2020/10/28 朝
真城朔
目覚めたミツルのすぐ隣に、真城は力尽きたようにこんこんと眠っている。
夜高ミツル
昨晩のことを思い出しながら、まだ眠っている真城の頭を撫でる。
真城朔
うとうととしながら小さな声を漏らし、その手のひらに頭を擦り寄せた。
夜高ミツル
そんな触れ方もすっかり慣れたものとなった。
夜高ミツル
カーテンの隙間から、朝の日が薄く差し込んでいる。
真城朔
どこか淋しげないつもの寝顔が、少しずつ和らいだものに変わる。
夜高ミツル
真城が眩しいのを嫌うから、日の昇っている時間のカーテンは開けなくなった。
真城朔
カーテンを締め切ったホテルで、同じベッドで、ミツルの隣ですうすうと静かな寝息を立てて胸を上下させて。
夜高ミツル
真城をかわいいなんて、半年前なら考えもしなかったことだけど。
夜高ミツル
まあ、そもそもこういう関係になるともお互い全く思ってなかったことだし。
真城朔
しばらくそのままミツルの胸でまどろんでいたが、
真城朔
ややあってようやくその瞼がぼんやりと上がる。
真城朔
ゆっくりと瞼をあげて、目の前のミツルの胸で視線をさまよわせてから、
夜高ミツル
手は変わらずに背中を撫でながら、真城に微笑む。
真城朔
あいさつを返しながら、何故だかほろほろと泣き始める。
真城朔
おどおどと惑うように視線を彷徨わせている。
夜高ミツル
指先を頬に触れさせて、そっと涙を拭う。
夜高ミツル
涙を拭った手を、今度はあやすように頭に乗せて
真城朔
その手のひらのぬくもりに微かに目を細めたが。
真城朔
じっとミツルの顔を見つめたまま、結局また黙り込んでしまう。
夜高ミツル
大体いつもそうだが、今日も特に予定は入れていない。
夜高ミツル
だから、なんか約束してたわけでもなかったよな……? と内心で首を捻る。
夜高ミツル
「……もしかして俺、なんか忘れてたりする?」
夜高ミツル
話を聞いてからにしようかと思っていたけど、
真城朔
同時にミツルの胸に頬を預けてうとうとし始めている。
夜高ミツル
「二度寝するにしても一度さっぱりしてからが良くないか?」
真城朔
ミツルに身を委ねたまま、ゆっくりと身を起こして、
真城朔
自分の乱れた夜着をぼんやりと見下ろしている。
真城朔
手を引かれるままにぺたぺたとミツルについていく。
真城朔
その間もおずおずとミツルの顔を窺っている。
夜高ミツル
やっぱり何か言いたそうにしてるな……とは思いつつ
夜高ミツル
普段なら、これだけ訊いているとぽつぽつとでも話してもらえるもんだけど……。
夜高ミツル
真城の乱れたナイトウェアに手をかけて、ボタンを外していく。
真城朔
俯いて黙り込み、されるがままになっている。
夜高ミツル
ナイトウェアを真城の身体から取り去ると、自分もそれを脱いでしまう。
夜高ミツル
首を捻りつつ、身体を冷やす前に二人で浴室に入る。
真城朔
ミツルに招かれるままにとぼとぼぺたぺたと歩いた。
夜高ミツル
真城をバスチェアに座らせて、シャワーの栓を捻る。
真城朔
温水が身体に掛かって、その温もりにか小さくほうと息をつく。
夜高ミツル
さして広くもない浴槽に、二人で浸かる。
夜高ミツル
真城がかなり細身な方とはいえ、男二人。
