メインフェイズ サイクル3

メインフェイズ サイクル3 勢納 斎

勢納 斎
月を見上げて、その光が照らす鬱蒼とした森を見る。
勢納 斎
「そういえば、かごめ」
勢納 斎
「あの男はどこにいたんだ?」
花丸 かごめ
「えーと……」
勢納 斎
「儀式が始まってから、あいつを探しているか、茶を飲んでいるかのどちらかしかやっていない気がする」
花丸 かごめ
「最後に話した時は、草原にいたよ」
花丸 かごめ
多分あっちの方、と指差す。
神楽坂 千歳
「森ばっかり探してたのが悪かったかぁ」
勢納 斎
「草原も軽く探しはしたが、見晴らしがいいからな……」
神楽坂 千歳
「隠れられる場所がないと思って油断したな」
花丸 かごめ
「でも今はどこだろうな……」
勢納 斎
「月見がてら、行くだけ行ってみるか」
神楽坂 千歳
「会いたいのか?」
勢納 斎
「待っているのにも飽きてきた」
神楽坂 千歳
「それもそうか」
勢納 斎
「かごめが気に入ったという男を、ちゃんと見ていないしな」
神楽坂 千歳
「まあ」膝を上げる。
花丸 かごめ
「……あのね、変な意味じゃないからね」
神楽坂 千歳
「全員で会いに行っちゃいけねえ道理はないわな」
勢納 斎
「変な意味じゃないのか?」
花丸 かごめ
「ちがうよう……」
勢納 斎
「ならどんな意味だ」
神楽坂 千歳
神器を腕に立ち上がり、腱を伸ばしている。
花丸 かごめ
「いい人だったからね、お友達としてね……」
勢納 斎
「お友達?本当か?」
花丸 かごめ
「ほんとだよ~」
勢納 斎
「大事な話だぞ。正直に言え」
勢納 斎
「私が殺そうとしている男は、かごめがお友達として好きな男なのか? それとも男として好きな男なのか?」
勢納 斎
ぐいぐい
花丸 かごめ
あわわ……
神楽坂 千歳
「大方」
神楽坂 千歳
「まだ答えが出てないんじゃねえか」
花丸 かごめ
「……わたし、男の子すきになったことないもん」
神楽坂 千歳
ちらとかごめを見た。
勢納 斎
「そうか……」
勢納 斎
なら、まだ分からないのも無理はないな……。
花丸 かごめ
「そうだよ」
花丸 かごめ
「だからお友達!」
神楽坂 千歳
「変わったら言えよな」
勢納 斎
「そうだ、言え」
花丸 かごめ
「なんなのも~」
勢納 斎
女の子を好きになったことはある、とは夢にも思っていない。
神楽坂 千歳
「ははは」
勢納 斎
かごめは初恋もまだなんだな……
勢納 斎
立ち上がり、草原の方へ歩く。
花丸 かごめ
そんな勘違いも生みつつ……。
勢納 斎
月が3人を照らし、影法師が伸びる。
神楽坂 千歳
異界の月に見守られながら、三人で歩く。
勢納 斎
「……隠忍の男の方はどうなんだ」
勢納 斎
「あいつはかごめに気があるのか?」
花丸 かごめ
「ええっ!?」
花丸 かごめ
「ないない、ないと思うよ~」
花丸 かごめ
ぶんぶんと首を振る。
勢納 斎
「ないのに心配したのか」
勢納 斎
「そのつもりがないのに気を使って……かごめを惑わせて……」
神楽坂 千歳
「おいおい」
神楽坂 千歳
「伝聞でキレるなよ」
神楽坂 千歳
「これから会いに行くんだから本人に確認しろ」
花丸 かごめ
「い、いるかなあ……」
勢納 斎
「伝聞以外に情報がないのだから仕方ないだろう」
勢納 斎
「そもそも話をしてくれるのか?」
神楽坂 千歳
「先入観固めすぎると後がキツくねえ?」
勢納 斎
「したところで、分かるか?あの言葉が」
神楽坂 千歳
「話してくれなかったらそれにキレたらいいだろ」
神楽坂 千歳
「言葉に関してはともかくとして……」
神楽坂 千歳
ともかくとした。
勢納 斎
「ともかくとするな」
神楽坂 千歳
「つっても、少なくとも」
花丸 かごめ
「……わたしとお話した時は、伝わるようにしてくれたよ」
神楽坂 千歳
「だろ?」
神楽坂 千歳
「え、できるのか?」
神楽坂 千歳
軽く同意してからそうなんだ、になっている。
花丸 かごめ
「まじない、って」
勢納 斎
「なら、あれはわざと分からないようにしてるのか!?」
勢納 斎
「気があるだろ!!やっぱり!!」
花丸 かごめ
「そんなことないって……」
神楽坂 千歳
「いや、まあ……」
勢納 斎
「かごめにだけ特別扱いをして!!」
神楽坂 千歳
「伝えるようにするの、結構大変なんじゃないか?」
神楽坂 千歳
「かごめを特別扱いしてるのはそうかもしれんが……」
勢納 斎
「大変なことを、わざわざかごめにだけ!!」
勢納 斎
「惚れてるだろうが!!」
花丸 かごめ
あわわ……
神楽坂 千歳
「推測だからな!?」
勢納 斎
「状況証拠はぼちぼち揃っている」
神楽坂 千歳
「それはそうだけどな……」
花丸 かごめ
「そうかなあ……」
勢納 斎
「大体、かごめはそういうのに鈍いだろう」
神楽坂 千歳
そこは結構他人のことを言えない自覚があるのでやや黙った。
花丸 かごめ
「え~、そんなことないと思うよ……」
神楽坂 千歳
「まあ、今回に関しては鈍いんだろ」
勢納 斎
「自分では自覚がないかもしれないが、かごめは結構モテるぞ」
神楽坂 千歳
「そうなのか?」
花丸 かごめ
「ええ……?」
勢納 斎
「うちの使用人の斎藤と加藤もかごめのことを好いている」
神楽坂 千歳
「へえー」
花丸 かごめ
「うそぉ!?」
神楽坂 千歳
「あ、でも」
神楽坂 千歳
「うちの道場でも結構人気あるな、かごめ」
勢納 斎
「そら見ろ」
花丸 かごめ
「えっえっ」
神楽坂 千歳
「男所帯だし」
花丸 かごめ
「やだ、やめてよ」
花丸 かごめ
「からかって~……」
勢納 斎
「かごめは男ウケがいいんだ」
花丸 かごめ
「男の子はわたしみたいな……好きじゃないでしょ……」
神楽坂 千歳
「そういえば、かごめが来るって聞いたら喜ぶやつは結構いる」
神楽坂 千歳
「ような気がする」
花丸 かごめ
でぶだから……と小さくつぶやく。
神楽坂 千歳
あまり関心を抱いていなかったから曖昧な記憶だが……。
勢納 斎
下劣な噂話をされていたことは黙っておく。その後ボコボコにしたし。
花丸 かごめ
いっこも知らない……
神楽坂 千歳
あいつらもオクテってやつなのかな~。
勢納 斎
草を踏む音が辺りに響く。
勢納 斎
隠忍の男がかごめをどう思っているかは分からないが
勢納 斎
かごめの運命を変えるのなら、それなりのものを持っていて欲しいと思う。
勢納 斎
それと同時に、何の感情も抱くな、と思う。
勢納 斎
隠忍の男も、かごめも、一時の気の迷い以上のものを持たないで欲しい。
勢納 斎
隠忍の男、お前の気持ちはどこにある?
勢納 斎
アガタの居所を情報判定します。判定どうしよっかな。好き勝手言ってたので流言の術でいいでしょうか。
神楽坂 千歳
好き勝手言ってたな……。
神楽坂 千歳
感情修正を入れます。
花丸 かごめ
言ってた……
花丸 かごめ
感情修正します……
勢納 斎
やった~
GM
判定どうぞ
勢納 斎
2D6+2>=5 (判定:流言の術) (2D6+2>=5) > 7[3,4]+2 > 9 > 成功
GM
では居所を得ました
勢納 斎
月は何も答えない。
他人の心は分からない。
勢納 斎
それでも伝え聞いた話と、今の状況から分かることはある。
勢納 斎
なにより
勢納 斎
今宵、運命が動くことだけは分かっている。

