メインフェイズ サイクル2
メインフェイズ サイクル2 アガタ
アガタ
2d6 (2D6) >
3[1,2] > 3
GM
3:洞穴。些細な割れ目のような入り口だが、中は広い。完全な闇が滴る。
アガタ
これほどの暗闇に、青い月光に。
両方に目を慣らしておくべく。
アガタ
幾許かの音もしない。
ひとえに黒塗りの視界。
アガタ
男は、己の喉から漏れる言葉がなんであるかを知らない。
アガタ
どこの国で話されたものか、どのような人々が話していたものか。
アガタ
ただ、まつろわぬものを、まつろわぬものとした民と分かつために。
アガタ
それが、霊糸によるものと思った時にはすでに。
アガタ
暗闇に一人立つ『あなた』の前に隠忍の男がいる。
花丸 かごめ
おさななじみの二人とはぐれて、一人。
花丸 かごめ
「…………そっか、やっぱりこうなるんだなあ」
花丸 かごめ
伝わるようにがんばってくれてる、んだよね。
花丸 かごめ
困ったように、目の前のアガタに少しだけ近づく。
アガタ
たとえていうなら、雨が降る前のようなにおいがする。
アガタ
土くれのにおい。
かびたほこりくさいにおい。
アガタ
それでなければ。『あなた』の思うままのにおい。
花丸 かごめ
自分はかすかに甘いかおりを漂わせて、元の距離に戻る。
花丸 かごめ
まつろわぬもの。彼を討つために研鑽を重ねてきたおさななじみ。
花丸 かごめ
おさななじみたちを、そしてこの儀式の目的を思えば、ここで彼とのうのうとおしゃべりしている立場ではないと思うのだけど……。
アガタ
月光が目元に暗い影を落とし、眼光が女を見下ろす。
花丸 かごめ
「……ごめんなさい、わたしもあんまり、あなたの言葉がわからないの」
花丸 かごめ
「……あなたがね、わたしとお話しようと、してくれているようだから」
花丸 かごめ
「なるべくわかってあげたいのだけど……」
花丸 かごめ
「私としてはあんまりよくないのだけど……」
花丸 かごめ
「……わたしを、気づかってくれるのね」
花丸 かごめ
「あなたは、知っているのではないの?」
アガタ
「『こうなってしまったのでしょうね』したっけねえ」
アガタ
「『あなたを利用するつもりはありません』もぢわらきへるきだっきゃねんだ」
アガタ
「『申し訳のたてようもない』めやぐだっきゃいろ」
花丸 かごめ
男を見たり、逸らしてみたり、また見たりと忙しく。
花丸 かごめ
「あなたがこんな人だなんて聞かされていないわ!」
アガタ
花丸かごめに感情判定をします。
この糸が紡ぐものならば。
アガタ
2D6>=5 (判定:結界術) (2D6>=5) > 4[2,2] > 4 > 失敗
花丸 かごめ
陽の当たらない場所の残り香が、やがて風に散らされて
GM
いるはずのなかった女に、ただ消える定めだった男。
メインフェイズ サイクル2 神楽坂 千歳
神楽坂 千歳
2d6 シーン表 (2D6) > 7[1,6]
> 7
神楽坂 千歳
7:祭壇。一切の明かりは消えて、人気はない。
神楽坂 千歳
果たして千歳の言葉の通り、もといた祭壇に辿り着かんとしたその矢先。
神楽坂 千歳
月の光に照らされた葉の一枚一枚の擦れる音に、
花丸 かごめ
それも、どこへ続くともなく忽然と消えている。
神楽坂 千歳
そう、残るは彼女の、特有の甘い香りだけ。
神楽坂 千歳
どころかまさに消え失せるその瞬間を目の当たりにした。
勢納 斎
いくらでも隠れる場所はある。いくらでも隠せる場所はある。
勢納 斎
気配を消すことも、あの二人には難しくないだろう。
神楽坂 千歳
真直ぐに進んだとて、いつしかぐるりと時空は歪み、元いた場所に辿り着かされる始末。
神楽坂 千歳
けれど、特別に驚いた様子は見せなかった。
神楽坂 千歳
「この異界に招かれたことに、特別の意味があるとは思うか」
神楽坂 千歳
「『朝までやり過ごせばそれでいい』」
神楽坂 千歳
「かごめのこの場に居るのを見て、俺はこのように思った」
