メインフェイズ サイクル2

メインフェイズ サイクル2 アガタ

アガタ
2d6 (2D6) > 3[1,2] > 3
GM
3:洞穴。些細な割れ目のような入り口だが、中は広い。完全な闇が滴る。
アガタ
息を潜め、其処に居る。
アガタ
これほどの暗闇に、青い月光に。
両方に目を慣らしておくべく。
アガタ
幾許かの音もしない。
ひとえに黒塗りの視界。
アガタ
己が呼気。
アガタ
男は、己の喉から漏れる言葉がなんであるかを知らない。
アガタ
どこの国で話されたものか、どのような人々が話していたものか。
アガタ
ただ。
アガタ
ただ、まつろわぬものを、まつろわぬものとした民と分かつために。
アガタ
これを教えられた。
アガタ
人と隠忍との両端からの呪いの境目に在り。
アガタ
微かな音と、現存する覚において。
アガタ
呪いを繋ぐ。
アガタ
──
アガタ
『姫君』
アガタ
あなたの鼓膜に音が届く。
アガタ
アガタ
アガタ
アガタ
アガタ
そういう音だった。
アガタ
「……」
アガタ
そのまま、闇に溶け。
何処かへ走る。
アガタ
『あなた』が木々の下をくぐると。
アガタ
蜘蛛の糸が顔に触れる。
花丸 かごめ
「────え」
アガタ
それが、霊糸によるものと思った時にはすでに。
アガタ
暗闇に一人立つ『あなた』の前に隠忍の男がいる。
アガタ
──土蜘蛛の結界術。
花丸 かごめ
おさななじみの二人とはぐれて、一人。
花丸 かごめ
暗闇に立つ影を見上げる。
アガタ
視線が上方より落ちる。
花丸 かごめ
「…………こ、こんばんは~」
アガタ
「こんばんは」
花丸 かごめ
あっ 返してくれた
花丸 かごめ
「あ~~…………」
花丸 かごめ
「う~ん…………」
花丸 かごめ
「……………………」
アガタ
「……」
花丸 かごめ
「…………そっか、やっぱりこうなるんだなあ」
アガタ
「……ビスケット」
花丸 かごめ
「え」
アガタ
「におい」
アガタ
目の前の女を見る。
アガタ
「あなた」
花丸 かごめ
「…………」
アガタ
「私は、」
アガタ
「なんのにおい?」
花丸 かごめ
……これは
花丸 かごめ
伝わるようにがんばってくれてる、んだよね。
花丸 かごめ
困ったように、目の前のアガタに少しだけ近づく。
アガタ
じっと見ている。
花丸 かごめ
「におい……」
花丸 かごめ
すん、と嗅いでみる。
アガタ
たとえていうなら、雨が降る前のようなにおいがする。
アガタ
土くれのにおい。
かびたほこりくさいにおい。
アガタ
わずかに、絹のにおい。
花丸 かごめ
「ん~…………」
アガタ
それでなければ。『あなた』の思うままのにおい。
花丸 かごめ
「……なんていうか、そうね」
花丸 かごめ
「陽の当たらない場所のにおい」
花丸 かごめ
「そんな感じ、かしら」
アガタ
頷く。
花丸 かごめ
自分はかすかに甘いかおりを漂わせて、元の距離に戻る。
花丸 かごめ
まつろわぬもの。彼を討つために研鑽を重ねてきたおさななじみ。
花丸 かごめ
おさななじみたちを、そしてこの儀式の目的を思えば、ここで彼とのうのうとおしゃべりしている立場ではないと思うのだけど……。
花丸 かごめ
ちらりと、男を見上げる。
アガタ
男の表情に、表情らしいものはない。
アガタ
月光が目元に暗い影を落とし、眼光が女を見下ろす。
アガタ
『おつらいでしょう』へづねえな
花丸 かごめ
「……?」
アガタ
声が降りてくる。
花丸 かごめ
「……ごめんなさい、わたしもあんまり、あなたの言葉がわからないの」
アガタ
「んだべな」
花丸 かごめ
頷く。
花丸 かごめ
「……あなたがね、わたしとお話しようと、してくれているようだから」
花丸 かごめ
「なるべくわかってあげたいのだけど……」
アガタ
「わがんねくてもええすけ」
花丸 かごめ
「私としてはあんまりよくないのだけど……」
アガタ
「聞耳ばたでろ」
アガタ
男の口が開く。
花丸 かごめ
「?」
アガタ
風の音。
花丸 かごめ
それが、かごめの耳に届く。
花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
「今のは……」
アガタ
「まじない」
花丸 かごめ
「……わたしを、気づかってくれるのね」
アガタ
『こんなところに』……こすたらとこで
アガタ
『どうしてでしょうね』なしてだべね
花丸 かごめ
「……それは」
花丸 かごめ
「あなたは、知っているのではないの?」
アガタ
「糸が」
アガタ
『こんがらがって』くまるがって
アガタ
長い指が空を円にゆっくりと切る。
アガタ
『こうなってしまったのでしょうね』したっけねえ
花丸 かごめ
くるりと円を切る指先を目で追った。
アガタ
『私は』……わは
アガタ
『あなたを利用するつもりはありません』もぢわらきへるきだっきゃねんだ
花丸 かごめ
「……うん」
アガタ
『申し訳のたてようもない』めやぐだっきゃいろ
花丸 かごめ
「…………も~~!」
花丸 かごめ
「困るわ、とっても困る!」
花丸 かごめ
男を見たり、逸らしてみたり、また見たりと忙しく。
花丸 かごめ
「あなたがこんな人だなんて聞かされていないわ!」
アガタ
「……」
アガタ
『あなたは』なは
アガタ
『あなたです』なだ
アガタ
『好きになさってください』すぎさしへ
アガタ
花丸かごめに感情判定をします。
この糸が紡ぐものならば。
アガタ
使用特技は結界術。
GM
判定をどうぞ。
アガタ
2D6>=5 (判定:結界術) (2D6>=5) > 4[2,2] > 4 > 失敗
アガタ
振り直しはしません。
GM
では失敗ですね。
アガタ
言って、その場を去った。
アガタ
あとに残るは闇ばかり。
花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
陽の当たらない場所の残り香が、やがて風に散らされて
花丸 かごめ
だけどかすかに、胸に残っていた。
GM
本来ならば、決してあり得ぬ邂逅。
GM
いるはずのなかった女に、ただ消える定めだった男。
GM
交わした言葉はまだ、形を成すには至らない。
GM
しかし――。