メインフェイズ サイクル3 花丸 かごめ

花丸 かごめ
木々を分け入って分け入って、
花丸 かごめ
やがて、視界が開ける。
神楽坂 千歳
遮るもののない夜空に、真円の月。
花丸 かごめ
青く暗い月の光の下、さわさわと草が波をつくっている。
花丸 かごめ
果たしてそこに、探し求めた影はなかった。
神楽坂 千歳
「…………」
花丸 かごめ
「……やっぱいないかあ」
勢納 斎
「それはそうか」
神楽坂 千歳
月を見上げる。
神楽坂 千歳
「まだ早い、か」
神楽坂 千歳
「或いは」
神楽坂 千歳
ちらりとかごめを見る。
花丸 かごめ
「……」
神楽坂 千歳
「ま」
神楽坂 千歳
「いい加減、そろそろ潮時かね」
神楽坂 千歳
そうだろ、とかごめに向き直った。
花丸 かごめ
「…………うん」
花丸 かごめ
「そうだね……」
勢納 斎
月光が降り注ぐ草原を見ている。草の一本一本が、光を照り返すさまを。それが揺れるところを。
花丸 かごめ
「あんまり一緒にいると、離れるのがもっと嫌になっちゃうから……」
勢納 斎
草が揺れると、斎の長い黒髪も一緒に揺れた。
神楽坂 千歳
「それはまあまあ今更だろうけどな」
花丸 かごめ
「そうだけど~」
勢納 斎
別れたくない、という話ならば、一晩でも続けられる。
神楽坂 千歳
「悪かったよ」
神楽坂 千歳
「俺らもまあ、離れ難かったわけだ」
神楽坂 千歳
「でも、もうそろそろだろ」
勢納 斎
それを言ってかごめの心を得られるのならば、一生だって続けられる。
神楽坂 千歳
斎を横目に見る。
花丸 かごめ
「……わたしだって、鞍馬の女だもん」
勢納 斎
しかし、そういう話ではない。
花丸 かごめ
「戦うって決めたんだから、がんばりますとも!」
神楽坂 千歳
「いやあ」
神楽坂 千歳
「俺は実はけっこう楽しみだよ」
神楽坂 千歳
「かごめとやり合うの」
花丸 かごめ
「え~」
花丸 かごめ
「わたしはいっぱい悩んだのに……」
神楽坂 千歳
「だから」
神楽坂 千歳
「気兼ねすんな」
神楽坂 千歳
「早く行け、かごめ」
神楽坂 千歳
「名残惜しくなるばっかりだろ」
神楽坂 千歳
「話続けてても」
花丸 かごめ
「……うん」
花丸 かごめ
千歳に頷いて、それから斎に向き合う。
花丸 かごめ
「いつきちゃん」
勢納 斎
「ん……」
花丸 かごめ
「わたし、いつきちゃんのこと全然分かってなかったんだなって、分かったの」
勢納 斎
「言ってなかったからな」
花丸 かごめ
「だから……帰ったら、もっといっぱいお話しようね」
花丸 かごめ
「いつきちゃんのこと、もっと知りたいの」
勢納 斎
「…………」
勢納 斎
「そう、だな」
花丸 かごめ
斎の秘密を調査します。特技は対人術。
花丸 かごめ
あなたと向き合いたい気持ち。
勢納 斎
「私は、怖いよ」
勢納 斎
「私のことを、かごめに知られるのが」
GM
修正はありますか?
勢納 斎
どうしようかな
勢納 斎
怖いのでがんばってください
花丸 かごめ
がんばります
GM
では判定をどうぞ。
花丸 かごめ
2D6>=5 (判定:対人術) (2D6>=5) > 5[1,4] > 5 > 成功
GM
貼りました。
勢納 斎
「あのな、かごめ」
勢納 斎
「『姫君』と、いうのは──」
花丸 かごめ
そのまま斎の秘密を千歳に譲渡します。
神楽坂 千歳
ありがとうございます。受け取ります。
【PC2 秘密】
あなたはその身に神器を宿して生まれてきた。PC1はあなたの神器の封印を解き、そしてそれはすなわちあなたを娶る定めにある者だ。儀式『神楽八十神追』が国守の儀式であると共に、婚姻の儀式だと教わってきた。しきたりによりPC1を一目見ることさえ許されていなかったが、その宿命を受け入れている。もとよりそれを受け入れなければ、封印されたままの神器があなたを殺すことを知っているからだ。

