メインフェイズ サイクル2

マスターシーン

霧渡匣
荒鹿火唯史に戦闘を仕掛けます。
霧渡匣
戦場表は振りません。
荒鹿火唯史
影分身を使用します。
荒鹿火唯史
2D6>=5 (判定:分身の術) (2D6>=5) > 11[5,6] > 11 > 成功
霧渡匣
「――唯史」
霧渡匣
「ちゃんと本気で来てくれないと、いやだよ」
霧渡匣
枝の上から、匣の姿が掻き消える。
霧渡匣
声のみを残して、しかし気配は未だ近く。
霧渡匣
確かに唯史へと向けられた害意。
荒鹿火唯史
「……」
荒鹿火唯史
口を開いて、つぐむ。
荒鹿火唯史
「……ああ」
荒鹿火唯史
「分かってる」
[ 霧渡匣 ] がダイスシンボルを公開。出目は 4 です。
[ 荒鹿火唯史 ] がダイスシンボルを公開。出目は 5 です。
[ 荒鹿火唯史 ] がダイスシンボルを公開。出目は 6 です。
荒鹿火唯史
5に。
GM
意識が創り変えられるような、あの感覚。
GM
胸の袂に打ち込まれた楔がうずく。
GM
『守り、愛してやれ』
GM
その言葉の残響も未だ消えぬまま。
GM
身体ばかり動いてゆく。
GM
・プロット5
GM
・荒鹿火唯史の手番
荒鹿火唯史
奥義を使用します。
荒鹿火唯史
■奥義
《荒渦火龍巻》
指定特技 :縄術
エフェクト:クリティカルヒット
霧渡匣
虚空より、枝の間を黒絃が張り詰める。
霧渡匣
匣の十八番。匣が渡る糸。
霧渡匣
唯史はそれをよく知っている。
霧渡匣
いつもであれば、唯史の攻撃は匣にはさほど怖くない。
霧渡匣
唯史の先手必勝を躱して、匣の方が一撃を入れる。
霧渡匣
いつもの二人の手合わせの、それがそれなりによくあるパターン。
霧渡匣
けれど、今は。
荒鹿火唯史
共に研鑽し、技を高め合った、勝手知ったる二人。
荒鹿火唯史
いつものやり方では、いつもと同じ結果にしかならない。
荒鹿火唯史
だけど今は──一つだけ、ハコも、誰も知らない技を持っている。
荒鹿火唯史
唯史の影が揺れて、分かれる。
荒鹿火唯史
影分身の術。唯史の十八番。
荒鹿火唯史
いくつもの影に別れて、そして──炎に変わっていく。
荒鹿火唯史
明かりのない夜を、炎が煌々と照らす。
霧渡匣
「……っ!?」
霧渡匣
息を呑む。
霧渡匣
その炎の、常と違う気配を悟る。
荒鹿火唯史
炎が重なって、撚り合わさって、より大きな炎となる。
荒鹿火唯史
ハコの隠れる闇ごとに焼き払うような、龍のごとく大きな炎。
荒鹿火唯史
「本気で行く、から」
荒鹿火唯史
「死ぬんじゃねーぞ! ハコ!」
霧渡匣
糸を焼き切られ炎に追い立てられ、たまらず唯史のすぐ近くに姿を現す。
霧渡匣
その声に、
霧渡匣
「――一撃で死ぬほど、柔じゃあない」
霧渡匣
きゅっと表情を引き締めた。
荒鹿火唯史
「──上等!」
荒鹿火唯史
ごう、と炎が、空気が揺れる。
霧渡匣
炎に焼き切られながらも、負けじと黒絃を展開しようとする。
荒鹿火唯史
その抵抗ごとに、龍のあぎとが捉える。
荒鹿火唯史
RTT ランダム指定特技表(3,6) > 『忍術』腹話術
荒鹿火唯史
RCT ランダム分野表(3) > 忍術
荒鹿火唯史
RCT ランダム分野表(5) > 戦術
荒鹿火唯史
RCT ランダム分野表(1) > 器術
霧渡匣
忍術、戦術、器術、被りは体術に受け、脱落します。
[ 霧渡 匣 ] 器術 : 1 → 0
[ 霧渡 匣 ] 体術 : 1 → 0
[ 霧渡 匣 ] 忍術 : 1 → 0
