◆メインフェイズ第二サイクル第二シーン

シーンプレイヤー:獅子鞍 透夜

獅子鞍 透夜
登場はミツ
懸鉤子 蜜
は~い
GM
セーフハウスですね。
懸鉤子 蜜
そっと透夜の肩を抱く。
懸鉤子 蜜
きっと、約束を果たしてほしかっただろう。
懸鉤子 蜜
約束を果たすのは自分。
そう思っている。
懸鉤子 蜜
けれど。
懸鉤子 蜜
「……」
懸鉤子 蜜
守るということは。
その命を守ることだけじゃない。
懸鉤子 蜜
透夜の心を。
生活を、これからの未来を。
懸鉤子 蜜
「とーや」
懸鉤子 蜜
肩を抱いたまま頭を撫でた。
獅子鞍 透夜
少し、混乱していた。
冷静さを欠いた。
獅子鞍 透夜
それも、だんだんと落ち着く。
獅子鞍 透夜
胸元の衣装が血にぬれて黒く染まっているが、それだけ。
獅子鞍 透夜
「大丈夫」
獅子鞍 透夜
「俺は、化物になんてならないし……」
獅子鞍 透夜
「ちゃんと、全部終わったら……学校にも行くし……」
懸鉤子 蜜
「……とーや」
懸鉤子 蜜
「きっと私の方が大丈夫じゃないんだ」
懸鉤子 蜜
「とーやがつらいと」
懸鉤子 蜜
「私もつらいよ……」
獅子鞍 透夜
本当の兄妹以上に、姉弟として過ごした。
獅子鞍 透夜
「…………ミツ」
獅子鞍 透夜
「ミツは俺の、姉さんだから」
獅子鞍 透夜
「家族だから……」
獅子鞍 透夜
「だから、大丈夫」
懸鉤子 蜜
「うん……」
懸鉤子 蜜
そう言われて嬉しいのが私だけじゃないことが嬉しい。
懸鉤子 蜜
それでも。
懸鉤子 蜜
もっと、できることはないかって思っちゃうのも。
懸鉤子 蜜
家族だから。
獅子鞍 透夜
「ありがとう」
獅子鞍 透夜
甘えるように身を預けた
獅子鞍 透夜
宝珠・迦具土の情報を獲得します
GM
はい。とりあえず判定しますか?
GM
特技はいかがいたしましょう。
獅子鞍 透夜
異形化……
GM
なるほど。いいでしょう。
GM
判定を。
獅子鞍 透夜
2D6>=5 (判定:異形化) (2D6>=5) > 7[3,4] > 7 > 成功
GM
成功ですね。お送りします。
GM
お送りしました。
獅子鞍 透夜
秘密をミツに共有します
懸鉤子 蜜
いただきます
GM
了解しました。お送りしましょう。
GM
お送りしました。
GM
CST 都市シーン表(6) > 至福の一杯。この一杯のために生きている……って、いつも言ってるような気がするなぁ。
GM
セーフハウスで一息だな。
獅子鞍 透夜
深いため息。
獅子鞍 透夜
家族はみな死んでいて
獅子鞍 透夜
兄は、自分を殺そうとしている。
獅子鞍 透夜
俺は……
獅子鞍 透夜
俺は、もうすぐ。人でなくなる。
獅子鞍 透夜
胸をおさえて、うつむく。
獅子鞍 透夜
最初から、未来なんてなかった。
獅子鞍 透夜
迎えなんて来るはずがなかった。
懸鉤子 蜜
「とーや」
懸鉤子 蜜
ぽんと軽く肩を叩く。
獅子鞍 透夜
「ん……」
獅子鞍 透夜
「何?」
懸鉤子 蜜
何?と聞かれるとかける言葉があるわけではない。
懸鉤子 蜜
少し安心した顔を見せる。
獅子鞍 透夜
「アンタ……ずっと知ってたのかよ」
獅子鞍 透夜
俺が火神になるってこと
懸鉤子 蜜
「……うん」
懸鉤子 蜜
頷く。
獅子鞍 透夜
「…………」
獅子鞍 透夜
「ありがと」
懸鉤子 蜜
「……?」
獅子鞍 透夜
「だって、俺……そんなん、知ってたら……」
懸鉤子 蜜
拒絶されると思っていた。
獅子鞍 透夜
「こんなに、生きたいって……思えなかったし……」
獅子鞍 透夜
「生きることが、楽しいって……」
懸鉤子 蜜
でももっと、心配していたのは。
懸鉤子 蜜
そこだ。
懸鉤子 蜜
こんなものを胸に飼いながら。
生きていたいとさえ、思えないかもしれない。
懸鉤子 蜜
「……私こそ、だよ」
懸鉤子 蜜
「お役目とはいえ。とーやのこと騙してたのに」
懸鉤子 蜜
「……今は、私が。そうしたいって。とーやのこと助けてあげたいって思ってる」
懸鉤子 蜜
「生きたい、って。思ってくれてありがとうね」
獅子鞍 透夜
「ミツ…………」
獅子鞍 透夜
「あの、俺さ……」
獅子鞍 透夜
「いつも、ミツに……いろいろ言ってるけどさ……」
獅子鞍 透夜
「本当は、全部……感謝してる。こうして、好きなことできるのも……いきてるのも、全部ミツのおかげだって……わかってるから……」
懸鉤子 蜜
「ふふ。お互い様だよ~」
懸鉤子 蜜
「とーやのしたいことが出来るように。
私、いっぱい全力尽くすからね……」
獅子鞍 透夜
「うん…………」
獅子鞍 透夜
「俺は『獅子鞍 透夜』だ」
懸鉤子 蜜
「……なりたかったら『結』になってもいいんだよ。とーや。
それが自由ってことだと。私は……思うから」
獅子鞍 透夜
騙されていたことは事実だが、これまでの生活がなかったことになるわけじゃない。
懸鉤子 蜜
「どっちだって。私はあなたの味方」
獅子鞍 透夜
「今更女になれって?」
獅子鞍 透夜
「セーラー服で学校なんて行ったら爆笑されるだろ」
懸鉤子 蜜
「ふふ」
懸鉤子 蜜
「とーやは何着ても素敵だよ」
懸鉤子 蜜
だから。自由に。好きなように。
この戦いも。これからの未来も。
懸鉤子 蜜
私はそのために戦うよ。
獅子鞍 透夜
「ありがとな、ミツ。俺……」
獅子鞍 透夜
「次の誕生日ケーキはイチゴショートがいい!ワンホール!」
懸鉤子 蜜
「まっかせなさい!」