あなたはプライズ『神器』を持つ。
クライマックスフェイズ開始時まで神器が封印されていた場合、あなたは即座に死亡し、神器は消滅する。
あなたの本当の使命は『神器の封印を解いてもらうこと』だ。
花丸 かごめ
ぱち、と目を瞬かせて、斎の話を聞く。
神楽坂 千歳
斎の側でその話を聞いていた。
花丸 かごめ
聞きながらあわあわと千歳と斎の顔を見比べ……
花丸 かごめ
「……それも全然知らなかった!」
神楽坂 千歳
「俺も聞いてないな……」
勢納 斎
「……言えないだろ、かごめには」
勢納 斎
「お前も聞いてないのか?」
花丸 かごめ
「ちとせくんも知らなかったんだ……」
神楽坂 千歳
頷く。
勢納 斎
「鞍馬はちゃんとしろ」
神楽坂 千歳
「返す言葉もない」
花丸 かごめ
「そんな」
花丸 かごめ
「そうだったんだ……」
花丸 かごめ
「いつきちゃん、そんなのやだよね……」
花丸 かごめ
「……あっ、ちとせくんがダメってわけじゃなくてね?」
神楽坂 千歳
「あー、いや」
勢納 斎
「嫌だ………」
神楽坂 千歳
「まあ、それはそれで別に……」
花丸 かごめ
「だよねぇ……」
神楽坂 千歳
開きかけた口を閉ざして、斎を見る。
勢納 斎
「……だから」
勢納 斎
「かごめは、あの男の所に行った方が、いいんだ」
花丸 かごめ
「…………」
勢納 斎
「封印、解かれていないんだろう?」
花丸 かごめ
「うん……」
神楽坂 千歳
「そういう事情じゃ」
神楽坂 千歳
「俺が抜くわけにもいかないしな」
勢納 斎
僅かに感じる、かごめの体の奥に眠る力。
神楽坂 千歳
最初からない選択肢ではあったが。
勢納 斎
「どうせもう羽喫鳴鏑はないだろう」
神楽坂 千歳
「ああ、そっか」
神楽坂 千歳
「あれが要るか」
花丸 かごめ
「そうみたい……」
勢納 斎
「お前が2つ持っていれば1つ奪って私が使ったんだがな」
神楽坂 千歳
「入り組んだ人間関係になるな……」
花丸 かごめ
「行かないと、かぁ……」
花丸 かごめ
ううん、と首を振る。
花丸 かごめ
「行くって、決めたんだもん」
神楽坂 千歳
「そうだ、行け行け」
神楽坂 千歳
「いい加減ハラも決まったろ」
勢納 斎
「かごめが死ぬのは、私も困る」
花丸 かごめ
「うん……」
勢納 斎
「……幸せになってくれ」
勢納 斎
「いや、違うな」
勢納 斎
困った顔で、かごめを見る。
勢納 斎
「なんて言ったらいいのか分からない」
花丸 かごめ
「……うん」
花丸 かごめ
「わたしも」
神楽坂 千歳
「…………」
花丸 かごめ
「あ……でもこれだけは言えるかな」
花丸 かごめ
「わたしね、全力でやるよ」
花丸 かごめ
「いつきちゃんもちとせくんも、わたしが手を抜いたらいやでしょ?」
神楽坂 千歳
「……ああ」
神楽坂 千歳
「そこはそりゃあ、当たり前の話だ」
花丸 かごめ
「でしょ!」
勢納 斎
「……そうだな」
勢納 斎
「そうでなければ、この儀式の意味がない」
勢納 斎
「そうでなければ……私が生まれた意味がない」
花丸 かごめ
「……そんでね」
花丸 かごめ
斎の手を引いて、耳打ちする。
花丸 かごめ
「わたし、世界をめちゃくちゃにする気はないけど」
花丸 かごめ
「お家くらいなら、そうしちゃってもいいかも」
勢納 斎
ぱちぱち、とまばたき。
神楽坂 千歳
「?」
花丸 かごめ
「……だから、勝ってね!」
勢納 斎
「かごめ……」
勢納 斎
「……ふん」
勢納 斎
「当然だ。私を誰だと思っている」
花丸 かごめ
「強くてかっこいい、いつきちゃん!」
勢納 斎
「そういう事だ」
勢納 斎
「……でも、うん」
勢納 斎
「お互いに、後悔が少ないことをやろう」
花丸 かごめ
「うん」
勢納 斎
かごめの手を両手で握り、ゆるく振った。
勢納 斎
「またな、かごめ」
花丸 かごめ
その手を握り返して、
花丸 かごめ
「またね、いつきちゃん」
花丸 かごめ
離す。
勢納 斎
少しだけ名残惜しそうに、手はそのままの形を保って。
勢納 斎
それでも、2人の距離は離れていった。
花丸 かごめ
大切なおさななじみ二人を置いて、森の中へと姿を消す。
花丸 かごめ
甘いかおりだけを残して。
神楽坂 千歳
月の下に、その背中を見つめていた。
GM
堅洲の里――もとい、堅洲の国。
GM
黄泉と重ねられる地の底の世界。
GM
落ちた葉、下生えを踏み分け、奥へ進む。
GM
慣れ親しんだ仲間を背に。

