2020/12/上旬

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真城朔
玄関。
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真城朔
塞いだ表情でミツルを見ている。
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夜高ミツル
防寒具を着込んで、玄関に立っている。
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真城朔
真城はいつもの部屋着。
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夜高ミツル
「…………」
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真城朔
自分の部屋着の裾を掴んでうつむきがちに、ちらちらとミツルの顔を窺っている。
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夜高ミツル
髪を切りに行く。
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夜高ミツル
それだけと言えばそれだけのことなのだが……。
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真城朔
なにせ狩りの時を除いては四六時中一緒にいると言っても過言ではなく。
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夜高ミツル
過言ではないなあ。
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夜高ミツル
ただの事実……
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真城朔
そりゃトイレくらいは離れるけども……
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夜高ミツル
それくらいしか離れない……
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真城朔
ミツルが意図的に真城から離れたあの一日以来、ずっと。
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夜高ミツル
ミツルが真城を置いてどこかに行くようなことはなかった。
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夜高ミツル
真城がミツルから離れることも同様に、全くなく。
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夜高ミツル
そんなもんだから、小一時間程度の外出なのにやたらと後ろ髪が引かれる思いで……。
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真城朔
「…………」
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真城朔
短くなった後ろ髪。
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真城朔
前髪は、まあ、それほど違和感はない。
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夜高ミツル
ミツルが切りすぎた髪。
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真城朔
それそのものには全く頓着せず、
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真城朔
ただ、ミツルを離れることばかりを気にしている。
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夜高ミツル
「…………」
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真城朔
俯き、肩を落としている。
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夜高ミツル
手を伸ばし、真城を抱き寄せる。
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真城朔
「う」
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真城朔
抱き寄せられ、コートの肩に顔が埋まる。
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夜高ミツル
ぎゅう、と抱きしめ、頭を撫でて。
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真城朔
「…………」
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真城朔
されるがままに身を預けている。
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夜高ミツル
預けられた頭に頭を擦り寄せて、
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夜高ミツル
身体を離す。
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真城朔
離される。
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真城朔
瞳は名残惜しげにミツルを追う。
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夜高ミツル
「…………いって」
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夜高ミツル
「くる……」
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真城朔
「…………」
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真城朔
「いって」
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真城朔
「らっしゃい……」
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真城朔
目の端に涙を湛えて、俯いた。
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夜高ミツル
「…………」
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夜高ミツル
涙を浮かべる真城に、顔を寄せる。
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真城朔
「み」
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真城朔
「つ?」
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真城朔
僅かに顔を上げる。
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夜高ミツル
そのまま、唇を触れ合わせる。
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真城朔
一瞬目を見開いて、
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真城朔
すぐに目を閉じた。
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夜高ミツル
触れ合わせて、重ねて、すぐに離れる。
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夜高ミツル
「…………なるべく」
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夜高ミツル
「急いで、帰ってくる」
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真城朔
「…………」
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真城朔
ゆっくりと瞼を上げてから、頷いた。
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真城朔
「……まってる……」
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真城朔
か細い声で答える。
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夜高ミツル
「ん……」
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夜高ミツル
真城から離れて、ドアノブに手をかける。
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真城朔
名残惜しげにミツルを見ている。
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真城朔
顔を。その姿を。
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真城朔
背中を。
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真城朔
手元で小さくてのひらを振った。
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夜高ミツル
ミツルの方も名残惜しそうに振り向きながら、扉を開け
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夜高ミツル
「……いってきます」
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夜高ミツル
手を振って応える。
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真城朔
「……いって」
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真城朔
「らっしゃい」
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真城朔
手を振るのを止めず、ミツルを見ている。
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夜高ミツル
手を振り続ける真城を見ながら、扉を閉じた。
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夜高ミツル
店員のやる気ない声に見送られ、床屋を出る。
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夜高ミツル
とりあえず適当に短くしてもらう感じで、速さ重視で……
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夜高ミツル
そんな感じでカットしてもらい。
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夜高ミツル
真城に見送られてからまだ1時間も経ってないくらい。
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夜高ミツル
スマホを取り出して、LINEを立ち上げる。
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夜高ミツル
『終わった』
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夜高ミツル
『今から帰る』
