2020/12/23 朝
真城朔
食卓の準備をするミツルの一方で、真城はグラスに牛乳を注いでいる。
夜高ミツル
朝は簡単に、トーストとベーコンエッグ。
夜高ミツル
真城の方にはトーストを小さめに切ったものと、ベーコン。
真城朔
色々並べられるのを眺めながら冷蔵庫に牛乳を戻しに行きます。
夜高ミツル
食卓の方は準備ができたので、戻ってくるのを待っています。
真城朔
ちょっと前傾姿勢でいただきますしてから、箸を取って
真城朔
のんびりもぐもぐしてます。朝はいつにも増してテンポ遅め。
真城朔
ベーコンを半分くらい齧って飲み込んだところで、小さく切ったパンをさらに小さく齧っている。
夜高ミツル
「なんかそういうのを、したいなあと……」
夜高ミツル
「冬が終わったらまた出ていくから難しいんだよなあ」
真城朔
なかったし……みたいなことをぽつぽつ言っています。
夜高ミツル
「真城が祝ってくれて嬉しかったよ、俺は」
夜高ミツル
あとあれ以来めちゃめちゃキスしてくれるようになったし……
夜高ミツル
「そもそも真城に金持たせれてなかったからなあ……」
夜高ミツル
「逃げる時になんか持ち出す時間とか作ってやれなかったしな……」
真城朔
思い出したようにトーストにジャムを塗っています。
真城朔
具に果実が粒で入ってるタイプのよいジャム。
夜高ミツル
目玉焼きに手をつける。わりとしっかり焼き。
真城朔
塗ったはいいもののトーストをかじれなくなっている。
夜高ミツル
「……なんか、二人で使うものでも買う?」
真城朔
もぐもぐしているのでトーストに手をかけたが。
夜高ミツル
「プレゼントって感じじゃないかもだけど」
真城朔
かじりかけジャムを塗ったトーストに手をかけて止まっています。
夜高ミツル
言い出したはいいけど具体的に考えてなかったやつ。
真城朔
医療キットとか輸血パックとかが思い浮かんでいるけど流石に口に出さずにいます。
真城朔
小さめのパンならまぁまぁ食べられる。昼ごはんいらなくなったりするけど。
真城朔
ほどほどに朝を抜いたり。昼を抜いたり。色々。
夜高ミツル
そんな感じで、一緒に食事をする機会がだいぶ増えてきている。
真城朔
タンパク質中心に無理をしない程度に与えられています。
夜高ミツル
嬉しい。一緒に同じものを食べられるのも、自分の作ったものをおいしいと言ってもらえるのも。
夜高ミツル
以前に料理をもうちょっと頑張ってみようと思ったのも、そういえば真城が理由だったなとか思い出したりして。
真城朔
ミツルの内心を知ってか知らずか、最後のトーストのひとかけらを口に放り込んだ。
夜高ミツル
ミツルも同じくらいのタイミングで食べ終えて箸を置きます。
夜高ミツル
ミツルの方が量は多いものの、ペースが速いので。
夜高ミツル
いつものようにミツルが洗って、洗い終えると真城に渡していく。
夜高ミツル
まあやっぱりそんなに大した量でもないので、すぐに終わるでしょう。
真城朔
拭いた端から食器棚に戻しては流し台に戻っていく。
夜高ミツル
「明日雨降るから、出ないでいいように飯の材料と」
夜高ミツル
「あとは、小さいツリーでも買ってみようかなって」
真城朔
あんまりピンときていない顔で歯ブラシを手にとった。
夜高ミツル
「クリスマスとかすんのすげー久しぶり」
真城朔
を、歯磨きを終えていつもの場所に戻して、うがいをして。
夜高ミツル
真城に続いてうがいして、水を吐き出して。
真城朔
マンションに近いデパートはクリスマス間近なだけあって人が多く、
夜高ミツル
ぴっとりと寄り添いあって、二人でフロアをうろついている。
真城朔
人が近くを通るたびにミツルへの密着が気持ち強まる感じがする。
