2020/12/31 夜明け前
2020年12月31日、早朝も早朝、夜明け前。
空がほの明くなってきた頃。
真城朔
マンスリーマンションの扉を開けながら、真城は気遣うようにミツルを見ている。
夜高ミツル
気遣われながら扉をくぐり、出かける前に玄関先に広げておいたブルーシートの上に立つ。
夜高ミツル
狩りの後の姿を他の住人に目撃されるのは……できるだけ避けたい。
真城朔
武装のベルトを外してブルーシートの上に下ろし、靴を脱ぐ。
真城朔
手袋を外して玄関先に置いてあったリモコンを手にとった。暖房をつける。
真城朔
ウェットティッシュを取った。ミツルにも差し出す。
夜高ミツル
「対策できる分だけは7月の時よりマシだけど……」
真城朔
だから大変だった、みたいなことをもそもそと言っている。
真城朔
ウェットティッシュで手を清めて浴室に繋がる扉へと手をかける。
夜高ミツル
「事故とかの心配しないでいいのは気が楽だな」
真城朔
血の落ちていないことを確認しながら洗面所へと。
夜高ミツル
眠気と疲れで受け答えがぼんやりしてきている。
真城朔
こちらは逆にまだ狩りの後なので比較的てきぱきしている。
夜高ミツル
真城を追って洗面所に入り、後ろでぼんやりと順番を待っている。
真城朔
とはいえすぐに風呂に入るのでそれほど丹念にではなく。
真城朔
泡もほどほどに洗い流し、ミツルに場所を譲るとうがいを始めた。
夜高ミツル
こちらもそこそこに手を洗って、うがいをして。
夜高ミツル
ミツルの方は太もも辺りが少し裂けて、血が滲んでいる。
真城朔
返り血の付着したそれを予め用意した黒い袋に突っ込んだ。
夜高ミツル
ズボンを下ろす時には、血で貼り付いた布が傷口を引っ張る痛みに少しだけ顔を歪めた。
真城朔
自分の服を脱いでしまってから思い出したようにヒーターをつけて、
真城朔
最後にもう一度ちらりとミツルを窺ってから、
夜高ミツル
待ってる間に洗濯機に洗濯物を突っ込んだり。
真城朔
磨りガラス越しに真城の身体がシャワーを浴びる様子が見える。
夜高ミツル
ドア越しに見える真城の姿に、あー血もあげないとなあとかぼんやり思った。
真城朔
気遣わしげにミツルに視線を向けながら身体を拭き始めます。
夜高ミツル
残りの服を脱いで洗濯機に突っ込んで、真城と入れ替わりに浴室へ。
真城朔
脱衣所の真城はそこそに身体を拭いてしまい、汚れた服などをまとめて出ていきます。
夜高ミツル
汚れやら、こびりついた血やらを洗い流していく。
夜高ミツル
このままぼやぼやとお湯を浴びていたい気持ちになるが、そうもいかないので。
夜高ミツル
ささっと頭や身体を洗って、浴室を出る。
真城朔
玄関口ではブルーシートの上に置いたコートや武装などがまとめ直されて、
真城朔
半分に折りたたまれたブルーシートに覆い隠されている。
真城朔
リビングではルームウェアを着た真城が医療キットを広げて床べたに座っていた。
夜高ミツル
首にタオルをかけた姿で、そちらへぺたぺたと歩いていく。
夜高ミツル
どうせすぐに手当してもらうからと、ルームウェアの下は履いてない。
夜高ミツル
言ったとおりに大して深い怪我でもなく、出血ももう止まっている。
真城朔
なるべく傷に障らないよう、こわごわ、弱い力で。
夜高ミツル
「……そこまで気使わないでも大丈夫だぞ?」
夜高ミツル
「……気にしてくれるのは嬉しいけどな」
真城朔
消毒が済んだらいつも使っている大きめの傷パッドを出して、ぺたりと貼る。
真城朔
濡れた髪を首筋にはりつかせながら、ぽろぽろと泣いている。
夜高ミツル
「……真城に怪我がなくてよかったよ、俺は」
夜高ミツル
「……真城に心配かけないでいいくらい、強かったらよかったんだけど」