[ 霧渡 匣 ] 戦術 : 1 → 0
霧渡匣
「……っ!!」
霧渡匣
炎の龍に牙を立てられ、高速機動より脱落していく。
霧渡匣
そのまま枝からも、
霧渡匣
空からも真っ逆さま。
霧渡匣
匣の矮軀が落ちていく。
荒鹿火唯史
ハコを捉えていた炎が散る。
荒鹿火唯史
解放されたハコの体が地上に激突するその前に、
荒鹿火唯史
「──っと、」
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
両腕にハコを抱え込み、着地する。
霧渡匣
焼け焦げた細い身体を抱き込まれる。
霧渡匣
やがてゆっくりと瞼を上げて、唯史を見返した。
霧渡匣
「……唯史」
霧渡匣
「ハコ、……」
霧渡匣
「ハコは……」
霧渡匣
何がしか言いかけて、口を噤む。
荒鹿火唯史
「ハコ」
荒鹿火唯史
「お前が何を思っているのか。教えてくれ」
荒鹿火唯史
戦果としてハコの秘密をいただきます。
霧渡匣
「……っ」
霧渡匣
「――――」
霧渡匣
ハコの口では、それを紡げない。
霧渡匣
代わりに唯史へと頭を垂れた。
霧渡匣
弱った忍びの見せた、あからさまな隙。
霧渡匣
わざとらしいまでのそれが、匣に許され、そして強いられたぎりぎりの恭順。
荒鹿火唯史
言葉に詰まる様に、眉を寄せる。
荒鹿火唯史
言いたくても言えない理由があるのならば。
荒鹿火唯史
伏せられた頭に額を寄せる。
霧渡匣
唯史へと微かに顔を向けて、
霧渡匣
その額と額が、触れ合った。
霧渡匣
その匣がひとつ、開かれる。
秘密:PC2
【背景固定:絆(愛情→PC1)】
貴方は人ではない。
今の貴方は、PC1を育て上げるために用意された血徒(p192)だ。
身体に埋め込まれた「血核」がある限り、貴方は里の者の言葉に逆らう事ができない。

PC1が里の次代を担う忍として相応しければ、貴方の本当の使命はPC1に殺される事だ。
だが、ふさわしくないと判断されれば、貴方の本当の使命はPC1を殺す事になる。
プライズ:血核
里の秘宝。
その者が血徒である証にして楔。

このプライズの所有者は、誰かの攻撃によって生命力が0になった時必ず【死亡】し、その相手に【奥義】を1つ特例習得させる。(奥義の内容は、その時にプライズの所持者が決定する)

このプライズはPC2が所有しており、所有者の移動が出来ない。
このプライズの所有者は、常にこのプライズの秘密を知る事が出来る。
このプライズが破壊された時、PC2は全ての弱点を失い、本来の力を解放する。
荒鹿火唯史
唯史の知らない、幼なじみの秘密が開かれる。
霧渡匣
今は腕の中、ぐったりと力なく。
霧渡匣
霧渡匣は唯史を見ている。
霧渡匣
「……ハコは、匣だよ」
霧渡匣
「唯史は……」
霧渡匣
「匣を開けて、忍びとして大成する」
霧渡匣
「それでいい」
霧渡匣
「そうなるために、匣がいたのに……」
荒鹿火唯史
「……俺はよくない」
中忍頭
「……どの道、最早そのようなことは在りえぬ」
中忍頭
樹上の気配から、言葉が吐き捨てられる。
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
腕の中のハコを抱きしめ、頭上を睨む。
中忍頭
二人を見下す黒装束の視線は冷ややかなものとは言えず。
中忍頭
むしろ怒りと、憎悪の熱が込められていた。
中忍頭
「……嘆かわしい」
中忍頭
吐息の混じった声。
霧渡匣
うつむく。
中忍頭
「確かに殺せと命ぜられて、尚この体たらく」
