2020年10月中旬
夜高ミツル
真城の手を取って、足早に店から離れていく。
夜高ミツル
ある程度店から離れると、歩調を緩める。
夜高ミツル
「いや、髪切ってるんだからそりゃ触るんだけど」
真城朔
首触られてびっくりしたら逆に驚かれたりとか……
真城朔
真城が疑問符を浮かべているうちにホテルに着きました。
真城朔
なんか帰りにお店寄るか? みたいな話を行く前はしてた気がするけど……
真城朔
でもよく考えたら髪切ったあとってちくちくするしそれでいいのかも……
真城朔
??? になりながらそのままホテルの部屋へ。
真城朔
平日なのでまあ悪くないめのホテルが安くとれた。
夜高ミツル
「ゆっくりしても、いいんじゃないかな……」
夜高ミツル
いい感じのホテルなので、風呂とトイレが別。
夜高ミツル
お湯が溜まるのを見ながら、気持ちを落ち着けている……
真城朔
ミツルが気持ちを落ち着けてるところで風呂場に来た。
真城朔
もしかしてこれもそもそも洗ったほうがいいのでは?
真城朔
まあでもとりあえずはかけといて損はないか……
夜高ミツル
目の前に、クローゼットの前に立つ真城の後ろ姿。
真城朔
パーカーを脱ぐとさらに再確認されるひょろひょろの体躯。
夜高ミツル
先程理容師に触られた髪が、首筋が、ミツルに向けられている。
夜高ミツル
「あんな風に、からかうみたいに言われてるの」
夜高ミツル
浴室のドア越しに、お湯が水面を叩く音が響いている。
真城朔
緩んだ腕から抜け出して、ミツルに向き直る。
真城朔
大きめのお風呂で……しっかりお湯を張って……
真城朔
今日はもう出かけないので思いの外ゆっくりの入浴になりそう。
夜高ミツル
広めの浴室なので、ありがたく二人で入っている。
真城朔
せっかくお湯を溜めたので軽くシャワーで流して即浸かっているが……
夜高ミツル
なんとなく、二人で入るのが恒例になりつつある。
真城朔
二人でも入れそうな浴室だったら二人で入っちゃう……
夜高ミツル
狭めのユニットバスとかだとさすがに交代交代だったりするけど……
真城朔
ミツルから常に不機嫌の気配が漂っているので
真城朔
どうすればいいかわかんない感じで湯船に身を沈めている。
夜高ミツル
こころなしかいつもよりぴったりと背中に張り付いている。
夜高ミツル
店を出たばかりの頃よりは幾分マシではあるけど……
真城朔
お互い重い空気のままとっぷりお湯に浸かってしまっている。
夜高ミツル
湯槽を出て、バスチェアに真城を座らせる。
夜高ミツル
ミツルが真城を洗うのが恒例になってきている。
夜高ミツル
ミツル自身もなんでこうしてるんだっけ?と思わないではなかったが
夜高ミツル
特に止められなかったのでなんかこうなっている。
真城朔
でも今日はちょっと所在なさげに座ってます。
夜高ミツル
濡れた髪の張り付いた細いうなじが、ミツルの前に晒されている。
夜高ミツル
後頭部の上の方から、わしゃわしゃと洗っていきます。
夜高ミツル
隣でカットされていたのであんまりまじまじと見てはいられなかったが、理容師の声はずっと耳に入ってきた。
真城朔
カットが終わったあとは待合席からでどうしても遠かったし……
夜高ミツル
あんまり見てると前向いてくださいね~って角度を直された……
真城朔
実際そんな終始変な絡み方をされていたわけでもなく……
真城朔
時折 ちょっと 声をかけられるくらいの せいぜいそんな
夜高ミツル
丸いとか小さいとかはただの感想か……?
夜高ミツル
俺も結構癖あるね~とか言われることあるし…………
真城朔
なにはともあれ今の真城はミツルに頭を委ねている。
夜高ミツル
首を捻りながら、もくもくと洗っています。
夜高ミツル
いつもより時間をかけているのは、髪を切ったあとだからか、考え事をしているせいか。
真城朔
真城はそれを不審がる様子もなくされるがまま。
夜高ミツル
シャワーヘッドを手に取り、栓をひねってお湯を出す。
真城朔
泡が流されてぺたんこになった髪が肌に張りつく。
夜高ミツル
片手にシャワーを持ったまま、もう片手で真城の頭に触れて、しっかりと洗い流していく。
夜高ミツル
ボディタオルを濡らして、シャワーを止める。
真城朔
ドライヤーをかけられながら目を閉じている。
夜高ミツル
一緒に風呂に入るようになる前から恒例だったこれは、当然今も続いている。
夜高ミツル
真城をベッドに腰掛けさせて、自分はその後ろに。
ドライヤーはヘッドボードのコンセントに繋いで。
夜高ミツル
ぺたぺたと髪に触れて、乾いたのを確認する。
夜高ミツル
そのままただ頭を撫でるような感じになっている。
夜高ミツル
真城の笑みを見て、ミツルも表情が緩む。
夜高ミツル
そのまま手をお腹に回して、抱きしめる。
夜高ミツル
風呂でのような、後ろから抱え込む体勢。
夜高ミツル
真城が辱めるようなことを言われているのが嫌だった。
夜高ミツル
他人に真城の身体を触られていることが、どうしようもなく嫌だったんだ。
真城朔
そんな些細な接触にも小さく身を跳ねさせる。
夜高ミツル
一度自覚すると、その感情が思ったよりも大きいことにも気がつく。
夜高ミツル
「……あ、自分の前髪切ったことくらいは」
夜高ミツル
金かかるし時間ないしで面倒だった時……
夜高ミツル
俺は嫉妬から真城を床屋に行かせないようにしようとしてるんだなという自覚に声が小さくなっていく……
夜高ミツル
「からかうみたいに、言われたことも、」
真城朔
そのまましばしぽかんとミツルの顔を凝視していたが……
真城朔
そのまま体重をかけて、二人ベッドになだれ込む。
夜高ミツル
あの夜に垣間見た、母子の会話を思い出す。