◆メインフェイズ第一サイクル第三シーン
シーンプレイヤー:蘭沢 清誉
GM
夏の日。熱の篭もった湿った空気を、清流から吹き抜ける風が払い、
蘭沢 清誉
ほぼ夜通し歩き続け、なおも見つからず。
日差しの中にしかし汗一つ流さずに野山を巡り。
蘭沢 清誉
水の匂いの中からふと、それを嗅ぎつける。
蘭沢 清誉
気取られぬように少しずつ呼吸のペースを落とし、心音を鎮め。
じりじりと、気配を探る。
翡翠
「薬とか、詳しかったらよかったんだけど……ごめんね」
翡翠
今できるのは、魚、肉。
最低限食物を調達してふるまうのみ。
翡翠
いつまでも治らなければいいとさえ思うのは悪いことだ。
蘭沢 清誉
獣が甲斐甲斐しく世話を焼き、
妻としたその女が呼吸をしている、その姿を。
しばし呆然と見ていた。
蘭沢 清誉
最早潜むことはせず、草木を踏み分けて姿を現す。
蘭沢 清誉
聞いたことのないような妻の大声に、立ち止まり。
蘭沢 清誉
汗一つかいてはいないが、着物はそこそこに乱れ。
あの月の下から一刻たりと休んでいないことを見て取れる程度には。
蘭沢 繭子
「……この方から、傷の手当てを受けました」
蘭沢 清誉
つかつかと歩み寄り、繭子の細い手首を掴む。
翡翠
「好きなものも、嫌いなものも、したいことも、何も知らない」
蘭沢 清誉
乱雑に繭子の手首を引き、自分の側に寄せようとする。
蘭沢 繭子
声をかけられれば、反射的に目線が翡翠に向けられる。
蘭沢 繭子
「人の妻に、言うものではありません……」
蘭沢 清誉
なおも引こうとした手首の冷たさに、一瞬力の緩む。
蘭沢 清誉
「いい加減にしろ。貴様にこの女の何がわかる!」
蘭沢 清誉
よろめく妻に目もくれず、刀に手を掛ける。
蘭沢 清誉
「貴様ーー、貴様さえ、いなければ……!」
蘭沢 清誉
抜いた刀が空を切る。昨晩と同じ。ーー再び、届かない。
蘭沢 清誉
”翡翠”の秘密を調査します。
言葉を交わせば否応にもそこに縁が結ばれる。【言霊術】で。
蘭沢 清誉
2D6>=5 (判定:言霊術) (2D6>=5) > 8[3,5]
> 8 > 成功
蘭沢 清誉
「この女に何か決められると思うのか?」
蘭沢 清誉
今は対面の男の腕の中の、妻とした女を見る。
蘭沢 清誉
その名を呼ぶことはしなかった。これまでも、ほんの数えるほど。
蘭沢 清誉
その一瞬の動揺を見てーー、じり、と後ろに退く。
蘭沢 清誉
口にはしながらも。
今度は追い縋る手を伸ばさなかった。
蘭沢 清誉
気配が完全に消え去れば、その方角を暫し見つめ。
◆メインフェイズ第一サイクル第四シーン
シーンプレイヤー:蘭沢 繭子
蘭沢 繭子
KST 回想シーン表(8)
> きらきらと輝く笑顔。今はもう喪ってしまった、大事だったアイツの笑顔。
GM
それに照らされてなお、顔色の悪さの目立つ夫の顔。
蘭沢 清誉
「……ん……」ただいまのひとつもない。上着を渡して、顧みることもなく。
蘭沢 清誉
「佐々岡は帰ったか」
手伝いに来させている鞍馬の女のことだけ端的に聞いて。
返事があってもなくても、部屋にそのまま歩いて行って、着替えて。
蘭沢 繭子
いつも、清誉が帰ってくる時間に合わせて準備をしてある。
蘭沢 清誉
いつも通り。この男は、基本的には外で酒も飲まない。
蘭沢 清誉
道場と家と、任務を往復する日々の繰り返し。面白味など無縁の男だ。
蘭沢 繭子
14で嫁いでより2年間、ずっとそのように日々を送ってきた。
蘭沢 繭子
生活に必要なもの以外は、何がほしいとも言わず、
蘭沢 清誉
何が欲しいかとも、何処へ行きたいかとも、聞いたことはない。
蘭沢 清誉
ただ時折。ほんの時折、思い出したようにーー菓子を持ち帰ってくる。
蘭沢 清誉