メインフェイズ サイクル2 神楽坂 千歳

神楽坂 千歳
2d6 シーン表 (2D6) > 7[1,6] > 7
神楽坂 千歳
7:祭壇。一切の明かりは消えて、人気はない。
神楽坂 千歳
時は少し遡る。
神楽坂 千歳
競い合うように森を駆けた三人が、
神楽坂 千歳
果たして千歳の言葉の通り、もといた祭壇に辿り着かんとしたその矢先。
神楽坂 千歳
一本の木をくぐり抜けたその瞬間に、
神楽坂 千歳
「!」
神楽坂 千歳
花丸かごめの姿が掻き消えた。
神楽坂 千歳
「――かごめ?」
勢納 斎
「……かごめ!」
神楽坂 千歳
周囲を見回す。
神楽坂 千歳
月の光に照らされた葉の一枚一枚の擦れる音に、
花丸 かごめ
かすかに甘い残り香があるばかり。
神楽坂 千歳
彼女の息遣いは感じ取れない。
花丸 かごめ
それも、どこへ続くともなく忽然と消えている。
勢納 斎
あの距離で見失う訳がない。
神楽坂 千歳
そう、残るは彼女の、特有の甘い香りだけ。
神楽坂 千歳
どころかまさに消え失せるその瞬間を目の当たりにした。
勢納 斎
「……まるで神隠しだな」
勢納 斎
「探すぞ」
神楽坂 千歳
「…………」
神楽坂 千歳
「ああ」
神楽坂 千歳
「探すものが増えた」
勢納 斎
「隠忍の男とかごめの両方を探す」
神楽坂 千歳
頷く。空を仰ぐ。
神楽坂 千歳
中天にぽっかりと浮かぶ月を見て、
神楽坂 千歳
小さく息をついた。
神楽坂 千歳
歩みを進める。
勢納 斎
探すも何も、周囲は鬱蒼と繁る森。
勢納 斎
いくらでも隠れる場所はある。いくらでも隠せる場所はある。
神楽坂 千歳
加えて人界の常識の通じない異界。
勢納 斎
気配を消すことも、あの二人には難しくないだろう。
神楽坂 千歳
真直ぐに進んだとて、いつしかぐるりと時空は歪み、元いた場所に辿り着かされる始末。
神楽坂 千歳
それでも探す他ない。
勢納 斎
立ち止まる。
神楽坂 千歳
「……勢納斎?」
勢納 斎
「やめた」
神楽坂 千歳
足を止めた彼女に振り返り、
勢納 斎
くるりと踵を返し、祭壇に向かう。
神楽坂 千歳
その言葉に、
神楽坂 千歳
けれど、特別に驚いた様子は見せなかった。
神楽坂 千歳
「かごめが」
神楽坂 千歳
彼女の背に呼びかける。
神楽坂 千歳
「この異界に招かれたことに、特別の意味があるとは思うか」
勢納 斎
「さあな」
勢納 斎
「心当たりはない」
神楽坂 千歳
「俺もだ」
神楽坂 千歳
「だが、胸騒ぎはする」
神楽坂 千歳
「『何かの手違い』」
神楽坂 千歳
「『かごめに配役はない』」
神楽坂 千歳
「『朝までやり過ごせばそれでいい』」
神楽坂 千歳
「かごめのこの場に居るのを見て、俺はこのように思った」
勢納 斎
「そうだな」
神楽坂 千歳
つま先は森を向き、けれど駆けるでもなく。
神楽坂 千歳
祭壇に戻った斎を見ている。
神楽坂 千歳
「…………」
神楽坂 千歳
「なにがどうあろうと」
神楽坂 千歳
「俺は『八千矛』をやり遂げるのみ」
神楽坂 千歳
「だから、かごめが混ざったところで何が変わるでもない」
神楽坂 千歳
「そのようにも考えていた」
勢納 斎
祭壇に腰掛けて、置いたままにしていた水筒を手に取る。
神楽坂 千歳
ちらと
神楽坂 千歳
腕に下ろした神器を、刀を見下ろす。
勢納 斎
先程かごめが注いだものと、同じ茶を注ぐ。それは少しだけ、夜に冷えていた。
神楽坂 千歳
僅かに残された甘い香も、夜の冷たい風に吹かれて消えている。
神楽坂 千歳
本来いないはずのかごめが、今はいないことがひどく気掛かりだ。
神楽坂 千歳
矛盾を知る。
神楽坂 千歳
絶対のないことを知っている。
神楽坂 千歳
知っているのだ。自分は。だから、
勢納 斎
「かごめが自ら姿を眩ませる意味はない。おそらくは隠忍の男が隠したか、どこかから帰れたかだ」
神楽坂 千歳
「…………」
勢納 斎
「帰れたならそれでいい」
勢納 斎
「隠忍の男が隠したのなら、放っておいても向こうから来るだろう。これはそういう儀式だからな」
神楽坂 千歳
深く、息をついた。
神楽坂 千歳
諦めたように踵を返し、祭壇の方へと戻る。
神楽坂 千歳
斎の言葉への返答はない。黙り込んだままに思索に耽っている。
勢納 斎
「もっとも、あの男が儀式の最中に女を物色するような輩なら話は変わってくるが……」
神楽坂 千歳
「それはないだろう」
神楽坂 千歳
思考を半分沈めたままに、けれど即答する。
勢納 斎
「やけにはっきり言うな」
神楽坂 千歳
「少なくとも」
神楽坂 千歳
「意味もなくそのような愚を犯す男にないとは、見て分かる」
神楽坂 千歳
祭壇の裏側。声は十分すぎほどに届く距離、斎とは背を向ける形に腰を下ろす。
勢納 斎
「見て分かるとは思わないが」
勢納 斎
「それほど頭の悪い男なら、八十神に選ばれるとは考えにくい」
神楽坂 千歳
「ああ」そういえば、といったように声を漏らす。
神楽坂 千歳
「それもあるか」
神楽坂 千歳
風が吹いている。冷たい風が。
神楽坂 千歳
夜に冷えた、湿った土の匂いがする。
勢納 斎
「なんだ? 目を見れば分かるだとか、直感で分かるとでも言うのか?」
神楽坂 千歳
刀は常に千歳の腕にある。
神楽坂 千歳
その月の光を写し込む冴え冴えとした輝きに目を落としながら、
神楽坂 千歳
「近くはある」
神楽坂 千歳
「自分で言うのも恥ずかしいことだが」
神楽坂 千歳
「いかにも、鞍馬の男の考えそうなことだろう」
勢納 斎
「そうだな」