メインフェイズ サイクル3 神楽坂 千歳

神楽坂 千歳
草原。
神楽坂 千歳
緩やかに吹く夜風に揺れる草木のささやき。
神楽坂 千歳
斎の隣に立っていた。
神楽坂 千歳
名残惜しげに形を保たれた、その手を取ることはない。
神楽坂 千歳
触れ合うことはなく、寄り添うこともしない。
神楽坂 千歳
ただ隣にいた。
勢納 斎
かごめが去っていった方向を、じっと見ている。
勢納 斎
「ここにいても仕方がない。戻るか」
神楽坂 千歳
「いや」
神楽坂 千歳
「一旦は、ここが丁度いいな」
神楽坂 千歳
おもむろに、神器を月に翳した。
神楽坂 千歳
『生大刀・生弓矢』。今は太刀のかたちをしている。
神楽坂 千歳
月光を受けて蒼く光るその刀身を、再び瞳に映している。
神楽坂 千歳
けれどそれを覗き込むことはせず、月の下で構えを取る。
神楽坂 千歳
「俺さ」
神楽坂 千歳
「母親が、勢納の家から来てるだろ?」
勢納 斎
「そうだな」
神楽坂 千歳
「上の思惑だのなんだのは知らないっつーか、興味もなかったけど」
神楽坂 千歳
「夫婦仲よかったらしいし、結構うちでは存在感あってさ」
神楽坂 千歳
千歳を産み落として逝去した母のことを、父はずっと愛していた。
神楽坂 千歳
「だから、まあ、俺も覚えたんだよ」
神楽坂 千歳
「比良坂流の、演舞」
勢納 斎
早逝した千歳の母親のことは、話にしか聞いていない。
勢納 斎
鞍馬の家でもやっていけるような、そういう女だったと聞いている。
神楽坂 千歳
静かに刀の切っ先が動く。
勢納 斎
見覚えのある型。
神楽坂 千歳
繰り返し見た映像をなぞるように、
神楽坂 千歳
自分を愛していた母の足跡を、その身に刻むように。
神楽坂 千歳
舞の中に、神器『生大刀・生弓矢』へと問いかける。
神楽坂 千歳
情報判定。プライズ『生大刀・生弓矢』の秘密を抜きます。
勢納 斎
仕方ないから感情修正するか
神楽坂 千歳
使用特技は遊芸。
神楽坂 千歳
助かります。
GM
判定をどうぞ。
神楽坂 千歳
2D6+1>=5 (判定:遊芸) (2D6+1>=5) > 7[2,5]+1 > 8 > 成功
【秘密:『生大刀』】千歳と斎とアガタの元に渡る。
この後全体に公開されないため、リプレイではこの場で公開する。

