子も知っている。
コントロールできていなかった”魔法”も使いこなせるようになっている。
透子
そもそもどう視ても彼女の様子風貌と、救世主としての力は食い違っている。
透子
もちろん、深くまでは踏み込んでいないが。
透子
「そうね………なにかやりたかったことってないの?」
透子
透子は気ままに、やりたいように生きてきた。
透子
その透子からすればルルキスはいまだに何かに縛られているようにみえる。
ルルキス
「……私の願望は、案外ラタスさんと似てるのかもしれませんね」
ルルキス
「色々思い出を作って、見たことないものを見たい」
ルルキス
「それから……………………」
ルルキス
「……」
ルルキス
「まあ、豪遊はしませんよ。そのあたりを散策して、夜になったら近くで宿を取ります」
ルルキス
「お二人が夜が明ける前に戻って来られたら、宿で合流しましょう」
透子
「…………」
透子
明かな間に、しかしそれ以上踏み込むのをやめる。
透子
「……そうね。図書館もあるでしょうし。もしかしたらもう少し文化的な施設もあるでしょう」
透子
「男や女を買うでも、何か装飾品を買うでもいい」
透子
「好きなようにしたらいいのよ。……ほどほどに」
ルルキス
「……ありがたく、じっくり羽を伸ばすとしましょう」
ルルキス
「そっちもよろしくお願いしますよ」
透子
「もちろん」
透子
*ルルキスちゃんの"節制の反動"を舐めます。才覚で判定
透子
2d6+3=>7 (2D6+3>=7) > 5[2,3]+3 > 8 > 成功
GM
舐めは成功です。
クエストは失敗です。
GM
ティーセットを忘れたということなので、振り直しで対応許可します。
透子
*ティーセットを使用して改めて判定します。
透子
2d6+5 (2D6+5) > 6[3,3]+5 > 11
GM
はい。クエストは達成です。
GM
クエストは……達成です!
[ ルルキス ] 節制の反動 : 0 → 1
[ 透子 ] ティーセット : 1 → 0
GM
馬車はやがて大きな街につく。
GM
街道も広く、馬車の車輪や人々の脚に踏み固められた道。
幾度となく亡者に襲われただろうが、補修されている石畳。
GM
堕落の国にしては活気のある町。
もちろん元の世界に比べれば見劣りする者もいるだろうけれど。
GM
街の入り口で役人に救世主であることをそれなりに歓迎されたころには、夕暮れの灯りが大きな建物のいくつかに灯っていた。
透子
「ここなら何をするにも、どこへ行くにも困らないでしょう」
フィルズ
「そうだな。目的を達するには良さそうだ」
ルルキス
「いい場所ですね」
ラタス
「まずは……酒場か?いや、宿を決めるのか?っていうかああいうとこって泊まれるのか?」
ラタス
フィルズに尋ねる。
フィルズ
「ああ、泊まれる形式の場所もあるだろう。そうだな…そうなれば…」
フィルズ
このまま制止がなければ透子の予測通りの言葉が出る。
ルルキス
「フィルズさん、フィルズさん」
フィルズ
「…?なんだ?」 
ルルキス
「いえね、少し話したい事があって」
ルルキス
「すいませんねラタスさん。この人、お借りしても?」
ラタス
「え~?ちゃんと返せよお~?」
ラタス
ひとりだと不安だから……!
ルルキス
「はいはい、もちろん返しますよ」
ルルキス
「でもちょっと時間がかかるかも。この人の監視役も必要ですし……」
ルルキス
「透子さん。ラタスさんをお願いしてもよいですかね」
ラタス
子ども扱いすんな!