◆メインフェイズ第二サイクル第三シーン

シーンプレイヤー:七竈 蘇芳

GM
住み慣れた古本屋、その奥の一室に、
GM
わずか漂う炎の残り香。
七竈 蘇芳
結局一緒に夕食の買い物をして、帰ってきた。
七竈 蘇芳
この男は、命の取り合いと生活を分けない。
七竈 幽
幽の様子も落ち着いている。
七竈 幽
獅子鞍透夜が妹と知って見せた動揺はなく。
七竈 幽
己の身も焦がすような激しい殺意も今は鳴りを潜め。
七竈 蘇芳
そうしろ、と教えたわけでもなく。
七竈 蘇芳
幽は己の中の焔の扱いを弁えている。
七竈 蘇芳
だからこそ、それが乱れたまま追わせることは適切ではないと判断した。
七竈 蘇芳
それだけのこと。
七竈 蘇芳
幽の秘密を調査します。使用特技は隠蔽術。隠し事はなし。
七竈 幽
感情修正します。
GM
OK! 判定をどうぞ。感情修正もOK。
七竈 蘇芳
2D6+1>=5 (判定:隠蔽術) (2D6+1>=5) > 6[1,5]+1 > 7 > 成功
GM
難なく。お渡ししましょう。
GM
お渡ししました。
七竈 蘇芳
「大学芋作ろうねえ」
七竈 幽
「うん」
七竈 幽
動揺も殺意もなく。
七竈 幽
今はただ、素直な親愛の情と感謝だけが蘇芳に向けられている。
七竈 蘇芳
台所に立ちながら、背中に自身の愛し子の感情を受ける。
七竈 蘇芳
振り向けば交わされる、視線。
七竈 蘇芳
「……幽、何も訊かないの」
七竈 幽
「ん?」
七竈 幽
「うーん……」
七竈 幽
「言いたいことならある」
七竈 蘇芳
「おっ、なんだい」
七竈 幽
「助けてくれてありがとう」
七竈 幽
「さっきも、この間も」
七竈 幽
「会った頃から、ずっと」
七竈 蘇芳
「……ああ……」
七竈 蘇芳
頬を掻く。
七竈 蘇芳
「どういたしまして?」
七竈 蘇芳
そこには僅かな間がある。
七竈 幽
「……蘇芳さんは、蘇芳さんだ」
七竈 幽
「オレを助けて、今まで育ててくれた」
七竈 蘇芳
「だいたい、自分の為だからなあ」
七竈 幽
「そうなんだ?」
七竈 蘇芳
「幽がおいしそうだったから」
七竈 幽
「はは」
七竈 蘇芳
「子供のころにさあ、絵本読んであげたでしょう」
七竈 幽
「うん」
七竈 蘇芳
「なんだっけ、恐竜の……おいしそうだなって思うやつ」
七竈 蘇芳
「……俺だなあって思ってね」
七竈 蘇芳
「おかしかったな」
七竈 蘇芳
なんでもない思い出の話。
七竈 幽
「…………」
七竈 幽
「今もそう思う?」
七竈 蘇芳
「うん」
七竈 蘇芳
笑う。
七竈 幽
「…………」
七竈 幽
「いいよ」
七竈 幽
「蘇芳さんがしたいなら、そうしても」
七竈 蘇芳
「はは……」
七竈 蘇芳
「もうちょっとはやくしとくんだったな」
七竈 幽
「すぐは困るけど」
七竈 幽
「獅子鞍透夜を殺した後なら」
七竈 蘇芳
「無理無理」
七竈 蘇芳
「もう幽がいなくなったら寂しくて耐えられないよ」
七竈 幽
「そう……」
七竈 幽
「それで今まで育ててもらった恩返しになるならって思ったんだけど」
七竈 幽
残念そうに、わずかに肩をすくめる。
七竈 蘇芳
「恩返しねえ」
七竈 幽
「うん」
七竈 蘇芳
「考えたこともなかったな、幽が俺といてくれるだけでよかったから」
七竈 蘇芳
あの絵本の最後は、どうなるのだったか。
七竈 幽
「ずっと考えてたんだ」
七竈 幽
「何かできないか」
七竈 幽
「……何をしたらいいか、まだ分からないけど」
七竈 幽
さっきのはいいと思ったんだけどな……。
七竈 蘇芳
「幽」
七竈 幽
「ん」
七竈 蘇芳
「幽がそうやって俺のこと考えてくれてすごくうれしい」
七竈 蘇芳
「俺がうれしいとかたのしいとか、思うのは」
七竈 蘇芳
「全部幽がくれたものだから」
七竈 幽
「……そう」
七竈 幽
「よかった」
七竈 蘇芳