このプライズ『神器』の本当の名前は神器『生大刀』だ。

このプライズは封印されているかぎり、戦果で奪うことはできない。

このプライズの封印が解かれたとき、このプライズが封印されていた者の使命は封印を解いた者の使命に書き換えられる。その際、このプライズが封印されていた者は、所持するすべての感情属性を再度決定し直す。
このプライズを所持(封印されている状態を除く)しているものは、クライマックスフェイズ、毎ラウンドに一度、神通丸として使用できる。(使用してもこのプライズはなくならない)
GM
そのときが来た、とでもいうかのように。その刀はあなたの手によく馴染んだ。
GM
並々ならぬ活力が刀身より出でて、あなたに伝播する。
神楽坂 千歳
月光に刀身がひらめく。
神楽坂 千歳
柄を握りしめたその感触が、やけにしっくりと来る。
神楽坂 千歳
演舞の下に。
神楽坂 千歳
手にした力の正体を知る。
GM
幾度となく繰り返された、持つべき者が持つべき刀。
勢納 斎
勢納の家が、神に奉納する演舞。
勢納 斎
己の血脈が、目の前の男にも繋がっていることを思う。
神楽坂 千歳
その繋がりが、確かに神器の力を引き出した。
神楽坂 千歳
見守る斎にもそのことがわかる。
勢納 斎
国を造りし武神として、国に仇をなす八十神を討つ男。
勢納 斎
己に神器が宿っていたように、この男も力を持つ者だ。
神楽坂 千歳
力持つ者として期待され、力持つ者として育てられ、力持つ者として役目を背負う。
勢納 斎
そういう男と、そういう女を何人もかけ合わせた結果がこの自分だ。
勢納 斎
それをまた求められている。
神楽坂 千歳
求められた者たちが求められるがまま、繰り返されてきたお決まりの儀。
神楽坂 千歳
しかし、それが今は歪んでいる。
神楽坂 千歳
あってはならぬ祭具がまつろわぬ者の手に渡り、有り得べからざる者が招聘され、
神楽坂 千歳
そして今、神器が授けられようとしている。
神楽坂 千歳
世は並べてこともなし、など、
神楽坂 千歳
よくまあ気楽に言ったものだ。
神楽坂 千歳
歪められた儀式。常ならむ緊張を孕む異界の空気。
神楽坂 千歳
その冴え冴えと輝く月光の下、
神楽坂 千歳
「俺さ」
勢納 斎
「ああ」
神楽坂 千歳
声は常の通りに軽やかに、
神楽坂 千歳
「好きなのはみたらし団子かな」
神楽坂 千歳
「そんで、冷えた緑茶が添えられてると尚良い」
神楽坂 千歳
語る内容までもひどく暢気に。
勢納 斎
「は?」
神楽坂 千歳
「そんで、えーと、あれだ」
神楽坂 千歳
「ウチ、でかい庭あってさ。池もあんだよ、鯉とか飼ってて」
勢納 斎
「何の話だ」
神楽坂 千歳
「母上が好きだったらしくてな」
勢納 斎
「…………」
神楽坂 千歳
「掃除した後にそれ眺めながら食うのが一番最高!」
神楽坂 千歳
勝手にまくし立てて、勝手に笑う。
勢納 斎
「だから、なんの話だ……」
神楽坂 千歳
斎に歩み寄る。
神楽坂 千歳
「聞かせてくれよ」
神楽坂 千歳
「お前の好きなものも」
神楽坂 千歳
「背中預けて戦うんだ、知っといて損はないだろ?」
勢納 斎
歩み寄った千歳に、距離を近づけた男に、少しだけたじろぎそうになり。
勢納 斎
「……プリン」
神楽坂 千歳
「プリン」
勢納 斎
「苦いカラメルの……、硬めのやつがいい」
神楽坂 千歳
斎の顔を見ながら聞いている。
勢納 斎
「母がたまに作ってくれるんだ。巫女として忙しい人だから、あまり多い訳ではないが」
神楽坂 千歳
「へえー」
神楽坂 千歳
「いいなあ!」
神楽坂 千歳
率直な感嘆の声。
勢納 斎
「……今、思い出した」
勢納 斎
「お前の母も、硬いプリンが好きだったと聞いたよ」
神楽坂 千歳
ぱち、と瞬き。
神楽坂 千歳
「……それは、初めて聞いたな」
神楽坂 千歳
「知れて良かった」
勢納 斎
「母に聞けば、他にもお前の母の話を聞けるだろう」
勢納 斎
「……あとは、そうだな。趣味らしい趣味はあまりないかもしれない」
神楽坂 千歳
ひとつひとつに頷いている。
勢納 斎
「巫女の修行か、武術の修行か、みたいな生活だったからな」
神楽坂 千歳
「まあなー」
神楽坂 千歳
「そうはなるよな」
神楽坂 千歳
「俺もまあ、池の掃除くらいだ」
神楽坂 千歳
「趣味」
勢納 斎
「なるな。腹が立つ」
勢納 斎
「若者の趣味としては特殊すぎるだろ」
神楽坂 千歳
「あるだけ恵まれてると思ってくれよ」
勢納 斎
「それもそうか」
神楽坂 千歳
だろ、と笑う。
神楽坂 千歳
「まあ」
神楽坂 千歳
「お前の母君に訊くなら、母上のことよりも」
神楽坂 千歳
「お前のことの方が楽しみだな」
勢納 斎
「私のことを聞くなら、私に聞けばいいだろう」
神楽坂 千歳
「色んな視点があるだろ?」
勢納 斎
「そんなものか?」
神楽坂 千歳
「そんなものだよ」
勢納 斎
「まぁ、そうだな」
勢納 斎
「お前から聞くお前の話と、お前の家の者から聞くお前の話は違いそうだ」
勢納 斎
「多少は悪い評判も聞けるだろう」
神楽坂 千歳
「えー……」
神楽坂 千歳
「まあ止められることでもねぇけど……」
神楽坂 千歳
