蘭沢 清誉
ーー蝶を、その翅の残す鱗粉を追い、山を、野を行く。
蘭沢 清誉
ひとりで追うつもりだった。その方が良い、と思っていた。
蘭沢 清誉
今、半歩の後ろには妻とする女がいて。
千里を見通す瞳でもって、己を確かに導いている。
蘭沢 清誉
2年前。妻を取れと命じられた時、断ることは出来なかった。
蘭沢 清誉
しかし正直なところ、僥倖だと思った。
もとより己の身は終末の獣を討つためにしかなく。
妻を持ち、ーーそれを愛し、斬れば。力を得ることができる。
それを知っていたから。
蘭沢 清誉
やってきたのは14の幼子だった。
蘭沢 繭子
『繭子と申します』
蘭沢 繭子
『不束者でございますが、どうぞよろしくお願いいたします』
蘭沢 清誉
小さく、か細く、それまで触れてきたなによりも儚く。
蘭沢 清誉
ーー扱いあぐねた。愛せと言って、どう愛せと。
蘭沢 繭子
少女は不平の一つもこぼさず、夫の言葉になんでも従った。
蘭沢 清誉
寄るなと言えば寄らず。喋るなと言えば喋らず。
ほとほと困り果てた。
蘭沢 清誉
人形遊びをする趣味はないと比良坂に何度も手紙を送った。
蘭沢 清誉
返事は梨の礫だった。
蘭沢 清誉
そうして、ほかに誰もいない家に一対一。
子供への接し方も、女への接し方も、まるで身に着けて来なかった。
ままならぬ己に嫌気が差すばかりで。
蘭沢 清誉
それが、いつから。
蘭沢 清誉
視界に姿のなければ落ち着かないようになった。
抱いても涙一つ流さないことに戸惑った。
学を得ればそのうち何処かへ出ていくのではないかと、
期待と不安とが胸を焼いた。
蘭沢 清誉
それは、世の言う愛ではないように、思っていた。
蘭沢 繭子
あなたの内心を知ってか知らずか、妻の様子に変わりはなく。
蘭沢 繭子
しいて変化をあげるなら……ほんの少し、笑顔を見せることが増えた。
蘭沢 清誉
笑顔にただの一度も、笑みを返せないまま。
己が妻に対して出来ることが何か……考え、そして答えを出したのは。
ーーあの満月の夜に至ってのことだった。
蘭沢 清誉
『今度は、間違えるなよ』
蘭沢 清誉
そうして違えたのだと、気付いてしまった。
蘭沢 清誉
この女に対して自分の果たすべき役目はーー、
持ち主としてそれを振るうことではなかったのだ。
蘭沢 清誉
「……」
蘭沢 清誉
けぶるように雨が降り出す。
蘭沢 清誉
「繭子」
蘭沢 清誉
手を引く。
蘭沢 繭子
目をまるくする。
蘭沢 清誉
木々が茂り、雨のかからぬ方へ。
蘭沢 繭子
いつものように『はい』と返事のできぬまま、そちらに導かれる。
蘭沢 清誉
「少し休むぞ。……どうせもう、そう遠くはあるまい」
蘭沢 清誉
言い捨てて。
蘭沢 繭子
「…………」
蘭沢 繭子
「…………確かに、もうそろそろ行き当たるはずですが」
蘭沢 繭子
「ならば、尚更急いだ方がよろしくはありませんか……?」
蘭沢 清誉
「……向こうは明るい。通り雨だ。……じきにまた晴れる」
蘭沢 清誉
「身体を冷やすな」
蘭沢 繭子
「……清誉様が、そう仰るなら」
蘭沢 清誉
それきり。妻の初めて家に来たその日のように、ただ押し黙った。

◆メインフェイズ第三サイクル第四シーン

シーンプレイヤー:蘭沢 繭子

GM
では、繭子。
GM
どの「感情」をなくしますか。
蘭沢 繭子
翡翠への……友情を……
GM
了解致しました。
