2020/11/1 昼過ぎ
真城朔
同じベッドに寄り添うように、真城はぼんやりとミツルを見つめている。
夜高ミツル
明け方まで狩りをした疲れで、こんこんと眠っている。
夜高ミツル
時折寝返りを打とうとしては、裂かれた左腕の痛みに眉を顰めていた。
真城朔
手を伸ばせず、代わりに指先はシーツを握りしめて皺を作る。
夜高ミツル
やがてゆっくりと瞼が持ち上がり、視線が真城を捉えた。
夜高ミツル
寝起きの気配を纏ったまま、ぼんやりと真城に声をかける。
夜高ミツル
「……真城が俺を危ない目にあわせたくないって」
夜高ミツル
「思ってくれてるのは、分かるんだけど……」
夜高ミツル
「一人で行かせて、それでもし大丈夫じゃない時が来たら」
夜高ミツル
真城に食い下がられても、ミツルも退く姿勢を見せない。
夜高ミツル
「真城が怪我させられるのとか、誰かに……」
夜高ミツル
「これからは、もうそういう目に遭わせたくない」
真城朔
ぼそぼそ言い募りながらシーツに顔を埋めた。
夜高ミツル
シーツに顔を埋める真城の頭に手を乗せて、柔らかく撫でる。
夜高ミツル
「真城に心配させないでいいくらい強ければって」
夜高ミツル
「それについていくのだって俺の勝手だよ」
夜高ミツル
「俺がいないとこで、真城が傷つけられるのは」
夜高ミツル
「一緒にいれば、少なくとも昨日みたいのからは守れるだろ」
真城朔
シーツに顔を埋めたまま身を縮こませている。
夜高ミツル
「俺は色んなことを真城に我慢させたんだから」
夜高ミツル
「ていうか、今もさせようとしてるけど……」
夜高ミツル
「……だから、叶えられることはちゃんと叶えたい」
夜高ミツル
「真城が心配しないでいいよう、強くなるから」
夜高ミツル
「実際真城に特訓つけてもらって、死なずに済んでるんだから」
夜高ミツル
「あれ大事だったなって思うよやっぱり」
真城朔
ぐしゃぐしゃになったシーツをたくし寄せている。
夜高ミツル
シーツに埋められた真城の表情は見えない。
夜高ミツル
手を滑らせて、今度はとんとんと背中を叩く。
夜高ミツル
「真城を守りたいってのが一番だけどさ」
夜高ミツル
「モンスターを放置できないとは俺も思うし」
夜高ミツル
「俺は今までやってきて、それができるから」
夜高ミツル
「……どんなでも、好きなやつの心配するのなんて当たり前だろ」
夜高ミツル
「学校とかもさ、真城が来ないと寂しいしつまんねーって感じだったし」
夜高ミツル
「離れてる間に、真城がなんかされるのとか」
夜高ミツル
「……帰ってきてくれるのは疑わないけど」
夜高ミツル
「真城のためなら俺はなんだってするし、できるし」
真城朔
それでもその言葉には答えを渋る気配を見せたが。
夜高ミツル
「俺だって、もう真城がいないと駄目だから」
真城朔
顔をシーツに埋めたままにミツルに身を擦り寄せた。
真城朔
涙に濡れた顔を今度はミツルの胸元に埋めて。
夜高ミツル
どこかに連れ去られようとしていた真城を思い出すと
夜高ミツル
今でも背筋が凍るような恐ろしさを感じる。
真城朔
ミツルに抱き竦められてあの時真城が浮かべていたのも、紛れもない安堵の表情だった。
夜高ミツル
いくら大丈夫と言っていても、怖くないはずが、嫌でないはずがなくて。
夜高ミツル
ミツルからも顔を寄せて、それを受け入れる。
真城朔
吐息に紛れるような声が、この距離では聞き逃されることもなく。
真城朔
繰り返し重ね合わされるそれがやがて深くなって、
真城朔
名を呼ぶことすら甘い吐息の音に紛れ始めて、
真城朔
そもそも控えるべきでは? と今更思い当たったのか口を噤んだが。
夜高ミツル
ミツルの方も今更やっぱやめ……とはできない。
真城朔
そうされると瞼を落として、結局それを受け入れてしまって。
夜高ミツル
舌先を割り入れて、真城の舌を絡め取って
真城朔
触れられるたび肌がひくりと震えて、目の前の熱に蕩けるようで、
夜高ミツル
そうして反応を返されるごとに、ミツルにもなお火がついていく。
真城朔
真城が風呂を手伝うもんだからまた多少ひと悶着して、
真城朔
真城は半乾きの髪にタオルを被り、ミツルの隣に座っている。
夜高ミツル
コンビニで買ってきた弁当を食べている。
夜高ミツル
箸を持ってると、右手が無事で良かったな……と思う。
真城朔
ごしごしもそもそとタオルを動かすので頬に濡れた髪が張りついたりする。
夜高ミツル
左腕の方も全く動かせないというわけではないので、食事程度なら支障はない。
夜高ミツル
「防犯ブザーとかあったらいいかなって」
真城朔
片腕不自由なのでよく分からないところを気にしている。
夜高ミツル
食事中にするのは行儀が悪かったな、と思い当たった。
真城朔
ベッドサイドに置いてあったスマホを取りに行く。
夜高ミツル
食事を再開しつつ、スマホをいじる真城の様子を窺う。
夜高ミツル
「まあGPSだけあればとりあえず十分だろ」
夜高ミツル
買ってあげればそれでいいかと思ってた。
真城朔
「ブザーとスマホをBluetoothで連動……?」
夜高ミツル
「セコムの人を狩りに巻き込むのはな……」
夜高ミツル
「使う必要がなければそれが一番だけど」
真城朔
襟足に落ちてきた水分をタオルで拭っている。
真城朔
さすがにもったいないかもとは言わなかった。
夜高ミツル
ミツルの方はなんか満足げにしてますね。
真城朔
スマホを戻して、食べる様子をまた見ている。
夜高ミツル
結構お腹が空いてたので、パクパクと食べ進めていき
夜高ミツル
やがて完食すると、ごちそうさまを言って箸を置いた。
夜高ミツル
買ってきたときのレジ袋に空き容器なんかを放り込みつつ
夜高ミツル
「当たりつけといて、どっかで電器屋あったら探してみるか」
夜高ミツル
「次の満月までまだあるから、北海道着いてからでもいいし」
夜高ミツル
「バイク乗れない怪我じゃなくて良かった」
夜高ミツル
「運転手の人に訊いたら観光地教えてくれたりするらしいし」