透子
「ええ、もちろん」
ルルキス
「ありがとうございます」
ルルキス
「と、いうことでして。相手には不足でしょうが、デートといきませんか、フィルズさん」
ラタス
「じゃ、ま。2人が戻ってくるまで酒場で飲んでるか」
フィルズ
「…私の意向も聞いてほしいのだが…まぁ、ラタスが構わないのなら少しならば良いだろう」 
フィルズ
「いや、待て。デートとはなんだ、デートとは」
聞いてないぞ顔。 
ラタス
「せっかくデカい街だからな、みんなで楽しまなきゃ損だ」
透子
「街のことでも聞いておこうかしらね」
透子
「遊びまわるにしても、宿をとるのが先よ」
ラタス
デートだあ~?いつの間に~?
フィルズ
誤解だ…!勘違いをするな…!
透子
ルルキスとデートしたら文字通り振り回されそうね。
ラタス
「あぁ、この規模の街だ。1人1部屋ずつぐらいとれるんじゃないか?」
ラタス
「久々にのんびり風呂に入れるぜ、よかったなトーコ」
透子
「………そうね」
ルルキス
「ふふっ」
GM
では目論見どおり2組に分かれてしばらく街を見て回ることになりました。
ルルキス
「ほら、行きますよ」ぐいぐいと引っ張っていく
フィルズ
「はぁ……まぁ、良いだろう。だが私は私でやることをやるぞ」引かれるままついていく。
ルルキス
「お、何をされるんですか?」
フィルズ
「無論、情報収集だ。…ラタスが好む娘が居るような娼館のな」
フィルズ
「その他の目的に役立つ情報も…この街なら探せそうだしな」
ルルキス
「…………フィルズさんって、口を開くとラタスさんの事ですねえ」
フィルズ
「ああ、あいつは私の生涯で初めて得た心から認められる友人だからな。気にかけもする」
フィルズ
「…………それに、救世主の責務のこともあるだろう。あまり悠長にしている時間もない」
ルルキス
「はあ。真面目ですねえ」
ルルキス
「真面目に娼館を漁るというのも、少し間抜けな話ですけども……」
ルルキス
「どんな気分です。友人の初めての相手を物色するのって」
フィルズ
「誇らしいな」
ルルキス
「マジか」
フィルズ
「私の初体験は侍女たちに手解きを受けて…というものでな」
フィルズ
「それに嫌気を感じていたが、その経験が役立つとあれば悪くない出来事のようにも思える」
ルルキス
「……」
ルルキス
「……フィルズさんが」
ルルキス
「そういう身の上を話してくれるようになるとは、昔は思いもしませんでした」
フィルズ
「…そうだな。私もここまで誰かを関わらせるようになるなどと考えたこともなかった」
フィルズ
「だが、その変化を私はあまり悪く思わないんだ。…そしてそう思えるようにしてくれたのがあいつだからな」
フィルズ
「だから、私はあいつの為に出来る限りをしたいと思っている。…少々過剰と思われるかも知れないがな」 
ルルキス
「知ってたけど、重いなこの人」
ルルキス
「フィルズさん、口を開けばラタスラタスラタス」
ルルキス
「今、デート中ですよ。もっと目の前の相手を見て欲しいんですけど?」
フィルズ
「デートと言い出したのはそっちだろう。私は了承をした覚えはないぞ?」
ルルキス
「そりゃあ、そうでしょうとも」
ルルキス
「フィルズさん、恋人がいらっしゃった事は?」
フィルズ
「あると思うか?」まだ苛烈だった頃に出会っていたのなら、とてもではないけれど想像もつかない筈だ。
ルルキス
「でしょうね。恋愛は慣れてないわけだ」
ルルキス
「なるほどなー…………」
ルルキス
「……」
ルルキス
フィルズ
「…そういうそちらはどうなんだ?」 
ルルキス
「あると思います?」
ルルキス
「ついでに言えば、ラタスさんも透子さんも独り身でしょうよ」
フィルズ
「だろうな。なるほど…ある種似た者同士ということか」
フィルズ
「くくっ なんだ、そうなると全員か。随分と似た者が集まったものだ」
ルルキス