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真城朔
『おつかれさま』
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真城朔
すぐ返信が来る。
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真城朔
『まってる』
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真城朔
『きをつけて』
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夜高ミツル
『ありがとう』
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真城朔
『うん』
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夜高ミツル
スマホをコートのポケットにしまう。
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真城朔
冬の札幌。雪道。
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夜高ミツル
未だに慣れない雪道に足を踏み出す。
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夜高ミツル
一歩、二歩と足を進め、
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夜高ミツル
やがて小走りになっていく。
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夜高ミツル
通行人を避け、冷たい空気を感じながら雪道を走っていき……
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夜高ミツル
ずべっ
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夜高ミツル
転んだ。
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夜高ミツル
「…………」
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夜高ミツル
高校生にもなって道で転ぶと恥ずかしい。
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夜高ミツル
高校生じゃないけど。
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真城朔
札幌あるあるなのか、通行人はあらあら……みたいな感じ。
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真城朔
大丈夫かな? みたいな目も多少は向いているが。
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夜高ミツル
気まずい気持ちで立ち上がる。
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真城朔
若くて頑丈で大丈夫そう~。
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夜高ミツル
軽く雪を払って、
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夜高ミツル
走らず、気をつけて、でも急ぎ足で……
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夜高ミツル
そんな感じで、帰路を辿る。
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夜高ミツル
それでも道中何度か滑りかけたものの……
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夜高ミツル
なんとか無様を晒すことはなく、マンションへとたどり着く。
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夜高ミツル
もどかしげにカードキーを取り出して入り口のロックを開け、
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夜高ミツル
エントランスへ。
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夜高ミツル
エレベーターのボタンを押す。
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夜高ミツル
幸い一階に止まっていたので、すぐに乗り込む。
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夜高ミツル
エレベーターが登っていく僅かな時間すら待ち遠しく、
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夜高ミツル
扉が開くとすぐに廊下に飛び出す。
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夜高ミツル
足音を響かせながら廊下を駆け、真城の待つ部屋の前へ。
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夜高ミツル
手に持ったままのカードキーで扉を解錠し、開ける。
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真城朔
すぐさま、
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真城朔
真城が胸に飛び込んでくる。
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夜高ミツル
「……ま、」
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真城朔
雪に濡れたコートを着たままのミツルにしがみついて、
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真城朔
その胸に顔を押し付けて、震えている。
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真城朔
外の寒気がマンションの部屋へと流れ込む。
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夜高ミツル
真城、と名前を呼ぶよりもはやく飛びつかれる。
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夜高ミツル
「…………真城」
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真城朔
それにも構わず寒いからでもなく、
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真城朔
ただ、小さく身を震わせていた。
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真城朔
「み」
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夜高ミツル
震える身体をぎゅ、と抱きしめる。
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真城朔
「みつ」
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真城朔
「ミツ……」
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夜高ミツル
「……真城」
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真城朔
泣き声。
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夜高ミツル
「…………ただいま」
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真城朔
「お」
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真城朔
「おか、え」
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真城朔
「り」
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真城朔
「ミツ」
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真城朔
「ミツ」
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夜高ミツル
「うん」
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真城朔
「ミツ……」
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夜高ミツル
「真城……」
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夜高ミツル
きつく、真城を抱きしめる。
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真城朔
抱きしめられてまた背を震わせて、
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真城朔
しがみつく腕に力がこもる。
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真城朔
「ミツ……」
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真城朔
「ミツが」
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真城朔
「ミツが、いる」
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真城朔
「ミツが……」
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夜高ミツル
体温で溶けた雪が、真城の髪をも濡らしていく。
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夜高ミツル
「うん」
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夜高ミツル
「いるよ」
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夜高ミツル
「帰ってきた」
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真城朔
「う」
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真城朔
「うぅ、う」
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真城朔
「あ……」
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真城朔
嗚咽。
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夜高ミツル
背中を撫でる。
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真城朔
それでもまだ震えている。
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夜高ミツル
撫でていたが、はたと気づいたように動きを止め、
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夜高ミツル
手袋を外す。
