2021/01/26 夕方
夜高ミツル
二人でリビングのテーブルの前に並んで座る。
夜高ミツル
具材の入ったボウル。皮。水を入れた器。
真城朔
見慣れないものに向ける視線をきょろきょろと巡らせている。
夜高ミツル
包んだ餃子を置くために、テーブルにラップを敷く。
真城朔
手伝いたい気持ちとどうすればいいかわからない気持ちで手が行ったり来たり。
真城朔
結局ミツルに任せるべく手が引っ込んでいる。
夜高ミツル
おろおろしている間に準備が整った様子で。
夜高ミツル
真城が頷いたのを見て、餃子の皮を一枚手元に取る。
真城朔
両手をテーブルの上に置いてミツルの手元を見ている。
真城朔
膝の上に下ろしちゃうと洗ったのが台無しだから……
夜高ミツル
スプーンで具を掬って、皮の真ん中に乗せる。
夜高ミツル
「具が多すぎると包めなかったり破けたりするから」
夜高ミツル
「最初はちょっと少ないかも?くらいが楽かな」
夜高ミツル
「足りないかなって思って足すと結構失敗する」
夜高ミツル
お手本になるように、なるべくゆっくり丁寧に皮を閉じる。
夜高ミツル
手の上に、餃子の形が出来上がっている。
夜高ミツル
「きれいに作るのは多分慣れがいるから」
夜高ミツル
「形よりも、しっかりとじるのを気にしてくれれば大丈夫」
夜高ミツル
「くっついてないところがあると、焼いてる時に中身がこぼれたりするから」
真城朔
ミツルの手の上の餃子と餃子の皮と肉の入ったボウルとを見比べている。
夜高ミツル
ちなみに具はキャベツ、合挽き肉、ニラ、ネギ。
真城朔
皮の真ん中で不器用にスプーンを振っている。
夜高ミツル
今度はミツルが具をすくって、皮の上に乗せる。
真城朔
多すぎる気がするけどそのまま皮の周囲をなぞって
真城朔
打ち粉のついた水が白くなって皮の周辺を汚しています。
真城朔
なんかスタートから間違ったような気がするような
夜高ミツル
「次の分からはもうちょっと少なめにしたらいいから」
夜高ミツル
具材が落ちたり皮が破れたりしないようにしつつ、自分の手前に持ってきて。
夜高ミツル
「水が少ないとくっつかないけど、多すぎると破れやすくなるから」
夜高ミツル
「最初はな~、俺もよく失敗したから……」
夜高ミツル
「最初からうまくできるやつなんていないから」
真城朔
しょぼしょぼしながらミツルの持っていったのを見ている。
夜高ミツル
濡れた餃子の皮を持ち上げて、丁寧に包んでいく。
夜高ミツル
具材が少なかったからか、なんとか破けはしなかった……。
夜高ミツル
「一気に水をつけないで、何回かに分けてつけていくといいかも」
夜高ミツル
気持ち小さめの餃子を、最初に作ったものの隣に置いた。
真城朔
真城が肉を運んで濡らしてミツルくんが包んだややちび餃子
真城朔
拭いたので、さっきよりもかなり恐る恐るの手付きでまた皮を取ります。
夜高ミツル
指先を濡らして、さっき作る予定だった方の餃子を包むのを再開する。
真城朔
スプーンから具を落とす手つきがすでにぎこちない。
真城朔
指先にちょっとだけ水をつけて、餃子の皮の縁に触れる。
真城朔
ミツルがねじねじやってる間にもたもたと……
夜高ミツル
包みながら、真城の様子も気にしている。
真城朔
皮の周りを濡らしきれなかったのでまた指で水を取って……
夜高ミツル
多すぎるよりは少なめから様子を見る方が大体良い。
真城朔
4回くらいに分けてなんとか皮の周りをうっすら湿らせた。
真城朔
またぎこちない手つきで具を置いた皮を持ち上げて
真城朔
具をくるんで、皮の端っこ同士をくっつける。
真城朔
半月の真ん中から右までなんとか閉じました。
真城朔
くっついてるけどなんかぐにゃぐにゃになっている……
真城朔
ミツルが並べた餃子と自分の手元の半分閉じかけと
夜高ミツル
あんまり色々言うと気をつけるところが多くなりすぎるかな……という気持ちもあり。
夜高ミツル
どれだけ口を出したものかやや悩んでいる。
夜高ミツル
「結構、軽く閉じたらそれでくっつくから」
真城朔
左の半分だけ折り目がガバ気味になっている……
真城朔
なってはいるが、なんとかくっつけて 折り目を作って
真城朔
でもまあミツルが言うならそうなんだろう……みたいに頷いています。
夜高ミツル
「ちょうどいい量とか、きれいな形とかは作っていく内に慣れていくから」
夜高ミツル