中忍頭
「本来ならば……」
荒鹿火唯史
「思い通りになってやれなくて悪いな!」
霧渡匣
唯史の腕の中、身を縮めている。
霧渡匣
何かに怯えるように。
中忍頭
「……”もういい”」
霧渡匣
顔を上げる。
中忍頭
「霧渡匣よ、お前は”もういい”」
中忍頭
「里の秘伝を盗み出し、里抜けを目論もうというのであれば、最早試練に値せぬ」
中忍頭
「私の仕事だ」
中忍頭
気配がより濃く深まり、練り上げられた殺意が荒鹿火唯史の身を叩く。
荒鹿火唯史
「…………っ」
中忍頭
その者の言葉の意図は、もはや確認するまでもなかった。
GM
【クライマックスフェイズ、中忍頭は荒鹿火唯史に戦闘を仕掛けます】
霧渡匣
「っ」
霧渡匣
「唯史」
霧渡匣
「逃げて」
霧渡匣
「ハコは」
荒鹿火唯史
「……逃げるかよ」
荒鹿火唯史
ハコを抱く腕に力を込める。
霧渡匣
抱き締められる。
霧渡匣
そこから逃れる力も今はなく。
霧渡匣
「……ハコは、匣でしかないよ……」
中忍頭
がぎ、と。
荒鹿火唯史
「ハコはハコだ」
中忍頭
硬質な物の軋む不快な音。
中忍頭
「……逃げずに向かうか、手間が省ける」
中忍頭
「……あぁ、だがまったく楽しみだよ、荒鹿火唯史」
中忍頭
「ついに、ようやく、今日がお前の命日となる……」
GM
言葉と共に、何処とも知れずもうもうと煙が立ち込める。
荒鹿火唯史
「?」
GM
煙が視界を塞ぎ、黒装束の姿が見えなくなるも、気配は消えず。
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
「俺あんたになんかしたか?」
荒鹿火唯史
言葉を返しながら、辺りの様子を探る。
中忍頭
「…………」
GM
返答はない。しかし何より雄弁な殺意が、相手が今この一刻一刻も隙を伺っている事を知らせ続けた。

メインフェイズ サイクル2 荒鹿火唯史

荒鹿火唯史
濃く漂う煙を睨む。
荒鹿火唯史
情報判定で中忍頭の秘密を抜きます。
霧渡匣
唯史の判定に感情修正をします。
荒鹿火唯史
特技は意気で。
荒鹿火唯史
2D6+1>=5 (判定:意気) (2D6+1>=5) > 8[2,6]+1 > 9 > 成功
荒鹿火唯史
「……まあ、俺に心当たりがないってことはよっぽどどうでもいいことなんだろうな?」
荒鹿火唯史
「俺たちごと忘れちゃった方が精神の健康にいいと思うぜ!」
中忍頭
気配が揺らめく。
霧渡匣
身を竦ませながらちらちらと唯史を窺っている。
中忍頭
「……お前は何も知らされず育ってきた」
中忍頭
「己自身の事も、己の周囲の事も、己がどのように望まれていたのかも」
荒鹿火唯史
「どうやら、そうらしいな」
荒鹿火唯史
言葉を交わしながら、気配の揺らぎを探り続ける。
中忍頭
「無知は罪だ」
霧渡匣
匣の指先は、今は唯史の胸元を握り締めている。
中忍頭
「だが……特に貴様の無知蒙昧ぶりは救いがたい」
中忍頭
「何も…………」
中忍頭
「何も!何も何も何もォ!」
中忍頭
「貴様は知らんのだッッッッ!!!!」
中忍頭
「何も知らず!気づかず!家畜の如く愚鈍に育てられた貴様が!!」
中忍頭
「”その場所”に立っているという事が!万死に値する罪なのだ!!!!!」
秘密:中忍頭
貴方は、PC2に焦がれていた。
相手からすれば貴方の顔も覚えていないだろうが、それでも心にへばりついた執着は、PC2が里に利用され、使役される血徒という形で再会する事になっても消えなかった。