「まあ、恋人を置いてこなかった分、独り身でよかったとも言えるのかもしれませんが……」
ルルキス
「…………っと。そろそろ、いいかな」
ルルキス
それなりに歩いた。それなりに時間も経った。
ルルキス
「ねえ、フィルズさん」
ルルキス
「あなた、ラタスさんに恋人ができたら、祝福できますか?」
フィルズ
「随分と、唐突な質問だな。…聞きたかった話というのはそれか?」
ルルキス
「ええ。まあ、一応そんなとこです」
フィルズ
本来の目的と聞けば、軽くは流さずに深く考える。
フィルズ
「…そうだな。”相手次第”だと思う」
ルルキス
「……彼に、相応しい相手かどうか?」
フィルズ
「そうだ。…例えば、どうしようもなく不幸になるような相手と付き合うのならば祝福は出来んだろうな」
ルルキス
「じゃあ、例えば……」
ルルキス
「……この堕落の国で共に戦ってきた仲間だったら?」
フィルズ
「それは透子かルルキス、2人のどちらかということか?」 @困惑
ルルキス
「………………だったら?」
フィルズ
「…だとしたら、私からは何も言わんよ。2人とも紛れもなくラタス自身が傍にいることを選んだ相手だ」
ルルキス
「……そうですか」
フィルズ
「でなければ、こうして別々で行動などもしていない。…大方頼まれたのだろう?馬車の中で何かを話していたようだったしな」
ルルキス
「……なんだ、気付いてたんですか」
フィルズ
「流石にな…。恋愛こそしたことはない私だが、そういう空気や意図は察せる」
ルルキス
「じゃ、娼館探しは意味がないとも付け加えておきましょう」
ルルキス
「その件については透子さんにセッティングしてもらいますから。形はどうあれね」
フィルズ
「ほう?だが”それはそれとして”私は探すつもりだぞ?」
ルルキス
「なぜ?」
フィルズ
「彼女は今晩動くのだろう。…そのつもりで私も任せるつもりだし、思惑が叶えば良いとも思う。…これは紛れもない本心だ」
フィルズ
「…だが、果たされなかった時。果たせなかった時。それでもラタスの目的は叶えてやりたい」
フィルズ
「…例え彼女に恨まれようとも私はその時のために準備だけはしておくつもりだ」
ルルキス
「フィルズさんらしい答えですね」
ルルキス
「…………」
ルルキス
「私も、本音を言えばね」
フィルズ
「ああ」
ルルキス
「透子さんの願いは、叶わないだろうと思ってます」
フィルズ
「…………」
ルルキス
「透子さんなら、なおさら……分の悪い賭けだと分かってるでしょうに」
ルルキス
「それでも、諦められないものなんですかね」
フィルズ
「…どうなのだろうな。私には分からない。恋の一つでもしてみせていれば理解ったかも知れないが」
フィルズ
「……」
ルルキス
「……?」
フィルズ
「いや、な」
フィルズ
「…先程の例えは君も含まれていた。
…ルルキス、君はどうなんだ?透子だけでなく、君はラタスをどう思っている?」
ルルキス
「へ? 私ですか」
ルルキス
「あの問いかけに深い意味はないですよ。私がそんな風に見えますか?」
フィルズ
「見えないが…見えないからこそ、万が一を見落としてはならないと思ってな」
フィルズ
「…なにせ、君も仲間だ。私の……大切な一人の内にいる」
ルルキス
「おや。気を使ってくれてるんですか?」
フィルズ
「まぁ、な。機会は公平に作られるべきだ。だからもしも…と思ったが…」
ルルキス
「優しいですね、フィルズさんは」
ルルキス
「……少しだけ、不安だったんです」
ルルキス
「私がラタスさんみたいに皆さんの元を去ろうとしたら、フィルズさんや透子さんは今みたいに必死になってくれるのかなって」
ルルキス
返事を待たず、肩をすくめる。
ルルキス
「どうも、戦友ってのは人と人との距離感をおかしくするらしい」
ルルキス
「普通、友人の相手なんて見繕ったりしないと思うんですけどねえ」
ルルキス
フィルズからの問いかけには答えないまま。