結構恥ずいんだよな、小せえころから見られてきたし、とかぶつくさ言ってる。
神楽坂 千歳
俺のおしめ替えてたような奴もいるからな……
勢納 斎
「実はな、お前の噂はそれなりに届いていた」
神楽坂 千歳
「あー」
神楽坂 千歳
「さすがにそうか?」
勢納 斎
「聞いてもいないのに、べらべら喋ってくれる親族が掃いて捨てる程いたからな」
神楽坂 千歳
「はっはは」
神楽坂 千歳
「苦労、絶えなそ~」
勢納 斎
「苦労、苦労か」
勢納 斎
「そうだな……、あれは、苦労だったんだな」
勢納 斎
「生まれた時から小煩い奴等に囲まれていたから、苦労だと気付けなかった」
神楽坂 千歳
「苦労だろ」
神楽坂 千歳
「俺はまあ、周囲がどいつもこいつも鞍馬の男っつか……」
勢納 斎
「だろうな」
勢納 斎
「お前も鞍馬の男だし、周囲も鞍馬の男だらけだからな」
神楽坂 千歳
「どいつもこいつも話が早いっつーか、回りくどいのが嫌いっつか……」
勢納 斎
「だろうな」二度目。
神楽坂 千歳
「あ、でも」
神楽坂 千歳
「俺が知ってる中でも」
神楽坂 千歳
「お前はとびきり話が早くて気持ちがいい」
神楽坂 千歳
「お前で良かったよ。俺が背中を預けて、肩を並べて戦う相手が」
勢納 斎
「……そうなのか?」
勢納 斎
「そんな事を言われたのは、初めてだな」
神楽坂 千歳
「助かるよ、俺は」
神楽坂 千歳
「苛ついたら素直に出すし、なんなら手も出るし」
神楽坂 千歳
「俺はまあ無神経だから、そんくらいしてもらった方がいいんだわ」
勢納 斎
「確かに、耐える女がお前の所に嫁いだら気苦労が絶えなさそうだ」
神楽坂 千歳
「考えるだに恐ろしいな……」
神楽坂 千歳
「いや、努力はするけど……」
勢納 斎
「察してもらえないと泣かれたりするんだぞ」
勢納 斎
「大変だろうが……」
神楽坂 千歳
「泣かせたくはねえな……」
勢納 斎
千歳の顔を見る。八千矛となるべく生まれ、八千矛となるべく育てられた男。国を造りし武神として、のびのび育った男。
神楽坂 千歳
『八千矛』たる男。
あなたから授かった神器を手に持つ男が、
確かにその役目をまっとうせんとすると男が、
今は何の変哲もない青年のような顔でそこにいる。
勢納 斎
いくら焦がれても手の届かないものを、生まれた時から持っている男。
勢納 斎
自分が欲した全てを手にしている男。自分の命すらも、この男の手中だった。
勢納 斎
しかし、その実。みたらし団子と冷えた茶が好きで。
勢納 斎
母が大事にしていた池を掃除するくらいしか、趣味のない男。
勢納 斎
親族達は口々に八千矛の噂をした。千歳の忍としての能力、人格、容姿、立ち振舞、それらがいかに優れているかを話した。
勢納 斎
それは祈りに似ていた。我々の世界を担う男は、これほどまでに素晴らしいのだと。
勢納 斎
しかし、どうして。
勢納 斎
案外に普通の男じゃないか。
神楽坂 千歳
普通の男があなたを振り返る。
神楽坂 千歳
「なあ」
勢納 斎
「なんだ」
神楽坂 千歳
「これから、斎って呼ぶ」
神楽坂 千歳
許可を求めるでもない、堂々たる宣言。
勢納 斎
「は?」
勢納 斎
「勝手に呼び捨てにするな」
神楽坂 千歳
「えー」
神楽坂 千歳
「フルネームだって呼び捨てみたいなもんだろ」
勢納 斎
「フルネームと呼び捨てだと、心の持ちようが違うだろうが」
神楽坂 千歳
「そうかもだけど」
神楽坂 千歳
「じゃあお前は俺のことなんて呼ぶんだよ」
勢納 斎
「…………」
勢納 斎
嫌そうな顔をしている。
神楽坂 千歳
「ねえだろ」
神楽坂 千歳
「さん、とか、様、とか」
神楽坂 千歳
「俺は嫌だぞ」
勢納 斎
「ない」
神楽坂 千歳
「な」
神楽坂 千歳
頷いた。
勢納 斎
八千矛、とは呼びたくない。
勢納 斎
それは自分が姫君と呼ばれるようなものであるし、劣等感を刺激される。
勢納 斎
「……くそ」
神楽坂 千歳
一方的な提案をした男は、あなたの答えを待っている。
勢納 斎
「分かった。好きに呼べ」
神楽坂 千歳
「っしゃ」
神楽坂 千歳
「ま、もとからそのつもりだけどな」
神楽坂 千歳
「傲慢な方がいいんだろ?」
勢納 斎
「ふん、腹は立つが……、分かって来たじゃないか」
勢納 斎
「だがな、油断しないことだ」
勢納 斎
「私はお前の背中を守らない」
勢納 斎
「背後から討って八千矛の座を奪おうとするかもしれない」
神楽坂 千歳
「上等!」
神楽坂 千歳
「お前がその気なら、俺はいつでも受けて立つさ」
神楽坂 千歳
「見合わねえだろ。それくらいじゃないと」
神楽坂 千歳
刀を軽く掲げてみせる。
神楽坂 千歳
「この神器にさ」
勢納 斎
「ああ、そうだな。全くもってそうだ」
勢納 斎
「私も、お前の話が早くて助かるよ」
勢納 斎
「……本当に」
勢納 斎
「お前が……、千歳が八千矛でよかった」
神楽坂 千歳
「ああ」
神楽坂 千歳
「俺も、斎に認められる俺で、よかった」
GM
八千矛という配役がある。姫君という配役がある。
GM
宿命の下にここに招かれた二人は、しかし生きる人間だ。
GM
神楽坂千歳という男がいる。勢納斎という女がいる。ここに。