神楽坂 千歳
つま先は森を向き、けれど駆けるでもなく。
神楽坂 千歳
「だから、かごめが混ざったところで何が変わるでもない」
勢納 斎
祭壇に腰掛けて、置いたままにしていた水筒を手に取る。
勢納 斎
先程かごめが注いだものと、同じ茶を注ぐ。それは少しだけ、夜に冷えていた。
神楽坂 千歳
僅かに残された甘い香も、夜の冷たい風に吹かれて消えている。
神楽坂 千歳
本来いないはずのかごめが、今はいないことがひどく気掛かりだ。
勢納 斎
「かごめが自ら姿を眩ませる意味はない。おそらくは隠忍の男が隠したか、どこかから帰れたかだ」
勢納 斎
「隠忍の男が隠したのなら、放っておいても向こうから来るだろう。これはそういう儀式だからな」
神楽坂 千歳
諦めたように踵を返し、祭壇の方へと戻る。
神楽坂 千歳
斎の言葉への返答はない。黙り込んだままに思索に耽っている。
勢納 斎
「もっとも、あの男が儀式の最中に女を物色するような輩なら話は変わってくるが……」
神楽坂 千歳
思考を半分沈めたままに、けれど即答する。
神楽坂 千歳
「意味もなくそのような愚を犯す男にないとは、見て分かる」
神楽坂 千歳
祭壇の裏側。声は十分すぎほどに届く距離、斎とは背を向ける形に腰を下ろす。
勢納 斎
「それほど頭の悪い男なら、八十神に選ばれるとは考えにくい」
神楽坂 千歳
「ああ」そういえば、といったように声を漏らす。
勢納 斎
「なんだ? 目を見れば分かるだとか、直感で分かるとでも言うのか?」
神楽坂 千歳
その月の光を写し込む冴え冴えとした輝きに目を落としながら、
神楽坂 千歳
「自分で言うのも恥ずかしいことだが」
神楽坂 千歳
「いかにも、鞍馬の男の考えそうなことだろう」
神楽坂 千歳
「その上に研鑽を重ね、修練を繰り返し、このように在る」
勢納 斎
一笑に付してやりたいところだが、鞍馬神流の忍の直感は馬鹿にできないことを知っている。
神楽坂 千歳
「馬鹿らしいと嘲られようと、俺はそう在ることを選んだ」
神楽坂 千歳
「かごめが姿を消したとて、ほんとうであれば」
神楽坂 千歳
「躍起になって探す必要のないことは、分かるんだ」
神楽坂 千歳
「俺が危惧しているのは、かごめの身の上そのものではない」
神楽坂 千歳
「俺の胸を騒がせるのは、単純なかごめの安否そのものではない」
神楽坂 千歳
その光を見上げていると、胸の奥に冷たいものを差し込まれたような心地を覚える。
神楽坂 千歳
「その上で、俺は歩みを進めているのではないかと」
神楽坂 千歳
祭壇に背を預けたまま、神器を空に翳す。
神楽坂 千歳
月の光に冷たく輝く刃を瞳に見つめる。
神楽坂 千歳
青く暗い光に、刀が眩しく輝いている。
勢納 斎
「聞ける相手がいるのなら、聞くに越したことはない」
神楽坂 千歳
瞳術にて。プライズの秘密を抜きます。
神楽坂 千歳
2D6+1>=5 (判定:瞳術) (2D6+1>=5) > 3[1,2]+1 > 4 > 失敗
神楽坂 千歳
異界を覗き込むべく鍛えられた瞳にて、その刀の輝きを覗けど。
神楽坂 千歳
なにがしか続けかけてから、唇を閉じる。
神楽坂 千歳
直接に見る月の輝きは、ますます冷たく青く不吉に映る。
神楽坂 千歳
「俺は、かごめのこの場に混ざり込んだ違和感を見過ごしていた」
勢納 斎
「生まれ持った資質が傲慢でも、謙虚に育てることはできるだろうよ」
神楽坂 千歳
顔を軽く上げて、斎の方へと視線を流す。
勢納 斎
「そうだな、お前を育てた周囲の人間を褒めている」
神楽坂 千歳
「だから、褒められているものと感じた」
神楽坂 千歳
「期待を預かり、情を注がれ、手間暇かけて丁寧に」
勢納 斎
周囲の期待に疑うことなく応えようとしている。
勢納 斎
周囲が望むものと、己が望むものが同じであれば。
神楽坂 千歳
その幸運を、恵まれた身分を、かけらの屈託もなく振り回す男。
GM
片や暗闇の洞穴、片や仰げば天に満ちたる蒼白の杯。