フィルズ
「……違いない」
1つ目の言葉。それに対する返事も待たずに続けられた言葉に頷くと、小さく笑う。
フィルズ
「だが…」
フィルズ
「私は、ルルキス。君のことももう戦友だと思っているよ」
フィルズ
多くは語らない。それがフィルズなりの1つ目の質問に対する答えだ。
ルルキス
「……ありがとうございます。私もですよ、フィルズさん」
GM
酒場も宿も1軒だけでなくいくつかの選択肢があり、少し足を向けるだけで広い街だということがわかる。
ラタス
「旅用品もいくつか買い直せるだろうな」
透子
「そうね、古くなったものは下取りにだしたり買いなおしたり」
ラタス
宿へ向かう道すがら店先を眺めて。
透子
大きな街や行商人に会った時にはよくしたような会話。
ラタス
「お、あそこ救世主の持ち物買取もやってる」
ラタス
救世主たちが堕落の国に持ち込んだ物品の高価買取。
救世主の協力なしに成立しない事業だ。
大きな街でしかそうそう見かけない。
ラタス
「おれのナイフちゃんはどのくらいで売れるかねえ」
透子
「元の世界のものを手放そうだなんて、よほど暮らしが苦しいのかしら」
透子
「ナイフ、売るぐらいならおいていきなさい」
透子
「今路銀に困ってるわけじゃあないんだし……」
ラタス
「金はあればあるだけいいぜ」
ラタス
「なんでもってワケじゃあないが、多少の夢は見れる」
透子
「それはそうね。でも今貴方のやりたいことをかなえるために来てるんだから……無計画に使って後で泣きを見る姿が視えるのよ」
ラタス
「だからナイフちゃん売る算段つけてんだろうが」
ラタス
頭の中で思い描く。
今から会う娘は、ナイフ何本分の値段で抱かれてくれるのだろうか。
透子
「さぁ、100本あっても足りないんじゃない?」
ラタス
「世知辛いね~。商売道具なのによ」
透子
「使い込んだらそれだけ価値が落ちるものでしょ」
ラタス
ラタスのナイフは、心の疵でつくられたナイフだ。
煙幕のなかで、暗闇の中でいっさいの光を照り返さないそれは、ラタスを象徴する得物だった。
ラタス
「おれの心はそんな安くねーって思いてえのよ」
透子
「心に値段をつけられるのはいいの?」
透子
「貴方の心の価値が本当にわかってると思う?」
ラタス
「ゴミになるよりゃいいだろうな」
透子
視て触れて探って読んで。
透子
「コレクションとして置いておくことも、私たちの思い出として取っておくこともできるじゃない」
ラタス
「おれの価値は、おれなりにシビアだぜ」
ラタス
「お前らにはそれこそ、思い出ってやつがあるんだろ?」
ラタス
「だからこうしておれを追いかけてきてくれたんだ」
ラタス
「おれはそれをもうちゃんとわかってるさ」
透子
「……記憶だけじゃあもの足りないのよ」
透子
ラタスのことを尊重したい。それは本当の気持ちだ。
そしてラタスを手放したくない。これは心の底からの気持ちだ。
透子
「もちろん、私たちは貴方のことを忘れやしない。……それでも記憶って残酷なのよ」
透子
「手元に何か残ってるだけで違うものなの」
透子
子供じみたわがままだ、と自分でも思う。
透子
それでもラタスが居たことが一つ一つ消えていくようで嫌だった。
透子
例え買い戻しても、それはもう『一度手放された心』だ
透子
「それより、どこかで飲むんでしょう?一番大きい酒場なら……この広場の向こうね」
透子
話題から逃げるように、一人で話を進める。
ラタス
「ぜんぶ記憶だよ」
ラタス
「トーコ、だから基本的にすべてのことは残酷なんだ」
透子
「………」
ラタス
「おれのナイフがおれの心であるようにさ」
ラタス
歩みを止めて言う。
雑踏がにぎやかに聞こえる中でもはっきりと。
透子
「……それでも………」
ラタス
「お前が今何を言いたいかくらい、おれにもわかる」
ラタス
「大事な仲間だからな」
透子
「………仲間だから、ね」