GM
繭子の抱く翡翠への「友情」が失われます。
GM
夏の夜の雨。
GM
なのに月が空には眩しく、まるで道先を照らすように。
蘭沢 繭子
黙りこくってしまった清誉を見上げる。
蘭沢 繭子
そうして、不意に口を開く。
蘭沢 繭子
「……清誉様は」
蘭沢 繭子
「私が恐ろしかったのですか?」
蘭沢 清誉
「…………は…………?」
蘭沢 清誉
思わず間抜けな声を漏らした。
蘭沢 繭子
水晶の瞳が、清誉を見上げている。
蘭沢 清誉
「何をどう見たらそうなる、」
蘭沢 清誉
咄嗟に返したのは否定ではなく、疑問。
蘭沢 繭子
「……私は、恐ろしかったです」
蘭沢 繭子
「清誉様の心の見えないことが」
蘭沢 清誉
「…………」
蘭沢 繭子
「かつては、この瞳にはなんでも映りました」
蘭沢 繭子
「未来も、過去も、秘められたものも」
蘭沢 繭子
「人の心の内さえも」
蘭沢 繭子
「人の心を、考えを、おしはかる必要はなかったのです」
蘭沢 清誉
「……役目を終えて見えなくなったと、聞いてはいた」
蘭沢 繭子
「はい」
蘭沢 繭子
「私には、あなたの心が見えたことはありません」
蘭沢 清誉
「見える必要もなかっただろう」
蘭沢 繭子
「……見えればよいのに、と思っていました」
蘭沢 清誉
「……形ばかりの夫の心を推し量って何になる」
蘭沢 繭子
「…………」
蘭沢 繭子
「…………愛されたいと」
蘭沢 繭子
「思ってしまいました」
蘭沢 清誉
「……、………………」
蘭沢 清誉
何も知らず、望みなどないと、選ぶこともできないと。
蘭沢 清誉
そう思っていた、思いたかった。
蘭沢 繭子
「どう思われているか分からないのが、おそろしかった」
蘭沢 繭子
「ひとの望むことが、望まないことが、以前は労せずとも知れたのに」
蘭沢 繭子
「清誉様の心のうちは、ひとつも分からなかった……」
蘭沢 清誉
頭ひとつほど視線の下にある繭子の顔を、見下ろす。
雨にけぶる月の光の中、その瞳にひどく狼狽した己が映っている気がした。
蘭沢 繭子
「分からぬから、せめて」
蘭沢 繭子
「言いつけられたことだけは守っていようと思いました」
蘭沢 清誉
「…………好きで、あのようにしていたわけではないと」
蘭沢 清誉
間抜けなことを言っていると自分でわかっていて。口を突く。
蘭沢 繭子
「不満のあったわけではございません」
蘭沢 繭子
「ただああするより他に、私にはどうすればよいのか分からなかったのです」
蘭沢 清誉
「何のために学校へ遣ったと思っている……」
蘭沢 清誉
「何か学べば逃げるなり、泣くなり、するものだと、ばかり……」
蘭沢 繭子
「そうだったのですか?」
蘭沢 繭子
「分かりませんよ」
蘭沢 繭子
「言ってくださらないと」
蘭沢 清誉
「…………む……」
蘭沢 繭子
「……ですが、何も言わずにいたのは私も同じこと」
蘭沢 繭子
「ですから、思ったのです」
蘭沢 繭子
「清誉様も、私の心のうちの分からぬことが、おそろしかったのではないかと」
蘭沢 清誉
話題が戻ってきて、またひとつ、瞬いた。
蘭沢 清誉
「俺が、お前を、」
蘭沢 繭子
またたく瞬間すらも逃さぬように見つめている。
蘭沢 清誉
「恐ろしかったとしたら、それは」
蘭沢 清誉
「心がわからなかったからではない」
蘭沢 繭子
「では」
蘭沢 繭子