夜高ミツル
「……真城にこうやって心配かけさせるの分かってて、俺は」
夜高ミツル
「真城を一人にしたくないから、一緒に行ってる」
夜高ミツル
「……真城がしたいこと、させてやりたいんだ」
夜高ミツル
「もっと言ってほしいくらいだけどなー、俺としては」
夜高ミツル
頬に触れていた手を下ろして、真城の身体に回して
真城朔
脚の傷に障ることのないよう腰が引けている。
夜高ミツル
腰が引けているのに気づけば、更に腕に力を込めて。
夜高ミツル
「真城が望むことを、俺は叶えたいんだよ」
夜高ミツル
「……全部叶えてやれたらいいんだけど」
夜高ミツル
「それで真城が一人で狩りに行くのは、嫌で」
夜高ミツル
「……こうして、泣かせるのが分かってるのに」
真城朔
濡れた髪、濡れた頬、震える身体をミツルに寄せて、
真城朔
やっとその背中に腕を回して、息を殺して泣いている。
夜高ミツル
「俺は真城といれたらそれで嬉しいんだから」
真城朔
ふと思い立ったようにちょっとだけ身体を離した。
夜高ミツル
濡れた髪の感触に、自分の肩にかけていたバスタオルを真城の頭に乗せた。
真城朔
腕をおろして気持ちおろおろしながら拭かれています。
夜高ミツル
タオルをどけて、乱れた髪を手ぐしで整える。
夜高ミツル
バスタオルはさしあたりソファの背にでもかけてしまう。
夜高ミツル
それから真城の手を引いて、ベッドの方へ。
夜高ミツル
色々片付けるのは……一旦寝て起きてからでいいだろという気持ち。
夜高ミツル
布団にくるまれて、二人で身を寄せ合う。
夜高ミツル
かなり寝入ったようで、頭は随分とスッキリしている。
真城朔
ミツルの胸元に頬を寄せた真城が、涙を滲ませながらミツルを見上げている。
夜高ミツル
そのまま手を頭に添わせて、ゆるゆると撫でる。
真城朔
髪を梳かれるままにうとうとと眠たげになってきた。
夜高ミツル
「これはまあ、やりたいことを通すために仕方ないから」
夜高ミツル
「……心配かけるのは、悪いと思ってるけど」
夜高ミツル
「狩りに行きたいのが真城のわがままっていうなら」
夜高ミツル
「それについていきたいのは、俺のわがままだから」
真城朔
ミツルの顔を見ていられなくなって、胸元に視線を落とす。
夜高ミツル
頭を撫でていた手がおりて、背中に回る。
真城朔
ミツルの手のひらがそこを柔らかく撫でる感触にぶるりと身を震わして、
真城朔
びくと肩が跳ね、額をさらにミツルの胸に押しつけて、
真城朔
見つめられてたじろぎ、おろおろと視線を彷徨わせ、
真城朔
消え入るような声でもごもごと抗弁している。
夜高ミツル
サイドボードに手を伸ばして、引き出しを開ける。
夜高ミツル
絆創膏やらハンドタオルやらを取り出して準備を整える。
真城朔
ぼんやりとミツルが準備をする様子を眺めている。
真城朔
準備が整っていくにつれ表情に後悔を滲ませていく。
夜高ミツル
いつでもどうぞとばかりに、真城の眼前に首筋がさらされている。
夜高ミツル
痛みは一瞬で、すぐに快感に取って代わられる。
真城朔
滲んだ血を逃さぬように舌を這わせてすくい取り、
夜高ミツル
そうされる度に、びく、と身体をこわばらせる。
夜高ミツル
なされるがまま、真城に身を委ねている。
真城朔
再びの新鮮な痛みを、這わされる舌と唇の熱が換えていく。
真城朔
背中に回った指がぎゅ、とルームウェアを握りしめて、
夜高ミツル
尚更に腕に力を込めて抱き寄せれば、熱を持った箇所が真城に当たる。
真城朔
溢れかけた血混じりの唾液すら惜しいとばかり、
夜高ミツル
息を荒げ、時折眉根を寄せて、真城に自身の血を供する。
真城朔
熱の籠もった息が真城の唾液で濡れた首筋にかかる。
夜高ミツル