透子
仲間のことならわかるのだろう。きっとそうだ。長い時間を仲間として過ごしてきた。
透子
「じゃあ、私のことも視えるのかしら」
ラタス
「あぁ」
ラタス
「……“悪い”な。2回も」
透子
「…………」
ラタス
「お前は大事な仲間だよ、トーコ」
ラタス
「ナイフぐらいで拗ねるなよ」
ラタス
無遠慮に透子の頭を撫でる。
透子
「……別に、謝ってほしいわけじゃないのよ」
透子
ナイフのこともほとんど八つ当たり。
透子
大事な仲間だから。大事な仲間だから。
透子
「……酒場、行くんでしょう」
ラタス
「あぁ。旨い飯でも食おうや」
ラタス
そう言ってルルキスとフィルズの歩いて行った方へ足を向ける。
透子
「………」
透子
透子は動かない。
透子
「………ねぇ、ラタス」
ラタス
「ん?」
透子
「止まって」
ラタス
「いいよ」
ラタス
そうして止まったのは予知や不思議な力なんかじゃない。
ラタス
透子がそうしてほしいと思っているだろうと。
ラタスが思ったからだ。
透子
ラタスに近づく。踏み込まなかった距離を慌てて踏み込むように。
透子
仲間同士というには近い、吐息のかかるような距離。
透子
行き場をなくした手がおそるおそるラタスの胸元をつかむ。
透子
「………ねぇ」
ラタス
苦笑して。
張りやすいように頬を差し出した。
ラタス
「どーぞ、前より強くはたいていいぜ」
透子
「……ちがう。やっぱり、わかってないじゃない」
透子
差し出された頬にそっと手を添える。
透子
思っていることはわかる。
想っていることは?
ラタス
「こういうときちゃんとわかってるようなおれならお前は惚れなかっただろ?」
ラタス
「最後までおれをおれのままでいさせてくれ」
透子
「……そうね」
透子
きっとそうかもしれない。
透子
「それでも確かめたいの」
透子
私の視まちがいかもしれないから。
私の読みまちがいかもしれないから。
透子
「貴方の声で」
透子
私だけの視界じゃなくて。
私だけの記憶じゃなくて。
透子
「……なんで私を抱いてくれないの?」
透子
なんで私を選んでくれないの?
ラタス
雑踏が掻き消さないように。
人工肺がきちんと声になるように動く。
ラタス
「“女”より、お前が大事だからだよ」
透子
「……私の想いより大事なこと?」
ラタス
「そうだ」
透子
「……そう。わかった」
透子
そう言うと、手をそえていた頬にそのままくちづけする。
透子
すぐそばの唇にではなく、その頬に。
ラタス
「はは」
透子
親愛の証。
透子
私だけの証。
ラタス
「……ありがとな、トーコ」
透子
「………まだなにも、終えていないでしょう」
透子
「お礼なら、最後でいいのよ」
透子
紅も引かないその唇で残る証は、ただくちづけをしたという記憶だけ。
ラタス
それがすべてといった記憶より、思い出より、想いより。
ラタス
お前が大事だと言った。
その言葉に嘘はない。
ラタス
視えなくとも、言葉が、声がそう言った。
透子
その言葉は、我儘な子に持たせる手土産としては十分すぎた。
ラタス
「この街で一番美味い店、探すか~」
透子
「そうね。……でも大事な二人を置いていけないでしょ」
ラタス
「おう」
透子
二人の居場所は目を凝らさないでも視える。
大切な仲間だから。
ラタス
それを心から信じている。
だからさっきだって、ぶらりと歩き出した。
透子
道を間違えることはない。
ラタスの行く先に、二人が居る。
GM
GM
その夜は、“目的地”へ行かずに。
トーコが選んだ間違いない店で贅沢をした。
GM
ラタスのリストに書かれてはいなかったけど、ずっと大事な夜だった。
GM
透子
宿。
それぞれ個室をとり、腰を落ち着けている。
透子
その宿には今、ふたりだけ。
透子
透子と、ルルキス。
ラタスとフィルズは……お楽しみに出かけた。
透子
「………」
透子
