2020年10月中旬

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GM
「ありがとうございました~」
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GM
1000円カットの店員の声。
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夜高ミツル
真城と並んで店を出る。
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真城朔
「…………」
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夜高ミツル
目が据わっている。
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真城朔
ミツルに連れられて出てくる。
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真城朔
どこか目が泳いでいる。
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夜高ミツル
真城の手を取って、足早に店から離れていく。
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真城朔
手を引かれていきます。
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真城朔
「…………み」
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真城朔
「ミツ」
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真城朔
おろおろと声をかける。
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夜高ミツル
「…………」
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夜高ミツル
ある程度店から離れると、歩調を緩める。
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真城朔
歩調が緩んだ。
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真城朔
おろ……
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夜高ミツル
「…………さっきの」
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夜高ミツル
「店員」
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真城朔
「え」
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真城朔
「うん」
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夜高ミツル
「……やたら真城のこと触ったり」
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夜高ミツル
「いや、髪切ってるんだからそりゃ触るんだけど」
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真城朔
「えっ」
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真城朔
「う、うん」
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夜高ミツル
「変なこと言ったり…………」
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夜高ミツル
「してた…………」
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真城朔
「…………」
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真城朔
「そう」
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真城朔
「だった?」
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真城朔
髪サラサラですねーとか……
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真城朔
首触られてびっくりしたら逆に驚かれたりとか……
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真城朔
敏感ですねーって言われ……
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真城朔
事実……
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夜高ミツル
髪サラサラはともかく…………
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夜高ミツル
「……そうだった」
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真城朔
「…………」
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真城朔
「お」
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夜高ミツル
「真城は気にならなかった…………?」
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真城朔
「え」
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真城朔
「……と」
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真城朔
「…………よ」
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真城朔
「よく」
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真城朔
「ある……」
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真城朔
髪切られるならまあまあ……
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夜高ミツル
「……そう、か」
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夜高ミツル
「よくある……」
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夜高ミツル
「よくあるのか…………」
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真城朔
「床屋とかの人って」
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真城朔
「けっこう話しかけてくるし……」
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真城朔
「髪、切るなら」
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真城朔
「触る」
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夜高ミツル
「話しかけてくるけど」
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真城朔
「し」
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夜高ミツル
「話すし触るけど」
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真城朔
「…………?」
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夜高ミツル
「敏感だとかは……違うだろ……」
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夜高ミツル
「なんか……セクハラ……?」
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夜高ミツル
「セクハラじゃないか?」
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真城朔
「???」
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真城朔
真城が疑問符を浮かべているうちにホテルに着きました。
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夜高ミツル
伝わらない……
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真城朔
なんか帰りにお店寄るか? みたいな話を行く前はしてた気がするけど……
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真城朔
それどころじゃなくなってる……
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夜高ミツル
そのまま戻ってきてしまった。
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夜高ミツル
それどころじゃないため。
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真城朔
でもよく考えたら髪切ったあとってちくちくするしそれでいいのかも……
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真城朔
??? になりながらそのままホテルの部屋へ。
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真城朔
平日なのでまあ悪くないめのホテルが安くとれた。
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真城朔
というか、取った。
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夜高ミツル
高校生二人で使うにしては広めの部屋。
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夜高ミツル
もう高校生じゃないが……
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真城朔
高校生の年代。
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真城朔
「お風呂」
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真城朔
「お風呂行く?」
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夜高ミツル
「…………ん」
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真城朔
ベッドを髪で汚したくないし……
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夜高ミツル
「お湯溜める」
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真城朔
「うん」
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真城朔
「お風呂行ったら」
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真城朔
「今日、どうする?」
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真城朔
「でかけたり……」
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真城朔
まだ全然夕方。
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真城朔
出かけるならそれ相応の着替え出すけど……
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夜高ミツル
「…………」
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真城朔
「…………」
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夜高ミツル
「……今日は、着いたばっかりだし」
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夜高ミツル
「ゆっくりしても、いいんじゃないかな……」
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真城朔
「ん」
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真城朔
頷いた。
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真城朔
じゃあホテルの寝間着を出しておこう……
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真城朔
出すというか……使おう……
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真城朔
下着だけ荷物から出しています。
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夜高ミツル
浴室に行って、栓をしてお湯を張る。
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夜高ミツル
いい感じのホテルなので、風呂とトイレが別。
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真城朔
ごそごそ……
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真城朔
パーカーを脱いでハンガーにかけ……
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夜高ミツル
お湯が溜まるのを見ながら、気持ちを落ち着けている……
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真城朔
ミツルが気持ちを落ち着けてるところで風呂場に来た。
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真城朔
「ミツ」
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真城朔
「パーカー」
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夜高ミツル
「…………え」
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夜高ミツル
「あ」
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真城朔
ハンガーにかけるので……
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夜高ミツル
「うん」
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真城朔
ハンドジェスチャー。
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夜高ミツル
パーカーを脱ぎながら浴室を出ていく。
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真城朔
途中で受け取りました。
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真城朔
Uターンしてハンガーにかけにいく……
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夜高ミツル
「ありがと……」
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真城朔
「ん」
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真城朔
かけています。
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真城朔
気持ちぱたぱた叩いてみる。
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真城朔
髪くっついてないかな……?