夜高ミツル
ミツルの方も、真城に壁側を歩かせたりなどの
真城朔
立ち並ぶ店を見るのが半々、通り過ぎる人を見るのが半々。
夜高ミツル
途中食洗機に一瞬惹かれたけど、さすがに半年しか使えないのに買う気にはならなかった。
夜高ミツル
今の、二人で後片付けするのもそれはそれで楽しいし。
夜高ミツル
概ね生活に必要なものはすでに買い揃えてある。
真城朔
雑貨店とか。靴屋とか。アクセサリーショップとか。そういうものが無造作に立ち並ぶデパート内をうろうろ。
真城朔
いまいちぴんと来ないままエスカレーターに乗って、別のフロアへ。
真城朔
さっきも思ったけど、家電もだいたい買っちゃったからな……みたいな顔。
真城朔
ヘアアイロンはいくらなんでも使わないだろう。
真城朔
でもほとんどミツに食べさせることになるんだよな……。
夜高ミツル
低温調理器とかそういうのがあるんだな~と眺めている。
夜高ミツル
「これを使うとゆっくり熱を通せるらしく」
夜高ミツル
「肉を柔らかく調理したりできるらしい」
夜高ミツル
水を張った容器のふちに棒を固定して水を加熱する。
夜高ミツル
「なんかこれでこう……水をいい感じの温度のお湯に……」
夜高ミツル
ミツルも実際に使ったことがあるわけではないので、使い方を眺めながら。
夜高ミツル
肉料理に色々使えるんだな~真城に食べさせたいな~。
真城朔
なんとなく、自分のためというのもわかっているので……。
夜高ミツル
「いや、こう……これを……買って……」
夜高ミツル
「真城に食べてもらうものを作るのではあるが……」
夜高ミツル
そんなことをぶつぶつとつぶやいている。
夜高ミツル
「なんかこう……二人で使うものからちょっと……外れるなと……」
真城朔
完全にこれはなんというか、不思議なガジェットを喜ぶ子供の心理ですが……
夜高ミツル
ちなみに低温調理器があるとローストビーフが作れる。
真城朔
そこそこ並んで、ラッピングとかも特になしでそのまま受け取って。
真城朔
二人で選んだ、二人の日々へのクリスマスプレゼント。
真城朔
こちらも控えめにですが真城にしてはかなりうきうきしています。
2020/12/24 昼過ぎ
夜高ミツル
今日明日は部屋でぬくぬくすごすぞ、という気持ち。
夜高ミツル
買ってきたブロック肉は、昨日の内に下味をつけて寝かせてある。
真城朔
その様子を対面キッチン越しにじっと眺めていました。
夜高ミツル
ということで、低温調理器は今日が初運転。
夜高ミツル
ぴかぴかの新品の低温調理器を、水を貼った鍋にセットする。
真城朔
手伝えることがあるわけではないのだがなんとなくエプロンを着ています。
夜高ミツル
ミツルも真城と揃いのエプロンをつけている。
夜高ミツル
説明書に改めて目を通しつつ、低温調理器の設定をしていく。
夜高ミツル
60℃でも55℃でもなくて57℃なんだな……。
夜高ミツル
よく分からないので、ネットで調べたレシピに従っている。
真城朔
でもなんかおもしろそうだな、という印象でそれなりに目が輝いています。
夜高ミツル
低温調理器が稼働し、表示されている温度が設定したものに近づいていく。
夜高ミツル
ビーフストロガノフの方の準備を進めていくつもりだったのに、思わず手が止まってしまっている。
夜高ミツル
見慣れないガジェットが動いているのを見るのは単純な楽しさがある。
真城朔
少し身を屈めて目線を低温調理器に合わせています。
夜高ミツル
そうして眺めている間に湯の温度が設定したものに達して、
夜高ミツル
言いながら、ジップロックに入れたブロック肉を取り出して。
夜高ミツル
