◆メインフェイズ第一サイクル第三シーン

シーンプレイヤー:蘭沢 清誉

GM
陽が傾く。
GM
夏の日。熱の篭もった湿った空気を、清流から吹き抜ける風が払い、
GM
男の頬を冷やしていく。
GM
そこに。
GM
昨晩に嗅いだ、血のにおいが混ざっている。
蘭沢 清誉
ほぼ夜通し歩き続け、なおも見つからず。
日差しの中にしかし汗一つ流さずに野山を巡り。
蘭沢 清誉
水の匂いの中からふと、それを嗅ぎつける。
蘭沢 清誉
「ーー」
蘭沢 清誉
気取られぬように少しずつ呼吸のペースを落とし、心音を鎮め。
じりじりと、気配を探る。
GM
二人分。気配のある。
GM
片方はよく知るもの、
GM
もう片方はあまりにも異質な。
GM
それを追う。
GM
追うた先に、見出す。
GM
探し求めたものの姿を。
翡翠
「…………まだ痛むかい?」
翡翠
河原より少し森に近い草の上。
蘭沢 繭子
「……そうですね、まだ」
翡翠
「薬とか、詳しかったらよかったんだけど……ごめんね」
蘭沢 繭子
「いえ」
蘭沢 繭子
「止血していただいただけで十分です」
翡翠
「…………うまくいってよかったよ」
翡翠
今できるのは、魚、肉。
最低限食物を調達してふるまうのみ。
蘭沢 繭子
服の上から傷口に手を当てる。
蘭沢 繭子
痛み。生きているから、それを感じる。
蘭沢 繭子
腹も空けば、食事も摂る。
翡翠
いつまでも治らなければいいとさえ思うのは悪いことだ。
翡翠
それでももう少し、この時間が名残惜しい。
翡翠
そこに、蝶の知らせ。
蘭沢 清誉
獣が甲斐甲斐しく世話を焼き、
妻としたその女が呼吸をしている、その姿を。
しばし呆然と見ていた。
翡翠
「…………待って」
翡翠
「誰かいる」
蘭沢 清誉
その一瞬を、使いに気取られた。
蘭沢 繭子
「…………」
翡翠
弓を構えるでもなく。ただ。
翡翠
マユの手をとる。
蘭沢 清誉
最早潜むことはせず、草木を踏み分けて姿を現す。
蘭沢 繭子
「触れぬようにと言いました!」
翡翠
「夫!」
蘭沢 清誉
聞いたことのないような妻の大声に、立ち止まり。
翡翠
「ああ、悪い。つい。」
蘭沢 繭子
息を吐く。
蘭沢 清誉
続いた言葉に眉間の皺が寄る。
翡翠
言いながら、でも……離せない。
蘭沢 清誉
「……何をしている」
蘭沢 清誉
どちらへと向けたものでもない問。
翡翠
「?」
蘭沢 繭子
繋がれた手を解く。
翡翠
「マユ」
蘭沢 清誉
汗一つかいてはいないが、着物はそこそこに乱れ。
あの月の下から一刻たりと休んでいないことを見て取れる程度には。
蘭沢 繭子
立ち止まった夫に目を向ける。
蘭沢 清誉
「生きていたか」
蘭沢 繭子
「……この方から、傷の手当てを受けました」
蘭沢 清誉
声音は低く、這うように。
翡翠
「…………」
蘭沢 清誉
「邪魔をしてくれたようだな」
翡翠
「邪魔?」
蘭沢 清誉
「その女を手当てする必要はない」
蘭沢 清誉
つかつかと歩み寄り、繭子の細い手首を掴む。
翡翠
「その女ぁ?」
蘭沢 清誉
「帰るぞ」
蘭沢 繭子
「…………」
翡翠
「おい、待て!」
翡翠
遮る
蘭沢 清誉
「なんだ」
翡翠
「マユを連れていくな」
蘭沢 清誉
「…………は、」
翡翠
「マユ、俺はまだ」
翡翠
「君の話を全然聞いていない」
翡翠
「好きなものも、嫌いなものも、したいことも、何も知らない」
蘭沢 繭子
伏せた睫毛が揺れる。
翡翠
「君を知りたい」
翡翠
「だから……」
翡翠
「連れていかれると、困る」
蘭沢 清誉
「勝手なことを……」
蘭沢 清誉
「先に連れて行ったのは貴様だろう」
翡翠
「お前も勝手だ」
蘭沢 清誉
「知る必要はない。この女のことなど」
翡翠
「俺にはある」
翡翠
「おはようを言ってくれた人だ」
翡翠
「おやすみを言った人だ」
蘭沢 清誉
「訳のわからないことを……!」
翡翠
蝶の舞う。
蘭沢 清誉
乱雑に繭子の手首を引き、自分の側に寄せようとする。
翡翠
「マユ……」
蘭沢 繭子
引かれる。
蘭沢 清誉
「呼ぶな!」
翡翠
「マユ、こっちを見て」