「だから、そうだな……お互い様だね」
GM
七竈 幽
2d6 対決シーン表 (2D6) > 4[1,3] > 4
GM
4:超長距離からの忍術対決。飛び交うのは矢か呪いか火の球か。狙うは必殺の一撃。
GM
夜の高台。
GM
月夜の見下ろすその中に、忍が一人、その瞬間を待っている。
七竈 幽
「…………」
七竈 幽
月に照らされて、その身を晒す。
GM
無防備に見せた立ち姿。
GM
あからさまな誘い。
GM
それをしかし、ただの罠と見過ごすには、
GM
今は互いに時間が惜しい。
獅子鞍 透夜
高台に建つ男の額に、真っ赤な光の点が目標を定め。
獅子鞍 透夜
はるか遠くから長距離ライフルの弾が、打ち出される。
七竈 幽
無防備な幽の眉間を銃弾が貫いて
七竈 幽
瞬間、その姿が揺らぐ。
七竈 幽
「……見つけた」
獅子鞍 透夜
来るぞ
七竈 幽
その声は、透夜の背後から。
獅子鞍 透夜
黒い炎が狭間を焼く。
七竈 幽
刃紋が月の光を受けて煌めく。
獅子鞍 透夜
ライフルを投げ捨て、拳銃を抜く。
七竈 幽
刀が透夜の胸を狙って迫る。
獅子鞍 透夜
ためらいなく、全弾を撃ち込む。
獅子鞍 透夜
狙いはわかっている、その切っ先を拳銃の横身で弾き。
獅子鞍 透夜
下がる。
獅子鞍 透夜
散弾銃を抜く。
七竈 幽
取られた距離を詰めんと、再度迫る。
七竈 幽
身に纏う炎が銃弾を焼き、溶かす。
獅子鞍 透夜
銃口から放たれた弾は細かく割れて全身を弾くが、細かい弾はもたない。
獅子鞍 透夜
それを顔に向けて投げつけ、再度下がる。
七竈 幽
柄で打ち払う。
獅子鞍 透夜
この距離でミサイルは大掛かりすぎる。
獅子鞍 透夜
ならば
獅子鞍 透夜
腰から抜いた鋼縄を両手で張り、刃を受ける。
七竈 幽
鋼が擦れて、火花を散らす。
懸鉤子 蜜
受け止められた刃に向けて放つ、赤い帯締め。
懸鉤子 蜜
絡めとり、引きずり降ろそうとする力に忍蚕の絹が軋む音。
獅子鞍 透夜
「そんなに俺を殺したいか?ユウちゃんよぉ……」
七竈 幽
絡め取る力と、それを逆に引きずり降ろそうとする力が拮抗する。
七竈 幽
「……そう、しなければいけない」
七竈 蘇芳
その帯締を影が斬る。
七竈 蘇芳
深夜を選んだのは、それが闇を跋扈する者の時間だからだ。
獅子鞍 透夜
帯が切れたタイミングで左手を放し、刃を弾く。
七竈 蘇芳
影が形を結ぶ。
懸鉤子 蜜
闇が力になるのは、1人だけじゃない。
七竈 幽
数歩後ずさり、刀を構え直す。
獅子鞍 透夜
頑丈な鋼糸を束ねた縄をたたきつけ、重く地を抉る
懸鉤子 蜜
妖魔の力を降ろす一族の一手が影に襲い掛かる。
七竈 蘇芳
形を結べばそれを真っ向から受ける。
七竈 蘇芳
こちらはこの女の手を塞げればそれでいい。
七竈 幽
蘇芳に任せて、再び透夜に斬りかかる。
七竈 幽
迷いのない視線が、殺意が、
七竈 幽
真っ直ぐに透夜に向けられている。
獅子鞍 透夜
迷いはない、が余裕もある。
獅子鞍 透夜
攻めではなく護りならば、やりようはある。
獅子鞍 透夜
向かってくる刃を、縄でからめとるように弾いていく。
七竈 幽
『神鏡・啼沢女』の秘密を透夜と蜜に譲渡します。
獅子鞍 透夜
『宝珠・迦具土』の秘密を幽と蘇芳に譲渡します。
七竈 蘇芳
酸化した血のごとき影を纏わせた腕で懸鉤子の一閃を受け――
七竈 蘇芳
視線が交錯する。
七竈 蘇芳
『七竈幽』の秘密を透夜と蜜に譲渡します。
懸鉤子 蜜
『獅子鞍透夜』の秘密を蘇芳と幽に譲渡します。
GM
全て了解しました。公開ですね。
GM
順繰りに開示していきましょう。
【秘密:『神鏡・啼沢女』】
七竈 幽に取り憑く『不知火』の一族の業火を抑えつける役目を持つ鏡。
七竈 幽が『神鏡・啼沢女』を失った場合、
業火に包まれクライマックスフェイズ終了後に死亡する。
 