下味のついたおっきい生肉をお湯に沈めます。
夜高ミツル
単純に楽しいのと、真城が楽しそうなので嬉しい。
夜高ミツル
すっかり止まっていたので、気を取り直してもう一個の調理を始めていく。
真城朔
低温調理器に夢中になっていたが、ミツルが手を動かし始めたのを見て思い出したようにそちらへ。
夜高ミツル
皮を剥いたたまねぎをまな板の上に置いて薄切りにしていく。
夜高ミツル
切れ味のいい包丁を使うとあまり目に染みない(tips)
夜高ミツル
そしてこの包丁は買ったばかりなのでよく切れる。
真城朔
深底の鍋に用意されていたバターを落として、加熱。
真城朔
ややぎこちないながらもへらで溶かし溶かし……
真城朔
ローストビーフと低温調理器で始まったので今日は結構テンションが高め。
夜高ミツル
バターが溶けたのを見て、横から玉ねぎを鍋に入れていく。
真城朔
入れられたばかりの玉ねぎをへらで混ぜている。
夜高ミツル
「そんな感じでしんなりするまで炒めてくれ」
真城朔
ミツルのやってきたのを見様見真似で混ぜてます。
夜高ミツル
こうして並んでキッチンに立っていると、なんか
夜高ミツル
一緒に暮らしてるな……という実感が改めて湧いてくる。
真城朔
やりすぎかな? という顔になって手を止めて覗き込んだりしている。
真城朔
火加減はミツに何も言われないから多分大丈夫で……
夜高ミツル
残りと言ってもあとはマッシュルームと牛肉くらい。
真城朔
ちらちらミツルの手元を見るが、火から目を逸らしてはいけないので真面目に鍋に向き合ってます。
夜高ミツル
玉ねぎが良い感じにしんなりしてきたのを見て、
夜高ミツル
真城は肉が好きだし、そもそもミツルも好き。
夜高ミツル
肉を入れるとまた元の場所に戻って、真城に鍋を任せる。
夜高ミツル
加熱しすぎると香りが飛ぶらしいので、こちらはもうちょっと後に入れる。
夜高ミツル
「ストロガノフさん家の料理みたいな由来らしい」
夜高ミツル
「レシピ調べた時にそんな感じの話を見かけた」
夜高ミツル
マッシュルームを切り終えると、包丁は一旦流しに。
夜高ミツル
軽く洗ってしまって、ついでに手も洗う。
夜高ミツル
火を扱ってなければ頭を撫でているところだった。
夜高ミツル
「もっとなんか……凝った料理かと思ったよな」
真城朔
覗き込んでいたけど、対面なのを思い出して出ていきました。
真城朔
当然ながら自分よりずっと手慣れているそのさまをまじまじ見ている。
夜高ミツル
デミグラスソースは何種類かあったので、せっかくだから高い方を買ってきた。
真城朔
ソースが投入されかなり料理っぽくなっているのでわくわくが増しています。
夜高ミツル
デミグラスソースに続いてトマトピューレも鍋に。
夜高ミツル
煮込みつつ、塩と胡椒を足して味を見る。
夜高ミツル
うーん……みたいな顔をして、さらに塩を振る。
真城朔
炒めるのはわかるけど、そういう手順はよくわからないので
真城朔
真城の中の料理してるのイメージがかなり強いシーンはこういうところかもしれない。
夜高ミツル
忘れてた……みたいな雰囲気でマッシュルームも入れる。
夜高ミツル
そもそもレシピだとマッシュルームじゃないから入れるタイミングが正確に分からない。
真城朔
そんなに加熱がどうこうの食材じゃないしなんとかなるだろう……
夜高ミツル
今度は小皿にちま、と盛って真城にも渡す。
真城朔
小皿にもうちょっと残ったやつをまた舐めて。
夜高ミツル
「あとは肉の加熱が終わったらって感じだな」
夜高ミツル
低温調理器はあと15分ほどかかる様子。
真城朔
動物園で小動物見てるときとかなり近いテンション。
夜高ミツル