神楽坂 千歳
「だが、俺たちはそれを信じている」
神楽坂 千歳
「その上に研鑽を重ね、修練を繰り返し、このように在る」
勢納 斎
一笑に付してやりたいところだが、鞍馬神流の忍の直感は馬鹿にできないことを知っている。
神楽坂 千歳
「馬鹿らしいと嘲られようと、俺はそう在ることを選んだ」
神楽坂 千歳
「だから、俺はあの男を信じている」
神楽坂 千歳
「一方的な信頼であろうとね」
勢納 斎
「結論は同じだ。異論はない」
勢納 斎
「茶でも啜ってゆっくり待てばいい」
神楽坂 千歳
「…………」
神楽坂 千歳
少し、俯く。
神楽坂 千歳
「だから」
神楽坂 千歳
「かごめが姿を消したとて、ほんとうであれば」
神楽坂 千歳
「躍起になって探す必要のないことは、分かるんだ」
神楽坂 千歳
「分かる。理解している」
神楽坂 千歳
「だから、つまり」
神楽坂 千歳
「俺が危惧しているのは、かごめの身の上そのものではない」
神楽坂 千歳
「俺の胸を騒がせるのは、単純なかごめの安否そのものではない」
神楽坂 千歳
空を見上げる。
神楽坂 千歳
異界の月を見る。
GM
青く、暗い。
神楽坂 千歳
その光を見上げていると、胸の奥に冷たいものを差し込まれたような心地を覚える。
神楽坂 千歳
「なにか」
神楽坂 千歳
「何かが、食い違っている気がする」
勢納 斎
「そうだな」
神楽坂 千歳
「その上で、俺は歩みを進めているのではないかと」
神楽坂 千歳
「そのように感じている」
勢納 斎
「そうかもしれないな」
神楽坂 千歳
「後悔はないが――胸騒ぎはある」
神楽坂 千歳
「だから」
神楽坂 千歳
祭壇に背を預けたまま、神器を空に翳す。
神楽坂 千歳
月の光に冷たく輝く刃を瞳に見つめる。
神楽坂 千歳
「ひとつ」
神楽坂 千歳
「これに尋ねてみるとしようか」
勢納 斎
月の光を照らす、神器を見上げる。
神楽坂 千歳
青く暗い光に、刀が眩しく輝いている。
勢納 斎
「聞ける相手がいるのなら、聞くに越したことはない」
神楽坂 千歳
「ああ」
神楽坂 千歳
「藁にでも縋ってみせるさ」
神楽坂 千歳
情報判定。
神楽坂 千歳
瞳術にて。プライズの秘密を抜きます。
神楽坂 千歳
協力は頂けますか?
勢納 斎
仕方ないな
神楽坂 千歳
助かる。
神楽坂 千歳
2D6+1>=5 (判定:瞳術) (2D6+1>=5) > 3[1,2]+1 > 4 > 失敗
神楽坂 千歳
通します。
GM
刀は……しかし応えない。
神楽坂 千歳
隠忍に相対する者として。
神楽坂 千歳
異界を覗き込むべく鍛えられた瞳にて、その刀の輝きを覗けど。
神楽坂 千歳
輝きは輝きのままにそこにある。
神楽坂 千歳
冷たい光は、いらえを返さない。
神楽坂 千歳
しばらく虚しく神器を掲げていたが、
神楽坂 千歳
やがて諦めたように腕を下ろした。
神楽坂 千歳
「どうやら」
神楽坂 千歳
「今は機嫌が悪いらしい」
勢納 斎
「そのようだな」
神楽坂 千歳
なにがしか続けかけてから、唇を閉じる。
勢納 斎
「私に似て気分屋なのかもしれん」
神楽坂 千歳
「はは」
神楽坂 千歳
「それは納得だ」
神楽坂 千歳
天を仰いだ。
神楽坂 千歳
直接に見る月の輝きは、ますます冷たく青く不吉に映る。
神楽坂 千歳
「なあ」
神楽坂 千歳
「勢納斎」
勢納 斎
「なんだ」
神楽坂 千歳
「お前に叱責されるその時まで」
神楽坂 千歳
「俺は、かごめのこの場に混ざり込んだ違和感を見過ごしていた」
神楽坂 千歳
「目が醒めたのはお前のおかげだ」
神楽坂 千歳
「礼を言う」
勢納 斎
わざとらしく、大きなため息を吐く。
勢納 斎
「お前は、傲慢で謙虚な男だな」
神楽坂 千歳
「それは」
神楽坂 千歳
「両立するものなのか?」
勢納 斎
「両立しているだろうが、お前が」
神楽坂 千歳
「…………」
神楽坂 千歳
軽く首をひねっている。
勢納 斎
「生まれ持った資質が傲慢でも、謙虚に育てることはできるだろうよ」
神楽坂 千歳
顔を軽く上げて、斎の方へと視線を流す。
神楽坂 千歳
「……褒められているのか?」
勢納 斎
「そうだな、お前を育てた周囲の人間を褒めている」
神楽坂 千歳
「ああ」
神楽坂 千歳
「だから、褒められているものと感じた」
神楽坂 千歳
「俺は彼らに育てられた恩義がある」
神楽坂 千歳
「期待を預かり、情を注がれ、手間暇かけて丁寧に」
神楽坂 千歳
「彼らは俺を育て上げた」
勢納 斎
「もう一つ付け加えてやる」
神楽坂 千歳
「なんだ」
勢納 斎
「お前は傲慢で謙虚で素直だな」
神楽坂 千歳
「…………」
神楽坂 千歳
「褒め言葉が」
神楽坂 千歳
「ひとつ、増えたな」
勢納 斎
「褒められていると思うか?」
勢納 斎
「まぁ、思うならそれでもいい」
神楽坂 千歳
「都合よく受け取っておくさ」
勢納 斎
素直な男だ、と思う。
勢納 斎
周囲の期待に疑うことなく応えようとしている。
勢納 斎
胸がちりと痛む。
勢納 斎
羨ましい。
勢納 斎
周囲が望むものと、己が望むものが同じであれば。
勢納 斎
どれほど楽だっただろう。
神楽坂 千歳
その幸運を、恵まれた身分を、かけらの屈託もなく振り回す男。
勢納 斎
あんな風に生きられたのなら。
勢納 斎
どれほどよかっただろう。
GM
片や暗闇の洞穴、片や仰げば天に満ちたる蒼白の杯。
GM
光と影は一体。それゆえに、光と闇を定め直す儀式がある。
GM
光も影も、まだそれはそのときにあらず。