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真城朔
もしかしてこれもそもそも洗ったほうがいいのでは?
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真城朔
まあでもとりあえずはかけといて損はないか……
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夜高ミツル
目の前に、クローゼットの前に立つ真城の後ろ姿。
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真城朔
パーカーを脱ぐとさらに再確認されるひょろひょろの体躯。
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夜高ミツル
先程理容師に触られた髪が、首筋が、ミツルに向けられている。
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夜高ミツル
「…………」
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夜高ミツル
そのまま後ろから、真城を抱きしめる。
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真城朔
「?」
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真城朔
「ミツ?」
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真城朔
きょと……になりながらミツルを見返す。
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夜高ミツル
腰に手を回して、首筋に顔を埋める。
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夜高ミツル
「…………」
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真城朔
「…………」
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真城朔
「おこって」
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真城朔
「る……?」
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夜高ミツル
「……怒ってない」
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夜高ミツル
「真城には怒ってない」
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真城朔
「…………」
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真城朔
おろろ……
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真城朔
「べつに」
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真城朔
「ひどいことは……」
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真城朔
されてない……
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夜高ミツル
「…………俺は」
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夜高ミツル
「あんな風に、からかうみたいに言われてるの」
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夜高ミツル
「やだった…………」
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真城朔
「…………」
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真城朔
ミツルの腕におずおずと手を添える。
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夜高ミツル
浴室のドア越しに、お湯が水面を叩く音が響いている。
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真城朔
「お」
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真城朔
「お風呂……」
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夜高ミツル
「…………」
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夜高ミツル
「……ん」
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夜高ミツル
腕を緩める。
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真城朔
緩んだ腕から抜け出して、ミツルに向き直る。
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真城朔
「入って」
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真城朔
「さっぱりして」
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真城朔
「それで……」
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真城朔
気分転換……
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夜高ミツル
「……うん」
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夜高ミツル
頷く。
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真城朔
「ん」
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真城朔
合わせて頷いた。
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真城朔
というわけで、お風呂です。
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真城朔
大きめのお風呂で……しっかりお湯を張って……
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真城朔
今日はもう出かけないので思いの外ゆっくりの入浴になりそう。
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夜高ミツル
広めの浴室なので、ありがたく二人で入っている。
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真城朔
せっかくお湯を溜めたので軽くシャワーで流して即浸かっているが……
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真城朔
浮いてるな~ 髪が
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夜高ミツル
なんとなく、二人で入るのが恒例になりつつある。
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真城朔
二人でも入れそうな浴室だったら二人で入っちゃう……
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夜高ミツル
狭めのユニットバスとかだとさすがに交代交代だったりするけど……
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真城朔
ビジホは結構そう。
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真城朔
ミツルから常に不機嫌の気配が漂っているので
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真城朔
どうすればいいかわかんない感じで湯船に身を沈めている。
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夜高ミツル
こころなしかいつもよりぴったりと背中に張り付いている。
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真城朔
密着……
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真城朔
なんか喋るのもやりづらい……
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夜高ミツル
店を出たばかりの頃よりは幾分マシではあるけど……
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真城朔
お互い重い空気のままとっぷりお湯に浸かってしまっている。
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夜高ミツル
「…………一回洗うか」
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真城朔
「う」
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真城朔
「うん」
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真城朔
こくこく……
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夜高ミツル
「ん」
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夜高ミツル
湯槽を出て、バスチェアに真城を座らせる。
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真城朔
座りました。
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夜高ミツル
これもなんとなく、なぜか、
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夜高ミツル
ミツルが真城を洗うのが恒例になってきている。
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真城朔
異論を唱えられないままこうなっている……
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夜高ミツル
ミツル自身もなんでこうしてるんだっけ?と思わないではなかったが
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夜高ミツル
特に止められなかったのでなんかこうなっている。
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真城朔
こうなっちゃった……
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真城朔
でも今日はちょっと所在なさげに座ってます。
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夜高ミツル