また、『宝珠・迦具土』を保持している者は、
『神鏡・啼沢女』を手に入れない限り妖魔化して暴走し、
エンディングフェイズにて完全に妖魔となる。
 
『神鏡・啼沢女』は愛によって力を活性化させる。
『神鏡・啼沢女』の保持者は、
シーンに登場しているキャラクター2人のプラスの感情を失わせる代わりに、
不知火の一族の業火による効果をクライマックスフェイズ終了まで無効化することが出来る。
【秘密:『宝珠・迦具土』】
『宝珠・迦具土』を宿した『火神』を殺害することで『神産みの儀式』は完成する。
(殺害後にプライズを押し付けてもよい)
儀式を完成させた者は神の力を得て『忍神』となる。

忍神は、戦果として願いを1つ叶えることが出来る。
ただし『死亡した火神の復活』だけは叶えることが出来ない。

忍神は穢れを1D6点受ける度にこの願いの数を1つ増やすことができる。
この効果で生命力が0以下になった場合、そのキャラクターは死亡する。
【秘密:七竈 幽】
あなたの命を繋いでいるのは七竈 蘇芳に与えられた『神鏡・啼沢女』の力によるものだ。
七竈 蘇芳に助けられるまでの記憶を失っているあなたにとって、七竈 蘇芳は何者にも代えがたい存在だ。
あなたの本当の使命は『七竈 蘇芳に恩を返す』ことである。

しかし、あなたの肉体は死した不知火の一族の業火によって支配されている。
この支配を脱するまで、あなたの使命は『獅子鞍 透夜を殺す』となる。
支配されている間、戦闘での戦果はGMが決定する。
【秘密:獅子鞍 透夜】
心臓である『宝珠・迦具土』を一度でも失った場合、
あなたはエンディングフェイズで死亡する。
『宝珠・迦具土』と一体化しているため、
あなたは『百燐』か『炎刃』を使用することが出来る。

鞍馬神流はあなたを餌に火神をおびき出そうとしている。
だが、『宝珠・迦具土』を使うことは危険な賭けでもある。
クライマックスフェイズ終了時に火神が死亡していなかった場合、
鞍馬神流の手によってあなたは『宝珠・迦具土』ごと封印される。