メインフェイズ サイクル3 アガタ

アガタ
2d6 (2D6) > 8[2,6] > 8
GM
8:草原。青く暗い満月が空にあり、風が吹けば草がさざめく。
花丸 かごめ
斎と千歳と別れて、ひとり。
花丸 かごめ
月の光を遮る森の中を歩いている。
花丸 かごめ
静かだ。
アガタ
草原へ続く獣道を踏みしめ、その背を追う足音。
アガタ
あなたに近づく気配。
アガタ
野山で獣に会えば、そのような気配をしているのだろう。
花丸 かごめ
足を止める。
花丸 かごめ
「……おむかえに来てくれたの?」
花丸 かごめ
振り向いて、微笑む。
アガタ
歩み寄る。
アガタ
視線を合わせながら、ゆっくりと“あなた”を追い越して森を背に立つ。
花丸 かごめ
見上げる。
アガタ
未だ後ろに草原の見える途。
アガタ
ここより先は森。
アガタ
その境界にいる。
花丸 かごめ
草原を背に、立っている。
アガタ
「森に」
アガタ
「来る」
アガタ
「見えた」
花丸 かごめ
「ありがとう」
花丸 かごめ
「……ちゃんと、決めてきたよ」
花丸 かごめ
「わたしが、どうしたいか」
花丸 かごめ
「いっぱい手伝ってもらっちゃったけど……」
アガタ
「……」
アガタ
わは、まだだんず『実のところ、私はまだ決心がついていないのです』
アガタ
わんつか、あさぐべ『少し、歩きませんか』
アガタ
森を見る。
花丸 かごめ
つられるように、視線の先を目で追って。
花丸 かごめ
「うん」
花丸 かごめ
「まだ、もう少し時間あるもんね」
アガタ
先立って歩く。
アガタ
影すら落ちない暗い森。
花丸 かごめ
そこに溶け込むような影法師を追いながら、森の奥へ奥へと。
アガタ
……あげほげだな『なんとも至れり尽くせりといいましょうか』
花丸 かごめ
「?」
アガタ
こえばなさつかうべ『この神器をあなたに使えば』
アガタ
したっきゃ、そうなるべ『あなたは“そう”なる』
花丸 かごめ
「……そうだね」
アガタ
……おっかねべさ『恐ろしいことです』
花丸 かごめ
「わたしも」
花丸 かごめ
「実は、こわい」
花丸 かごめ
「……アガタさんは」
花丸 かごめ
「なんのために戦うの?」
アガタ
わはわんどのために『私は私たちのために』
アガタ
幾数百年の呪い。
アガタ
一族の悲願。
花丸 かごめ
「……そうだよね」
花丸 かごめ
長く長く、この儀式は続けられてきたのだと聞いている。
アガタ
そったこどのために『そのようなことのために』
アガタ
……めやぐしたなぁ『ご迷惑をおかけしましたね』
花丸 かごめ
かごめが生まれ育った太平の世の礎として、彼の一族の屍が積み上げられてきた。
花丸 かごめ
「……アガタさんが悪いわけじゃないよ」
花丸 かごめ
「アガタさんは悪くない」
アガタ
先代の残した神器。
あまりに折り重なった屍。
アガタ
「……今の世界が、すき」
アガタ
「壊したいとか、変えたいとか」
アガタ
「そんな風には思わない……」
アガタ
名前をなぞったように、そのまま。
あの時の言葉をなぞる。
花丸 かごめ
「……うん」
花丸 かごめ
「よく考えたら、ひどいこと言っちゃったね……」
アガタ
……なはな『あなたは』、」
アガタ
わどふとづなんだじゃ『私と同じなのです』
花丸 かごめ
「……同じ?」
アガタ
……これば使えば『この神器を使えば』
アガタ
わはねぐなる『私は私ではなくなる』
花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
「……わたしも」
花丸 かごめ
「今のわたしじゃ、なくなっちゃう」
花丸 かごめ
「ん、だね……」
アガタ
神、という字自体。
字、というもの自体。
アガタ
今の世を生きる者たちが作ったもの。
アガタ
遥か昔何へ祈っていたか、何を大事にしていたのか。
アガタ
失われた世界へ、つぎはぎで拵えられた望郷が今の男を作っている。
アガタ
……ならね、うぢさ死ぬのも『そうならないうちに死んでしまうのも』
アガタ
なぐねべさ『選択としてなくはなかったでしょう?』
花丸 かごめ
「……そうだねえ」
花丸 かごめ
「……そうだね、それも、うん」
花丸 かごめ
「ちょっとだけ、思った」
花丸 かごめ
「……でも、ね」
花丸 かごめ
「それも、こわいでしょう?」
花丸 かごめ
えへ……と恥ずかしそうに笑う。
アガタ
「……」
アガタ
この神器を使えば、自分は自分である意味さえ失う。
アガタ
アガタはアガタではなくなり、ただの配役に溶けて消える。
アガタ
先代が命がけで残した神器ですら。
もはや失われたものを取り戻すことができない。
アガタ
それは、この儀式がそうであるからではなく──
アガタ
人と人がどうしても交わって生きるからに他ならない。
アガタ
血を薄められて生きてきた。
繋ぎとめていた呪いも、この悲願の前には掻き消える。
アガタ
丹念に、失われた血は消えていく。
アガタ
──絶滅とは、こうして。
アガタ
ささやかな祝の前に、成立する。
花丸 かごめ
「……今の世界がすきだと、言ったけど」
花丸 かごめ
「今はね、少し違うことも思っていて」
花丸 かごめ
「こうしてね、”そう”生まれたからってだけで」
花丸 かごめ
「人生が決められてしまったり、つらい思いをしたり……」
花丸 かごめ
「いやなことを、しなければいけなかったり」
花丸 かごめ
「そういうの、なんだか嫌だな……って思う」
アガタ
「んだな」
花丸 かごめ
「ね……」
アガタ
笑う。
アガタ
ばんくらへでもすべ『番狂わせでもしちゃいましょうか』
花丸 かごめ
こちらもくすりと笑って。
花丸 かごめ
「いいかもって、思っちゃったりして」
アガタ