ケーキだのクッキーだのマカロンだの、一人分だけ。何も言わず渡す。
蘭沢 繭子
──よろしいのですか。ありがとうございます。
蘭沢 繭子
いつもそう言って、少し笑って受け取る。
蘭沢 清誉
笑った顔を見ても、やはり何も言わず。笑い返すこともせず。
蘭沢 清誉
小さく鼻を鳴らすばかりで、感想を聞きもしない。
蘭沢 清誉
手だけ合わせて、箸をとり。食べ始める。言葉のない食卓。
蘭沢 清誉
交わす言葉のないかわりーーよく食べる。
蘭沢 清誉
椀が空になれば、黙って繭子の方へ差し出す。
蘭沢 繭子
受け取って、おかわりをよそって差し出す。
蘭沢 清誉
ふいに視線を上げて、その様子を眺めた。
蘭沢 清誉
自分が視線を留めたことを振り払いでもするように。
蘭沢 繭子
繭子もまた、何事もなかったかのように食事を再開する。
蘭沢 清誉
やがて用意されていた分を全て食べ終われば、数杯ばかりの晩酌。
蘭沢 繭子
「少し、お話させていただいてもよろしいですか」
蘭沢 繭子
「来月の13日と14日が文化祭となっておりまして」
蘭沢 繭子
「休日ですが、学校へ行っても構いませんか?」
蘭沢 清誉
言い放ってから少しの間をおいて、言葉が足りなかったことに気づく。
蘭沢 繭子
「……私も、拝見しにいってよろしいですか?」
蘭沢 清誉
一応、これでも恩師などというものが存在しないわけではない。
呼ばれれば、行かなければならないこともある。
蘭沢 繭子
日程を告げれば、あとは自分のクラスで何をやるとも言わない。
蘭沢 清誉
それ以上は何も言わない。見に行くとも、行かないとも。
蘭沢 繭子
当日を終えても、来たかどうか確認することもないだろう。
蘭沢 清誉
共に過ごす時間はあれど交わす言葉はごく少なく。
そこに心が通ったようにはとても。
蘭沢 繭子
それでも、折に触れて繭子は控えめに笑顔を見せた。
GM
迎えるはずのなかった、一度目の夜が訪れようとしていた。
GM
生い茂る青葉の合間から、その冴え冴えとした姿が目に眩しい。
翡翠
だから、どこが安全で何が柔らかく、どれを選べばいいかがわかる。
蘭沢 繭子
「……そろそろ、降ろしてくださいませ」
蘭沢 繭子
「……やはり、私は戻らねばいけません」
翡翠
「好きな人の傍にいられないことが、寂しいって……わかっちゃったからな……」
蘭沢 繭子
「……埋め合わせられるもののないことは、心苦しく思います」
翡翠
「いつか、俺の方が好きって……ならないかな……」
蘭沢 繭子
「それを決めるのは、私ではありません」
蘭沢 繭子
「……そのようにお心を砕いていただけることには、嬉しく思います」
蘭沢 繭子
2D6>=5 (判定:千里眼の術) (2D6>=5) > 7[3,4]
> 7 > 成功
蘭沢 繭子
ET 感情表(4) >
忠誠(プラス)/侮蔑(マイナス)
翡翠
ET 感情表(2) >
友情(プラス)/怒り(マイナス)
翡翠
「闇の中で道を照らし、味方をしてくれるのはあの……月だった。」
蘭沢 繭子
「あの人を忘れて、貴方を愛することは……」
蘭沢 繭子
「それが、私の命を奪うためであっても」
翡翠
「困ったな……それじゃあ、君に生きてもらうには」
翡翠
「世界の方を、どうにかしないといけないみたいだ」
蘭沢 繭子
「よからぬことを考えるのはおやめなさい」
蘭沢 繭子
「…………比良坂の女として、聞き捨てならぬ言葉です」
蘭沢 繭子
「……思い留まってはいただけませんか」
蘭沢 繭子
「追手のかからぬ場所も、貴方を愛する人も、きっと見つかるはずです」
蘭沢 繭子
「貴方を選んだわけではありませんからね」
翡翠
「あの男がしようとしていることと、何一つ変わらないんだって……」