GM
光と影は一体。それゆえに、光と闇を定め直す儀式がある。
メインフェイズ サイクル2 花丸 かごめ
花丸 かごめ
それがわからないから、困っているのに。
花丸 かごめ
鬱蒼と生い茂る森が、どこまでも続いて見える。
花丸 かごめ
あなたがそんな人だなんて、聞かされてなかったのよ。
花丸 かごめ
ううん、そもそもどんな人かなんて聞いてない。
花丸 かごめ
現世を、これまでと変わらず人のものとする儀式。
花丸 かごめ
どんな人かなんて聞いてない。考えたこともなかった。
花丸 かごめ
惑うように、のろのろと歩を進めていた足が
花丸 かごめ
やがて少しずつ、動きをはやめてゆく。
花丸 かごめ
判定は走法。森を駆け抜けて、向かう先には。
花丸 かごめ
2D6>=5 (判定:走法) (2D6>=5) > 9[4,5] > 9 > 成功
アガタ
2d6 (2D6) >
8[2,6] > 8
GM
8:草原。青く暗い満月が空にあり、風が吹けば草がさざめく。
花丸 かごめ
烏の濡羽のような髪が、青く暗い月の明かりを映している。
花丸 かごめ
さくさくと草を踏みしめて、彼に歩み寄る。
花丸 かごめ
今度は、それをなぞることはできなかった。
花丸 かごめ
「あなたが正直にお話してくれるから、わたしも言うね」
花丸 かごめ
「……わたしは、いつきちゃんが好き」
花丸 かごめ
その言葉は確かにアガタに向けられていながら、
花丸 かごめ
だけどどこか、自分の心の内と話をしているようでもあった。
花丸 かごめ
「だからね、これはさっきも言ったのだけど……」
花丸 かごめ
「あなたが、嫌な人でも、悪い人でも、ないから……」
花丸 かごめ
「急に連れてこられたのはびっくりしたけど」
花丸 かごめ
「それ以外は、なにも怖いことされてないし」
花丸 かごめ
「多分、あなたはもっと無理に、望むものを得ることもできたのじゃないかって」
アガタ
「らんきたがるのは、めぐせ『乱暴するのは、とうてい恥ずかしいことです』」
アガタ
「
わんどは、まづがえね『私たちは二度と間違えない』」
アガタ
「しんだやつだはんだね『私たちは死んだのですから』」
アガタ
この血が途絶えぬように。
この呪いが途絶えぬように。
花丸 かごめ
知らない、わからないはずの言葉が、理解できる。
花丸 かごめ
言葉の通じる人を、交わそうとしてくれる人を
アガタ
かつて、まつろわぬものと排された人々。
名もなき古代の神。
アガタ
数多の記録、数多の歴史。
数多の文明、数多の血筋。
アガタ
今ここに『八十神』と役を与えられた男の血に、どれだけの太平の世の血が混じったか。
アガタ
「すげねえ『これを言葉にすることはできません』」
花丸 かごめ
「……つらいのは、あなたなのではなくて?」
花丸 かごめ
先に言葉を交わした時に思ったことが、ふと口をつく。
アガタ
「そったなげついわねびょん『そんな泣き言を言わないでしょう』」
花丸 かごめ
「アガタさんは、どう思っているの?」
花丸 かごめ
「壊したいとも、変えたいとも思わない……」
花丸 かごめ
「……たくさんお話してくれて、ありがとう」
花丸 かごめ
「いつきちゃん達が心配してると思うから、そろそろ戻るね」
花丸 かごめ
「あなたとお友達になれたと思っているわ」
花丸 かごめ
再び一人取り残されて、しばし立ち尽くす。
GM
巨大な時の流れを前にして、褪せて変わるのは摂理。
GM
生き、営む、人を愛する。それだけのことにさえ残酷を孕む条理。
GM
残酷に傷つき、人の心が容易く割り切れぬのは常理だった。
花丸 かごめ
アレの秘密をアガタさんに譲渡します。
花丸 かごめ
砂糖の、小麦粉の、そんなかおりに混ざって
GM
このまま、情報交換のためのシーンを追加します。
メインフェイズ サイクル2 勢納 斎 予備シーン
アガタ
勢納 斎と情報交換を。
神楽坂 千歳の秘密と花丸 かごめの秘密を交換します。