部屋でおとなしく本を読んでいる。
ルルキス
「今頃……二人、いい相手を見つけた頃ですかねえ」
透子
「……さぁ。視ないようにしてるから」
透子
もっともフィルズのあの熱の入りようなら、ちゃんとした店をみつけてきているだろう。
ルルキス
「……今更ですけど」
ルルキス
「あなたなら、この結末が分かっていたのでは?」
透子
「……さぁ。ラタスは、視えにくいし……」
ルルキス
「能力の話じゃ……ないですよ」
透子
「……物語の結末を誰かに教えられて、読まなくてもいいって本と、読んで確かめてみたい本があるでしょう?」
透子
「直接確かめないと、納得できないじゃない」
ルルキス
「……自分自身の手で、最後まで見なければならなかった……」
ルルキス
「それは……確かにそうかもしれません」
透子
「理論と実践、それと同じよ」
透子
「…………あきらめるにも、ね」
ルルキス
「……なるほど」
ルルキス
「こうして直接尋ねて、ようやくあなたの判断が聡かったと理解しました」
透子
「そう?」
ルルキス
「ええ」
ルルキス
「やっぱり、辛いものですか?」
透子
「………我儘みたいなものだったから。二度目だし」
透子
「辛そうに見える?」
透子
辛そうに見えたなら、少し申し訳ない。
ルルキス
「顔色には出てませんから、想像です」
ルルキス
「私にとっては、あまり明るくない分野ですから」
透子
「……へぇ、そうなんだ」
透子
声のトーンがすこしあがる。どこか楽しげに。
ルルキス
「そうですよ。こういう時、どういう感情を抱くものですか、普通は」
透子
「……感情の話から?」
透子
本気?というニュアンスがありありと伝わる。
ルルキス
「恋バナに疎い、って話ですよ」
透子
「……言葉にするのは難しいのよね。……切ないというべきかしら。こういう時は」
透子
「それとも、寂しい?」
ルルキス
「……やっぱり、辛いんじゃないですか」
透子
「寂しいっていうのもちょっと違う気がするけど……でもその感情には振り回されてないのよ」
透子
「そういう感情だって言葉にして分けられるなら、ルルキスが思ってるほど辛いことじゃないの」
ルルキス
「そういうものですか」
透子
「似た経験とかないの?」
ルルキス
「ないですねえ……」
ルルキス
「ただ、昨日から今みたいな事をよく考えてます」
透子
「じゃあ、はじめてじゃない」
透子
「さっきの言葉は私の言葉にすぎないから……ルルキスも自分が納得する言葉をみつければいいんじゃない?」
ルルキス
「そうですね」
ルルキス
「でも、一番知りたかったのは、透子さんがどう考えるか、どう感じるかってとこでした」
ルルキス
「それが聞けたので、少し満足です」
透子
「少し、ね」
ルルキス
「そりゃあ、だってね」
ルルキス
「まだ完全に終わったわけじゃないですから」
ルルキス
「ハラハラしてたんですよ。成功しても失敗しても、4人の関係にどんな影響が出るか分からなくって」
透子
「…………」
透子
言葉はない。
透子
「それは、そう、ね」
透子
ごもっともである。
ルルキス
「……誤解ないよう言っときますけど、だからって遠慮しろって話ではないですよ」
ルルキス
「もう、起こった話ですし。私も協力しましたし。咎めるつもりは全くなくてですね」
ルルキス
「……これは昨日、私がフィルズさんから言われた言葉ですけど」
ルルキス
「あなたも……ほら、大切な仲間ですから」
透子
大切な仲間。
透子
ラタスも、フィルズも、ルルキスも。そして私も。
透子
「そうね。……手伝ってくれてありがとう、ルルキス」
透子
「貴女も、もちろんフィルズも。大切な仲間よ」
ルルキス
「お礼を言われるような事は、何も」
ルルキス
仲間の成功を祈っていた。
ルルキス
それが叶わなかった事を、残念に思う。もっと力を尽くせたのではないかとも。
ルルキス