「君を自由にする」
懸鉤子 蜜はあなたにそう約束してくれた。
相手が約束を守ってくれるならば、
あなたは自らの使命を「自由になる」に変更しても構わない。
GM
透夜は『炎刃』を習得しています。
GM
以上。
獅子鞍 透夜
獅子鞍 透夜の居所を全員に渡します。
GM
了解しました。透夜の居所が全員の手に。
獅子鞍 透夜
「かかってこいよ……いつでも」
獅子鞍 透夜
「返り討ちにしてやる……テメェが……」
獅子鞍 透夜
「俺を殺したいなら……!」
獅子鞍 透夜
靴に仕込んだ小型銃から、幽の胸をめがけて短距離弾が放たれる。
七竈 幽
身を捻って躱す──が、遅い。
七竈 幽
弾が腕を掠める。
七竈 幽
「ああ」
七竈 幽
傷に頓着せず、視線は変わらず透夜に向けられたまま。
七竈 幽
「殺す」
獅子鞍 透夜
縄がとぶ
獅子鞍 透夜
「なら……」
獅子鞍 透夜
「テメェが死ね、クソ兄貴……!」
七竈 幽
鞘で縄を受ける。
七竈 幽
「それはできない」
獅子鞍 透夜
くるりと鞘に絡まった縄を引く
七竈 幽
引く力に乗じて地を蹴る。
七竈 幽
一気に距離を詰める。
七竈 幽
死した不知火の怨念が、幽の身体をつき動かす。
七竈 幽
自由にする。
七竈 幽
そう約束した妹の
七竈 幽
心臓を貫かんと、刃を振るう。
獅子鞍 透夜
「っ」
獅子鞍 透夜
回転させた縄で刀を掴み、両手で引いて止める。
獅子鞍 透夜
その切っ先が、胸の間、心臓の目前に刺さる。
獅子鞍 透夜
それ以上に踏み込まれないよう、ぎりぎりと締めあげる。
七竈 幽
力は拮抗し、刃は心臓に届かない。
獅子鞍 透夜
「…………」
獅子鞍 透夜
「そんなに……」
獅子鞍 透夜
「俺が、嫌いかよ……!」
懸鉤子 蜜
「とーや!」
七竈 幽
「…………」
七竈 蘇芳
「幽、」
懸鉤子 蜜
影を踏み台にして飛びかかる。
心臓に突き立てられんとする刃をむしり取るために。
獅子鞍 透夜
「殺したいほど、憎まれるようなこと……したかよ!」
七竈 幽
飛びかかられる寸前。
七竈 幽
透夜の腹を蹴り飛ばす。
七竈 蘇芳
跳躍は隙だ。影が奔り、足を絡め取り地に叩きつけんとする。
獅子鞍 透夜
「……!」
七竈 幽
そのまま自身も後ろに飛び退る。
七竈 幽
「……別にお前が憎いわけじゃない」
七竈 幽
「ただ、オレは……」
七竈 幽
「そう、しなければならないんだ」
獅子鞍 透夜
刀は先端に行くほど細い。
押そうと思えばとどまるが、引くのは容易い。
獅子鞍 透夜
「…………」
獅子鞍 透夜
銃を、構える。
獅子鞍 透夜
「結局……」
獅子鞍 透夜
「約束なんて……」
獅子鞍 透夜
幽の額に向けて、引き金を引く。
獅子鞍 透夜
どうでもよくなっちゃったんだ
七竈 幽
「…………」
七竈 蘇芳
「幽!」
懸鉤子 蜜
特製のストッキングが、滑りよく抜け出でさせる。