真城朔
それでも窮屈さを厭う様子もなく、むしろミツルの胸に背中を預けてうとうとと頭を揺らしている。
真城朔
ミツルの肌と触れ合うたびにかすかに熱の籠もった息を漏らした。
夜高ミツル
”そういう”時になるとつい激しく求めてしまうが、
夜高ミツル
こういう風に穏やかに、まどろむような時間を真城と過ごすことも、ミツルにとっては幸せな時間だ。
真城朔
時折吐く息に熱の気配はあれど、穏やかな時間をまどろむように意識を揺蕩わせている。
夜高ミツル
想定外の質問に、ん~~、と唸るような声。
夜高ミツル
が、答えを出す前に真城の姿勢が崩れていくのに気づいて
真城朔
ミツルの腕に体重を委ねて、けれど顔を見られず俯いている。
夜高ミツル
「……俺は、真城がこうして隣にいてくれるだけでめちゃめちゃ嬉しいんだけど」
夜高ミツル
違ったっぽい……というのが雰囲気で分かった。
真城朔
ぐた、と脱力気味にまたミツルに身体をもたれる。
夜高ミツル
身体を拭いて、服を着せて、ドライヤーで髪を乾かして。
真城朔
ドライヤーをされている間はいっとう眠たげに瞼を落としていた。
夜高ミツル
それらが終わると、もう少し寝かせてやろうとベッドへと連れてゆく。
真城朔
それには逆らわないながらも、しきりにミツルの様子を窺っている。
夜高ミツル
「俺、自分が真城になんかしてやりたいってばっかりで」
夜高ミツル
「真城には、ただ傍にいてくれるのが嬉しくて」
夜高ミツル
「泣かないでほしいな、とかそういうのはあるんだけど……」
夜高ミツル
「してほしいこととか、あんま考えたことなかったっていうか」
夜高ミツル
真城が自分に何かをしたいと思ってくれるなら
夜高ミツル
顕になった額に、そっと口づけを落とす。
真城朔
すう、と帰ってきたのは穏やかな寝息だった。
夜高ミツル
寝入ってしまったのを見て、起こさないよう手を離す。
夜高ミツル
さっき本人に言ったように、こうして傍にいてくれればそれだけで嬉しくて、幸せで
夜高ミツル
真城にも幸せを感じてほしくて、そのためになんでもしてやりたくて。
夜高ミツル
そればっかりで、真城に何をしてほしいかなんて考えてもみなかった。
夜高ミツル
傍にいてほしいとか、泣かないでほしいとか、笑っててほしいとか……
夜高ミツル
そういうのはあるけど、そういう話じゃないようだし。
夜高ミツル
改めて考えてみると、そもそも昔から望むのが下手な性分だったように思う。
夜高ミツル
今は、一番の望みはこうして叶えてしまっていて。
夜高ミツル
真城としたいこととか……そういうことならいくらでも浮かんでくるんだけど……。
夜高ミツル
そういえば誕生日とかクリスマスとか、そういう時も延々悩んでたんだよな……。
真城朔
声もなく身動いで、布団とシーツと身体の擦れる音がする。
夜高ミツル
とかそんなことを考えて、ん? と引っかかる。
夜高ミツル
それでようやく、今更、真城の態度に合点がいく。
夜高ミツル
それどころじゃないことが多すぎて、ミツル自身でさえ忘れていたというのに。
夜高ミツル
……そういえば、去年も俺の誕生日にはフラッと学校に来たりしてたけど
夜高ミツル
偶然みたいな態度で、実は覚えてたりしたのか……?