手が空いたので意味もなく真城の頭を撫でる。
真城朔
ミツルに身を寄せながら、視線は低温調理器といった塩梅。
夜高ミツル
そんな感じでくっついている内に、タイマーが0に近づいていき。
夜高ミツル
ミツルの声も心なしどころではなくはずんでいる。
夜高ミツル
火が通った肉の、薄い茶色になっている。
夜高ミツル
肉を一旦置いて、フライパンを取り出す。
夜高ミツル
温まったところで、パックから取り出した肉塊を乗せる。
夜高ミツル
肉を回して、全体的に焼き目をつけていく。
夜高ミツル
「ちゃんと火が通ってなかったりとかさ~~」
夜高ミツル
「……いや、言っててもしょうがないけど」
夜高ミツル
断面は……よく見るローストビーフのピンク色。
真城朔
なるべく目線を近づけてローストビーフを見ています。
夜高ミツル
ちゃんと出来てるのが分かったので、一旦スライスする手を止める。
真城朔
見つつもちらちらと既にスライスされたローストビーフに視線が行く。
夜高ミツル
フライパンに残った肉汁を使ってソースを作る。
夜高ミツル
醤油をベースに、にんにくチューブとか料理酒とかを足していく。
夜高ミツル
それほど時間をかけず、ソースの方も完成する。
夜高ミツル
何回目かわからないが、すごいなと思っている。
真城朔
テレビの横でぴかぴかオーナメントを輝かせている。
真城朔
安いやつならだいたいこんなサイズだろって思ってたら安くておっきいやつあってびっくりしたな……
夜高ミツル
こんなにでかいやつがこんなに安く!?になった。
真城朔
100均で買ったクリスマスっぽいランチョンマットとか……
真城朔
戸惑ったけど、かかっているそれを眺めながら。
夜高ミツル
定番になりつつあるぶどうジュースも出したり。
夜高ミツル
「写真だとたま~にこういうの見たことあったけど」
真城朔
真ん中のローストビーフもちらちら見てます。
夜高ミツル
ブロックから作ってるので、できあいのものよりたくさんある。
真城朔
見られています。ローストビーフを見ています。
夜高ミツル
初めて作るものを食べてもらう時はいつもちょっと緊張する。
夜高ミツル
「家で作るとそういうとこ調整できるのがいいよな」
夜高ミツル
「買ってきたのよりしっとりしてる感じがする」
夜高ミツル
それで真城が喜んで食べてくれているので
夜高ミツル
「ちゃんとローストビーフになったなー」
夜高ミツル
「はは……」ミツのを連呼されるのでさらに照れてきた。
夜高ミツル
スプーンを取って、ビーフストロガノフの方に手を伸ばす。
夜高ミツル
「クリームかかったハヤシライスって感じだな」
真城朔
改めてビーフストロガノフに視線を向けます。
夜高ミツル
見た目通り、味もハヤシライスに近い印象。
真城朔
けっこう時間をかけてもぐもぐしてからローストビーフを飲み下し。
夜高ミツル
「クリームの分味がちょっとまったりしてる感じ」
夜高ミツル
「気になって一応調べたんだけど、どうもクリームかかってるかかかってないかの違いぐらいっぽいんだよな」
夜高ミツル
「ほんとはサワークリームってのをかけるらしいんだけど」
夜高ミツル
「サワークリームだとどうなるかは、またその内だな」
真城朔
頷きながら、ローストビーフをまた取りました。
夜高ミツル
合間に匙を置いて、またローストビーフに手を伸ばし。
真城朔
たぶんあんまり食べられないだろうな……と思っている。
真城朔
思っているけど、ローストビーフを食べている。
夜高ミツル
食べたいものを食べたいだけ食べてるのが嬉しい。
夜高ミツル
「なんだったら別に明日食べてもいいし、ケーキは」
夜高ミツル