PC2をかつて焦がれた姿に戻すために全てを捧げる決意をした貴方は、外部の忍を装ってPC1を唆し、この舞台を整えた。

貴方の本当の使命は、PC2に本来の姿を取り戻させる事だ。
霧渡匣
「…………?」
霧渡匣
ゆるやかに目を見開く。
霧渡匣
その細く白い指先は、今も唯史の胸元を縋っている。
中忍頭
其の姿が、一層その者の琴線に触れる。
中忍頭
「……在ってはならぬ!在ってはならぬのだァ!!!」
中忍頭
「わかるか!そのような……そのような姿など!!!」
霧渡匣
その表情が、少しずつ曇りゆく。
荒鹿火唯史
その恫喝を受けても、ハコを離しはしない。
中忍頭
「今のこの場のっ全てが間違いだ!あまりにも耐え難い、唾棄すべき間違いだ!」
荒鹿火唯史
むしろより一層に腕に閉じ込める。
中忍頭
「アアァァッ耐え難いッ耐え難い耐え難い耐え難いィィ…………!!」
中忍頭
ざりざりと肉をかきむしる音。
霧渡匣
唯史の胸に身を寄せている。
荒鹿火唯史
「……前言撤回」
荒鹿火唯史
ハコにだけ聞こえるように囁く。
中忍頭
「……だから間違いを正す」
荒鹿火唯史
「一旦退く」
中忍頭
「そのためにお前を利用した」
中忍頭
「全く予定通りに動いてくれたよ、お前は」
霧渡匣
「た」
霧渡匣
「唯史……」
霧渡匣
ただ彼の名を呼ぶだけの、無力な匣。
中忍頭
「私は間違いを正し……あるべき自由を取り戻す」
中忍頭
「よって死ね、それでお前の役目は終わりだ」
荒鹿火唯史
「……自由になるのは、俺とハコだ」
霧渡匣
「…………」
中忍頭
「ハッ!」
荒鹿火唯史
話は終わりとばかりに、煙の中に無数の分身が現れる。
中忍頭
煙の中から飛び交う無数の針がそれを迎え撃つ。
中忍頭
「お前が自由になれる場所なぞが、どこにあると!?」
荒鹿火唯史
十重二十重に分かれた分身はその分弱い。だが目をくらまし、隙を作ることはできる。
荒鹿火唯史
「外に!」
霧渡匣
「……っ!」
中忍頭
「まやかしだ!」
霧渡匣
針の何本を、黒絃が辛うじて受け止める。
中忍頭
「予定通り、秘伝書を手土産に連盟にでも加わろうとでもするか……?」
中忍頭
「実在もしない連盟に、どうして加わろうと言うのだかな!」
中忍頭
「お前の行き場などあるものか!はは、ははははははは!」
荒鹿火唯史
「あるさ、どこにでも」
荒鹿火唯史
「俺たち二人で殺し合えだとか強制されない」
荒鹿火唯史
「自分で考えて、悩んで、選べる」
荒鹿火唯史
「その結果死んだとしても、それが自由だ」
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
分身に紛れて、殺意を放つ男と距離を取る。
霧渡匣
その胸元を縋っている。
GM
追う足音は無く、気配は遠のく。
GM
しかし、相手は中忍頭。完全に撒けたとは言い難い。
GM
それでも稼げた時間の中で、準備を整える事はできるだろう。
GM
これより始まる、死合いの準備を。

メインフェイズ サイクル2 霧渡匣

霧渡匣
せせらぎ。
霧渡匣
荒鹿火唯史と霧渡匣の二人が幼きからを過ごした山を流れる、その川辺。
荒鹿火唯史
川のほとりにそっとハコの身体を寝かせる。
霧渡匣
空は少しずつ白み始め、迫る刻限を示しゆく。
霧渡匣
「…………」
霧渡匣
横たえられる。細い身体が。
霧渡匣
唯史の渾身の一撃を受けた、その肌が無惨に爛れている。
荒鹿火唯史
懐から火傷の薬を取り出す。