「どうしてですか?」
蘭沢 清誉
「……失うのだと、思いたくなかった……」
蘭沢 繭子
ぱちりと、今度は繭子の目が瞬いた。
蘭沢 清誉
「お前を見る度に、お前が話す度に、お前が笑う度に」
蘭沢 清誉
「俺はいずれお前を失うのだと、気づいた」
蘭沢 清誉
「……おそろしかったのはそれだけだ」
蘭沢 繭子
「…………今も」
蘭沢 繭子
「そう思われますか?」
蘭沢 清誉
「…………」
蘭沢 清誉
「お前を斬ったとき、ようやくその恐怖から逃れられたと思った」
蘭沢 清誉
「……増すばかりだ」
蘭沢 繭子
「…………」
蘭沢 清誉
「あの獣は、『二度目の生涯を始められる』と、そう言った」
蘭沢 清誉
「今度は間違えるなと」
蘭沢 清誉
「……お前ともっと、話しておくべきだったんだ」
蘭沢 繭子
「誤ったのは、私も同じでございますよ」
蘭沢 清誉
「あの獣にもわかったことが、俺は今更……」
蘭沢 清誉
月明かりに薄明るく照らされた妻の顔を見る。
蘭沢 繭子
「まるで、この世の終わるようなことを仰るのですね」
蘭沢 繭子
「これからのことを語ってはくださらないのですか?」
蘭沢 清誉
ほとんど初めて、まっすぐに。
蘭沢 清誉
「……獣を討った後より先のことなど考えたこともなかったんだ」
蘭沢 清誉
「役目を果たしてなおも生が続くことなど想像したこともなかった」
蘭沢 繭子
「ふふ」
蘭沢 清誉
「笑うな」
蘭沢 清誉
「お前だってそうだろう」
蘭沢 繭子
「えぇ」
蘭沢 繭子
「だから、おかしくて」
蘭沢 清誉
「……夫婦二人して」
蘭沢 清誉
「なにもわかっていなかった、か」
蘭沢 繭子
「そのようですね」
蘭沢 清誉
妻の腹へと視線が降りる。
蘭沢 清誉
「馬鹿な話だ」
蘭沢 繭子
今はまだ、膨らみの見てとれるようなことはない。
蘭沢 繭子
だけどここに、二人の子がいる。
蘭沢 繭子
「……友人が」
蘭沢 繭子
「おいしい喫茶店であるとか、恋人と遊びに行った場所であるとか、教えてくれるんです」
蘭沢 繭子
「……清誉様」
蘭沢 繭子
「連れて行っては、くださいませんか」
蘭沢 清誉
「……俺がか?」
蘭沢 清誉
「お前が連れて行くんだろう、それは」
蘭沢 繭子
「まぁ」
蘭沢 繭子
「乙女心の分からぬ方ですね」
蘭沢 清誉
「…………」
蘭沢 清誉
「……お前がそんな口を利く女だったとはな」
蘭沢 繭子
「嫁ぎ先では口を閉じているのが懸命ですよと、よくたしなめられたものです」
蘭沢 清誉
「大人しく従順でよく気の利く、利口な娘だとしか言われていない」
蘭沢 清誉
「だから比良坂など信用ならないんだ」
蘭沢 繭子
「その通りにできていたでしょう?」
蘭沢 清誉
「ああ」
蘭沢 清誉
「すっかり騙された」
蘭沢 繭子
「ふふ」
蘭沢 清誉
「繭子」
蘭沢 繭子
「なんですか、清誉様」
蘭沢 清誉
「俺はあの獣を討つ」
蘭沢 繭子
「……ええ」
蘭沢 清誉
「それは変わらん。俺の務めだ」
蘭沢 清誉
「見届けてくれ」
蘭沢 繭子
「…………」
蘭沢 繭子
「清誉様の務めなら、妻である私の務めでもありましょう」
蘭沢 繭子
「私も、共に果たします」
蘭沢 清誉
「…………ちっ」
蘭沢 清誉
「どうだか知らんが、あれはお前と戦いたくはないだろうよ」
蘭沢 清誉
「それでもか」
蘭沢 繭子
「……ええ」
蘭沢 清誉