シャンプーを出して、掌で泡立てる。
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夜高ミツル
「じゃあ、下向いて……」
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夜高ミツル
泡立てながら、声をかける。
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真城朔
「ん」
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真城朔
言われるがまま目を閉じて俯いた。
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夜高ミツル
「……ん」
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夜高ミツル
濡れた髪の張り付いた細いうなじが、ミツルの前に晒されている。
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真城朔
言われるがままに従順に無防備に。
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夜高ミツル
丸い頭に両手で触れる。
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真城朔
頭ちっちゃいですねーとかも言われてた
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真城朔
まるい~
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夜高ミツル
イラッ
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真城朔
思い出しキレ
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真城朔
真城は曖昧な返事してました。
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夜高ミツル
後頭部の上の方から、わしゃわしゃと洗っていきます。
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真城朔
癖のない髪がわしゃわしゃにされていく……
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夜高ミツル
隣でカットされていたのであんまりまじまじと見てはいられなかったが、理容師の声はずっと耳に入ってきた。
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真城朔
カットが終わったあとは待合席からでどうしても遠かったし……
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夜高ミツル
あんまり見てると前向いてくださいね~って角度を直された……
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真城朔
それはそう
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真城朔
それはそうなる
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夜高ミツル
そうなった……
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夜高ミツル
横目に見てたつもりだったんだけど……
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真城朔
ガン見になってたんだろうな……
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真城朔
実際そんな終始変な絡み方をされていたわけでもなく……
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真城朔
時折 ちょっと 声をかけられるくらいの せいぜいそんな
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夜高ミツル
それでも逐一腹が立った。
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夜高ミツル
いやでも敏感ですねはともかく……
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夜高ミツル
丸いとか小さいとかはただの感想か……?
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真城朔
男でまっすぐな髪してるの珍しいし……
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夜高ミツル
俺も結構癖あるね~とか言われることあるし…………
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夜高ミツル
うーん…………?
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真城朔
なにはともあれ今の真城はミツルに頭を委ねている。
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真城朔
されるがまま……
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夜高ミツル
首を捻りながら、もくもくと洗っています。
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真城朔
泡に細かい髪の毛が混ざったりする。
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夜高ミツル
いつもより時間をかけているのは、髪を切ったあとだからか、考え事をしているせいか。
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真城朔
真城はそれを不審がる様子もなくされるがまま。
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夜高ミツル
ともあれ丁寧に洗っていく。
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夜高ミツル
耳の後ろや襟足なんかは特に。
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夜高ミツル
髪を切ったあとなので。
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真城朔
「ん……」
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真城朔
ちょっとぴくっとなったりする。
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真城朔
けどすぐに力を抜く。
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夜高ミツル
「…………」
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夜高ミツル
いややっぱり敏感ですねはおかしい。
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夜高ミツル
それはおかしい。
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真城朔
「…………」
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夜高ミツル
普通言わない。
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真城朔
真城はよくあるって言ってた。
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夜高ミツル
よくあるなよ…………
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夜高ミツル
「…………流すぞ」
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真城朔
「んー」
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夜高ミツル
シャワーヘッドを手に取り、栓をひねってお湯を出す。
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夜高ミツル
掌で温度を確かめて、真城の頭上へ。
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真城朔
じゃー……
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真城朔
お湯に泡が流されていく。
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夜高ミツル
泡の下の黒髪があらわになっていく。
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真城朔
泡が流されてぺたんこになった髪が肌に張りつく。
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夜高ミツル
片手にシャワーを持ったまま、もう片手で真城の頭に触れて、しっかりと洗い流していく。
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真城朔
じゃぶじゃぶ……
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夜高ミツル
ざぶざぶ……
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夜高ミツル
きれいになりました。
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真城朔
なった。
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真城朔
顔を拭って真城が頭を上げる。
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真城朔
「…………」
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真城朔
「ミツ」
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夜高ミツル
ボディタオルを濡らして、シャワーを止める。
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夜高ミツル
「ん?」
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真城朔
「ミツも」
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真城朔
「頭……」
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真城朔
「…………」
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真城朔
もう身体を洗う準備がされている……?