そんな些細な刺激ですら、ひどく意識してしまう。
夜高ミツル
微かに血の残る唇に、それに構わずに唇を重ねる。
真城朔
身体と同じように、口の奥で舌を縮こめている。
夜高ミツル
それを捕らえるように舌を伸ばして、絡め取る。
真城朔
濡れた音が頭の奥から直接耳に響いて、熱をあげる。
夜高ミツル
貪りあうように唇を重ね、粘膜を絡ませる。
夜高ミツル
ルームウェアをまくりあげて、手のひらが素肌の上を這う。
夜高ミツル
骨の浮いた背中を、つ……と下からなで上げる。
真城朔
生肌に触れる他人の熱にぎくりと膝を跳ねさせた。
夜高ミツル
待ったをかけられて、少しだけ顔を離す。
真城朔
もじもじと膝を擦り寄せては唇を噛んでいる。
夜高ミツル
そそくさと、出しておいた絆創膏に手を伸ばした。
真城朔
電源のついたテレビからは紅白の歌が流れているが、あまり強い関心を持っている様子もなく。
夜高ミツル
買っておいたオードブルやローストビーフにサラダ。
真城朔
風呂上がりのルームウェア姿、ドライヤーも済んで落ち着いた様子。
夜高ミツル
流石に狩りの翌日ということで、全て出来合いのものを。
夜高ミツル
あとは冷蔵庫からジュースを取ってくる。
夜高ミツル
そんな感じで紅白をBGMに食卓を整えて、腰を下ろす。
真城朔
結局目の前のテレビの紅白よりも隣のミツルの方を見ている。
夜高ミツル
ミツルの方も、さしてテレビには興味なく。
真城朔
なんか男性アーティストがラブソングうたってるな……
夜高ミツル
時間はなんだかんだしてたら22時を回ってしまった。
真城朔
ブルーシートはまだ片付いていない。明日以降でいいかとなった。
夜高ミツル
「……何も知らないままだったら、きっと真城は俺が知らないところで死んでた」
夜高ミツル
「そりゃまあ、大変は大変だったけどさ」
夜高ミツル
「巻き込まれて良かったって思ってるくらいなんだからさ、俺は」
真城朔
目を閉じた。ので、そのぶんぽろりと落ちる。
真城朔
こわごわと少しだけ頭をミツルの方へと傾ける。
真城朔
ちょっとだけ名残惜しそうに食事に向き直ります。
夜高ミツル
「適当に割って、残りは俺の皿に置いていいから」
夜高ミツル
「食べれそうなだけ、無理せず取ればいいから」
真城朔
ちょっと悩んでから、さらにもう半分割った。
真城朔
残った1/2を箸でつまんで、ミツルの顔を窺う。
夜高ミツル
ミツルとしては真城が何か食べるだけで嬉しいので
夜高ミツル
食べきれない分を自分の皿に移されただけのことにも妙に満足げ。
真城朔
頬張るという程のサイズではないが、口に含んでもごもごと動かしています。
夜高ミツル
やはり嬉しそうに、真城が肉団子を食べる様子を見る。
夜高ミツル
真城が皿に置いた1/2肉団子を口に運ぶ。
夜高ミツル
狩りのあと何も食べずに寝たので、大盛り。
夜高ミツル
しばらく口をもごもごさせたあと、飲み込んで。
夜高ミツル
サラダはミツルしか食べないので取皿に移すこともなく、ひょいひょいと食べていく。
真城朔
ミツルがサラダをとってるのもじっと見てます。
真城朔
肉団子を飲み込んだので、ちょっと悩んでいます。
夜高ミツル
葉っぱに飽きたので春巻きに手を伸ばす。
夜高ミツル
春巻きの中心を箸で割った後、その更に真ん中辺りに箸を置いて
夜高ミツル
割ったものの真ん中側、具の多い方を真城の皿に移す。
真城朔
紅白はなんか有線でやたら訊くやつ流れてる。
夜高ミツル
そんなだから、この二人の食事は時間がかかる。
夜高ミツル
もっとも、食事に時間がかかったところで困ることもないので。
真城朔
それはそれとして、ミツルが食べていない様子だと
夜高ミツル
「中華じゃなくても色々入ってるやつは色々入ってないか?」
夜高ミツル