蘭沢 繭子
声をかけられれば、反射的に目線が翡翠に向けられる。
翡翠
「一緒にいこう」
翡翠
手を伸ばす。
蘭沢 繭子
「……そんな、こと」
蘭沢 清誉
「どういうつもりだ」
翡翠
「蘭沢繭子はやめよう」
翡翠
「ね」
蘭沢 繭子
「人の妻に、言うものではありません……」
翡翠
「マユ……」
翡翠
「妻をやめよう」
翡翠
「俺には、君一人あればいい」
蘭沢 清誉
なおも引こうとした手首の冷たさに、一瞬力の緩む。
翡翠
「君は選べる」
蘭沢 清誉
「いい加減にしろ。貴様にこの女の何がわかる!」
蘭沢 清誉
「これに選択肢などない!」
翡翠
「俺がいる」
蘭沢 繭子
掴む手が緩んで、ふら、とよろめく。
翡翠
支えるように、腰に触れて。
蘭沢 清誉
よろめく妻に目もくれず、刀に手を掛ける。
蘭沢 清誉
「貴様ーー、貴様さえ、いなければ……!」
蘭沢 繭子
「清誉様……!」
翡翠
その眼前を、蝶が遮り。
翡翠
女を抱きかかえて獣は後方へ跳ぶ。
翡翠
「…………」
蘭沢 繭子
「……っ、降ろしなさい!」
蘭沢 清誉
抜いた刀が空を切る。昨晩と同じ。ーー再び、届かない。
蘭沢 清誉
「答えろ、貴様が」
蘭沢 清誉
「ーー”終末の獣”か」
翡翠
「…………そう、呼ばれていた」
翡翠
「今は、違う」
蘭沢 清誉
”翡翠”の秘密を調査します。
言葉を交わせば否応にもそこに縁が結ばれる。【言霊術】で。
GM
いいでしょう。判定を。
蘭沢 清誉
2D6>=5 (判定:言霊術) (2D6>=5) > 8[3,5] > 8 > 成功
蘭沢 繭子
感情修正します……
GM
了解。
蘭沢 清誉
あっ えっ?
GM
成功ですね。
蘭沢 清誉
はい 振っちゃった
GM
感情修正は使われてませんよ。
GM
間に合ってませんから。
翡翠
「マユ、ごめんね。俺……」
GM
お送りしますね。
翡翠
「君を、放したくない」
蘭沢 繭子
「いけません……!」
翡翠
「俺を幸せにして」
翡翠
「それじゃ、代わりに……ならないかな」
蘭沢 繭子
「私は、清誉様の妻です……」
翡翠
「妻じゃなくていい」
翡翠
「俺が好きなのは、マユだから」
翡翠
「妻でも、女でもない」
翡翠
「君だよ」
蘭沢 清誉
「黙れ」
蘭沢 清誉
「その女の一切の決定権は俺にある」
蘭沢 繭子
「…………」
蘭沢 清誉
「…………チッ」
翡翠
「勝手に決めることが許されるなら」
翡翠
「それは、マユにだって許されるはずだ」
蘭沢 清誉
「この女に何か決められると思うのか?」
翡翠
「俺の名前を決めてくれた」
蘭沢 清誉
「……」
蘭沢 清誉
言葉が止まる。
蘭沢 清誉
今は対面の男の腕の中の、妻とした女を見る。
翡翠
「お前はマユの何を見ていた?」
蘭沢 繭子
「……清誉様…………」
蘭沢 清誉
その名を呼ぶことはしなかった。これまでも、ほんの数えるほど。
翡翠
「選んでいい、マユ……君は」
翡翠
「そして、俺は選びたい。君を。」
蘭沢 繭子
「…………」
蘭沢 繭子
言葉に詰まる。
蘭沢 清誉
その一瞬の動揺を見てーー、じり、と後ろに退く。
翡翠
「…………」
蘭沢 清誉
「………………」
翡翠
「行こう」
蘭沢 清誉
「俺はーー」
蘭沢 繭子
惑う瞳が、清誉に向けられる。
蘭沢 清誉
「務めを果たすだけだ」
翡翠
背を向けて走り出す。
翡翠
一度も矢をつがえることのないまま。
翡翠
ただ、その追うのを遮るように風が吹き。
翡翠
ひらひらと蝶の舞う。
蘭沢 清誉
口にはしながらも。
今度は追い縋る手を伸ばさなかった。
蘭沢 清誉
刀を納め、息を吐き。
蘭沢 清誉
風の去るままに。
蘭沢 清誉
気配が完全に消え去れば、その方角を暫し見つめ。
蘭沢 清誉
やがて、踵を返した。
GM
追うものはない。
GM
かかる声も。
GM
今は、もう。

◆メインフェイズ第一サイクル第四シーン

シーンプレイヤー:蘭沢 繭子

蘭沢 繭子
KST 回想シーン表(8) > きらきらと輝く笑顔。今はもう喪ってしまった、大事だったアイツの笑顔。
GM
笑顔?