作るのは久しぶりだけど、案外身体が覚えている。
夜高ミツル
「俺が初めて作ったの、ボロボロだったからな」
夜高ミツル
「あとは俺がもうちょっとうまく教えられたらいいんだけど……」
夜高ミツル
「具はさっきのよりもうちょっと多くてもいいな」
夜高ミツル
そのまま自分の皮に乗せて、真城にスプーンを渡す。
真城朔
見様見真似でどうにか同じくらいをすくい取る。
夜高ミツル
「具を乗せて包むだけって、言うのは簡単なんだけど」
真城朔
すくい取った具を、がんばって皮の真ん中に落としています。
真城朔
置くっていうか、かなり手つきが落とす感じになっている。
夜高ミツル
「そういう、結構慣れに頼る部分が多いというか」
真城朔
真ん中をくっつけてからまた右に向けてよっていきます。
真城朔
折り方の角度は不格好ながらも、先程の力の入り方よりはかなりまし。
夜高ミツル
自分の方も指先に水をつけて皮を濡らし、包んでいく。
真城朔
角度が極端だったり 折り目同士が逆ハの字っぽくなったり
真城朔
うーんな感じになりながらも端っこまで辿り着いて
真城朔
いちいち時間がかかるのでその分力が加わりすぎている。
夜高ミツル
真城が包んでいる間に、一つ包み終わる。
夜高ミツル
等間隔に折り目がついた餃子を、できあがったものゾーンに並べる。
真城朔
できたものとするが、やはり先程よりはましながら、
真城朔
空気が入っている感からは逃れられない感じの出来上がり。
真城朔
うーん……? となりながらも隣に置きました。
真城朔
できたものゾーンにいびつな2号が置かれる。
真城朔
自分が作ったやつめちゃめちゃわかりやすい……
夜高ミツル
あんまり一度に言うのもなあという感じで、その辺はもうちょっと慣れてきた頃に言うか……と思う。
真城朔
自分が作れば作るほど不細工な餃子が増えていくのでは……
夜高ミツル
首をかしげて、手を止めた真城の方を見る。
真城朔
並んだ餃子を睨んでいます。自分の作ったやつを。
夜高ミツル
「作っていくうちにきれいに作れるようになるよ」
夜高ミツル
「あと単純に、一緒にした方が俺は楽しい」
夜高ミツル
「真城が包んでくれたやつ食べれるのも楽しみだし」
真城朔
慣れてもミツルみたいにうまくやれる気がまるでしない……
真城朔
一緒にしたほうが楽しいのなら、そうした方がいいのだろうとは思う。
夜高ミツル
「包むのは俺とめぐるの担当だったんだけど……」
夜高ミツル
「飽きてどっか行って、それで大体俺がやることになってたから」
夜高ミツル
「まあそういうわけで、俺はそれなりに経験値を積んできたので……」
真城朔
流石に相当泣きたくないらしく堪えている気配がある。
真城朔
ぎこちなく手を伸ばして具をすくうスプーンを取った。
真城朔
落ちたけどスプーンに張り付いた具がちょっと残ってる。
夜高ミツル
落とす用のスプーンをもう1個持ってきたらいいなと、今更思い至った。
夜高ミツル
「……スプーン、もう1個持ってくるな」
真城朔
なんで渡されるのかわからないので目を丸くしました。
真城朔
使い方に思い至ったのか、渡されたほうのスプーンを使って
真城朔
あんまり気にしないでそのまま指を水にひたして
夜高ミツル
置かれたスプーンを取って、二本使って具を皮の上に置いた。
真城朔
ちょっと多い気がする。最初よりはマシだが……
夜高ミツル
「……真城がつらい思いをするなら、俺はしたくないんだ」
夜高ミツル
「俺は本当に真城のせいじゃないと思ってるし」
夜高ミツル
「でも、真城に気にするなってのも難しいと思うから」
夜高ミツル
「だから、もし聞きたくないなら本当にそれでいいんだけど」
真城朔
なのを自覚するので、しょんぼりと肩が落ちる。
真城朔
涙を滲ませたまま、恐る恐るミツルの顔を見る。
夜高ミツル
「そういう風に言ってもらえるのが、嬉しかったから」
夜高ミツル
「どうしても、それは難しいとも思うから……」
夜高ミツル
「俺は、俺の家族のこと、できれば真城にも知ってほしいって思う」
夜高ミツル
「……また何かあったら話しても、いいか?」
夜高ミツル
「俺は、うちのことを真城に知ってほしいし」
夜高ミツル
「真城にも、もっと話してほしいなって思う」
真城朔
俯いたままちらちらと目線をミツルの顔にやっている。
夜高ミツル
「だんだん、そういうのがお互い普通に話せたらいいなって」