荒鹿火唯史
かつては力の制御がおぼつかず、唯史自身がよく使っていたもの。
荒鹿火唯史
ハコに兵糧丸を譲渡します。
霧渡匣
いや、拒むかな。
荒鹿火唯史
そうか……。
霧渡匣
拒みます。
霧渡匣
匣はゆっくりと瞼を上げ、唯史を見る。
荒鹿火唯史
「……ハコ」
荒鹿火唯史
傍らに腰を下ろしてハコを見つめている。
霧渡匣
「……唯史」
霧渡匣
「これからどうするの」
霧渡匣
「殺すよ。あの人は」
霧渡匣
「唯史を」
荒鹿火唯史
「戦う」
霧渡匣
「その後は?」
霧渡匣
「なかったんだよ。血盟なんて」
霧渡匣
「全部、まやかしだよ」
霧渡匣
「あの人の言った通り」
荒鹿火唯史
「……ああ。正直、あてはなくなった」
荒鹿火唯史
頭を掻く。
霧渡匣
「……すぐ調子に乗る」
霧渡匣
「唯史の悪いとこ」
荒鹿火唯史
「…………」
荒鹿火唯史
「おう……」
霧渡匣
弱々しいながら、むすっとした態度を取り繕っている。
荒鹿火唯史
「どうするか……待ってくれ……。考える。考えてる……」
霧渡匣
「そんなに時間ないよ」
霧渡匣
「今だって、あの人が追いかけて来るし」
霧渡匣
「夜が明けたらもっと大騒ぎになる」
霧渡匣
「…………」
霧渡匣
「ううん」
霧渡匣
「もう、今更なのかも」
霧渡匣
ゆっくりと身体を起こそうとする。
荒鹿火唯史
「起きて大丈夫か……?」
霧渡匣
「ハコだって、忍び」
霧渡匣
「動くくらいは、…………」
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
「……あー、寝とけ、もうちょい」
荒鹿火唯史
寝かす。ぐいっと。
霧渡匣
寝かされる。
霧渡匣
ふいっと唯史に背を向けた。
霧渡匣
「……ハコのことは」
霧渡匣
「もう、いいよ」
霧渡匣
「いいんだよ」
荒鹿火唯史
「は?」
荒鹿火唯史
「よくねえよ」
霧渡匣
「忍びって言ったけど、でも、嘘だし」
霧渡匣
「最初から、ハコはそれだけの匣で」
霧渡匣
「唯史が気にかける理由、一個もないよ」
荒鹿火唯史
「……お前」
荒鹿火唯史
「バーカ!」
荒鹿火唯史
「おい! こっち向け!」
荒鹿火唯史
肩に手をかける。
荒鹿火唯史
「気にかける理由がないわけないだろ!」
霧渡匣
抵抗。力の入らない腕で、唯史を押し退けようとして。
霧渡匣
叶わず、振り向かされる。
荒鹿火唯史
「……ほら」
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
「そうやって、すぐ、泣くし」
霧渡匣
腕で目元を拭う。
霧渡匣
「……これも」
霧渡匣
「嘘」
荒鹿火唯史
「随分上手な嘘泣きだな」
霧渡匣
「嘘だもん……」
霧渡匣
「ハコは、泣いてるかもしれないけど」
霧渡匣
「匣は、何してても、嘘だもん」
荒鹿火唯史
「……苦しいなら、壊すか?」
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
「お前の中にあるやつの、壊し方。書いてあった」
荒鹿火唯史
「それでお前は、里の支配から解放される」
霧渡匣
「……唯史の」
霧渡匣
「ばか」
荒鹿火唯史
「あ?」
霧渡匣
「それで何が起こるか、分かってないくせに」
霧渡匣
「軽率。考えなし。調子乗り」
荒鹿火唯史
「分かってないから聞いてるんだろ!」
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