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真城朔
しゃくりあげては背が跳ねる。
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夜高ミツル
とりあえず靴箱の上にそれを置いて、改めて真城の身体に触れる。
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真城朔
外から帰ってきたばかりの肌には、真城の体温ですらあたたかい。
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夜高ミツル
いつもならミツルより少し低い真城の体温。
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夜高ミツル
それよりも尚冷えた手で、真城の背中を撫でる。
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真城朔
「ひ」
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真城朔
「うぅ……」
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真城朔
「ミツ」
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真城朔
「ミツ……」
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夜高ミツル
「真城……」
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夜高ミツル
「……一人にして、ごめんな」
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真城朔
顔を埋めたまま首を振る。
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真城朔
「こ」
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真城朔
「こん、な」
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真城朔
「たいした」
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真城朔
「ことじゃ、なく、て」
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真城朔
「……っ」
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真城朔
「ない……」
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真城朔
ないのに、と嗚咽を漏らす。
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夜高ミツル
「…………俺は」
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夜高ミツル
「俺も」
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夜高ミツル
「寂しかったよ」
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夜高ミツル
「早く帰りたくて…………」
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真城朔
「ぅ」
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真城朔
「うう」
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夜高ミツル
「…………」
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夜高ミツル
今更のように、雪が……と思ったが
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夜高ミツル
今更だし、言い出しづらいし……。
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真城朔
当然頓着する気配もなく。
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真城朔
部屋着が溶けた雪のしずくに濡れている。
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夜高ミツル
密着したまま、背中を撫でている。
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真城朔
撫でられ、震え、
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真城朔
息を吐いては整えようと。
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真城朔
都度、嗚咽。
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真城朔
「ミツ」
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真城朔
「ミツ……」
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真城朔
ぐしゃぐしゃの声で名を呼ぶ声。
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夜高ミツル
繰り返し、背中を撫でる。
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夜高ミツル
「うん」
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夜高ミツル
「いるよ」
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真城朔
「いる……」
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夜高ミツル
「いる」
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真城朔
「ミツ、が」
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真城朔
「いる……」
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夜高ミツル
「うん」
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真城朔
「い、っ」
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真城朔
「いなく」
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真城朔
「ならなか」
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真城朔
「っ……」
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真城朔
「ミツ……」
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夜高ミツル
「真城……」
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夜高ミツル
「……待っててくれて、ありがとう」
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真城朔
「そ」
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真城朔
「んな、の」
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真城朔
「いくらでも」
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真城朔
「いくらでも……」
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真城朔
「俺」
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真城朔
「俺、は」
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真城朔
「ミツ」
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夜高ミツル
「……うん」
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真城朔
「ミツのこ、となら」
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真城朔
「ぜんぜん」
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真城朔
「いくらでも」
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真城朔
「どれだけ、だって」
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真城朔
「俺」
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真城朔
「だって」
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真城朔
「ミツの、ほかには……」
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夜高ミツル
「……そんなに待たせたくないよ」
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夜高ミツル
「俺が無理、だし……」
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夜高ミツル
ぎゅ、とまた抱き寄せる。
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真城朔
「ぅあ」
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真城朔
「あ」
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真城朔
「あー…………」
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夜高ミツル
外気に冷えた身体が、真城の体温で温められていく。
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真城朔
全身が震えている。
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夜高ミツル
背中を撫でる。
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真城朔
ミツルに身を寄せてぐしゃぐしゃに泣きじゃくって、
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真城朔
背中を撫でられるたびに深く息を吸い込もうとして、
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真城朔
それに苦労している。
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真城朔
下手くそな呼気の音。
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夜高ミツル
