2020/11/03 深夜
真城朔
ぐるぐるに巻いたマフラーに顔をうずめて、小さく息を吐く。
夜高ミツル
人気のない深夜の街を、二人手を繋いで歩く。
夜高ミツル
「こうやってのんびり散歩とか今日で最後だな」
真城朔
ぬくもりを確かめるようにミツルの指を握りしめた。
夜高ミツル
繋いでない方の手で、真城のマフラーに手を伸ばす。
真城朔
繁華街から少し離れた、住宅地の細く暗い道をぶらぶらと歩きながら。
夜高ミツル
風が入らないようにちょいちょいと形をなおし。
夜高ミツル
そんな喧騒から遠ざかるように、二人は歩を進めていく。
夜高ミツル
繁華街とかは警察の見回りも多いし……。
夜高ミツル
ミツルの方も、騒がしいのは別に好きではなく。
夜高ミツル
行けないので、こうしてただの人通りの少ない住宅地を歩いている。
真城朔
特に見るものがなくとも、それで構わなかった。
真城朔
寒くなってきたとはいえ息の白くなるほどではなく、
真城朔
天気予報によればこの先一週間ほどは雨の心配もなさそうだった。
夜高ミツル
「天気、しばらく大丈夫そうでよかったよな」
真城朔
住宅地なので、気持ち潜めたような声になる。
真城朔
なんか空いたスペースができたけど何に使うでもないからちょっと公園にしてみた感じの……
夜高ミツル
まあ住宅地の中の公園ってこんな感じだよね……というやつ。
夜高ミツル
話題に出したついでとばかりにブランコの方へ。
真城朔
なんだかんだ住宅地なので使われてはいる様子。
真城朔
砂場とか見ると子供の足跡が残っていたりする。
夜高ミツル
「なんかこう……子供用のものって久しぶりに見ると小さくてびっくりする」
真城朔
公園はもとより、砂場もぶらんこも驚くほど小さい。
夜高ミツル
なんとなくブランコの鎖をつかみつつ、まじまじと眺める。
夜高ミツル
公園自体は特訓とかで結構使ってたけど……
夜高ミツル
「子供がいるのに邪魔してるわけでもないし……」
真城朔
自分たちも警察に声をかけられるのがやや怖い時間だが……
夜高ミツル
ミツルも気をつけてはいるけど、だいたい真城の方がはやく気づく。
夜高ミツル
思いの外低くなった位置から真城を見上げる。
夜高ミツル
漕ぐという程ではないものの、ゆらゆらと揺らしている。
夜高ミツル
「子供のブランコの使い方って結構危なかったよなって」
夜高ミツル
「こう、思いっきり漕いで前にジャンプしたりとかさー」
夜高ミツル
「あと一周させようとしたやつとかいなかった?」
夜高ミツル
「ブランコに行ったらチェーンがぐるっと一周してたことがあって……」
夜高ミツル
こうやって遊具が減っていくのだろうな……
真城朔
使われてる様子とはいえ古い感じのブランコ。
真城朔
そのうち撤去されるのも時間の問題なのかもしれない……
夜高ミツル
地面に足をつけたまま、膝を伸ばしたり曲げたりしてブランコを揺らしている。
夜高ミツル
自分だけ座っているのが落ち着かず、真城を見上げる。
夜高ミツル
足を止めて、考え込む真城を見上げている。
真城朔
ミツルの内心も知らずにおどおどとミツルの顔を見ています。
真城朔
東北の冬の夜の寒さは関東育ちにはやや厳しく、
真城朔
だからこうして身を寄せ合っているとなおさらそれが実感させられる。
夜高ミツル
こうしてぬくもりを抱いて改めて、思ったより冷えていたことに気がつく。
夜高ミツル
委ねられるままに、その体重を受け止める。
夜高ミツル
街灯の頼りない明かりの下で、二人のシルエットが重なる。
夜高ミツル
触れ合うだけの口づけを交わして、顔を離す。
真城朔
そっと手を伸ばして、ためらいがちにミツルの唇に触れた。
夜高ミツル
触れ合っているところはあたたかいけれど
夜高ミツル
こうしてただ座っていると、外気の冷えもより感じる。
真城朔
ずっと触れ合っていたぬくもりがそこにある。