「考えてなかったら今すぐにでもやってるっつーの!」
霧渡匣
俯く。
霧渡匣
だんまり。
荒鹿火唯史
「壊したいよ。お前がそうやって苦しんでるのが、俺は嫌だから」
荒鹿火唯史
「でも、それでお前に何が起きるか分からないから怖い」
荒鹿火唯史
「……知ってるなら、教えてくれないか」
霧渡匣
「…………」
霧渡匣
黙り込んでしまっている。
霧渡匣
「……ハコ」
霧渡匣
「だって、ハコは」
霧渡匣
「…………」
霧渡匣
意味もなく躊躇いに唇を動かして、結局黙って、俯いて。
霧渡匣
時間がないと言ったのは匣の方なのに。
霧渡匣
「ハコ、……ハコは」
霧渡匣
「唯史」
荒鹿火唯史
「……ああ」
霧渡匣
「唯史をどうしちゃうか、わからないよ」
霧渡匣
「唯史に……」
霧渡匣
「どう思われるか、わからないよ」
霧渡匣
「ハコは、匣なのに」
霧渡匣
「それが怖いよ……」
荒鹿火唯史
「…………俺は」
荒鹿火唯史
「ハコ」
荒鹿火唯史
「お前がどうなっても、一緒にいたいよ」
霧渡匣
「…………」
霧渡匣
「唯史が一緒にいたいのは」
霧渡匣
「ハコと、でしょう」
霧渡匣
「ハコは」
霧渡匣
「ハコだって、まやかしだよ」
霧渡匣
「ただの匣なんだよ」
霧渡匣
唯史にプライズ『血核』の秘密を譲渡します。
秘密:血核
血核は単なる血徒の証ではない。
それは妖魔を人の形に押し込め、支配し、死をもってその力を忍に吸収させるための拘束具だ。
この魔具によって拘束された妖魔は、拘束されている限り、術者が設定した人格としての振る舞いを強制される。

このプライズが破壊された時、PC2は生命力を全て回復した上で、以降、自分のデータをエネミーデータ「中級妖魔」のうちのいずれかとして扱う。(どのエネミーになるのか、及び奥義の種類などは、キャラクター作成時に決定しておくこと)

またこのプライズが破壊された時、PC2は全ての長所を失い、取得していた感情の内容を任意のものに変更できる。
また、本当の使命も失う。(HO表面の使命が本当の使命になる)
霧渡匣
「……嘘だよ」
霧渡匣
「霧渡匣は、ぜんぶ嘘」
荒鹿火唯史
「…………っ、」
荒鹿火唯史
明かされた秘密に、目を見開く。
霧渡匣
「ハコは、ただの匣」
霧渡匣
「内も外も全部空っぽ」
霧渡匣
「まやかし。はりぼて。にせもの」
霧渡匣
「……唯史とは、行けないよ」
荒鹿火唯史
「………………」
荒鹿火唯史
沈黙。それから。
荒鹿火唯史
ハコの手を取る。
霧渡匣
「…………?」
荒鹿火唯史
傷に障らないようにそっと。けれどしっかりと。
霧渡匣
小さな手を取られる。
荒鹿火唯史
「……空っぽなんかじゃない」
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
「15年だぞ」
荒鹿火唯史
「お前とずっと一緒にいた」
荒鹿火唯史
「一緒に訓練して、飯食って、遊んで……」
荒鹿火唯史
「覚えてるだろ? 初めて一緒に街に連れてかれた時のこととかさ……」
霧渡匣
「…………」
霧渡匣
無言のまま、小さく頷く。
荒鹿火唯史
「ハコがはぐれて、俺が探しに行って」
荒鹿火唯史
「あの時も泣いてたよな、お前」
霧渡匣
「……だって」
霧渡匣
「ハコは、そういう設計だから……」
霧渡匣
ぼそぼそとそのように抗弁する。
荒鹿火唯史
「でも、その時も今も、感じたことが偽物ってことはないだろ」
霧渡匣
「…………」
霧渡匣
「……でも」
