2021/01/19 21時
雪は音もなく降り積もって札幌の街を白く染め上げ、
街灯を反射して雪明かりに柔らかく光を放っている。
屋根も塀もどこかしこにも雪が積もっているが、道路の雪は除雪パイプによってほどほどに融かされているか、あるいは踏み固められているか。
夜高ミツル
ざくざくと、降り積もった雪を踏みしめる。
真城朔
ミツルの少し後ろできょろきょろと雪を見回している。
夜高ミツル
北海道の雪が初めてというわけでもないのだが、
夜高ミツル
千葉は雪が降らない方だっただけに、未だに慣れない。
真城朔
除雪パイプのない細い道をスノーブーツで踏みしめながら歩くと、ぎゅっと音が立つ。
夜高ミツル
「でもこれでも積もってない方なんだよな……」
真城朔
積もった雪を掻き分けながら、公園に続く細い道を行く。
真城朔
先駆者が真ん中に人一人分の道を作っては上から雪が降り積もって、
真城朔
それをまた開拓者が再び道を作り、というのを繰り返していると、
真城朔
道の両脇にこんもりと雪が積もって、その真ん中を進んでいく形になる。
夜高ミツル
「こんな真っ白なの千葉では全然見ないし」
真城朔
通りすがった民家の屋根に雪が積もって、その端から大きな氷柱が伸びていたりする。
真城朔
厚手のダッフルコートと、ぐるぐる巻きのマフラーと、防水性の手袋と帽子と……
真城朔
今も静かに雪が降っているが、服に張り付く類のものではない。
真城朔
服とか布に張り付くタイプの雪は大変。鞄にもつくし。
真城朔
公園の電灯はひときわ眩しく雪を照らしている、ような気がする。
夜高ミツル
とはいえまあ、結構浮ついたテンションではいる。
真城朔
昨今の事情によって遊具が減ったので、かなりだだっ広く雪、雪。
夜高ミツル
「こんだけ積もると夜でも明るいもんだな……」
真城朔
昼の間に子どもたちが遊んだ跡や作りかけの雪だるまが何個か。
夜高ミツル
「スキーで雪焼けするとかも聞くしなあ」
真城朔
足跡とかけっこう残って、ほどほどに踏み固められて、それでも地面が見えない程度の雪。
夜高ミツル
7月の時は昼間だったりそれどころじゃなかったりで、雪明りを実感している暇がなかった。
夜高ミツル
ので、北海道に来て改めてこういうもんか~と思っている。
真城朔
ブランコとか滑り台とかジャングルジムくらいはあるんだけど、結局雪に埋め尽くされている。
真城朔
多少雪が払われて人が座った跡のあるベンチの上にも薄く雪が。
夜高ミツル
ちょっと考えて、でも結局ベタなやつしか思いつかず
真城朔
ちょっとした枝や葉や凹みでなんとか顔を作られたりした上にまた雪が積もった不格好な雪だるま。
夜高ミツル
言ってから、子供っぽかったか……?という気もしていたが
夜高ミツル
「……千葉だとほら、こんな、作れるほどあんま積もんないしな」
夜高ミツル
とかなんとか、謎の言い訳めいたことを言いつつ
真城朔
昼に子供が作ったらしき雪だるまは形は不格好ながら茶色くはない。
真城朔
おずおずと比較的雪が踏み荒らされていないあたりに向かって
夜高ミツル
近くで、とはいえ雪を取り合わない程度には距離を取って
真城朔
まあまあの大きさになったあたりでやはりなるべく新雪の多い方に雪玉を転がし……
夜高ミツル
「雪をとっても全然地面が見えねえ……」
真城朔
ここに来るまでの間に脛から膝くらいまで積もった雪を掻き分けてきたので
真城朔
ちょいちょいズボンが濡れたり雪がついているのだが
夜高ミツル
相当積もってるのは見て分かってはいたが、
夜高ミツル
改めてすごいな……という気持ちになる。
真城朔
雪がいっぱい積もっているので地面が露出しないぞ。
夜高ミツル
膝下まで雪に埋まるのなんて初めてだし。
真城朔
流石にこの寒波でこの冬一番くらいには積もっている。
夜高ミツル
ごろごろと、二人きりの公園で雪玉を転がす。
夜高ミツル
完全に雪玉を転がして楽しくなっていた。
真城朔
ちょっといびつな形になっているのを叩いたり削ったりしている。
真城朔
今のサイズだとまあ昼に子供が作ったのと同じくらいですね。
真城朔
積もるタイプの粒の大きな雪に変わりつつあるが、
夜高ミツル
とか、やけにテンション高く宣言しつつ、
夜高ミツル
手袋の雪を落としたあと、真城に積もった雪を払う。
真城朔
自分も雪を払ってから手を伸ばして、ミツルの癖のついた髪に絡んだ雪も払う。
真城朔
蛇行気味に雪玉を転がして雪を拾っていきます……
夜高ミツル
なんかまあこんなもんだろと受け入れつつ
真城朔
無駄に腕力があるため、雪玉が大きくなってきてもあんまりペースが落ちない。
夜高ミツル
遊んで帰るだけだから狩りのときより全然マシ。
真城朔
腕力に任せて余裕綽々で雪玉を転がしている。
夜高ミツル
こちらはさすがに雪を拾うほどにペースが落ちていく。
真城朔
転がしていたのだが、調子に乗ったのかずるっと滑った。
夜高ミツル
焦ってこちらも滑りかけつつ、真城の元に駆け寄る。
真城朔
覆いかぶさる形のミツルと雪玉に電灯の光を遮られて、それでも雪明かりの中ふにゃふにゃと笑っている。
夜高ミツル
真城に抱きとめられたまま、なんとなく立ち上がれず。
真城朔
ミツルを受け止めた抱き留めたまま身体を横に転がして、
真城朔
雪に埋まりながら、すぐ近くで視線を合わせる。
夜高ミツル
雪に埋もれた部分も触れられた部分も冷たくて、
真城朔
冷たい雪に囲まれる中で、お互いの熱だけが暖かい。
夜高ミツル
離れても、吐息が感じられる程度には至近距離。
真城朔
雪に濡れて染みて、コートにもブーツにも覆われていないズボンの脚が冷たい。
真城朔
きょとんと倒れ込んだままミツルを見上げる。
真城朔
マフラーにも髪にも雪の塊がくっついているが、
真城朔
ミツルもやや似たようなものなので、手を伸ばしてそれを取っている。
真城朔
こめかみのあたりから頬をつーっと伝い落ちた。
夜高ミツル
お互いについている雪を取ったり払ったり。
真城朔
まあこのまま積んでも最大と言っていいだろう。
夜高ミツル
そこそこの大きさに育てた雪玉を見やる。
夜高ミツル
入り口からちょっと外れた適度に端の方。
夜高ミツル
ちょっと遅れて、ミツルの方もたどり着く。
真城朔
真城のがちょっと大きすぎるだけでなかなかのサイズ。
真城朔
胸で受け止めて掬い上げるような抱え方で……
真城朔
真城に腕力があるので、そんなに苦労しない。
真城朔
勢いちょっとバランス崩しかけたけどなんとか脚を踏みしめ。
真城朔
掛け声とともに更に持ち上げて、雪玉の上に。
真城朔
首が落ちないように上からちょっと圧をかけている。
夜高ミツル
完成した雪だるまを見て、周囲のものを見回して
真城朔
手袋で顔のない雪だるまをよしよし撫でます。
夜高ミツル
「真城がかなりでかくしてくれたからな~」
真城朔
濡れた髪が頬に張り付いたり額に張り付いたりしている。