◆メインフェイズ第二サイクル第一シーン
シーンプレイヤー:牛墓 鞴良
GM
千里眼の見通した未来から逸れたことなど知らぬように。
GM
あるいは知って構わぬとばかりに、空には変わらず太陽が上がる。
GM
この同行者は野での暮らしに詳しく、何くれと繭子に世話を焼きたがる。
翡翠
日の昇りきらぬうちに調達した川魚を鋭く削った枝に刺し焼いたもの。
翡翠
川の少し上まで行って湧き出る水をこしたもの。
蘭沢 繭子
用意された朝食に、丁寧に手を合わせる。
蘭沢 繭子
「十分です。用意してもらっている身ですもの」
蘭沢 繭子
「魚は好きですよ。自分でもよく捌きます」
翡翠
「求められること……たくさんあるんだろうな」
牛墓 鞴良
山に似つかわしくない酒の香。
遅れて、人の気配。
牛墓 鞴良
上げた顔の先で視線がかち合う。
隻眼がふたりの目線をゆるゆると探る。
翡翠
「マユがどれほど食べるかわからないから、多めに獲ったしね」
蘭沢 繭子
男の意図を探るように、視線を向けている。
翡翠
これまで出会った者は、剣を向け槍を向け追い回す者たちばかり。
牛墓 鞴良
片足を折り曲げて、義足をおっくうそうに放り出して屈みこんだ。
牛墓 鞴良
焚火のまだ燃えるさなか、突き立てられている串へ口元を寄せて歯でくわえる。
牛墓 鞴良
「こういうのは自分でとったほうが旨ェ」
蘭沢 繭子
自分の分の串を、ちみちみといただいている。
牛墓 鞴良
ない腕の先を手繰って、袖で串を固定して食べ始める。
牛墓 鞴良
食べ終わった串で歯の隙間をしごきながら。
蘭沢 繭子
言葉を交わす二人の様を、口を挟まずに眺めている。
牛墓 鞴良
「朝餉を囲んでのらくら話をするのもいいもんなんだがな」
牛墓 鞴良
「お前さんたちを追ってる……なんつったっけ。名前、あ~……つづらおり?きよまる……?」
蘭沢 繭子
きよまるはギリギリ分かるけどつづらおりは全然違う……。
蘭沢 繭子
「清誉様のお知り合いでいらっしゃいましたか」
牛墓 鞴良
「あいつの持ってるモン、要らねえか?」
翡翠
「いいね。何も知らないまま追いかけられるより……少しでも」
翡翠
「知っておいた方がいい。マユのことも、心配だしな。」
牛墓 鞴良
「あァ、お前さんの追手はあのよくわからん連中だが」
牛墓 鞴良
「この嬢ちゃんの追手はあいつとわかってる」
GM
OK。
例のアレの秘密を翡翠から鞴良に譲渡し、
鞴良からは清誉の秘密を翡翠に譲渡。
で、よろしいですか?
GM
ですと、まずは清誉の秘密が……これは感情による情報共有で繭子にも渡るため、公開ですね。
【秘密:蘭沢
清誉】
あなたは一族に伝わる神刀『化粧応神』の伝承者である。
あなたの一族の【使命】は『終末の獣』を殺すことだ。
愛し合う相手を『化粧応神』にて殺すことで、
この刀は真の力を発揮し、獣を殺すことが出来るようになる。
あなたはその役目から逃げるように、ずっと蘭沢
繭子を愛さないようにしてきた。
しかし、あの満月の晩、あなたは彼女を愛してしまった。
メインフェイズ開始前に、以下に示す2つの選択肢の中から、
いずれかを選ぶこと。
【選択肢①】
刀の声と己の使命に応え、あなたは蘭沢 繭子を殺害した。
あなたに残ったのは蘭沢 繭子への【愛情】と神器『化粧応神』であった。
蘭沢
繭子への愛情を獲得し、プライズ『化粧応神』と『化粧応神』の秘密を手に入れること。
【選択肢②】
刀の声に抗うため、あなたは『化粧応神』を折った。
プライズ『化粧応神』はこのセッションから取り除かれる。
GM
では、それはそれとして、例の秘密を鞴良さんにお渡ししましょう。
少々お待ちください。
牛墓 鞴良
「まっこと不思議なこともあるもんだなァ」
蘭沢 繭子
「やはり、貴方と共に行くことはできないのですよ」
蘭沢 繭子
「……死んでいる者のことなどお忘れなさい」
牛墓 鞴良
「さて、終末の獣さんよ。化粧応神を持つ男の妻よ」
牛墓 鞴良
「お前さんらの目の前にいるのが、化粧応神を打った男だ」
牛墓 鞴良
無精ひげをぞり、と撫ぜて。
ふたりを見やる。
牛墓 鞴良
「は……また、お前さんら3人は逢うだろう。そこに私も居るだろう」
翡翠
「…………俺は、マユを失いたくない。何故あの男は未だ、マユを殺そうとする。」
牛墓 鞴良
「離るるるるるるるるが、大事”ただ人には 馴れまじものぢゃ
馴れて後に
離るるるるるるるるが
大事ぢゃるもの”
室町の歌。
あんまり仲良くなると、離れるのが大変だね。本当に本当に大変だから仲良くならなけりゃ楽なのにね。というような意味。
離れる にるをめちゃくちゃつけて、離れるのは本当に大変だということを強調している言葉遊びが入っている。
ってこったな」
牛墓 鞴良
蘭沢 繭子の秘密を調査します。
使用するのは火術。