GM
なんかそうらしいんですけど。
蘭沢 繭子
そうらしいですね。
GM
日常生活とかだと思うんですけど。
GM
帰りを出迎えてお夕飯とかがいいかな。
GM
清誉様の。
蘭沢 繭子
お仕事帰り
蘭沢 清誉
仕事から帰ってきます
蘭沢 繭子
迎えます。
GM
その時も夕暮れ。
GM
傾いた陽が世界を橙色に染め上げて、
GM
それに照らされてなお、顔色の悪さの目立つ夫の顔。
GM
笑うさまなど、見たことがない。
蘭沢 繭子
それを出迎える。
蘭沢 繭子
「お帰りなさいませ、清誉様」
蘭沢 清誉
「……ん……」ただいまのひとつもない。上着を渡して、顧みることもなく。
蘭沢 繭子
しずしずと上着を受け取る。
蘭沢 清誉
「佐々岡は帰ったか」
手伝いに来させている鞍馬の女のことだけ端的に聞いて。
返事があってもなくても、部屋にそのまま歩いて行って、着替えて。
蘭沢 繭子
「はい」
蘭沢 繭子
端的な質問に、同じく端的に。
蘭沢 清誉
「風呂」
蘭沢 繭子
「はい」
蘭沢 繭子
いつも、清誉が帰ってくる時間に合わせて準備をしてある。
蘭沢 清誉
いつも通り。この男は、基本的には外で酒も飲まない。
蘭沢 清誉
道場と家と、任務を往復する日々の繰り返し。面白味など無縁の男だ。
蘭沢 繭子
淡々とした日々。
蘭沢 繭子
14で嫁いでより2年間、ずっとそのように日々を送ってきた。
蘭沢 繭子
生活に必要なもの以外は、何がほしいとも言わず、
蘭沢 繭子
遊びに行きたいとねだったこともない。
蘭沢 清誉
何が欲しいかとも、何処へ行きたいかとも、聞いたことはない。
蘭沢 清誉
ただ時折。ほんの時折、思い出したようにーー菓子を持ち帰ってくる。
蘭沢 清誉
ケーキだのクッキーだのマカロンだの、一人分だけ。何も言わず渡す。
蘭沢 繭子
──よろしいのですか。ありがとうございます。
蘭沢 繭子
いつもそう言って、少し笑って受け取る。
蘭沢 清誉
笑った顔を見ても、やはり何も言わず。笑い返すこともせず。
蘭沢 清誉
小さく鼻を鳴らすばかりで、感想を聞きもしない。
蘭沢 清誉
湯を浴びて、戻ってくる。
蘭沢 繭子
食卓には夕餉の準備が整えられている。
蘭沢 清誉
手だけ合わせて、箸をとり。食べ始める。言葉のない食卓。
蘭沢 繭子
煮物や焼き魚。おひたし。
蘭沢 繭子
そういったものが並んでいる。
蘭沢 清誉
「鰆か」
蘭沢 繭子
「はい」
蘭沢 清誉
言葉を発したとしてその程度。
蘭沢 繭子
それに、やはり短く応える。
蘭沢 清誉
交わす言葉のないかわりーーよく食べる。
蘭沢 清誉
椀が空になれば、黙って繭子の方へ差し出す。
蘭沢 繭子
受け取って、おかわりをよそって差し出す。
蘭沢 清誉
「………………」
蘭沢 清誉
ふいに視線を上げて、その様子を眺めた。
蘭沢 繭子
わずか、首をかしげる。
蘭沢 繭子
「いかがなさいましたか」
蘭沢 清誉
「……いや」
蘭沢 清誉
「なにも……」
蘭沢 繭子
「さようでございますか」
蘭沢 清誉
椀を受け取り、食う。
蘭沢 清誉
自分が視線を留めたことを振り払いでもするように。
蘭沢 繭子
繭子もまた、何事もなかったかのように食事を再開する。
蘭沢 清誉
やがて用意されていた分を全て食べ終われば、数杯ばかりの晩酌。
蘭沢 繭子
肴を並べ、酒を注ぎ、
蘭沢 繭子
「少し、お話させていただいてもよろしいですか」
蘭沢 繭子
「学校のことなのですが」
蘭沢 清誉
顔を上げる。
蘭沢 清誉
「なんだ?」