GM
これで花丸 かごめの秘密は公開になりますね。
【PC4
秘密】
あなたが何故この場に立っているのか、全くの心当たりがないわけではない。むしろ、この場に立っていることで、あなたは確信した。自らの内側に感じる巨大な何かは神器だ。いつからか、あなたは自分の内側に神器が封印されている。儀式『神楽八十神追』において、神器は八千矛によって封印が解かれる定めだ。ならば、あなたの配役は……。
あなたはプライズ『神器』を持つ。
あなたの本当の使命は『神器の封印を解いてもらうこと』だ。
GM
ありえない配役。ありえない予感。ありえない神器。
GM
しかし儀式が歪であれど、その身、その命は一人、花丸かごめの生だ。
メインフェイズ サイクル2 勢納 斎
勢納 斎
月を見上げて茶を啜り人と話す。こんな状況でなければ、もう少し楽しい気分にもなれただろう。
神楽坂 千歳
斎の神器の封印を解いた男は、言葉少なに空を見上げている。
勢納 斎
八十神は姿を消し、配役がないはずの女もいずこかへ消えている。
神楽坂 千歳
無気味な沈黙に支配された異界の森を、冴え冴えと青い月が照らしている。
神楽坂 千歳
歪められた世界の中、人の心を見透かすような青い光が彼らを照らし、
花丸 かごめ
かごめからも、ぱたぱたと斎に駆け寄る。
神楽坂 千歳
斎のかごめに駆け寄るさまを見ながら、こちらも腰を上げる。
神楽坂 千歳
腕に神器を刀を提げ、二人の方へと歩み寄りながら。
勢納 斎
手を取って、安心したように小さくため息を吐いた。
神楽坂 千歳
仲睦まじい二人の様子に、一応は安堵の色を滲ませる。
神楽坂 千歳
かごめの応答に、そうか、と小さく声を漏らした。
花丸 かごめ
「それだけ。怖いことはなんにもされてない」
神楽坂 千歳
そも自分は斎に太鼓判を押しさえした。
花丸 かごめ
「いつきちゃんには、分かるんじゃない?」
花丸 かごめ
「わたしが、本当に何もされてないの」
花丸 かごめ
「でも確信したのは、いつきちゃんとちとせくんのを見てからかなあ」
花丸 かごめ
「それと比べると最初からとは言えないなあ……」
花丸 かごめ
「何かあるなって感じたのは、ここに来てから」
花丸 かごめ
「でも、今思うと、もっとずっと前から気づいてたのかも」
花丸 かごめ
「まさか神器があるなんて、思ったことはなかったけど……」
花丸 かごめ
「……あ、だからね、内緒にしてたわけじゃないよ」
勢納 斎
「かごめは、そんな大事なことを内緒にする奴じゃない」
勢納 斎
「かごめみたいな、優しく、あたたかい女が姫君であるべきなんだ」
神楽坂 千歳
――勢納家は『姫君』を輩出するために保持されてきた家で、
神楽坂 千歳
他ならぬ斎は、まさにこの儀に合わせて誂えられた存在だった。
神楽坂 千歳
『八千矛』として生まれ落ち、鍛え上げられてきた千歳と同様に。
神楽坂 千歳
『神楽八十神追』が歪められているならば、
神楽坂 千歳
その歪みの一端を担うのはかごめの方だ。
神楽坂 千歳
正式な『姫君』は、勢納斎であるはずなのだ。
花丸 かごめ
「……わたしは、いつきちゃんがずっと頑張ってたの、知ってるよ」
勢納 斎
「そんなことを言ってくれる女が、姫君であって欲しいと思うじゃないか」
花丸 かごめ
「いつきちゃんがそう思ってることも、ずっと気づかなかった」
勢納 斎
「お前の方が姫君に相応しいなんて言われても、かごめも困るよな」
花丸 かごめ
「どんなにお姫様がいやだって言っても」
花丸 かごめ
「一度だって逃げたりしなかったいつきちゃんが、誰よりもふさわしいと思ってるよ」
勢納 斎
「私自身ではない、女を求められていたのが嫌だったんだ」
勢納 斎
「私が何を考え、何を好きで、何になりたいと思っていたとしても」
勢納 斎
「私の中の、女の要素しか求められなかったんだ」
花丸 かごめ
「……いつきちゃんはいつきちゃん、なのにね」
勢納 斎