メインフェイズ サイクル2 花丸 かごめ

花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
一人、残されて。
花丸 かごめ
好きにしていい、だなんて。
花丸 かごめ
足を踏み出す。
花丸 かごめ
それがわからないから、困っているのに。
花丸 かごめ
草を踏む音。
花丸 かごめ
鬱蒼と生い茂る森が、どこまでも続いて見える。
花丸 かごめ
迷子になったような孤独感。不安感。
花丸 かごめ
どこに行ったらいいのかな。
花丸 かごめ
どうしたらいいのかな。
花丸 かごめ
わたしは、どうしたいのかな。
花丸 かごめ
あなたがそんな人だなんて、聞かされてなかったのよ。
花丸 かごめ
ううん、そもそもどんな人かなんて聞いてない。
花丸 かごめ
現世を、これまでと変わらず人のものとする儀式。
花丸 かごめ
そのために討たれる配役が、八十神。
花丸 かごめ
それだけ。
花丸 かごめ
どんな人かなんて聞いてない。考えたこともなかった。
花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
惑うように、のろのろと歩を進めていた足が
花丸 かごめ
やがて少しずつ、動きをはやめてゆく。
花丸 かごめ
どうしたらいいのか。
花丸 かごめ
どうしたいのか。
花丸 かごめ
わかんないよ。
花丸 かごめ
でも多分、あなたを知らないままでは
花丸 かごめ
どうするにしても、きっと
花丸 かごめ
後悔してしまうから。
花丸 かごめ
アガタの秘密を調査します。
花丸 かごめ
判定は走法。森を駆け抜けて、向かう先には。
GM
判定をどうぞ。
花丸 かごめ
2D6>=5 (判定:走法) (2D6>=5) > 9[4,5] > 9 > 成功
GM
貼りました。
アガタ
2d6 (2D6) > 8[2,6] > 8
GM
8:草原。青く暗い満月が空にあり、風が吹けば草がさざめく。
アガタ
糸を辿った先に。
花丸 かごめ
どこまでも続くと思われた木々。
花丸 かごめ
ふいに、それを抜ける。
花丸 かごめ
視界が広がる。
アガタ
影法師のような上背の男が月を見ていた。
花丸 かごめ
烏の濡羽のような髪が、青く暗い月の明かりを映している。
花丸 かごめ
さくさくと草を踏みしめて、彼に歩み寄る。
アガタ
踏みしめらるる草の音を聞く。
アガタ
見る。
花丸 かごめ
「……名前をね」
花丸 かごめ
「知らないなって、思ったの」
花丸 かごめ
「あなたの」
アガタ
「……」
アガタ
「“アガタ”」
花丸 かごめ
アガタ、と口の中で小さく反芻して
花丸 かごめ
「……アガタ、さん」
アガタ
「……だばって」
アガタ
「“アガタ”でもねえんだ」
アガタ
口を開く。
花丸 かごめ
「……そうなの?」
アガタ
先ほどと同じように。
アガタ
今の世を生きる人には発音のできない名。
アガタ
草原を走る風の音に似ているその音を。
花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
今度は、それをなぞることはできなかった。
花丸 かごめ
けど。
花丸 かごめ
「ありがとう」
花丸 かごめ
「教えてくれて」
花丸 かごめ
「わたしは、かごめ」
花丸 かごめ
「花丸かごめです」
アガタ
「はなまる、かごめ」
花丸 かごめ
「はい」
花丸 かごめ
名前をなぞられて、にっこりと笑う。
花丸 かごめ
「……あのね」
花丸 かごめ
「あなたが正直にお話してくれるから、わたしも言うね」
花丸 かごめ
「……わたしは、いつきちゃんが好き」
花丸 かごめ
「ちとせくんが好き」
花丸 かごめ
「家族が好き。ともだちが好き」
花丸 かごめ
「今の世界が、すきよ」
花丸 かごめ
「壊したいとか、変えたいとか」
花丸 かごめ
「そんな風には思わない……」
花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
その言葉は確かにアガタに向けられていながら、
花丸 かごめ
だけどどこか、自分の心の内と話をしているようでもあった。
花丸 かごめ
「…………でも、でもね」
花丸 かごめ
「だからね、これはさっきも言ったのだけど……」
花丸 かごめ
「わたし、困っているの」
花丸 かごめ
「あなたが、嫌な人でも、悪い人でも、ないから……」
アガタ
「……」
花丸 かごめ
「急に連れてこられたのはびっくりしたけど」
花丸 かごめ
「それ以外は、なにも怖いことされてないし」
花丸 かごめ
「多分、あなたはもっと無理に、望むものを得ることもできたのじゃないかって」
花丸 かごめ
「そう思って…………」
花丸 かごめ
「…………」
アガタ
「……」
アガタ
らんきたがるのは、めぐせ『乱暴するのは、とうてい恥ずかしいことです』
アガタ
たげだば……『できることなら……』
アガタ
わんどは、まづがえね『私たちは二度と間違えない』
アガタ
とっくのむかしさ、『とっくの昔に』
アガタ
しんだやつだはんだね『私たちは死んだのですから』
アガタ
呪いは紡がれる。
アガタ
この血が途絶えぬように。
この呪いが途絶えぬように。
アガタ
皮肉にも『あなた』に声は送られる。
アガタ
閉ざし、穿ち続けた呪いの深さだけ。
花丸 かごめ
声が届く。
花丸 かごめ
知らない、わからないはずの言葉が、理解できる。
花丸 かごめ
言葉の通じる人を、交わそうとしてくれる人を
花丸 かごめ
どうして、無下にできようか……。
花丸 かごめ
「……こまったなあ」
アガタ
かつて、まつろわぬものと排された人々。
名もなき古代の神。
アガタ
数多の記録、数多の歴史。
数多の文明、数多の血筋。
アガタ
それらを断絶と言うには。
アガタ
我々はあまりに“混じり過ぎた”
アガタ
今ここに『八十神』と役を与えられた男の血に、どれだけの太平の世の血が混じったか。
アガタ
どれほどの血が流れたのか。
アガタ
堅洲の里に眠る隠忍は語らない。
アガタ
誰も知らない。
アガタ
もう、その答えはどこにもない。
アガタ
すげねえ『これを言葉にすることはできません』
花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
「……つらいのは、あなたなのではなくて?」
花丸 かごめ
先に言葉を交わした時に思ったことが、ふと口をつく。
アガタ
首を横に振る。
アガタ
「『八十神』は」
アガタ
そったなげついわねびょん『そんな泣き言を言わないでしょう』
花丸 かごめ
「あなたはあなた、じゃないの?」
花丸 かごめ
「アガタさんは、どう思っているの?」
アガタ
ひとしきり黙って。
アガタ
もう一度、
アガタ
「すげねえ」
アガタ
と言った。
花丸 かごめ
「……そっか」
花丸 かごめ
しばし思案するように俯いて
花丸 かごめ
ぱ、と顔を上げる。
花丸 かごめ
「わたしはね、この世界がすきよ」
花丸 かごめ
繰り返す。
花丸 かごめ
「壊したいとも、変えたいとも思わない……」
花丸 かごめ
「……たくさんお話してくれて、ありがとう」
花丸 かごめ
「いつきちゃん達が心配してると思うから、そろそろ戻るね」
アガタ
視線だけがその姿を見送る。
花丸 かごめ
「……わたしね」
花丸 かごめ
「あなたとお友達になれたと思っているわ」
花丸 かごめ
「……思っているの」
花丸 かごめ
「だから、ね」
花丸 かごめ
「またね」
アガタ
「……」
アガタ
濡れ羽色が一瞬光って、消える。
花丸 かごめ
再び一人取り残されて、しばし立ち尽くす。
花丸 かごめ
が、やがて踵を返す。
アガタ
草原を走る風の音が。
アガタ
月の輪郭をなぞっている。
GM
巨大な時の流れを前にして、褪せて変わるのは摂理。
GM
生き、営む、人を愛する。それだけのことにさえ残酷を孕む条理。
GM
残酷に傷つき、人の心が容易く割り切れぬのは常理だった。
花丸 かごめ
アレの秘密をアガタさんに譲渡します。
GM
承りました。
花丸 かごめ
甘いかおり。
花丸 かごめ
砂糖の、小麦粉の、そんなかおりに混ざって
花丸 かごめ
ほのかに、花のようなかおり。
花丸 かごめ
かごめ自身がまとうかおり。
花丸 かごめ
陽の当たる場所の、かおりがする。
アガタ
語らぬばかりに雄弁な情景を視る。
アガタ
虫出づる季節のまどろみ。
アガタ
頂きました。
GM
GM
このまま、情報交換のためのシーンを追加します。