あやすように、時折背中をとんとんと叩く。
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真城朔
玄関にその音がよく響く。
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夜高ミツル
撫でて、さすって、
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夜高ミツル
やがて真城の呼吸が落ちついた頃に
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夜高ミツル
「……とりあえず」
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夜高ミツル
「風呂、入るか……?」
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真城朔
「…………」
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真城朔
おずおずと顔をあげ……
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真城朔
ぐしゃぐしゃの顔のまま、小さく頷いた。
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夜高ミツル
ドライヤーの音が二人の部屋に響く。
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真城朔
風呂で散々泣いたので少し落ち着いた。
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真城朔
ミツルに身を委ねて温風を受けている。
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真城朔
いつもより乾きが早くなった。
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夜高ミツル
こうして、髪に指を通していると……
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夜高ミツル
自分が切った髪の……なんというか……
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真城朔
すかすか……
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夜高ミツル
失敗感が如実に伝わってきて……
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真城朔
ボリューム不足
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夜高ミツル
次は成功するぞ……という気持ちを新たにする。
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真城朔
真城はミツルの心中も知らず……
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真城朔
いっぱい泣き、疲れたため、ややうとうと……
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真城朔
ミツルの使っている方の枕がだいぶぐしゃぐしゃになっていた。
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夜高ミツル
あそこで泣いてたんだな……と思った。
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真城朔
ミツルが帰ってきて我に返って青ざめたりしてた。
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真城朔
洗濯しないと……
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夜高ミツル
指先が頭皮に触れ、髪をすき、ドライヤーの風を通していく。
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真城朔
触れられるたび、心地よさそうに目を細める。
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夜高ミツル
そうしていつものように乾かして、いつもより早く終わった。
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夜高ミツル
スイッチを切る。
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真城朔
おわった……
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真城朔
ぼんやりとミツルを振り返る。
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夜高ミツル
これもいつものように、頭を撫でて乾いたのを確かめる。
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夜高ミツル
…………
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夜高ミツル
ヨシ!
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真城朔
撫でられ……
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真城朔
ふにゃ……
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真城朔
ぼんやりと頭をミツルの手のひらへと寄せる。
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夜高ミツル
そのまま後ろから、真城を抱きしめる。
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真城朔
抱きしめられて体重をも預けた。
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真城朔
くて……
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夜高ミツル
ぎゅう……
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真城朔
ややそのまま寝入りそうな気配もある。
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夜高ミツル
「……寝る?」
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夜高ミツル
「ベッド行くか?」
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真城朔
「ん」
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真城朔
「んー……」
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真城朔
うとうとしつつも首を振る。
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真城朔
「ミツと」
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真城朔
「いる……」
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夜高ミツル
「…………ん」
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真城朔
そのまま脱力してミツルの胸に頬を預ける。
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真城朔
ぼー……
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夜高ミツル
体重を受け止める。
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夜高ミツル
お互いに、風呂で上がった体温。
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夜高ミツル
ぬくもりを分け合う。
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真城朔
あったかい……
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真城朔
ここちいい
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夜高ミツル
ぽかぽか……
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真城朔
ずっとこうしてたい……
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夜高ミツル
ミツルの方も同じ気持ちで、何をするでもなくただ抱きしめている。
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真城朔
穏やかなひととき。
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夜高ミツル
そうしながら改めて、
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夜高ミツル
すっかり真城と離れがたくなってしまったことを思い知る。
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真城朔
たった一時間……
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夜高ミツル
たった一時間のはずなのだが…………
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夜高ミツル
そのたった一時間離れていた分を取り返すように、身を寄せ合っている。
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真城朔
二度と離れたくないとでも言うようにしがみついてくっついて……
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夜高ミツル
一時間だって、真城と離れたくない。
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夜高ミツル
一人にしたくない。
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真城朔
ずっと一緒にいたい。
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真城朔
ふたりがいい。
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夜高ミツル
ずっと、そうして生きていきたい。
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夜高ミツル
身を寄せて、手を繋いで、体温を分け合って。
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真城朔
ふたりきり。
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真城朔
互いだけを望んで、いつまでも。
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夜高ミツル
お互いがいれば、他に
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夜高ミツル
誰も、何もいらない。