色々入ってるやつはそりゃ色々入ってるよ
真城朔
ぼや……としながら、気を取り直してローストビーフ取りました。
夜高ミツル
「カレーとかも色々入れたら色々になる……」
夜高ミツル
横目に真城を見つつ、エビチリを取ったりしている。
真城朔
明らかに気に入りになっている。ローストビーフ。
真城朔
そんなに味が濃いはずじゃないのに味がわかる
夜高ミツル
よかったなあという気持ちになりつつ、自分はエビチリを食べる。
夜高ミツル
真城の方はやっぱり見てるんだけど、まあ結構腹も減っているので
夜高ミツル
「年末はバイト代上がるから、去年一昨年はバイトしてたなー」
夜高ミツル
「年明けはさすがに親戚の家に顔出してたけど」
夜高ミツル
「飲食はみんなが休みの時が稼ぎ時だからな」
夜高ミツル
「まあ高校生だからあんま遅くまでいらんないんだけど」
夜高ミツル
「まあやることたくさんあるのは結構好きだけどな」
夜高ミツル
「暇すぎるよりはそっちの方が好きだったかな」
夜高ミツル
「真城といるなら忙しくても暇でもいいよ」
夜高ミツル
「まああと……いっぱい働いたから今は休憩って感じで」
夜高ミツル
「いつかはなんかしら働かないとだけどな~」
真城朔
迷い迷い、オードブルからエビチリを取った。
夜高ミツル
「二人でどっか給料もらえる感じの組織に入ってみるか?」
夜高ミツル
「他所までは回ってねえんじゃねえかなあ」
真城朔
少なくともここに至るまで同行した狩人にどうこう言われたことはない。一応。
夜高ミツル
バベルネットも定期的にチェックはしてる。
夜高ミツル
須藤がすっかり定番ネタになっていたりした。
夜高ミツル
「なんか……辛いトマトソースみたいな」
夜高ミツル
「チリのソースだからチリソース…………?」
夜高ミツル
またよかったなという気持ちになっている。
夜高ミツル
いくつか取皿に取って、それでご飯を食べる。
真城朔
知ってるけど特に着目もせずミツルの方を見ている。
夜高ミツル
聞いたことある歌声が流れてくるけど、それ以上でもそれ以下でもなく。
夜高ミツル
茶碗が空になったので、おかわりをよそいに腰を上げる。
真城朔
真城は真城でミツルがいっぱいたべるとうれしい。
夜高ミツル
一杯目よりは控えめによそって戻ってくる。
夜高ミツル
若いし運動したし食べてないのでいっぱい食べる。
夜高ミツル
真城を眺める作業がなくなるとペースが上がる。
真城朔
ちょっと気にしたふうにオードブルを見たりもしつつ。
真城朔
さっきからちょこちょこ酢豚を見たりしている。
真城朔
テレビはやっぱり聞いたことはあるが……みたいな感じのアーティストだな……
夜高ミツル
「野菜はまあその内、食べたくなったら食えばいいよ」
夜高ミツル
言いながら酢豚の豚を取って、真城の取皿に移した。
真城朔
酢しか残らないのに……みたいな気持ちでいる。
夜高ミツル
「ん」ついでに自分の皿にも酢豚を盛りました。
夜高ミツル
眺める作業が始まったので手が止まりがちになる。
真城朔
肉団子とか春巻きより硬いしローストビーフと違って火が通っているので、
真城朔
手が止まっているミツルを見て目が合いました。
夜高ミツル
誤魔化すように自分も箸を動かして、酢豚を口に運ぶ。
夜高ミツル
「酢豚も結構ほぼソースの味みたいなとこあるよな……」
夜高ミツル
もっと柔らかめの肉のほうがいいのかと思った。
真城朔
あるけど それはそれとして 肉の強さが……
夜高ミツル
ローストビーフ、今度作ってみるか……とぼんやり。
夜高ミツル
味の濃いものが続いたので箸休めにサラダに箸を伸ばす。
真城朔
酢豚、一度揚げた上に濃い味のソース絡めてるからますます肉の強さが強調されたのでは……?