メインフェイズ サイクル2 勢納 斎 予備シーン

アガタ
勢納 斎と情報交換を。
神楽坂 千歳の秘密と花丸 かごめの秘密を交換します。
勢納 斎
交換を受けます。
GM
承りました。
アガタ
結界から帰る花丸かごめの肩に、糸の残滓。
GM
貼りました。
アガタ
まじないの行われた気配。
GM
これで花丸 かごめの秘密は公開になりますね。
【PC4 秘密】
あなたが何故この場に立っているのか、全くの心当たりがないわけではない。むしろ、この場に立っていることで、あなたは確信した。自らの内側に感じる巨大な何かは神器だ。いつからか、あなたは自分の内側に神器が封印されている。儀式『神楽八十神追』において、神器は八千矛によって封印が解かれる定めだ。ならば、あなたの配役は……。

あなたはプライズ『神器』を持つ。
あなたの本当の使命は『神器の封印を解いてもらうこと』だ。
GM
ありえない配役。ありえない予感。ありえない神器。
GM
此度の神楽八十神追は歪められている。
GM
しかし儀式が歪であれど、その身、その命は一人、花丸かごめの生だ。

メインフェイズ サイクル2 勢納 斎

勢納 斎
月を見上げて茶を啜り人と話す。こんな状況でなければ、もう少し楽しい気分にもなれただろう。
勢納 斎
しかし今は神楽八十神追の只中。
神楽坂 千歳
斎の神器の封印を解いた男は、言葉少なに空を見上げている。
勢納 斎
八十神は姿を消し、配役がないはずの女もいずこかへ消えている。
神楽坂 千歳
無気味な沈黙に支配された異界の森を、冴え冴えと青い月が照らしている。
神楽坂 千歳
歪められた世界の中、人の心を見透かすような青い光が彼らを照らし、
神楽坂 千歳
人影を照らす。
花丸 かごめ
草を踏む音。
花丸 かごめ
次いで、
花丸 かごめ
「……いつきちゃん、ちとせくん!」
神楽坂 千歳
「!」
勢納 斎
「かごめ!」
勢納 斎
駆け寄る。
神楽坂 千歳
声のした方へぱっと顔を向ける。
花丸 かごめ
かごめからも、ぱたぱたと斎に駆け寄る。
勢納 斎
「大丈夫か、怪我はしていないか?」
神楽坂 千歳
斎のかごめに駆け寄るさまを見ながら、こちらも腰を上げる。
花丸 かごめ
「うん、全然だいじょうぶ~」
勢納 斎
「そうか。よかった……」
花丸 かごめ
「ごめんねぇ、心配かけちゃって」
神楽坂 千歳
「いや」
神楽坂 千歳
「無事でよかった」
神楽坂 千歳
腕に神器を刀を提げ、二人の方へと歩み寄りながら。
勢納 斎
「かごめが無事なら、いい」
勢納 斎
手を取って、安心したように小さくため息を吐いた。
花丸 かごめ
「えへへ……ありがと」
神楽坂 千歳
仲睦まじい二人の様子に、一応は安堵の色を滲ませる。
勢納 斎
そうして、その肩
勢納 斎
僅かに残る残滓に気が付く
勢納 斎
まじないの行われた気配。
勢納 斎
「……かごめ、隠忍の男と会ったのか」
花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
「……うん」
花丸 かごめ
「会った」
神楽坂 千歳
沈黙、からの肯定。
神楽坂 千歳
かごめの応答に、そうか、と小さく声を漏らした。
勢納 斎
「何かされたりしなかったか?」
花丸 かごめ
首を振る。
花丸 かごめ
「お話したよ」
花丸 かごめ
「それだけ。怖いことはなんにもされてない」
勢納 斎
「そう、なのか」
神楽坂 千歳
だろうな、とは思う。
神楽坂 千歳
そも自分は斎に太鼓判を押しさえした。
花丸 かごめ
「……それに」
花丸 かごめ
「いつきちゃんには、分かるんじゃない?」
花丸 かごめ
「わたしが、本当に何もされてないの」
勢納 斎
「かごめ……」
勢納 斎
肩に残る僅かなまじないの跡。
勢納 斎
手を取った、かごめのあたたかさ。
勢納 斎
俯く。
勢納 斎
「……いつから気が付いた?」
花丸 かごめ
「最初から」
花丸 かごめ
「でも確信したのは、いつきちゃんとちとせくんのを見てからかなあ」
勢納 斎
「最初からって、いつからだ」
勢納 斎
「私は」
勢納 斎
「生まれた時から」
勢納 斎
「『姫君』だと……」
花丸 かごめ
「それと比べると最初からとは言えないなあ……」
花丸 かごめ
「何かあるなって感じたのは、ここに来てから」
花丸 かごめ
「でも、今思うと、もっとずっと前から気づいてたのかも」
花丸 かごめ
「まさか神器があるなんて、思ったことはなかったけど……」
花丸 かごめ
「……あ、だからね、内緒にしてたわけじゃないよ」
勢納 斎
「…………」
勢納 斎
「かごめは、そんな大事なことを内緒にする奴じゃない」
勢納 斎
かごめを握る手に、僅かに力が入る。
勢納 斎
「でもな、かごめ」
勢納 斎
「お前は知らないだろうが」
勢納 斎
かごめには、手が震えているのが分かる。
勢納 斎
「私はずっと」
勢納 斎
「私みたいな女より」
花丸 かごめ
震える手をやわらかく握り返す。
勢納 斎
「お前のほうが、姫君に相応しいと」
勢納 斎
ぽた、と雫が手の甲に落ちる。
花丸 かごめ
「……いつきちゃん」
勢納 斎
「逆であるべきだったと」
勢納 斎
「どうしてそうではなかったんだと」
勢納 斎
「かごめみたいな、優しく、あたたかい女が姫君であるべきなんだ」
神楽坂 千歳
――勢納家は『姫君』を輩出するために保持されてきた家で、
神楽坂 千歳
他ならぬ斎は、まさにこの儀に合わせて誂えられた存在だった。
神楽坂 千歳
『八千矛』として生まれ落ち、鍛え上げられてきた千歳と同様に。
神楽坂 千歳
『神楽八十神追』が歪められているならば、
神楽坂 千歳
その歪みの一端を担うのはかごめの方だ。
神楽坂 千歳
どうしたって、
神楽坂 千歳
正式な『姫君』は、勢納斎であるはずなのだ。
花丸 かごめ
「……わたしは、いつきちゃんがずっと頑張ってたの、知ってるよ」
勢納 斎
「ほら、それだ」
勢納 斎
「そんなことを言ってくれる女が、姫君であって欲しいと思うじゃないか」
花丸 かごめ
「……ううん」
花丸 かごめ
「わたしは、だって」
花丸 かごめ
「いつきちゃんがそう思ってることも、ずっと気づかなかった」
勢納 斎
かごめの手の甲を額に寄せて、呻く。
勢納 斎
「だって」
勢納 斎
「隠してたから」
勢納 斎
肩をしゃくり上げる。
勢納 斎
何かを言おうとして
勢納 斎
口を引き結んだ。
花丸 かごめ
「……分かってあげたかった」
花丸 かごめ
「ごめんね……」
花丸 かごめ
体を寄せる。
勢納 斎
背中に縋る。
勢納 斎
「……ごめん」
勢納 斎
「お前の方が姫君に相応しいなんて言われても、かごめも困るよな」
花丸 かごめ
「わたしは」
花丸 かごめ
「どんなにお姫様がいやだって言っても」
花丸 かごめ
「一度だって逃げたりしなかったいつきちゃんが、誰よりもふさわしいと思ってるよ」
花丸 かごめ
「そんないつきちゃんが、だいすき」
勢納 斎
「…………」
勢納 斎
「あのな、かごめ」
花丸 かごめ
「うん」
勢納 斎
「私が嫌だったのは、姫君じゃなくて」
勢納 斎
「私自身ではない、女を求められていたのが嫌だったんだ」
花丸 かごめ
「……うん」