その胸中を口にしたとて、もはや慰めにもならない事ではあるが。
ルルキス
「でも、ええ」
ルルキス
「そう、仲間ですね」
ルルキス
「この皆の関係……いつか終わりが来ることを、名残惜しく感じます」
透子
「終わりに向かう旅を、しているところだもの」
ルルキス
「変化を恐れている場合ではないですね。色々な事に片を付けなければならない」
透子
「そうね。そしてそれは、ラタスだけのものじゃない」
ルルキス
「あなたがひとつ、荷物を下ろしたように?」
透子
「おろし時をなくすとどんどん重くなるのだもの」
ルルキス
「この旅が、最後のチャンスでしたものね」
透子
「ルルキスもあるなら……下ろすなり渡すなりしなさい」
ルルキス
「心残り……」
ルルキス
「なくは、ないですね」
ルルキス
「上手く出来るかは分かりませんが、頑張ってみましょうか」
透子
「必要なら、言って」
ルルキス
「……ありがとうございます」
透子
「………二人は、遅くなりそうね」
GM
GM
深夜。
街にある娼館。
その前に来ている。
ラタス
「ここか……お前が探し出してくれた店、ってのは」
フィルズ
「…ああ、ここが私が見つけた店だ。覚悟も準備も出来てるな…?ラタス」
ラタス
緊張で喉が渇く。
唾を飲み込む。
ラタス
「あぁ……」
ラタス
重々しく頷いた。
フィルズ
ラタスの返事に満足気に頷くと、誇らしげに店の入り口を見る。
ラタス
ランプが……ピンクだな……。
フィルズ
「期待をしてくれていい。この店には…お前が望む娘が居る」 馬車の中でラタスがしてみせた動きをする。
ラタス
絨毯が……敷かれている……。
ラタス
「フィル……!」
フィルズ
フッと誇らしげに笑う。
GM
娼館に入ると、おそらくは香水のにおい。
堕落の国ではどう考えても貴重な品。
フィルズ
ラタスは気圧されていないだろうか?フィルズはそれを気にしながらも、何も怖いものなどはないというように堂々と受付へと向かう。
ラタス
かっけー……!
GM
受付を済ますと、広間で革のソファに通される。
甘い酒が小さなグラスに注がれた。
フィルズ
「部屋の準備が終わる僅かな間だが…初めてを迎える記念に一つ飲み交わすとするか」
フィルズ
グラスを掲げる。
ラタス
こんな華奢なグラスで酒を飲んだことなどない。
ラタス
気取って、同じようにグラスを掲げた。
ラタス
「フィル、ありがとな」
ラタス
「情けない話なんだが」
ラタス
「あのリストに“これ”を書く時、ペンが震えた」
フィルズ
「構わないさ。初めて行うことだ…笑いはしない」
フィルズ
「私は済ませこそはしたものの、初めては身を委ねて終えたからな。そこに覚悟はなかった」
ラタス
グラスをぶつけはせずとも軽く揺らして、乾杯。
なめるに等しい量の甘い酒をあおった。
ラタス
「お前ほど、覚悟が決まってるやつがな」
ラタス
「……そっか」
フィルズ
「随分と嬉しいことを言ってくれるな」
ラタス
「尊敬してるんだぜ、おれは」
ラタス
「お前の言う言葉には重みがある」
フィルズ
「ふっ…私はお前の言葉にこそ重みを感じるがな。何せこの私をこれほどまでに変えたんだ」
フィルズ
何であれ、想いは同じというわけだ…と甘い酒を口に含む。
フィルズ
「私も、尊敬しているよ…ラタス。お前を。
私の人生の中で、お前と出会えたのは私の宝だと思っている」
ラタス
「はは、なんか肩の力抜けたっつーか、気が楽になってきた」
GM
甘い酒を2人が飲み終わった頃。
店員に連れられて末裔の娼婦が3人歩いてくる。
堕落の国にも色鮮やかな服。
娼婦
── 眠り鼠
娼婦
だらしなく服を着崩し、眠そうに揺れている。
娼婦
── 三月兎
娼婦
胸元が大きくはだけた服で、きゃらきゃらと楽し気にふたりに笑顔を向けた。
娼婦
── 帽子屋
娼婦
紙巻パイプをくゆらせ、甘い煙をふく。
しなだれかかるようにソファに座った。
ラタス
3人……!?