真城がローストビーフで喜んでてうれしいなあになる。
真城朔
ペースを反省しているのか一旦箸を置いてミツルの顔を見ている。
夜高ミツル
「クリスマスってチキンの方がイメージあるけど」
夜高ミツル
またビーフストロガノフの方を食べはじめる。
真城朔
ローストビーフとローストチキンだとかなりイメージが違う。
真城朔
名前はビーフとチキンが入れ替わっただけなのに……
夜高ミツル
「それでできそうなら来年はチキンかな」
夜高ミツル
「そもそも来年どうしてるか分かんねえもんな……」
夜高ミツル
またこうしてどこかに暮らしてるのか、まだ旅してるのか……。
夜高ミツル
「そんでまあ、その内どこかに落ち着くことになったらまた買い直そう」
夜高ミツル
まあ半年使い倒せば十分元が取れた気になるだろうという判断。
真城朔
普通に買い直してもいいくらいの値段ではある。
夜高ミツル
「いっぱい使っていっぱい作るからな~」
夜高ミツル
ちょっとネットを調べただけで、思ったより膨大にレシピが出てきたので。
真城朔
ローストビーフの方に集中しているのであまりビーフストロガノフに手をつけられていない。
夜高ミツル
ミツルの方は米とビーフストロガノフのおかわりを取りに向かう。
夜高ミツル
一杯目の半分くらいの量をよそって戻ってくる。
夜高ミツル
ないとただ濃いめのハヤシライスになるので。
真城朔
けっこう気長にローストビーフを咀嚼して味わっています。
夜高ミツル
真城が好きなものは真城にいっぱい食べさせてやりたいので、あんまり自分からは箸を伸ばさない。
夜高ミツル
もっと食べたくなったらあとで切ればいいか~という感じ。
夜高ミツル
「真城とクリスマスっぽいことできて、楽しい」
夜高ミツル
「ツリー置いてみたり、ちょっと特別っぽいもん食ってみたり」
真城朔
ちょっと冷めてきたのを、ソース部分だけすくって口に含んだ。
夜高ミツル
「俺も調べてみるまでどういうのか全然知らなかったからなー」
夜高ミツル
「牛が入ってることしか分からない何か……」
夜高ミツル
「2年越しにリクエストに応えたかいがあるなー」
真城朔
ふっと瞳に涙が滲んで、その顔をうつむける。
真城朔
抑えられて涙を拭えなくて、ほろほろと頬を伝い落ちる。
夜高ミツル
嬉しくて、だから泣いてるんだろうなというのは、なんとなく分かってはいるんだけど。
夜高ミツル
「泣くくらいに、嬉しかったり、幸せだったり」
夜高ミツル
「でも、それくらいに思ってくれるのは本当に嬉しいから……」
真城朔
笑おうとしたけど、それがうまくできないでいる。
夜高ミツル
「……だから、気まずいとかじゃないから」
夜高ミツル
「真城が喜んでくれてるなら、それが俺には嬉しくて」
夜高ミツル
「真城が真城だから、なんでもしてやりたいし」
夜高ミツル
「色々気がついて、気にかけてくれたりとか」
夜高ミツル
「俺がすることに、いつも応えようとしてくれてるし」
夜高ミツル
「飯の時、色々感想教えてくれたりとかさ」
夜高ミツル
「ああいうの言ってもらえると、また頑張ろうって思うし」
夜高ミツル
「真城が思ってるより言ってもらえると嬉しいんだよ、そういうの」
夜高ミツル
「いつも俺の身体のこととか気にしてくれるし」
夜高ミツル
「でも、そうやって気にしてもらえるのは嬉しいよ」
夜高ミツル
「……心配してくれてるのに、危ないことするのは」
夜高ミツル
「……真城がやめてほしいならそうしてやれたらいいけど」
夜高ミツル
しょんぼりしているのをずっと撫でている。
真城朔
あまり量を盛っていないビーフストロガノフだけど、まだ半分は残っている。
真城朔
袖で涙を拭おうとして、止められたのを思い出して固まった。