勢納 斎
「私が何を考え、何を好きで、何になりたいと思っていたとしても」
勢納 斎
「私の中の、女の要素しか求められなかったんだ」
勢納 斎
「生まれた時から、ずっと」
花丸 かごめ
「……いつきちゃんはいつきちゃん、なのにね」
勢納 斎
「うん……」
勢納 斎
「それなのに」
勢納 斎
「今、かごめの方が姫君に相応しいなんて」
勢納 斎
「かごめの女の部分以外を無視したことを言った」
勢納 斎
「だから、ごめん」
花丸 かごめ
「気にしてないよ」
勢納 斎
「うん」
勢納 斎
「ありがとう……」
花丸 かごめ
「わたしね、いつきちゃんが他の人に言わないようなことを、わたしには言ってくれるのね……」
花丸 かごめ
「うれしいから」
花丸 かごめ
えへ……と照れたように笑う。
勢納 斎
「かごめが、かごめじゃなきゃこんなこと言えないよ」
勢納 斎
「私も大好きだよ、かごめ」
花丸 かごめ
「ありがとう、いつきちゃん」
花丸 かごめ
「それはね、知ってた!」
勢納 斎
「はは」
勢納 斎
「知ってたか」
花丸 かごめ
「でも言ってくれたのうれしい~」
勢納 斎
かごめの甘い匂いのする肩に、顔を擦り寄せた。
勢納 斎
感情判定します
神楽坂 千歳
感情修正を。
勢納 斎
ありがたい
勢納 斎
どれでしよう……
勢納 斎
かごめと一緒なら心が羽ばたいて行ける気がするので、飛術で
GM
判定をどうぞ。
勢納 斎
2D6+1>=5 (判定:飛術) (2D6+1>=5) > 4[2,2]+1 > 5 > 成功
勢納 斎
ET 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス)
花丸 かごめ
ET 感情表(1) > 共感(プラス)/不信(マイナス)
勢納 斎
愛情で…………
花丸 かごめ
共感
勢納 斎
愛情が出たので愛情です
花丸 かごめ
斎の背に、やわらかな手のひらが触れる。
花丸 かごめ
よしよしと撫でる。
勢納 斎
「知ってたか」
勢納 斎
「そっか」
花丸 かごめ
「うん」
勢納 斎
「そっか……」
勢納 斎
こんな儀式がなかったらとか、違う生まれだったらとか、そもそも自分が男だったらとか
勢納 斎
そんなことを言っても仕方がないので
勢納 斎
かごめの小さく柔らかく、甘い体を抱きしめた。
花丸 かごめ
「わ」
花丸 かごめ
されるがままに、抱きしめられる。
勢納 斎
「大好きだよ、かごめ」
勢納 斎
「ずっと大好きだ」
花丸 かごめ
「わたしも、いつきちゃんがだいすき」
勢納 斎
何度も己の生まれを呪った。
勢納 斎
自分自身を誰も見ず、女であることだけが求められる、姫君が嫌だった。
勢納 斎
それと同時に、自分には荷が重い、と思った。
勢納 斎
女をやるには、苛烈すぎる性格。女をやるには、肉の薄い体。
勢納 斎
かごめの方が、ずっとずっと、姫君と呼ぶに相応しいと思った。
勢納 斎
それならば、自分は八千矛をやるのに。
勢納 斎
そう。
勢納 斎
私は、八千矛になりたかった。
GM
神楽坂 千歳
月はさやけく、あまねく人に降り注ぐ。
神楽坂 千歳
ただしかし、
神楽坂 千歳
この異界にて人は四人のみ。
神楽坂 千歳
言葉を交わし、抱擁を交わした女が二人に、
神楽坂 千歳
死合うことを宿命付けられた、男が二人。
神楽坂 千歳
暗く青い月の光は、
神楽坂 千歳
その真実をも照らすのか。
勢納 斎
斎はかごめに抱きついて、しばらく泣きじゃくっていた。
勢納 斎
それでも少し経てば落ち着いて
勢納 斎
今は並んで座り、水筒の茶を飲んでいる。
勢納 斎
ぬるくなった茶を飲み下して、ほう、と息を吐いた。
花丸 かごめ
両手でカップを持って座っている。
神楽坂 千歳
少し離れたところで祭壇に背を預けている。
勢納 斎
「……隠忍の男と話したと言っていたな」
勢納 斎
「怖くはなかったか?」
花丸 かごめ
「……最初は、ちょっと怖かったかなあ」
花丸 かごめ
「むりやりこれ取られちゃうのかな、って……」
花丸 かごめ
これ、と片手を腹に当てる。
神楽坂 千歳
「…………」
勢納 斎
「そうだよな」
勢納 斎
「私が急に連れ去られたら、同じことを思うだろう」
花丸 かごめ
「でも、されなかった」
花丸 かごめ
「わたしのこと、気を使ってくれて……」
勢納 斎
「…………」
勢納 斎
「気を使ったって、どう」
花丸 かごめ
「つらいでしょうって、言ってくれて」
花丸 かごめ
「わたしを利用するつもりはないって……」
花丸 かごめ
そこまで言って、はたと口を閉じて。
勢納 斎
眉間にしわが寄っている。
花丸 かごめ
「……あんまりこういう話しない方がいいかなあ」
花丸 かごめ
「いつきちゃんたちは、これから戦わないといけないんだもんね」
勢納 斎
「それはどうでもいい」
神楽坂 千歳
「俺も構わない」
勢納 斎
どうでもよくないが。
勢納 斎
「気に入ったのか、あいつが」
神楽坂 千歳
「外したほうがいいなら、外すが」
花丸 かごめ
「えっと……いるのは大丈夫!」
神楽坂 千歳
頷く。
花丸 かごめ
「それで、え~と……」
花丸 かごめ
斎を見る。
勢納 斎
「どうなんだ」
勢納 斎
「あいつを気に入ったのか?」
花丸 かごめ
少しの沈黙を挟んで、
花丸 かごめ
こく、と小さくうなずく。
勢納 斎
「…………………………………」
神楽坂 千歳
沈黙が長いな……
勢納 斎
「おいかごめ」
花丸 かごめ
「悪い人じゃ、なかった、」
花丸 かごめ
「いいひとだった、から」
勢納 斎
「私はあいつを殺したくなっている」
勢納 斎
「しかし殺されたらかごめは困るだろう」
勢納 斎
「とはいえどちらにせよ殺さないといけない定めだ」
花丸 かごめ
「……いつきちゃんたちがそうしないといけないのは、ちゃんと分かってるよ」
勢納 斎
ため息を吐く。
勢納 斎
「せめて、かごめだけでも幸せになって欲しいのだがな……」
神楽坂 千歳
「世界が覆り」
神楽坂 千歳
「まつろわぬものたちの世が築かれても?」
勢納 斎
「それも困る」
花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
「わたしもね、だから」
花丸 かごめ
「困ってるんだ……」
神楽坂 千歳
「…………」
神楽坂 千歳
「かごめは」
神楽坂 千歳
「そうだろうな」
勢納 斎
「なぁ、かごめ。話してくれ」
勢納 斎
「どちらにしても、私はあの男のことを何も知らない」
勢納 斎
「知らないことには、何も判断できない」
花丸 かごめ
「……うん」
勢納 斎
千歳の秘密とアガタの秘密の交換をお願いしたいです。
花丸 かごめ
交換します。
GM
承りました。
勢納 斎
「私も……、そうだな、お前がいなかった間のことを話そう」
花丸 かごめ
「うん、教えて」
花丸 かごめ
「いつきちゃんの話を聞きたい」
【PC1 秘密】
数千年、代々繰り返されてきたこの儀式。国守のためのみならず、あなたの代で果たし損ねるわけにはいかない。儀式の手順は熟知している。姫君に祭具『羽喫鳴鏑』を渡し神器『生大刀・生弓矢』の封印を解き、『八十神』を討つ。それだけだ。