ラタス
全員……“こう”(あの動き)だ!
フィルズ
頷いて、微笑む。
フィルズ
「私の選りすぐりの娘たちだ。ラタス、お前の願いは今夜最高の形で…叶うぞ」
娼婦
おそらく位が高いのだろう、帽子屋の娼婦はよどみなく料金を伝え希望を聞く。
娼婦
三月兎は待ちきれない!とでもいうように肩に頭を乗せて腕に手を絡ませた。
フィルズ
一人で居た頃に稼いだ懐金があるのだろう。
伝えられた料金に怖気づく様子もなく頷くと、初めてのラタスに相応しいプレイを提案する。
娼婦
眠り鼠は床で寝ている。
ラタス
三月兎の子がいいな……という気持ちになっている。
フィルズ
ラタスの様子を見て何かを察すると、三月兎の娘に耳を寄せ囁く。ラタスの相手をして欲しい…と。
娼婦
問題ないと頷いて、よどみない筆跡で領収書にサインが書かれる。
紅を引いた唇が領収書にひとつキスを落として、寄こされる。
娼婦
嬉しそうに飛び跳ねて、ラタスの手を引く。
フィルズ
「支払いは済んだ。”まず”はこの子とすると良い」 この男…全員を充てがうつもりだ!!!
ラタス
「まずは!?」
フィルズ
おかしなことを言ったか…?という顔
ラタス
おかしくはないが……!
娼婦
末裔の頼りない力で懸命に楽し気に手を引く。
残った者たちに手をひらひらと振って。
ラタス
観念したようにその娘と腕を組んで、フィルズへ手を挙げた。
ラタス
行ってくる、と。
背中が語っている。
フィルズ
ああ、行って来い…と、笑顔で手を挙げる。
娼婦
フィルズの肩にもたれて寝ている。
フィルズ
「さて…」
フィルズ
眠る娘はそのままにし、帽子屋へと視線を送る。
フィルズ
「君は教養が深そうだ。ラタスが終えるまで、チェスでもどうだろうか…?」
娼婦
片眉をあげて、唇が美しい形で笑う。
娼婦
「生憎、手加減というものを知らない身ですの」
娼婦
「白をくださる?」
フィルズ
帽子屋の言葉に小さく笑うと、楽しみそうに白を差し出す。
フィルズ
「望ましい言葉だ。やはり、君を選んで良かった」
GM
夜は更けていく──
GM
GM
叶わぬ想い。見果てぬ夢。
交わす言葉。大事な存在。
GM
堕落の国でも夜は平等に、まぶたを撫でて。
その日が過ぎていくことを教える。
GM
そのことだけが世界の真実で。
なにかとても大事なことのように思えるのは。
GM
あなたがいるからに他ならない。
GM
GM
1d6 (1D6) > 3
GM
── 13日経過。
GM
夜。
GM
透子、あなたは夢を見る。
GM
3人の子供が手を繋いで踊っている。
遠い遠い青い窓の下。
GM
ただそれだけの夢だったが。
それでも視えるものがあった。
GM
情報にPKのデッキを公開しました。