刀鍛冶にとって火は神聖なるもの。
その力をもって、見通す。
牛墓 鞴良
2D6>=5 (判定:火術) (2D6>=5) >
10[4,6] > 10 > 成功
蘭沢 繭子
黄水晶の瞳が、炎を映して煌めいている。
牛墓 鞴良
火は、あまりに厳かなるもの。
その水晶に映したものを違わず知る。
牛墓 鞴良
男は笑う。吐息に酒精が混じって焚火の煙に消える。
牛墓 鞴良
用は済んだとおっくうそうに立ち上がる。
牛墓 鞴良
「獣ンなっちまったら魚焼けねえかもね」
牛墓 鞴良
のらくらと茂みへ歩いていき、ふと気配が途切れて消える。
◆メインフェイズ第二サイクル第二シーン
シーンプレイヤー:蘭沢 清誉
GM
追いたいと、そのように思うものも、あるいは。
蘭沢 清誉
鞍馬の草にも捜索させているが、依然として風のごとく捕まらぬまま。
しかし、山脈を抜けてはいないはずだ。
蘭沢 清誉
牛墓。片端の男が与えた助言をまるきり呑んだわけではないが。
蘭沢 清誉
暗い炎は業火となり、未だ胸で燃えている。
牛墓 鞴良
視線を動かした先に、予め居る。
ちょうど酒を煽っている男の姿。
牛墓 鞴良
ふらふらと酔いどれの足取り。
楽しそうに鞍馬の男へ近づいてくる。
蘭沢 清誉
半歩避ける。今度は、見なかったことにはしなかった。
あらためてその異様な立ち姿を見る。
牛墓 鞴良
隻眼。両手はない、片足は義足。
右足と左目だけを残している、不具の男。
牛墓 鞴良
「く、なかなかどうしてしぶといなァ?」
蘭沢 清誉
「…………………」その反応を肯定と取る。
牛墓 鞴良
「一回こっきりの方角だけ教えたとこで追いつけるわけでもねェだろが」
牛墓 鞴良
吐いた煙が金粉のように光る。
あの娘の瞳と同じ色。
牛墓 鞴良
「それよかもっと“上等”なモンがあるぜ」
蘭沢 清誉
「師走の20日は先だろうにフラフラと」
蘭沢 清誉
「……無駄口だったな。……何が望みだ」
牛墓 鞴良
では情報を取引希望します。
こちらから出せるのは蘭沢 繭子の秘密。
欲しいのは翡翠の秘密と『化粧応神』の秘密。
蘭沢 清誉
腰に履いた刀――『化粧応神』に手を掛ける。
牛墓 鞴良
腰に下げた神刀『化粧応神』。
そして、耳のあたりをひょいと三角に煙管の先が描く。
GM
それでは、鞴良から清誉に繭子の秘密。
清誉から鞴良に翡翠の秘密とプライズ『化粧応神』の秘密ですね。
情報共有はなし。お渡ししましょう。
GM
お送りしましたが、しばらくショックに耐えたりなどしているかもしれない。
蘭沢 清誉
知らなかったことばかりではない。
薄々と感づいていたこともある。
蘭沢 清誉
だが、そこに深く落ちる沈黙が。
その意味を、意図を、こころを。
取りこぼさぬように必死に呑み込もうとしていることを、示していた。
蘭沢 清誉
「あれが何を想おうと、俺はーーだが、……」
牛墓 鞴良
男の沈黙をわざわざ推し量るようなことはしない。
ただ、刀を打った者としてその神刀を見ている。
蘭沢 清誉
「貴様はなぜわざわざ俺たちに近づいた。……鍛冶師だろう、牛墓とは」
牛墓 鞴良
当代500年を生きる、牛墓の鞴良。
戦国の世から、こんにちまで生き続けている長命の男。
蘭沢 清誉
「一族に伝わる刀にまつわることだ。……改めて調べさせたが」
蘭沢 清誉
神刀になるべく打たれた『化粧応神』。名が伝わっていないはずもなく。
牛墓 鞴良
銘は入れていない。
その刀はもはや、人の世のもので収まるものではないゆえに。
蘭沢 清誉
「今更顔を出す理由があるのだろう。ーー聞いてやる、話せ」
牛墓 鞴良
「話したところで、お前さんにわかるかねェ」
蘭沢 清誉
牛墓 鞴良の秘密を調査します。
特技は伝達術。その言葉を取りこぼさず”わかる”か。
牛墓 鞴良
天下泰平と、刀を使わぬ戦と、文明が発展するさまを見てきた眼が。
血の色の隻眼が、語る。
蘭沢 清誉
2D6>=5 (判定:伝達術) (2D6>=5) >
3[1,2] > 3 > 失敗
牛墓 鞴良
男は、笑って。
もう一度。
あの2人の前で歌った歌を口ずさんだ。
牛墓 鞴良
こんな阿呆らしい歌を、どうして。
かつて人は歌ったのか。
蘭沢 清誉
怪訝な顔をする。
瞳の語る轍を、読み解くことは叶わなかった。
牛墓 鞴良
お前にはわかるまい。
わからないなら、語ることはない。
蘭沢 清誉
わからなかった。
わかるはずもなかった。まだ。
これまで、二年間。
己が感情からも逃げ続けてきた代償だとでもいうように。
牛墓 鞴良
「どれ、代わりに。年寄りがひとつ助言をしてやろう」
牛墓 鞴良
同じくして、男も背を向ける。
愉快そうな歌声が聞こえて、からかうようにしばらく気配は消えなかった。
蘭沢 清誉
振り払うよう進む。妻と共にあるだろう、獣の姿を探して。