真城朔
強かったので柔らかくて食べやすいお肉を食べています。
夜高ミツル
買ってきてよかったな~と思う(n回目)
夜高ミツル
ちなみにローストビーフにはほとんど手をつけていない。
夜高ミツル
真城に食べさせたくて買ってきているので。
夜高ミツル
という感じでミツルの方は主にオードブルに手を付けていき
真城朔
真城がもごもごしているうちにあいみょんミスチルSuperflyと来て天城越えが来ている。
真城朔
祖父母と暮らした経験の薄い二人だから演歌への馴染みが薄い。
夜高ミツル
そんな感じでだらだらと食事している内に二杯目のご飯が空になるのではないでしょうか。
真城朔
真城ももごもごとローストビーフを飲み下しています。
真城朔
危なくないのかな……みたいな気持ちもあります。
真城朔
ローストビーフを食べ終わって箸を置きました。
真城朔
ローストビーフは半分くらい残ってるのかな。まあ全体的に半分くらいは残ってそうだな……
真城朔
オードブルはさすがにもうちょっと減ってるか。ミツルくんがちゃんといっぱい食べるし……
夜高ミツル
ジュースとコップは残して、お皿などを片付けていく。
真城朔
オードブルはいったん冷ますのでキッチンに置き……
夜高ミツル
取皿と茶碗と箸くらい。調理をしないと洗い物がすくない。
夜高ミツル
スポンジで洗ってお湯で流して、真城にパスしていく。
夜高ミツル
「ありがとな~」と手伝いの礼を言って、キッチンを出る。
夜高ミツル
テーブルの前、今度は床ではなくソファに腰掛ける。
夜高ミツル
「さすがにあと1時間で蕎麦食う気にならないなー」
夜高ミツル
真城の背中から手を回して、頭に乗せる。
夜高ミツル
「なんか年明けっぽいものって色々あるけど、年末っぽいものって思いつかなくねえ?」
夜高ミツル
「年明けだったらおせちとか雑煮とかあるのに」
真城朔
ぼんやりと松田聖子だな……と思っています。
夜高ミツル
「その頃には作れるものも増えてるだろうし」
夜高ミツル
俺が食べたいもの、概ね真城が食べたいものとなりそうだけど……。
夜高ミツル
こちらも頭を傾けて、こつ、と合わせる。
真城朔
ドライヤーをされた髪のさらさらとした感触。
夜高ミツル
瞼を伏せたのを見て、そのまま唇を寄せる。
真城朔
受け入れて、下ろしたままの指先がミツルのナイトウェアの裾を掴む。
夜高ミツル
お互いに正面を向いていたはずが、向かい合うような形に。
真城朔
向かい合う形になって、おずおずと背に回る。
夜高ミツル
舌を絡ませあう水音ばかりが頭に響いた。
夜高ミツル
水音や、その合間に漏れる吐息。衣擦れ。
真城朔
息を継ぐ間に意味のない音を漏らしては唇を重ねて、
夜高ミツル
合間に漏れる真城の声を、耳は敏感に拾い上げる。
夜高ミツル
その熱をもっと感じたくて、服の下に手を滑らせる。
真城朔
物欲しげに腰が揺れて、硬い熱をミツルに押し上げる形になって、
真城朔
それにも気付けない様子で真城はぐったりと横たわっているが。
夜高ミツル
日付が変わったということは、年が明けたということだ。
夜高ミツル
切り出したものか迷いながら、指先は真城の髪を梳いている。
夜高ミツル
せっかくの……二人で初めての年越しが……。
真城朔
髪を梳かれながら、やがてゆっくりと瞼を上げた。
真城朔
熱の名残の感じられるとろとろとした瞳でミツルを見ている。
夜高ミツル
ぐにゃぐにゃと、どうしようかなと思っていたが、結局
真城朔
ミツルの腕の中、ためらいがちに挨拶を返した。
夜高ミツル
抱きしめて、それから名残惜しげに腕を離して
夜高ミツル
両手に持った内の一つを真城に差し出した。
夜高ミツル
もう一つを持って、こぼさないようにベッドに腰を下ろす。