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夜高ミツル
「真城を洗ったら…………」
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夜高ミツル
と思っていた……
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真城朔
「……う」
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真城朔
「うん……」
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真城朔
風呂上がり。
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真城朔
ドライヤーをかけられながら目を閉じている。
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真城朔
ごー…………
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夜高ミツル
一緒に風呂に入るようになる前から恒例だったこれは、当然今も続いている。
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夜高ミツル
真城をベッドに腰掛けさせて、自分はその後ろに。
ドライヤーはヘッドボードのコンセントに繋いで。
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真城朔
ベッドに腰掛けてぼんやりと……
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真城朔
格好もホテル側の寝間着姿。
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夜高ミツル
ミツルの方も同じ格好。
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真城朔
よくあるさっぱりしたバスローブ
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真城朔
便利~
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夜高ミツル
便利
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夜高ミツル
ドライヤーのスイッチを切る。
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夜高ミツル
ぺたぺたと髪に触れて、乾いたのを確認する。
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真城朔
触られてます。
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真城朔
ミツルの手に頭を寄せる。
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夜高ミツル
そのままただ頭を撫でるような感じになっている。
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夜高ミツル
ドライヤーを脇に置く。
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真城朔
そのうち頬を預け……
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真城朔
すり……
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夜高ミツル
頬を撫でる。
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夜高ミツル
頭よりも柔らかな感触。
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真城朔
気の抜けたような笑いを浮かべる。
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真城朔
すりすり……
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夜高ミツル
「…………」
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夜高ミツル
真城の笑みを見て、ミツルも表情が緩む。
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真城朔
安堵の笑み。
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真城朔
理容室では見られなかった顔。
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夜高ミツル
そのまま手をお腹に回して、抱きしめる。
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夜高ミツル
風呂でのような、後ろから抱え込む体勢。
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真城朔
「ん」
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真城朔
「…………?」
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真城朔
ミツルに身体を委ねて首をかしげる。
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夜高ミツル
身体を寄せ合う。
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真城朔
薄い寝間着越しに肌が重なる。
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夜高ミツル
布越しに体温が伝わる。
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真城朔
風呂上がりでほかほかで……
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夜高ミツル
あったかい…………
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真城朔
真城の体温がこんなに高いのは、
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真城朔
風呂上がりか、
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真城朔
もしくは情事の際くらい。
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夜高ミツル
「…………」
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夜高ミツル
不意に、やっと、気がつく。
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夜高ミツル
真城が辱めるようなことを言われているのが嫌だった。
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夜高ミツル
それは、事実だ。
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夜高ミツル
そして、それはそれとして。
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夜高ミツル
他人に真城の身体を触られていることが、どうしようもなく嫌だったんだ。
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真城朔
真城の身体はミツルに委ねられている。
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真城朔
体重が預けられている。
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夜高ミツル
「…………」
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真城朔
服越しの熱を感じている。
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夜高ミツル
首筋に顔を埋める。
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真城朔
「?」
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真城朔
「ミツ?」
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夜高ミツル
おずおずと、そこに口づける。
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真城朔
「ひゃ」
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夜高ミツル
唇で触れて、細い首の線を辿る。
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真城朔
「み」
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真城朔
「ミツ」
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真城朔
慌てたような声。
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夜高ミツル
痕も残らないような、軽い口づけ。
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真城朔
そんな些細な接触にも小さく身を跳ねさせる。
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夜高ミツル
こんな仕草を見るのは自分だけがいい。
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夜高ミツル
一度自覚すると、その感情が思ったよりも大きいことにも気がつく。
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夜高ミツル
「…………真城」
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真城朔
「ミツ?」
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夜高ミツル
「…………」
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真城朔
戸惑いに視線が泳いでいる。
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夜高ミツル
「…………髪」
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夜高ミツル
「今度から俺が切っていい?」
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真城朔
「え」
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真城朔
「?」
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真城朔
瞬き。
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真城朔
「……ミツが?」
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夜高ミツル
「…………うん」
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真城朔
「切れ」
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真城朔
「切れるの……?」
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真城朔
素朴疑問
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夜高ミツル
「……やったこと、」
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夜高ミツル
「ない…………」
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真城朔
なかった……
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夜高ミツル
「……あ、自分の前髪切ったことくらいは」
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夜高ミツル
金かかるし時間ないしで面倒だった時……
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真城朔
じょきじょき
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真城朔
「う」
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真城朔
「うん」
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真城朔