霧渡匣
「それに何の意味があるの?」
霧渡匣
「……ハコは」
霧渡匣
「唯史がそう思ってくれてるのは、嬉しいよ」
霧渡匣
「ハコだって、同じように思うよ」
霧渡匣
「でも、ハコは持ち出せない匣なの」
霧渡匣
「思い出や経験が偽物じゃなくても」
霧渡匣
「匣を開けてしまったら、ハコはなくなるの……」
荒鹿火唯史
「……俺は」
荒鹿火唯史
「ハコがいなくなるのは、いやだ」
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
「ここにいるお前が偽物だから、作り物だからって消えるのは、消すのは」
荒鹿火唯史
「俺は、いやだ……」
霧渡匣
でも。掠れ声で返して、俯く。
霧渡匣
「唯史は、もう、里を出るしかないんだよ」
霧渡匣
「本当なら、こうして話している時間だって惜しくて、危ないくらいで」
霧渡匣
「……ちがう」
霧渡匣
「里を出ないにしても」
霧渡匣
「唯史はハコを殺すか、ハコに殺されるしか、なくて」
霧渡匣
「だから……」
荒鹿火唯史
「里を出れば、もうお前にそうしろって命令するやつもいないだろ」
霧渡匣
「……出られないよ」
霧渡匣
「ハコ、ぼろぼろだよ」
霧渡匣
「いくら唯史がちょっと強くなっていたからって」
霧渡匣
「今のまま、ハコを連れて出ていけるはずない……」
荒鹿火唯史
「……もう一つ、奥の手があるって言ったらどうする?」
霧渡匣
「…………?」
荒鹿火唯史
ハコに禍魂の欠片の秘密を渡します。
秘密:禍魂の欠片
生命を操作する力を持つこの秘宝は2つの役割を持っている。
ひとつは、力を吸収する受け皿。
もうひとつは、この秘宝を持って育った者を、里が行う実験に都合の良い存在に育て上げる矯正装置だ。
この秘宝が存在する限り、この秘宝の所有者は術者が設定した【背景】を1つ強制される。

このプライズが破壊された時、PC1は全ての弱点を失い、感情を結んでいた場合、感情表を振ってその内容を再決定する。
その後、奥義を一種特例習得する。
霧渡匣
「…………」
霧渡匣
「……でも」
霧渡匣
「でも……」
荒鹿火唯史
「……本当は、だから俺に任せて休んでろ! って言いたいんだけどな」
荒鹿火唯史
「でも、いくらなんでもそこまで調子には乗れねーわな」
荒鹿火唯史
「ハコ」
荒鹿火唯史
「俺はお前と一緒に生きたい」
荒鹿火唯史
「そのために、お前の力が必要だ」
荒鹿火唯史
「……俺は見込みが甘い。すぐ調子に乗る」
荒鹿火唯史
「ハコに、傍にいて助けてほしい」
霧渡匣
「…………あ」
霧渡匣
「あのひと、は……」
霧渡匣
「ハコの中身に執着してる……」
霧渡匣
「ハコを壊して、中身を出してしまえば」
霧渡匣
「それで満足して、唯史のこと、見逃すかもしれない……」
荒鹿火唯史
「……それは、珍しくお前の見込みが甘いんじゃないのか?」
荒鹿火唯史
苦笑する。
霧渡匣
「……ハコの、中身だって」
霧渡匣
「15年間ずっといたなら」
霧渡匣
「唯史のこと、悪く思ってないかも、だし……」
霧渡匣
「悪いようには、しないかも……」
荒鹿火唯史
「お前が消えるのは嫌だよ」
荒鹿火唯史
「お前が、ハコが」
荒鹿火唯史
「いなくなって、消えて、二度と会えなくなるなら」
荒鹿火唯史
「それはお前が死ぬのと変わらない」
荒鹿火唯史
「それじゃあ里を抜けようと思った意味がない」
霧渡匣
「ハコ、だって」
霧渡匣
「唯史が死ぬのは、やだよ……!」
霧渡匣