真城朔
コップに口づけて、やや首ごと上向いて水を飲んで、
真城朔
ほうと大きく息をついてコップを持った手を下ろす。
真城朔
ベッドの上にぺたんと座ってぼんやりしている。
真城朔
裸のまま。暖房とヒーターのめちゃめちゃ効いた部屋で。
夜高ミツル
空になったコップを取って、二つまとめてサイドボードに置いてしまう。
夜高ミツル
薄めのタオルケットを一枚引っ張って、二人でくるまる。
夜高ミツル
タオルケットの下、手のひらが真城の素肌を撫でる。
真城朔
自分でそれを望んだはずなのに、どこか戸惑うように視線を彷徨わせたが。
真城朔
触れる手のひらの感触に安堵した様子で息をついた。
真城朔
閉じた目の端に涙を滲ませて、小さく微笑む。
夜高ミツル
手のひらは変わらないリズムで背中を撫でている。
真城朔
飽きるほど呼んだはずの名前をなお繰り返して、
真城朔
眠気に浮いた声のまま、ぱちりと目を瞬かせる。
真城朔
一糸まとわぬ肌へと涙のしずくが伝い落ちて、
真城朔
抱き寄せられて重なった胸と胸の中で潰れた。
夜高ミツル
「真城と年を越したんだなあって思って……」
夜高ミツル
「こうなる前まで全然、考えてなかったから」
夜高ミツル
抱き寄せて、肌を重ねた部分で真城を感じている。
真城朔
汗やら何やらでいささかべたついてはいるけれど。
真城朔
いつしかミツルの背中にそっと腕を回し、低いところに手を添えている。
真城朔
触れて、熱を分けて、けれど穏やかなままに。
夜高ミツル
「まあ見れたら見るか~って感じで……」
真城朔
目を伏せて、ミツルの胸にぐりぐりと頭を寄せる。
真城朔
そうしてしがみついている身体からはやがて少しずつ力が抜けて。
夜高ミツル
撫でる手のひらも、寝かしつけるようにゆっくりと。
夜高ミツル
そっとベッドから抜け出して、ついでにコップも流しに持っていって。
夜高ミツル
なるべく静かにベッドに上がって、真城の身体をタオルで清める。
夜高ミツル
起こさないようにそー……っと、一通り汚れを拭い去って、
夜高ミツル
ついでに自分の方もぱぱっと拭いてしまって。
真城朔
いくらか声が漏れることはあったが目を覚ます様子はなく。
夜高ミツル
終わるとタオルを洗濯機に放り込んで、またベッドに戻る。
夜高ミツル
ベッドの上に散らばってたゴミとかも捨てた。
真城朔
拭いてもらったので気持ちよさそうな気がする。
夜高ミツル
後始末を終わらせて真城の隣に寝転んで、布団を被る。
夜高ミツル
返事を期待するでもなく声をかけて、まぶたを閉じる。
2021/1/1 日の出前
夜高ミツル
どうやら、無事日の出前に起きられたらしい。
真城朔
その隣で相変わらずすやすやと寝入っている。
夜高ミツル
日の出は7時頃だから、ちょうどいい時間だ。
真城朔
ゆすられてもにゃもにゃと首を竦めたりなどしています。
夜高ミツル
下着と部屋着を2セット引っ張り出して、片方を真城に渡す。
夜高ミツル
下着を履いて、その上に部屋着を着る。真城よりはテキパキと。
真城朔
ミツルに遅れてのろのろと部屋着を着込んで、ぼんやりとベッドの上に座っている。
真城朔
夜色の瞳が窓越しに、朝を迎えつつある街を見つめている。
夜高ミツル
地平線から昇りつつある朝日が街を照らす。
夜高ミツル
街中に積もった雪が、光を跳ね返している。
真城朔
夜を裂いて立ち昇る光のこの上なく眩しいことは、狩人であればよくよく知っているが。
夜高ミツル
「狩りの時の日の出は、あ~終わった~って感じだけど」
夜高ミツル
会話を交わすうちにも、太陽はゆっくりと昇っていく。
真城朔
ぴったりとミツルにくっついて太陽を見上げている。
真城朔
こちらはもっと眩しそうに目を瞬いたり時折顔を伏せたりしている。