夜高ミツル
そう思うと、一年越しに嬉しくなったりして。
夜高ミツル
眠る真城を見つめながら、小さく呟いた。
真城朔
それからまたしばし、真城はこんこんと眠り込んでいたが。
真城朔
その頭が不意にもぞりと動いて、枕の形を変えて、
真城朔
むずかるように首を竦めながら、ゆっくりと目を開ける。
真城朔
うつ伏せのままにぼうと視線を漂わせて、いまだ微睡の中にいるようだった。
真城朔
自分にできることが見当たらなくなっていくのか。
夜高ミツル
が、やがて覚悟を決めたように真城を見て。
夜高ミツル
言ってからめちゃめちゃ恥ずかしくなってくる。
夜高ミツル
真城からしてもらうと、なんだかいつもよりふわふわした心地になった。
夜高ミツル
ミツルの腕が、更に強く真城を抱き寄せる。
真城朔
触れ合うだけの口づけを、そのまま長く続けていたが。
真城朔
ためらいがちに舌先がミツルの下唇を撫ぜた。
夜高ミツル
口を薄く開いて、真城の舌先を受け入れる。
夜高ミツル
口づけの合間に漏れる吐息に、徐々に熱が籠もってゆく。
真城朔
熱の灯った吐息が漏れるのが濡れた唇にかかって、
夜高ミツル
静かな室内に、身体を寄せ合って布が擦れる音と
真城朔
真城はとろりとした瞳でミツルの顔を見つめる。
夜高ミツル
受け止めるミツルの瞳にも、熱が籠もっている。
真城朔
それでもどこか躊躇いを残しながら、ミツルをベッドへと引き込んで仰向けに倒れる。
夜高ミツル
そのまま、今度はミツルから顔を寄せた。
真城朔
またミツルにドライヤーをかけられながら、心地良さそうに瞼を落としている。
夜高ミツル
ドライヤーをこうしてかけてやるのも、すっかり慣れてきた。
真城朔
真城の側もそうされるのが好きなようで、大人しくなすがまま、ミツルに何もかも任せている。
真城朔
これに関してはそもそもドライヤーに限った話ではないのだが。
夜高ミツル
指を通してきれいに乾かしきったのを確認して、スイッチを切る。
真城朔
髪を乾かし終わったことに気付いて、ミツルをぼんやりと振り返る。
夜高ミツル
風に乱れたままの箇所を指ですいて整える。
夜高ミツル
「真城がそういう風に思ってくれるだけで嬉しいから」
夜高ミツル
「真城が何かしてくれるならなんでも嬉しいんだよな」
夜高ミツル
「……してほしいこと、と違うかもだけど」
真城朔
ケーキ屋なんてそう遅くまでやっているものではない。
真城朔
スマホで適当にあたりをつけ、二人で着替えを済ませて、ホテルを出る。
真城朔
ミツルの、或いはミツルと選んだ服を着込んで、手を引かれて街を歩く。
真城朔
冷たくなり始めた秋の風がその髪を揺らしていた。
夜高ミツル
幸いホテルの近くにケーキ屋があるようなので、そこを目指して歩いていく。
夜高ミツル
「結構冷え込むようになってきたよなー」
真城朔
不意に顔を上げてびく、と全身を引きつらせた。
夜高ミツル
真城が隠れたのを見て、前方に視線をやる。
真城朔
向かいから大型犬――散歩中のラブラドールレトリバーが歩いてきている。
真城朔
その真逆に回るようにミツルの後ろにそっと隠れて。
真城朔
犬は特段真城を気にかけることもない。よく躾けられているのか吠えもしない。
真城朔
すぐにすれ違って、悠々と散歩を続けていく。
真城朔
真城はずっと身を縮めてミツルにひっついていた。
夜高ミツル
撫でていた手を下ろして、歩みを再開する。
真城朔
日の傾く頃のケーキ屋には他の客の姿もなく、
真城朔
既に何品か売り切れているケーキも見受けられた。
真城朔
つやつやと輝くそれらのケーキを、真城はぼんやりと見つめていたが。
夜高ミツル
言いながら、ショーウィンドウに視線を移す。
夜高ミツル