よくわからないままに頷いた。
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夜高ミツル
「人のを切ったことは……」
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夜高ミツル
「ないけど……」
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真城朔
「…………」
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夜高ミツル
「……頑張るので…………」
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真城朔
「……ミツが」
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真城朔
「そうしたいなら」
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真城朔
「俺は、いい」
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真城朔
「けど……」
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夜高ミツル
俺は嫉妬から真城を床屋に行かせないようにしようとしてるんだなという自覚に声が小さくなっていく……
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真城朔
当惑はしているが、
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真城朔
思いの外あっさりと頷いた。
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真城朔
当惑はしているが……
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夜高ミツル
「……やだったから」
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真城朔
「や」
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夜高ミツル
「真城が、あんな風に、」
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夜高ミツル
「からかうみたいに、言われたことも、」
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夜高ミツル
「そう、だし……」
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真城朔
「…………」
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夜高ミツル
言いづらそうに目線が泳ぐ。
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夜高ミツル
「…………あと」
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真城朔
「うん」
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夜高ミツル
「なんか、俺……」
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真城朔
「?」
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夜高ミツル
「思ったより、こう」
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夜高ミツル
「…………」
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真城朔
「…………」
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夜高ミツル
「……誰かに」
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夜高ミツル
「真城が触られるのが」
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夜高ミツル
「嫌、っぽく…………」
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真城朔
ぱち、と瞬き。
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夜高ミツル
再び声が小さくなった。
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真城朔
やや呆けた様子でミツルの顔を見ている。
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夜高ミツル
風呂上がりにしても顔が赤い。
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真城朔
そのまましばしぽかんとミツルの顔を凝視していたが……
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真城朔
ふっと表情を緩めると
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真城朔
ミツルの背中に腕を回した。
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真城朔
そのまま体重をかけて、二人ベッドになだれ込む。
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夜高ミツル
「え」
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真城朔
ぼふ。
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夜高ミツル
倒れた。
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真城朔
ミツルの胸元に顔を寄せた。
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真城朔
「いいよ」
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真城朔
「ミツが嫌で」
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真城朔
「ミツが、そうしたいなら」
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夜高ミツル
「…………いい、のか?」
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夜高ミツル
「俺、多分、結構、かなり」
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夜高ミツル
「自分勝手なことを……」
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真城朔
顔を上げる。
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真城朔
頷いた。
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夜高ミツル
「言って……」
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夜高ミツル
「…………」
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真城朔
また胸に顔を埋める。
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真城朔
「いいよ」
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真城朔
「なんでも」
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夜高ミツル
「…………」
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真城朔
「ミツが、したいなら」
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真城朔
「それで」
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夜高ミツル
「……したい」
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真城朔
「ん」
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夜高ミツル
背中に腕を回す。
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夜高ミツル
抱きしめる。
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真城朔
より身体が密着する。
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夜高ミツル
「……頑張る」
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真城朔
「うん」
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夜高ミツル
「ちゃんと切り方調べるし」
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真城朔
「ん」
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夜高ミツル
「……髪、きれいだもんな」
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夜高ミツル
「ちゃんとできるように、頑張るよ」
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真城朔
「…………うん」
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真城朔
「ほめられた」
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真城朔
「から……」
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真城朔
「…………」
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真城朔
肩が震える。
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夜高ミツル
「…………真城」
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真城朔
ミツルの胸元に涙を吸わせながら、
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真城朔
また頷いた。
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真城朔
「ミツ、の」
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真城朔
「ミツの好きに」
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真城朔
「して……」
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真城朔
「なんでも」
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真城朔
「なんだっ、て」
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夜高ミツル
あの夜に垣間見た、母子の会話を思い出す。
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真城朔
「ミツの……」
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夜高ミツル
「……うん」
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夜高ミツル
「……ありがとう」
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夜高ミツル
震える背中を撫でる。
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真城朔
撫でられて、身体から力を抜いた。
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真城朔
ミツルの身体にぴったりと寄り添っている。
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夜高ミツル
部屋着越しに、ぬくもりを分かち合う。
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真城朔
静かに涙を流しながら、
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真城朔
けれどその表情は穏やかだった。