影の手から逃れ素足で駆け出した。
懸鉤子 蜜
「透夜!」
七竈 幽
約束。その言葉に。
七竈 蘇芳
懸鉤子を捕えられない。その額に向けられた銃口を逸らせない。
七竈 幽
ほんの一瞬、炎が揺らぐ。
七竈 幽
だけどそれだけ。
七竈 幽
揺らめく炎はそのまま銃弾を捉え、焼き尽くす。
獅子鞍 透夜
「…………」
七竈 幽
あの時はあんなに言いたいことがたくさんあったのに、
七竈 幽
今、妹にかけられる言葉は何もなかった。
七竈 蘇芳
僅か遅れて、透夜の銃口からかばうように影が割り込む。
七竈 蘇芳
その青い炎が、不知火の怨念によって齎されていることを知っている。
七竈 蘇芳
これ以上は。
懸鉤子 蜜
透夜を抱き留める。
懸鉤子 蜜
まだ。
懸鉤子 蜜
まだ、はやいんじゃない?
懸鉤子 蜜
そんなに、急いでしなきゃいけないこと?
懸鉤子 蜜
とーや。
獅子鞍 透夜
「ミツ…………」
懸鉤子 蜜
頭をぎゅっと抱きかかえる。
ぽんぽんと撫でて。
懸鉤子 蜜
「退こう」
獅子鞍 透夜
「ああ」
七竈 蘇芳
蘇芳もまた、幽が追わぬようその肩を抱く。
七竈 蘇芳
今度は、殺れたかもしれなかった。止める必要はなかったはずだ。
七竈 幽
肩を抱かれ、蘇芳を見る。
懸鉤子 蜜
黒い風呂敷がふたりを包んで。
夜の帳に溶ける。
懸鉤子 蜜
はらりと解ける頃にはその姿はない。
七竈 蘇芳
「…………」
七竈 幽
「…………」
七竈 幽
炎が、消える。
七竈 蘇芳
ここであれを殺せば、この子がどうなってしまうのか。
七竈 蘇芳
それが一瞬視えなかった。
七竈 蘇芳
初めてそれを、恐ろしいと、そう思った。
七竈 蘇芳
腕を回して抱き竦める。
七竈 幽
「…………蘇芳さん?」
七竈 蘇芳
「………………」
七竈 蘇芳
口を開けば謝罪ばかりがこぼれそうで。
七竈 蘇芳
ただ抱き竦めたまま黙り込む。
七竈 幽
「……どうしたの」
七竈 蘇芳
「ううん……」
七竈 蘇芳
この子にも、家族が。
七竈 蘇芳
ほんとうの家族が。
七竈 幽
「…………」
七竈 幽
よく分からないまま、おずおずと
七竈 幽
蘇芳の背に腕を回す。
七竈 蘇芳
「…………………………」
七竈 蘇芳
「幽は、俺の家族だよ」
七竈 蘇芳
「俺の……」
七竈 幽
「……うん」
七竈 幽
「オレも、そう思ってるよ」
七竈 幽
「蘇芳さんが、オレの家族だ」
七竈 蘇芳
その言葉で満たされるはずなのに。
七竈 蘇芳
頷いて、それからその肩口に顔を埋めて。
七竈 幽
「オレには、蘇芳さんだけだよ」
七竈 蘇芳
「……」
七竈 蘇芳
それを喜びきれないのはなぜか。
七竈 蘇芳
この子以外の人間が何を想い、何を営み暮らすかなど、どうでもよいことなのに。
七竈 蘇芳
この子に自分しかないことを、喜ぶべきなのに。
七竈 蘇芳
巨躯にあまるその身体を抱いて、ただ。
七竈 蘇芳
しばらくそうしていた。