とは言えケーキとか自分で買ったことがないので、
夜高ミツル
こっちはこっちでどうしたもんかという気持ちになっている。
真城朔
困ったまま視線をショーウィンドウに泳がせたり、
夜高ミツル
めぐるはなんかよく分からんがこういうのに拘りを持っていたようだけど。
夜高ミツル
ミツルはといえばいつも買ってきてもらうに任せていた。
夜高ミツル
「この中でも甘い方のやつってどれですか?」
真城朔
店員は少し考え込んでから、シンプルなガトーショコラを示します。
真城朔
果物系が好きなら、と苺のショートケーキやアップルタルトを指差したり。
夜高ミツル
分かんないときは定番のやつにすれば外さないだろう、ともう一つはショートケーキを選んで。
真城朔
ミツルの選んだケーキを2つ、ショーウィンドウ越しに眺めて
夜高ミツル
折角なので、ろうそくなんかもつけてもらい。
真城朔
手早くケーキを箱に詰めた店員はありがとうございました、と慣れた調子の接客で。
夜高ミツル
夜の帳の落ちつつある道を、手を繋いで歩く。
真城朔
紅茶とかよりも牛乳がケーキの伴になりがちな年頃
夜高ミツル
お互いこういう祝い事が子供の頃で止まってるしな
真城朔
タンパク質に気を取られがちなのでサラダチキンとかも眺めてる。
夜高ミツル
牛乳とか明日の朝食べるパンとかを買い物籠に放り込んでいく。
夜高ミツル
野菜を食べないと真城が気にするので、サラダも選んだり。
真城朔
持ってます。持ってミツルが選んでいるのをぼんやりじーっと見ている。
夜高ミツル
じゃあこんなもんか、とレジに向かおうとしたところで、
夜高ミツル
やや恥ずかしくなりつつ、今度こそレジに向かう。
夜高ミツル
言っても、二人で並んでゴムを買うのはさすがにだった。
真城朔
足を止めて、ぼんやりと商品棚に足を向ける。
夜高ミツル
そそくさとレジに並んで会計を済ませる。
真城朔
不意に他の客が立ち読みのためにか雑誌に手を伸ばし。
夜高ミツル
手にレジ袋を下げて、ぽや……になってる真城に声をかける。
真城朔
それがたまたま近かったから、ちょっとびくってなったところで、
真城朔
ケーキが傾かないように箱を軽く浮かせながら、手をにぎる。
真城朔
ホテルに戻って、テーブルにケーキを並べる。
真城朔
コンビニで買った紙皿にプラスプーンを添えて、
真城朔
ガトーショコラといちごのショートケーキと。
真城朔
一緒に入れてもらったろうそくを取り出してみたはいいが。
夜高ミツル
ライターは勿論持ってないし、買ってもきてないし、
夜高ミツル
そもそもホテルの部屋で火を使っていいのか?という疑問もある。
真城朔
封のされたままの細長いろうそくを持ったまま固まっている。
真城朔
ホテルのカップに牛乳を注いで、残ったパックなどは冷蔵庫に戻して。
真城朔
椅子に座ったまま、ちらちらとミツルの顔を窺い。
夜高ミツル
笑って、椅子に座ったまま真城を抱きしめる。
夜高ミツル
向かい合わずに隣に椅子を置くので腕が届いてしまうんですね。
真城朔
肩に頬を寄せるような形で、ぱちぱちと瞬きをしている。
真城朔
けれどその身が離れる瞬間、少しだけ名残惜しそうな顔をした。
夜高ミツル
アイス出してイチャついてたら溶かしたこととかありそう。
夜高ミツル
ありそうなので、ケーキをダメにする前に食べようと思いました。
真城朔
フォークを取って、ガトーショコラの先端の端っこを割っている。
夜高ミツル
言いながら、自分のショートケーキにフォークを刺す。
真城朔
横からすくい上げるようにして口へと運んだ。
真城朔
このフォークの大きさでは刺すことができないくらいのかけらだからだ。
夜高ミツル
フォークをケーキに刺したまま、真城の様子を窺っている。
真城朔