夜高ミツル
かわりにミツルの掌がおりて、指先が涙を拭った。
夜高ミツル
真城のそれより少し硬い皮膚が、目元を拭う。
真城朔
ぐす、とまた鼻を鳴らしてからミツルを見る。
夜高ミツル
「俺は真城が食べて、美味しかったって言ってくれたらそれで」
夜高ミツル
離れる間際、軽く頭を撫でてから手を離す。
夜高ミツル
真城のビーフストロガノフの器を取って、自分の分にかけてしまう。
夜高ミツル
とは言え元々少なめによそっていたし、真城の分もちまっとだし。
真城朔
涙の跡が残ってはいるが、ひとまず泣き止んでいる。
夜高ミツル
さっさと食べちゃって真城とゆっくり話したい気持ちもあり。
真城朔
ぶどうジュースはまだ飲める。飲んでいます。
夜高ミツル
やや冷めてはいるがそれはそれでわりとおいしい。
夜高ミツル
という感じで、真城がジュースを飲んでいた横でビーフストロガノフを食べ終わる。
真城朔
ちょっとどうすればいいか分からなくておろおろしている。
夜高ミツル
ジュースを飲んで一息ついて、後片付けを始める。
真城朔
ミツルが後片付けを始めたのに合わせて腰を上げました。
夜高ミツル
いつもどおりな感じに片付け終わりました。
夜高ミツル
真城の身体に腕を回して、指先で髪をいじっている。
夜高ミツル
膝の上の真城を見下ろしながら、また頭を撫でている。
真城朔
疑っているというよりは、惑っているような視線。
夜高ミツル
くちゃっとしてしまった髪を、今度は手で整えていく。
夜高ミツル
「……俺は今のままでも困ってないけど」
夜高ミツル
「多分、真城が感じてることは俺が想像してるよりずっと多くて」
夜高ミツル
「それを整理するのは、難しいことだと思うんだ」
夜高ミツル
「気にしなくていいよって俺が言うのは簡単だけど」
夜高ミツル
「だから気にしない、ってわけにはいかないもんだろうし」
真城朔
ミツルの腹に顔を押し付けたまま小さく頷く。
夜高ミツル
「話したいことがあるなら、俺がいくらでも付き合うし」
夜高ミツル
「……それで真城が苦しいのは嫌だけど」
夜高ミツル
「だからって、無理にどうこうなってほしいわけじゃなくて……」
夜高ミツル
「……真城がどうなっても、それかもしかして変わらなくても」
夜高ミツル
これから何度もあるだろう狩りの全てを生きて帰れたとしても、
真城朔
ミツルの腹に顔を押しつけながら涙を圧し殺している。
夜高ミツル
……こんな風に自分に縋って泣く真城を、いつか置いて逝くことになるのだろうか。
真城朔
しばらくそのようにミツルのお腹で泣いていた。
真城朔
ミツルの腹を少し離れて、ちらりと表情を窺う。
夜高ミツル
固くなった掌に、真城の柔らかな肌の感触。
真城朔
しばらくその固い感触と、自分よりも高い体温を楽しんでいたが。
真城朔
指尖球のあたりに辿り着いて、指の股を分けて、
夜高ミツル
抵抗などするはずなく、真城がしたいままに任せる。
真城朔
熱くぬるついた口腔内へとミツルの指を含む。
夜高ミツル
今はテレビもついていない静かな部屋に、
真城朔
熱くて柔らかい舌が熱心にミツルの指を歓迎して、
夜高ミツル
やがて、唾液にぬるついた指が上顎の粘膜に触れる。
真城朔
半開きに鳴った唇の端からよだれが落ちて真城の首筋を伝った。
真城朔
ソファの上に横たわった膝が、内腿が擦り合わされる。
真城朔
唇は噛み締められるけれど辛うじて歯は開かれたまま、
夜高ミツル
余計に刺激しないようゆっくりと、指を引き抜く。
夜高ミツル
指先と真城の唇の間、唾液が糸を引いて、落ちた。
真城朔
ゆっくりと瞼を上げて、熱の灯った瞳でミツルを見上げる。