蘭沢 繭子
「来月の13日と14日が文化祭となっておりまして」
蘭沢 繭子
「休日ですが、学校へ行っても構いませんか?」
蘭沢 清誉
「ああ…………」
蘭沢 清誉
「俺も行く」
蘭沢 繭子
「ありがとうございます」
蘭沢 繭子
「清誉様は演舞のお仕事ですか?」
蘭沢 清誉
言い放ってから少しの間をおいて、言葉が足りなかったことに気づく。
蘭沢 清誉
「見世物になってくるさ」
蘭沢 繭子
「……私も、拝見しにいってよろしいですか?」
蘭沢 清誉
一応、これでも恩師などというものが存在しないわけではない。
呼ばれれば、行かなければならないこともある。
蘭沢 清誉
「……勝手にしろ」
蘭沢 繭子
「ありがとうございます」
蘭沢 繭子
再びそう言って、軽く頭を下げる。
蘭沢 繭子
日程を告げれば、あとは自分のクラスで何をやるとも言わない。
蘭沢 清誉
「出し物」
蘭沢 清誉
「何をするんだ」
蘭沢 清誉
珍しく訊いた。
蘭沢 繭子
尋ねられれば、軽く目を瞬かせ。
蘭沢 繭子
「……喫茶を」
蘭沢 清誉
「……………………喫茶……」
蘭沢 繭子
「はい」
蘭沢 清誉
「何組だったか」
蘭沢 繭子
「3組です」
蘭沢 清誉
「……」
蘭沢 清誉
それ以上は何も言わない。見に行くとも、行かないとも。
蘭沢 繭子
繭子も、見に来てほしいとは言わない。
蘭沢 清誉
ただ少しだけ視線が空を泳いだ。
蘭沢 繭子
当日を終えても、来たかどうか確認することもないだろう。
蘭沢 清誉
儀式のための。形ばかりの結婚生活。
蘭沢 清誉
共に過ごす時間はあれど交わす言葉はごく少なく。
そこに心が通ったようにはとても。
蘭沢 繭子
それでも、折に触れて繭子は控えめに笑顔を見せた。
蘭沢 清誉
それを、二年の間目にしていた。
蘭沢 清誉
笑い返すことは、一度もなかった。
GM
積み重ねた二人の二年。
GM
その終わるはずの月夜。
GM
しかし儀は正しく果たされることなく、
GM
迎えるはずのなかった、一度目の夜が訪れようとしていた。
GM
空には欠け始めた月。
GM
生い茂る青葉の合間から、その冴え冴えとした姿が目に眩しい。
翡翠
山を逃げ回っていた。
翡翠
だから、どこが安全で何が柔らかく、どれを選べばいいかがわかる。
蘭沢 繭子
「……そろそろ、降ろしてくださいませ」
翡翠
「…………いなくならない?」
蘭沢 繭子
「…………」
蘭沢 繭子
「……やはり、私は戻らねばいけません」
翡翠
「……あの人が好きなの?」
蘭沢 繭子
「はい」
翡翠
「…………」
翡翠
「困ったな」
翡翠
「好きな人の傍にいられないことが、寂しいって……わかっちゃったからな……」
蘭沢 繭子
「……埋め合わせられるもののないことは、心苦しく思います」
翡翠
「…………今すぐにじゃなくてもいい」
翡翠
「いつか、俺の方が好きって……ならないかな……」
蘭沢 繭子
「……申し訳ございません」
翡翠
「…………」
翡翠
「…………」
翡翠
「死なないって」
翡翠
「言ってくれたら、考えるんだけどな」
蘭沢 繭子
「それを決めるのは、私ではありません」
翡翠
「じゃあ、帰せない」
翡翠
「俺は……マユ。君が大事だから……」
翡翠
「君を死なせたくない。」
翡翠
「世界と引き換えでもね」
蘭沢 繭子
「…………」
蘭沢 繭子
「……そのようにお心を砕いていただけることには、嬉しく思います」
翡翠
「本当だよ」
蘭沢 繭子
感情判定を行います。
GM
対象と使用特技は?