もむもむと唇の内側で味わうように舌を動かしていると、ミツルと目が合った。
夜高ミツル
それでも、ミツルはいたく嬉しそうにする。
夜高ミツル
「チョコだと味が濃いから分かりやすいのかもな」
夜高ミツル
覚えておこう、と思いながら自分もケーキを食べる。
夜高ミツル
ケーキだな、という味がする。こっちはこっちで解像度が低い。
真城朔
小さく頷いて、ミツルが食べるのを見ている。
夜高ミツル
クリームが甘くて、スポンジに挟まれた苺は甘酸っぱい。
夜高ミツル
「いけそうならもっととってもいいけど」
夜高ミツル
取りやすいように、皿を真城の側へ寄せる。
真城朔
おろおろとミツルを見てから、おそるおそるフォークを差し出して。
真城朔
しばらく迷ってフォークを揺らめかせていたが。
真城朔
盛り付けられたクリームの先端を少しだけすくって、
夜高ミツル
眺めてばっかりで自分の手が動いていないことに気づいて、ミツルも食べるのを再開する。
真城朔
口の中でもたもたと舌を動かしている気配がある。
夜高ミツル
柔らかなショートケーキにフォークを沈めて、欠片を口に運んでいく。
真城朔
その様子を、ミツルに負けないくらいに眺めている。
真城朔
二口目を最後に真城の手は完全に止まっていた。
夜高ミツル
特別に好きというほどではないけども、やっぱり甘いものというのは美味しい。
夜高ミツル
もしかしたら真城と食べるから美味しいというのもあるかもしれないけど。
真城朔
少量だけ注がれたその表面をじっと見つめてから、結局戻してしまって。
真城朔
ミツルに声をかけられて、ガトーショコラを見て、ミツルを見て。
夜高ミツル
「甘いのは結構分かりやすいみたいだし」
真城朔
ほとんど手を付けられていないも同然のガトーショコラに目をやって、肩を落としていたが。
夜高ミツル
「いい感じのケーキ屋とかあったら、また寄ってみような」
夜高ミツル
言って、ショートケーキの最後の一片をフォークで口に運ぶ。
真城朔
そこでやっと再びカップを取って、ちびちびと牛乳を口に運んだ。
夜高ミツル
「今日はこういう定番みたいなのにしたけどさー」
真城朔
こちらは味がよくわからないのか首を傾げていたが。
夜高ミツル
「なんか……見た目がおしゃれで味の想像つかないやつとかあっただろ」
夜高ミツル
「ああいうの試してみるのもいいかもな」
夜高ミツル
食べ終わった皿をのけて、ガトーショコラの方に手を伸ばす。
夜高ミツル
「どれが美味しいとか、味が分かるとか」
夜高ミツル
ガトーショコラにフォークを刺して、首をかしげる。
真城朔
言い出しておいてそうなので、決まりが悪いらしい。
真城朔
しょぼしょぼと空になったカップを両手で抱えている。
夜高ミツル
「登山する人とかチョコ持ってくんだっけ?」
夜高ミツル
「長引くとマジで疲れるからな……狩り……」
夜高ミツル
二人で狩りに出ようという話になっていた。
夜高ミツル
ケーキのお供にはあまり適切ではない話題だが、まあ今更気にもならない。
夜高ミツル
「……夜でも人が多くてめんどそうだよな」
夜高ミツル
ガトーショコラを口に運んで、もぐもぐと口を動かしながら頷く。
夜高ミツル
話題は剣呑だが、ガトーショコラは最後までおいしかった。
夜高ミツル
空になった紙皿を重ねて折って、ゴミ箱へポイと捨てる。
真城朔
何か言いたげなような、顔色を窺っているような。
夜高ミツル
真城の身体に腕を回して、身体を寄せる。
真城朔
口吻の隙間に漏れる吐息が少しずつ熱をあげて、
夜高ミツル
触れ合った箇所から火がつくように、熱が灯される。
夜高ミツル
ごく近い距離でそう囁いて、唇を重ねる。
真城朔
惑いに震えた唇が、声を発する前に塞がれる。