「今、かごめの方が姫君に相応しいなんて」
勢納 斎
「かごめの女の部分以外を無視したことを言った」
花丸 かごめ
「わたしね、いつきちゃんが他の人に言わないようなことを、わたしには言ってくれるのね……」
勢納 斎
「かごめが、かごめじゃなきゃこんなこと言えないよ」
勢納 斎
かごめの甘い匂いのする肩に、顔を擦り寄せた。
勢納 斎
かごめと一緒なら心が羽ばたいて行ける気がするので、飛術で
勢納 斎
2D6+1>=5 (判定:飛術) (2D6+1>=5) > 4[2,2]+1 > 5 > 成功
勢納 斎
ET 感情表(3) >
愛情(プラス)/妬み(マイナス)
花丸 かごめ
ET 感情表(1) >
共感(プラス)/不信(マイナス)
花丸 かごめ
斎の背に、やわらかな手のひらが触れる。
勢納 斎
こんな儀式がなかったらとか、違う生まれだったらとか、そもそも自分が男だったらとか
勢納 斎
かごめの小さく柔らかく、甘い体を抱きしめた。
花丸 かごめ
「わたしも、いつきちゃんがだいすき」
勢納 斎
自分自身を誰も見ず、女であることだけが求められる、姫君が嫌だった。
勢納 斎
それと同時に、自分には荷が重い、と思った。
勢納 斎
女をやるには、苛烈すぎる性格。女をやるには、肉の薄い体。
勢納 斎
かごめの方が、ずっとずっと、姫君と呼ぶに相応しいと思った。
神楽坂 千歳
月はさやけく、あまねく人に降り注ぐ。
神楽坂 千歳
言葉を交わし、抱擁を交わした女が二人に、
神楽坂 千歳
死合うことを宿命付けられた、男が二人。
勢納 斎
斎はかごめに抱きついて、しばらく泣きじゃくっていた。
勢納 斎
ぬるくなった茶を飲み下して、ほう、と息を吐いた。
神楽坂 千歳
少し離れたところで祭壇に背を預けている。
花丸 かごめ
「……最初は、ちょっと怖かったかなあ」
花丸 かごめ
「むりやりこれ取られちゃうのかな、って……」
勢納 斎
「私が急に連れ去られたら、同じことを思うだろう」
花丸 かごめ
「わたしのこと、気を使ってくれて……」
花丸 かごめ
「つらいでしょうって、言ってくれて」
花丸 かごめ
「わたしを利用するつもりはないって……」
花丸 かごめ
「……あんまりこういう話しない方がいいかなあ」
花丸 かごめ
「いつきちゃんたちは、これから戦わないといけないんだもんね」
勢納 斎
「とはいえどちらにせよ殺さないといけない定めだ」
花丸 かごめ
「……いつきちゃんたちがそうしないといけないのは、ちゃんと分かってるよ」
勢納 斎
「せめて、かごめだけでも幸せになって欲しいのだがな……」
神楽坂 千歳
「まつろわぬものたちの世が築かれても?」
勢納 斎
「どちらにしても、私はあの男のことを何も知らない」
勢納 斎
千歳の秘密とアガタの秘密の交換をお願いしたいです。
勢納 斎
「私も……、そうだな、お前がいなかった間のことを話そう」
【PC1
秘密】
数千年、代々繰り返されてきたこの儀式。国守のためのみならず、あなたの代で果たし損ねるわけにはいかない。儀式の手順は熟知している。姫君に祭具『羽喫鳴鏑』を渡し神器『生大刀・生弓矢』の封印を解き、『八十神』を討つ。それだけだ。
あなたはプライズ 祭具『羽喫鳴鏑』を持つ。
プライズ 祭具『羽喫鳴鏑』は感情判定の際に使用を宣言することで、感情判定を判定なしに成功させることができる。そうしたとき、対象の所持する神器の封印を解き、獲得することができる。使用したとき、このプライズは消滅する。
【PC3
秘密】
数千年にも及ぶ屈辱の末、ついに綻びが起きる。先代の八十神が儀式に使用され消滅するだった祭具『羽喫鳴鏑』をどうにか残し、今はあなたの手元にある。今回の異常はそれによって引き起こされたものだろう。このまたとない機会を無駄にするわけにはいかない。
あなたはプライズ
祭具『羽喫鳴鏑』を持つ。
【PC1 3 秘密備考】
このプライズに秘密はありません。読みは『はばみなりかぶら』です。