蘭沢 繭子
翡翠に。千里眼の術で。
GM
いいでしょう。判定をどうぞ
蘭沢 繭子
2D6>=5 (判定:千里眼の術) (2D6>=5) > 7[3,4] > 7 > 成功
GM
ETを。
蘭沢 繭子
ET 感情表(4) > 忠誠(プラス)/侮蔑(マイナス)
翡翠
ET 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス)
翡翠
友情で
翡翠
「…………たくさんの人に追われ、襲われて」
翡翠
「殺されそうになって。」
翡翠
「闇の中で道を照らし、味方をしてくれるのはあの……月だった。」
翡翠
「でも、それも……夜の間だけ」
翡翠
「マユ……俺は」
翡翠
「朝も、昼も、夜も……」
翡翠
「君とともにありたいと……思うよ」
翡翠
「守るから」
翡翠
「すべてから君を、守るから」
翡翠
「一緒に行こう」
蘭沢 繭子
「…………」
蘭沢 繭子
「……ごめんなさい」
蘭沢 繭子
忠誠を取ります……
GM
了解しました。翡翠が友情、繭子が忠誠。
翡翠
「はは……」
蘭沢 繭子
「あの人を忘れて、貴方を愛することは……」
蘭沢 繭子
「私には、できません」
翡翠
「忘れなくてもいいよ」
翡翠
「君の心は、君のものだもの」
蘭沢 繭子
「それは、誠実なことではありません」
蘭沢 繭子
「清誉様にも、翡翠様にも」
翡翠
「…………せいじつ」
翡翠
「君は、そう思うんだね」
蘭沢 繭子
「……清誉様は、私を追ってこられた」
蘭沢 繭子
「ならば私は、今も清誉様のものです」
蘭沢 繭子
「それが、私の命を奪うためであっても」
翡翠
「…………でも、彼が死んだら」
翡翠
「マユは悲しいね」
蘭沢 繭子
「……ええ」
翡翠
「困ったな……それじゃあ、君に生きてもらうには」
翡翠
「世界の方を、どうにかしないといけないみたいだ」
蘭沢 繭子
「…………何を考えているのです」
翡翠
「…………終末」
蘭沢 繭子
「よからぬことを考えるのはおやめなさい」
蘭沢 繭子
「貴方は逃げればいい」
翡翠
「君が一緒ならそうするとも」
蘭沢 繭子
「行けません」
翡翠
「なら、君の生きられない世界なんて……」
翡翠
「一度、壊れたほうがいい」
蘭沢 繭子
「…………比良坂の女として、聞き捨てならぬ言葉です」
翡翠
「それなら、一緒に来てくれるんだね」
翡翠
「終わりを始めないために」
蘭沢 繭子
「困った人ですね……」
翡翠
「ふふん」
蘭沢 繭子
「……思い留まってはいただけませんか」
蘭沢 繭子
「追手のかからぬ場所も、貴方を愛する人も、きっと見つかるはずです」
翡翠
「やーだ」
翡翠
「それ、君の夫にも言える?」
蘭沢 繭子
「…………」
翡翠
「ね」
翡翠
「だから俺も、君の手を……」
翡翠
「離さない」
蘭沢 繭子
「…………この、世界を」
蘭沢 繭子
「終わらせるわけにはいきません」
蘭沢 繭子
「……仕方ありません」
蘭沢 繭子
「今は、貴方に従いましょう」
翡翠
「……うん」
翡翠
「ありがとう」
蘭沢 繭子
「貴方を選んだわけではありませんからね」
翡翠
「わかってる」
蘭沢 繭子
「勘違いのなきように」
翡翠
「大丈夫」
蘭沢 繭子
「ええ、でしたら結構」
翡翠
「今、俺のしていることは……」
翡翠
「あの男がしようとしていることと、何一つ変わらないんだって……」
翡翠
「わかってる」
翡翠
でも、きっと。
その先があると……信じて。
翡翠
「あの辺がやすむのにちょうどよさそうだね」
翡翠
「落ち着いたら何かとってくるよ」
翡翠
今は、ただ。
GM
世界の終わりを迎え入れる獣。
GM
そのように呼ばれてきた青年の、
GM
それが、ただひとつの。