「なら、いい。……付いて来い」
蘭沢 繭子
「はい、清誉様」
蘭沢 繭子
雨脚が弱まっていく。この場を発つ時が迫る。
蘭沢 繭子
「…………」
蘭沢 繭子
「……これも、友人が教えてくれたことなのですが」
蘭沢 繭子
そう言って、ちょいちょいと手招く。
蘭沢 清誉
「……?」
蘭沢 清誉
僅かに身を屈める。
蘭沢 繭子
ないしょの話をするように顔を寄せ、
蘭沢 繭子
そっと、頬に口づけた。
蘭沢 清誉
 
蘭沢 繭子
顔を離す。
蘭沢 繭子
「……女性から、口づけるのは」
蘭沢 繭子
「普通の、ことなんですって」
蘭沢 清誉
「ば」
蘭沢 繭子
普通のこと、そう言いながらも恥じらいに目を逸らす。
蘭沢 清誉
「……ッ……」
蘭沢 清誉
「ふざけている場合か…………」
蘭沢 繭子
「………………」
蘭沢 繭子
「…………申し訳ありません……」
蘭沢 清誉
口づけられた頬に、唇の柔らかさが残っている。
蘭沢 繭子
しゅん、と肩を落とす。
蘭沢 清誉
「………………」
蘭沢 清誉
「……」
蘭沢 繭子
「…………行きましょうか」
蘭沢 清誉
「……そういうことは帰ってからにしろ」
蘭沢 繭子
「…………は、」
蘭沢 繭子
「はい」
蘭沢 繭子
こくこくと頷く。
蘭沢 清誉
再び手を引く。歩き出す。
蘭沢 繭子
きゅ、とその手を握り返す。
蘭沢 清誉
霧のようにけぶる雨の中、蝶を追って。
終末のはじまりを探しに。
GM
千里眼の手引く先。
GM
月の光の示す先。
GM
夜に光る金糸のかがやきは、
GM
なるほど異邦の理想郷を思わせてうつくしい。
翡翠
人を待っている。
翡翠
ただ、夏の夜。
翡翠
湿った空気が霧のようにまとわりつく。
蘭沢 繭子
黄水晶の瞳が、翡翠をとらえる。
翡翠
其方を振り向く。
蘭沢 繭子
手に手を取って、夫婦があなたの前に立っている。
翡翠
「来たか」
蘭沢 繭子
「…………翡翠様」
蘭沢 清誉
分かれたときには異形だったその姿を見据える。
蘭沢 清誉
翡翠の瞳。金の髪。白い肌。長い耳。
蘭沢 繭子
「翡翠様」
蘭沢 繭子
「今一度、教えて下さい」
蘭沢 繭子
「あなたは何のために戦うのですか?」
蘭沢 繭子
翡翠に感情判定を行います。
蘭沢 繭子
使用特技は千里眼。
蘭沢 繭子
未来も、過去も、秘められたものも、人の心のうちも、
蘭沢 繭子
何も映さない瞳で、それでも
蘭沢 繭子
あなたの心に触れようと、見据えている。
GM
いいでしょう。判定をどうぞ。
翡翠
感情修正をします
GM
では+1を。
蘭沢 繭子
2D6+1>=5 (判定:千里眼の術) (2D6+1>=5) > 12[6,6]+1 > 13 > スペシャル(【生命力】1点か変調一つを回復)
GM
ふふ
GM
回復はありませんね。ETをどうぞ。
蘭沢 繭子
神咒がありますね
GM
あ、そうか。
GM
忍具を1個取得してください。これに関しては種類の申告も。
蘭沢 繭子
では遁甲符を。
GM
了解致しました。改めてETを。
[ 蘭沢 繭子 ] 忍具 : 2 → 3
翡翠
ET 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス)
蘭沢 繭子
ET 感情表(6) > 狂信(プラス)/殺意(マイナス)
蘭沢 繭子
ミョイ……
GM
いかが致しますか?