こいがらどさなっても『これからどのようになるかはわかりませんが』
アガタ
なばまでにかがみでにすはんで『妻のように丁重に扱いますので』
アガタ
よぐしてしでくれればな『どうぞよろしくお願いいたします』
花丸 かごめ
「……!!!???」
花丸 かごめ
ぽ、と顔が赤くなる。
花丸 かごめ
「あ、あの」
花丸 かごめ
「普通でいいのよ!?」
アガタ
頷く。
アガタ
花丸かごめに感情判定。
祭具『羽喫鳴鏑』を使用します。
GM
*祭具『羽喫鳴鏑』の効果により、感情判定を省略し、成功します。
花丸 かごめ
ET 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス)
アガタ
ET 感情表(6) > 狂信(プラス)/殺意(マイナス)
花丸 かごめ
愛情
アガタ
狂信
GM
*神器の封印が解かれ、アガタはこれを獲得。
GM
*封印が解かれたため、花丸かごめの使命をアガタの使命に変更。
GM
*封印が解かれたため、花丸かごめはすべての感情属性を取り直す。(変えなくてもよい)
花丸 かごめ
ET いつきちゃん 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス)
花丸 かごめ
友情にします…………
花丸 かごめ
ET アガタくん 感情表(5) > 憧憬(プラス)/劣等感(マイナス)
花丸 かごめ
愛情のままで……
GM
承知しました。
GM
*花丸かごめに手渡された祭具『羽喫鳴鏑』は消滅。
花丸 かごめ
思い出されるのは……
花丸 かごめ
おさななじみたちに言われたあれやこれや……
花丸 かごめ
ぶんぶんと首を振って、それを頭から追い出す。
花丸 かごめ
「ふつうに……ふつうにね……」
アガタ
頷き、屈む。
ちょうど跪くようなかたち。
アガタ
服の裾を眺める。
花丸 かごめ
ずっと見上げていた顔が、今は視線よりも低くある。
花丸 かごめ
「…………あ」
花丸 かごめ
「そうだ……渡さないとだね……」
花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
「……………………」
アガタ
「……」
花丸 かごめ
「…………だいじょうぶ!」
花丸 かごめ
「決めてきた、もん」
花丸 かごめ
ぐっと拳をにぎって、そう言って。
アガタ
華やかな色の帯を解く。
花丸 かごめ
やわらかな身体を、緊張にかたくしている。
アガタ
ひらひらした布地の裾から手を差し入れ、捲りあげぬように上へ。
アガタ
ひたり、と冷たい手指が薄い布を掻き、腹へ直に触れる。
花丸 かごめ
「…………」
花丸 かごめ
冷たい肌の触れる感触に、少しだけ身体を震わせる。
花丸 かごめ
触れる手の冷たさと対照に、かごめの身体はあたたかい。
アガタ
柔くぬるい肉に指先が沈む。
神器の座する処。
花丸 かごめ
「…………っ、」
アガタ
其処に在る。
花丸 かごめ
あなたのための神器が、そこに。
花丸 かごめ
自分の内側に触れられる感覚に、眉根を寄せる。
アガタ
指先がそれをつかみ、ゆっくりと引き抜く。
花丸 かごめ
「っ、う……」
花丸 かごめ
斎から聞いて覚悟していたほどの痛みは、訪れなかった。
花丸 かごめ
個人差あるのかな……とか、頭の隅でぼんやりと考える。
花丸 かごめ
痛みがあまりない分、引き抜かれる感覚は鮮明に。
花丸 かごめ
自分の肚に満ちていた何かが失われていく。
GM
取り出された神器は、弓と矢の形をしている。
GM
人の腹に収まるにはありあまる大きさ。
GM
名にふさわしく、ただならぬ活力に満ち満ちている。
GM
アガタからかごめへと受け渡された祭具は50年来の役目を果し、かき消える。
GM
神器の封印解放は成された。
アガタ
身の丈を越える弓を最後まで引き抜くと、肩を叩く。
アガタ
終わった、と。
花丸 かごめ
ふー、と長く息をつく。
花丸 かごめ
呼吸を整えながら、ぼんやりと目を開ける。
アガタ
「確かに」
アガタ
「賜りました」
花丸 かごめ
「……うん」
GM
神器の封印解放により、かごめの使命は書き換わる。
GM
八千矛を討ち、世界を変える。
GM
神器を宿し、それに急かされるように封印解放を望む己はもういない。
花丸 かごめ
抜き取られ失ったものの代わりに、自身の内を満たすものがある。
花丸 かごめ
わたしはわたしではなく、あなたはあなたではなく。
花丸 かごめ
だけど、花丸かごめとしてここに立っている。
アガタ
「参りましょう」
花丸 かごめ
「ん……」
アガタ
「……“私”にも」
アガタ
「すべきことがあるようなので……」
アガタ
森を往く。
アガタ
物語は、森へ続き、森へ終わる。
そうして人は森から出ていく。
GM
森の葉々は青い月影に黒々と、深きへ誘う。
GM
ここは異界・堅洲の国。黄泉と重ねられた死地。
GM
全ては移ろい、そのままではいられない。生きるものは死に、新たに生まれるものに道を譲る。
GM
変わらずにはいられない。
【秘密:『生弓矢』】かごめからアガタの元に渡った。
この後全体に秘密が公開されないため、リプレイではこの場で公開する。

このプライズ『神器』の本当の名前は『生弓矢』だ。

このプライズは封印されているかぎり、戦果で奪うことはできない。

このプライズの封印が解かれたとき、このプライズが封印されていた者の使命は封印を解いた者の使命に書き換えられる。その際、このプライズが封印されていた者は、所持するすべての感情属性を再度決定し直す。
このプライズを所持(封印されている状態を除く)しているものは、クライマックスフェイズ、毎ラウンドに一度、遁甲符として使用できる。(使用してもこのプライズはなくならない)