あなたはプライズ 祭具『羽喫鳴鏑』を持つ。

プライズ 祭具『羽喫鳴鏑』は感情判定の際に使用を宣言することで、感情判定を判定なしに成功させることができる。そうしたとき、対象の所持する神器の封印を解き、獲得することができる。使用したとき、このプライズは消滅する。
【PC3 秘密】
数千年にも及ぶ屈辱の末、ついに綻びが起きる。先代の八十神が儀式に使用され消滅するだった祭具『羽喫鳴鏑』をどうにか残し、今はあなたの手元にある。今回の異常はそれによって引き起こされたものだろう。このまたとない機会を無駄にするわけにはいかない。

あなたはプライズ 祭具『羽喫鳴鏑』を持つ。
【PC1 3 秘密備考】
このプライズに秘密はありません。読みは『はばみなりかぶら』です。
勢納 斎
月夜に、女達のおしゃべりの声。
勢納 斎
こんな儀式の夜でなければ、どんなに楽しいものだっただろう。
花丸 かごめ
ずっと、こうしていられたらいいのに。
勢納 斎
役割なんて忘れて。
花丸 かごめ
ただの斎とかごめで。
勢納 斎
もし世界が覆ったあと
勢納 斎
そんな世界が来るのなら、
勢納 斎
それでもいいと思えるのに
勢納 斎
そんな夢みたいな未来は、見えない。
神楽坂 千歳
空には月ばかりが輝いている。
GM
神楽坂 千歳
月の下、無限と続くかと思われた女の話もやがてやみ、
神楽坂 千歳
少しばかりの沈黙を挟み。
神楽坂 千歳
「かごめ」
花丸 かごめ
「なぁに」
花丸 かごめ
声をかけられ、振り返る。
神楽坂 千歳
面を上げる。
神楽坂 千歳
振り返ったかごめに視線を向け、
神楽坂 千歳
「……無事で良かった」
神楽坂 千歳
そう微笑んだ。
花丸 かごめ
「うん、ありがとう」
神楽坂 千歳
「…………」
神楽坂 千歳
しばらく彼女の笑顔を見つめていたが、
勢納 斎
拗ねながら花丸印の兵糧丸をさくさく食べています。
神楽坂 千歳
ふと表情を引き締め、視線を外す。
神楽坂 千歳
「……お前がこの儀式に招かれた意味を」
神楽坂 千歳
「俺は、もっと重く受け止めるべきだったな」
花丸 かごめ
「……ううん」
花丸 かごめ
「わたしも、何も言わなかったし……」
神楽坂 千歳
「にしても軽く流しすぎた」
神楽坂 千歳
「俺が、もっと……」
神楽坂 千歳
いや、と首を振る。
神楽坂 千歳
「……かごめはかごめだからな」
神楽坂 千歳
「変わらないか」
花丸 かごめ
「……そう、かもね」
神楽坂 千歳
「変わらないと思っているよ」
神楽坂 千歳
「開幕に俺が言ったこと」
神楽坂 千歳
「この場に立ったら自らの為すを遂げるが全て」
神楽坂 千歳
「それはお前も、そうなんだろ」
花丸 かごめ
「……うん」
花丸 かごめ
「なんていうのかなあ、使命感、みたいなのがあるの」
花丸 かごめ
「これを、持ち主の手に渡してあげないといけないって」
神楽坂 千歳
「持ち主、か」
花丸 かごめ
「うん……」
勢納 斎
ちら、とかごめの顔を見た。
花丸 かごめ
「……でも、戦いたくないよ」
花丸 かごめ
「いつきちゃんとも、ちとせくんとも……」
神楽坂 千歳
黙り込んでいる。
神楽坂 千歳
かごめの言葉を、声を聞いている。
花丸 かごめ
「世界転覆とか、そんなことだって全然考えてないし」
神楽坂 千歳
「ああ」
神楽坂 千歳
「わかっている」
神楽坂 千歳
そこに暫しの沈黙を挟んで、
神楽坂 千歳
「だが」
神楽坂 千歳
「それでも、なのだろう」
花丸 かごめ
「……わかんない」
花丸 かごめ
「……ほんとはね、こんなはずじゃなくて」
花丸 かごめ
「二人がわたしと戦えるように、お別れしようと思って来たんだけど……」
神楽坂 千歳
「はは」
花丸 かごめ
「もうなんか全然だめ!」
神楽坂 千歳
「そりゃあ」
神楽坂 千歳
「最初から、かごめにゃあ無理な話だよ」
勢納 斎
かごめの脇腹をつついた。
花丸 かごめ
「ひゃ」
花丸 かごめ
斎を見る。
勢納 斎
「お別れとか言うな」
勢納 斎
「事実がどうあれ、そんな話は聞きたくない」
花丸 かごめ
「あう……」
花丸 かごめ
「ごめん……」
神楽坂 千歳
「俺は」
神楽坂 千歳
「そうなるならそうだろうと思うがね」
神楽坂 千歳
青褪めた月を見上げる。
神楽坂 千歳
異界の月とて抗えぬ理か、
神楽坂 千歳
徐々に傾きつつある月の輝きを。
勢納 斎
「どちらにしても、勝たねば話は始まらん」
勢納 斎
「勝ちさえすれば、そちらが正しいことになる」
花丸 かごめ
「…………」
神楽坂 千歳
「いつの世も、歴史を作るは勝者の権利ってな」
勢納 斎
「私は隠忍の男が勝つならそれでいいし、神楽坂千歳が勝つのならそれでいい」
勢納 斎
「これはどちらが強いのか決める儀式だからな」