勢納 斎
こんな儀式の夜でなければ、どんなに楽しいものだっただろう。
花丸 かごめ
ずっと、こうしていられたらいいのに。
神楽坂 千歳
月の下、無限と続くかと思われた女の話もやがてやみ、
神楽坂 千歳
しばらく彼女の笑顔を見つめていたが、
勢納 斎
拗ねながら花丸印の兵糧丸をさくさく食べています。
神楽坂 千歳
「……お前がこの儀式に招かれた意味を」
神楽坂 千歳
「俺は、もっと重く受け止めるべきだったな」
花丸 かごめ
「わたしも、何も言わなかったし……」
神楽坂 千歳
「この場に立ったら自らの為すを遂げるが全て」
花丸 かごめ
「なんていうのかなあ、使命感、みたいなのがあるの」
花丸 かごめ
「これを、持ち主の手に渡してあげないといけないって」
花丸 かごめ
「いつきちゃんとも、ちとせくんとも……」
花丸 かごめ
「世界転覆とか、そんなことだって全然考えてないし」
花丸 かごめ
「……ほんとはね、こんなはずじゃなくて」
花丸 かごめ
「二人がわたしと戦えるように、お別れしようと思って来たんだけど……」
神楽坂 千歳
「最初から、かごめにゃあ無理な話だよ」
勢納 斎
「事実がどうあれ、そんな話は聞きたくない」
神楽坂 千歳
「そうなるならそうだろうと思うがね」
勢納 斎
「どちらにしても、勝たねば話は始まらん」
勢納 斎
「勝ちさえすれば、そちらが正しいことになる」
神楽坂 千歳
「いつの世も、歴史を作るは勝者の権利ってな」
勢納 斎
「私は隠忍の男が勝つならそれでいいし、神楽坂千歳が勝つのならそれでいい」
勢納 斎
「これはどちらが強いのか決める儀式だからな」
花丸 かごめ
「全然覚悟が決まってないのって、やっぱりわたしだけ……?」
神楽坂 千歳
「歪められて初めて、より正しい形に近づいた節すらある」
勢納 斎
「ということは、戦力も同じでなければなるまいよ」
勢納 斎
「私は神楽坂千歳に付くぞ。隠忍の男に付く理由がないからな」
神楽坂 千歳
その言葉を、当然のように聞いている。
勢納 斎
「同じ条件にしなければならないと思わないか?」
花丸 かごめ
「そうしてあげたいなあとは、思う……」
神楽坂 千歳
「二人三人四人の動向に世界背負わすってのも無責任な話だろ」
花丸 かごめ
「それはそうだけど、言っちゃう~?」
神楽坂 千歳
「振られた側にも相応の権利がある、って話だよ」
勢納 斎
勝手に世界を背負わせる話について、文句が永遠に言えるので黙っている。
神楽坂 千歳
「……だから、俺は俺のしたいようにするし」
神楽坂 千歳
「同じ次元で応えてくれることを、勝手に期待してる」
花丸 かごめ
「ちとせくんはこういう人だから……」
神楽坂 千歳
「覆させたくないと思うし、守りたいとも思ってる」
勢納 斎
「そりゃあ、お前みたいな奴は世界を嫌う理由がなかろうさ」
神楽坂 千歳
「嫌いになられたら困るだろうからなぁ」
神楽坂 千歳
「俺の周囲の人間にそのケはなかったけど」
神楽坂 千歳
「うまく育てられましたよ、まったく」
神楽坂 千歳
「お陰様で勢納斎には面倒をかけている」
花丸 かごめ
二人のやりとりを聞きながら、にこにこしている。
勢納 斎
「できるだけ、後悔が少ないことをしよう」
勢納 斎
「多分、全然後悔しないのは難しいと思うけど」
勢納 斎
「私はかごめが一番大好きだって、ことだけ」
花丸 かごめ
「わたしも、いつきちゃんがだいすき」
GM
世界は回る。月が傾くことに竿を差すことはできない。
GM
神楽の果てに昇る日は誰がためのものかを、定めることはできる。
GM
その神楽に何を想い、何をするのかを決めるのは、四人の忍以外にはない。
勢納 斎
初めてかごめに会ったのは、何歳の頃だっただろう。
勢納 斎
色々なことを怖がる私を
かごめはあちこちに連れ出して
勢納 斎
それどころか、少しずつできることが増えて
勢納 斎
この手は、伸ばせばどこにだって届くのだと分かった。