「唯史が死ぬのがやだ」
荒鹿火唯史
「うん」
霧渡匣
「唯史が、ハコのために、危ないことして」
霧渡匣
「それで死んじゃうかもしれないのは、やだ……」
荒鹿火唯史
「……うん」
荒鹿火唯史
「だから、戦おう。二人で」
荒鹿火唯史
「俺がハコを守るから、ハコが俺を守ってくれ」
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
「……これを」
荒鹿火唯史
懐から巻物を取り出す。
荒鹿火唯史
「使えば、お前も新しい術が使えるようになるはずだ」
霧渡匣
こわごわと巻物を受け取る。
霧渡匣
黒い瞳でそれを見ている。
荒鹿火唯史
唯史がこっそりと持ち出した秘伝書。そこには里の秘術も記されている。
霧渡匣
「……勝てるか」
霧渡匣
「わからないよ……」
荒鹿火唯史
「そうだな」
荒鹿火唯史
「これからずっとそうだ」
霧渡匣
「……外で生きてく、なんて」
霧渡匣
「ハコ」
霧渡匣
「考えたこともなかったし……」
荒鹿火唯史
「あれだけ人がいるんだ。どこかに紛れて暮らす道があるはずだ」
霧渡匣
「…………」
荒鹿火唯史
「噂だけど……抜け忍の隠れ里ってのもあるらしい」
霧渡匣
「……でも」
霧渡匣
「また、はぐれちゃったら……」
荒鹿火唯史
「そしたらまた探しに行く」
荒鹿火唯史
「絶対見つけるよ」
霧渡匣
「…………」
霧渡匣
じ、と唯史を見て。
霧渡匣
「楽観的」
霧渡匣
「すぎるよ……」
霧渡匣
*秘伝書の秘密を調査します。
霧渡匣
*使用特技は呪術で。
霧渡匣
2D6>=5 (判定:呪術) (2D6>=5) > 8[2,6] > 8 > 成功
荒鹿火唯史
「いや……ここでそしたらどうしよう……とか言えるかよ!」
荒鹿火唯史
「絶対つったら絶対なんだよ!」
霧渡匣
「……ふふ」
霧渡匣
「そうだ、ね」
霧渡匣
*秘伝書の効果により奥義を習得し、この場で即座に使用します。
霧渡匣
■奥義
《霧鬢風鬟》
指定特技 :呪術
エフェクト:不死身/定め/回数制限
霧渡匣
*生命力を4点回復します。
[ 霧渡 匣 ] 器術 : 0 → 1
[ 霧渡 匣 ] 体術 : 0 → 1
[ 霧渡 匣 ] 忍術 : 0 → 1
[ 霧渡 匣 ] 戦術 : 0 → 1
霧渡匣
匣の影より、糸が奔る。
霧渡匣
黒く艶やかな黒絃が焼け爛れた患部へと集まり、撚り合わされて、
霧渡匣
その傷をきれいに修復していく。
霧渡匣
服も黒絃で繕って、元通りの匣。
霧渡匣
頬を落ちる涙は未だ止められぬままの、ただのハコ。
荒鹿火唯史
「……絶対って言ったら、絶対だ」
荒鹿火唯史
「だから」
荒鹿火唯史
「絶対勝とうな、ハコ」
霧渡匣
「……ん」
霧渡匣
「うん」
霧渡匣
ゆっくりと身を起こして、唯史の肩へと頭を寄せる。
霧渡匣
「絶対だよ」
霧渡匣
「唯史……」
荒鹿火唯史
「…………」
荒鹿火唯史
「……ああ」
荒鹿火唯史
手を握るときとは違って、ためらいがちにその背中に腕を回す。
霧渡匣
慣れぬ仕草に、笑みを漏らして。
霧渡匣
手を重ね合わせる。
霧渡匣
そこには確かに、人同士の温もりがあった。
GM
重なる。
GM
手と手、純心と絆、人と人でないものが。
GM
同時に在るという事と、混ざり合う事は違う。
GM
それは別個のものでありながら、ただ側にある事を許し合う事。
GM
故にこそ、それは混ざり合う濁りとは違えども。
GM
濁った瞳はそれを許容できない。