神楽坂 千歳
「なんなら」
花丸 かごめ
「全然覚悟が決まってないのって、やっぱりわたしだけ……?」
神楽坂 千歳
「歪められて初めて、より正しい形に近づいた節すらある」
勢納 斎
「そうだな」
勢納 斎
「戦は同じ条件でなければならない」
勢納 斎
「ということは、戦力も同じでなければなるまいよ」
勢納 斎
「なぁ、かごめ」
花丸 かごめ
「なぁに……」
勢納 斎
「私は神楽坂千歳に付くぞ。隠忍の男に付く理由がないからな」
花丸 かごめ
「うん……」
神楽坂 千歳
その言葉を、当然のように聞いている。
勢納 斎
「同じ条件にしなければならないと思わないか?」
花丸 かごめ
「そうしてあげたいなあとは、思う……」
勢納 斎
「なら、それでいいだろう」
神楽坂 千歳
「なんつーかまあ、言っちまうとさ」
神楽坂 千歳
「二人三人四人の動向に世界背負わすってのも無責任な話だろ」
花丸 かごめ
「え~」
花丸 かごめ
「それはそうだけど、言っちゃう~?」
神楽坂 千歳
「ははは」
神楽坂 千歳
「振られた側にも相応の権利がある、って話だよ」
勢納 斎
勝手に世界を背負わせる話について、文句が永遠に言えるので黙っている。
花丸 かごめ
そうだね……
勢納 斎
糞儀式が……
勢納 斎
糞親に糞親族に糞機関が……
神楽坂 千歳
「……だから、俺は俺のしたいようにするし」
神楽坂 千歳
「勢納斎も、かごめも」
神楽坂 千歳
「……あいつも」
神楽坂 千歳
「同じ次元で応えてくれることを、勝手に期待してる」
花丸 かごめ
「……うん」
勢納 斎
「相変わらず傲慢だな」
花丸 かごめ
「ちとせくんはこういう人だから……」
花丸 かごめ
かごめは慣れてるけど……
神楽坂 千歳
「のびのびと育てていただいたよ」
神楽坂 千歳
「だから、今の世界が好きだ」
神楽坂 千歳
「覆させたくないと思うし、守りたいとも思ってる」
神楽坂 千歳
あの池を。
神楽坂 千歳
母の遺したものを。
花丸 かごめ
「……うん」
勢納 斎
「そりゃあ、お前みたいな奴は世界を嫌う理由がなかろうさ」
神楽坂 千歳
「嫌いになられたら困るだろうからなぁ」
神楽坂 千歳
「俺の周囲の人間にそのケはなかったけど」
勢納 斎
「上手く育てたものだ」
神楽坂 千歳
「上の方では調整されてたのかもな」
神楽坂 千歳
「うまく育てられましたよ、まったく」
神楽坂 千歳
「お陰様で勢納斎には面倒をかけている」
勢納 斎
「面倒に感じている」
神楽坂 千歳
「もう謝らないからな」
花丸 かごめ
二人のやりとりを聞きながら、にこにこしている。
勢納 斎
「よろしい」
花丸 かごめ
なかよくなれたんだな~よかったな~
勢納 斎
「かごめ」
花丸 かごめ
「うん」
花丸 かごめ
なぁに? と斎を見る。
勢納 斎
「できるだけ、後悔が少ないことをしよう」
勢納 斎
「多分、全然後悔しないのは難しいと思うけど」
花丸 かごめ
「……うん」
勢納 斎
「どうなったとしても」
勢納 斎
「私はかごめが一番大好きだって、ことだけ」
勢納 斎
「覚えていてくれると……嬉しい」
花丸 かごめ
「うん」
花丸 かごめ
「……うん」
花丸 かごめ
「わたしも、いつきちゃんがだいすき」
GM
世界は回る。月が傾くことに竿を差すことはできない。
GM
しかし、今宵は神楽八十神追。
GM
神楽の果てに昇る日は誰がためのものかを、定めることはできる。
GM
その神楽に何を想い、何をするのかを決めるのは、四人の忍以外にはない。
勢納 斎
勢納 斎
初めてかごめに会ったのは、何歳の頃だっただろう。
勢納 斎
確か物心付くか、付かないかくらい。
勢納 斎
私はその時、内気な子供で
勢納 斎
かごめはその時、明るい子供で
勢納 斎
色々なことを怖がる私を
かごめはあちこちに連れ出して
勢納 斎
大丈夫だよ
何も怖くないよって
勢納 斎
そう教えてくれた
勢納 斎
 
勢納 斎
事実、大体のことは
勢納 斎
やってみればそう怖くはなかった。
勢納 斎
それどころか、少しずつできることが増えて
勢納 斎
何も怖がらなくていいと分かった。
勢納 斎
私は自信を得た。
勢納 斎
この手は、伸ばせばどこにだって届くのだと分かった。
勢納 斎
 
勢納 斎
もう少し大人になると
勢納 斎
それは間違っていたことに気が付く
勢納 斎
見えることが増える。
勢納 斎
人は、多くのことに縛られている。
勢納 斎
内にこもるだけの子供のままなら
勢納 斎
月に手を伸ばしたりしなかったのに
勢納 斎
愛なんかに、気付かなかったのに
勢納 斎
かごめ かごめ
勢納 斎
かごのなかのとりは
勢納 斎
いついつでやる
勢納 斎
籠の中のお前は
勢納 斎
何に手を伸ばす?