蘭沢 繭子
プラス
GM
信じていらっしゃるのですね。
GM
では繭子は翡翠に狂信を。
GM
翡翠はいかがいたしましょう。
翡翠
怒りで
GM
了解しました。翡翠は繭子に怒りを。
GM
憧憬からの書き換えになります。
翡翠
「理想」
蘭沢 繭子
「……そこに」
蘭沢 繭子
「あなたの幸せはありますか?」
翡翠
「此処にはない」
蘭沢 繭子
「ええ」
蘭沢 繭子
「そうかもしれませんね」
翡翠
「…………」
蘭沢 繭子
「私が問いたいのは」
翡翠
「結局」
蘭沢 繭子
「あなたが、幸せを掴むために戦えるのかということです」
翡翠
「そうして」
翡翠
「突き放そうとする」
翡翠
「俺がつかみかけた幸福は、君が自分で壊したんじゃないか」
蘭沢 繭子
「…………えぇ」
蘭沢 繭子
「だから、勝手なことを言っています」
蘭沢 繭子
「私を、許さなくていい」
翡翠
「別の道を探ろうともしなかった」
翡翠
「君も、俺を殺そうとした奴らと同じだ」
蘭沢 繭子
「……そうですね」
翡翠
共にいようとは言ってくれなかった。
蘭沢 繭子
「あなたに救われた恩を、私は何一つ返せていない……」
翡翠
たとえそれが2人きりでなくとも、俺は良かったのに。
蘭沢 繭子
「あなたから、奪うばかり」
翡翠
清誉を見る。
翡翠
「対話を試みようともしない」
蘭沢 清誉
目が合う。
翡翠
「わかりあえねば刃を交え、一方の死によって沈黙と正義を為す」
翡翠
「それを為せど。人々は『英雄』と呼び称え、人ならざるものと遠ざけ、祀り上げるだけだ」
翡翠
「いや……誰も知るところではないか」
翡翠
「恩……?」
翡翠
「都合のいい言葉だ」
翡翠
どうせ、他人以上にはなれやしない。
翡翠
結局のところ、心に刻まれたのは突き刺すような苦しみばかり。
翡翠
「もう終わりにしよう」
翡翠
「頑張らなくていい」
翡翠
「苦しまなくていい」
蘭沢 繭子
「…………」
蘭沢 清誉
「恨み言はそれだけか」
翡翠
俺はおはようが言えれば、それだけでよかったのに。
翡翠
「…………」
蘭沢 清誉
『たとひ真でなくとも、――』
蘭沢 清誉
「言われた通り貴様を討ちに来た」
翡翠
魔の者はそこに立つ。
翡翠
英雄として、突き崩すべき障害として。
翡翠
同じ女を愛せし者として。
蘭沢 清誉
絡み、縺れた因業の果てとして。
翡翠
金の髪も、翡翠の目も。
今や忌むべきものではなかろうに。
蘭沢 清誉
なおも呪いの向かう先として、現世の敵として。
翡翠
その姿は変容する。
翡翠
肌はくすみ、金の角。
翡翠
髪はエメラルドの如く輝き、宵闇に虹を塗した翅の伸びる。
翡翠
その、傍らに。
牛墓 鞴良
燻る煙。
牛墓 鞴良
常ならむ行く末を見る眼が、めおとを見る。
翡翠
異形の獣のすらりと抜くは、妖刀『化生鏖刃』。
蘭沢 繭子
小さな身体に、怒りを、視線を、受け止める。
翡翠
「さあ、終焉をはじめよう。後の世に鬼と呼ばれし英雄の……最後の戦の幕開けだ」
翡翠
義を嘲笑い。情に仇なせ。我を貫いて。
我が血をぶち撒け、屍を踏み超え続くのならば。
それぞ、まさしく人の歴史なり。
翡翠
「眠れ、安らかに」
翡翠
「新たなる、真に優しき世の前に」
翡翠
「お別れだ」
翡翠
「……この世に朝は、二度と来るまい」
蘭沢 清誉
「それが貴様の幻想か」
蘭沢 清誉
「生憎と畜生の言葉は、理解ができなくてな」
蘭沢 清誉
対し、男の抜くは神刀『化粧応神』。
蘭沢 清誉
人の世の業が生み出せし、神の名を戴く刀。
蘭沢 清誉
「魔の獣、終末の獣よ」
蘭沢 清誉
「蘭沢七代当主、清誉の名に於いてーー貴様を討つ」
GM
月光の下に白刃が閃く。
GM
人持つ刀と獣持つ刀、
GM
未来を切り開くは、果たして、どちらが。