夜高ミツル
「真城の大切な人の話を、俺は知りたい」
真城朔
視線の向ける先に迷って、ミツルの胸元からついに包む前の餃子に移ってしまったが、
夜高ミツル
「真城が話したいと思ったら、いつでも聞く」
夜高ミツル
「……ていうか、俺の方が今する話じゃなかったな」
夜高ミツル
すっかり放置してしまった餃子に目を向ける。
真城朔
なりながら、ぼんやりと餃子の皮を持ち上げた。
夜高ミツル
「俺がもっとはやくちゃんと聞いてればよかったことだから」
夜高ミツル
「……まあ、それくらいなら大丈夫だから」
真城朔
確かに中身がボロボロ溢れるほどの穴ではないが。
真城朔
めちゃめちゃ不格好な餃子を、でもとりあえずできたものとして置いた。
真城朔
穴が空いたからか逆に空気あんまり入ってない。
真城朔
これでいいのだろうか……みたいな目で見ている。
夜高ミツル
大丈夫かな……という目に察して声をかける。
夜高ミツル
真城を見ていて包みかけだったのを再開する。
夜高ミツル
とはいえ半分ほど閉じてあったので、すぐに終わり、
真城朔
そんな感じでもくもくと餃子を包んでいき……
夜高ミツル
さすがに経験の差があるので、最終的にミツルが包んだ数のほうが多くなった。
真城朔
もともとめちゃめちゃ差をつけられているので……
真城朔
出来上がり品のうち1/4くらいが不思議な形。
真城朔
少しずつコツを掴んでいったのか、だんだんマシな形のものは増えている。
夜高ミツル
最初だからそんなもん、とミツルは笑っていた。
夜高ミツル
だんだんうまくなるからまたやろうなとも。
夜高ミツル
包んだ餃子の内、半分はタッパーに詰めてそのまま冷凍庫へ。
夜高ミツル
さすがに全部一度にフライパンには乗らないので、2回に分けて。
真城朔
フライパンの上に餃子をきれいに並べたのも当然ミツル。
夜高ミツル
底が焼けてきたので、お湯を注いで蓋をする。
夜高ミツル
水が蒸発して、蓋の内側に水滴がついていくのが見える。
真城朔
蓋が上がって、おおーという顔になりました。
夜高ミツル
一気に湯気が立ち、餃子の香ばしい香りが台所に広がる。
真城朔
あんまり蒸気を閉じ込め過ぎるとフニャになるのでふんわり程度に……
真城朔
前の餃子の肉汁の残りがいい匂いをたてている……
夜高ミツル
隣のコンロにも火を点けて、朝の味噌汁の残りを温める。
真城朔
ちらちらと餃子の焼けるのを気にしながら食卓の準備をしています。
夜高ミツル
餃子の焼ける音が食卓の方にも聞こえるでしょう……
真城朔
概ね準備が終わったので眺めの専念に戻りました。
夜高ミツル
見られるの、やや緊張するところもなくはないが、
夜高ミツル
火を使う料理は放置できないので、フライパンの蓋を開ける。
夜高ミツル
ラップを外して、皿の空いてる部分に残りの餃子を並べる。
夜高ミツル
真城を見送って、味噌汁を二人分ついで。
真城朔
置いたら炊飯器を開けてごはんをよそいます。
夜高ミツル
二人分の味噌汁を食卓に持っていき、並べる。
真城朔
ラー油ないないして、焼き上がった餃子の中の
夜高ミツル
横から迷わず、真城が作った餃子に箸を伸ばす。
夜高ミツル
焼きたてなので当然熱い、のを咀嚼し……
夜高ミツル
「真城が頑張って作ってくれたなって思うとなおさら」
夜高ミツル
「真城も一緒に作ってくれたなって思う方がうまいし」
真城朔
やや身の置きどころのなさそうに首を竦めているが……
真城朔
お茶碗の上に一度置いてから、おそるおそる齧る。
夜高ミツル
タレにつけて、今度は熱いのに気をつけて齧った。
真城朔
噛むのと味わうのとミツルの食べているのが気になるのとで
夜高ミツル
ミツルの方が先に口の中のものを飲み込んだ。
真城朔
落ち着かなさそうに視線があちらこちらに動いています。
夜高ミツル
「店のほどパリッとうまくは焼けないけど」
夜高ミツル
「今回は久しぶりだからシンプルなやつにしたけど」
夜高ミツル
「ネット見たら結構レシピ色々あったし」
夜高ミツル
「とろけるチーズを中に入れるみたいな感じだった」
夜高ミツル
「カレー味にしたらなんでもうまいだろって感じするけど」
夜高ミツル
箸が止まっていたので、おっと……になる。
真城朔
残り少なかったので比較的すぐに飲み込んでしまって、
真城朔
どう表現すればいいのかわからなくなっている……
夜高ミツル
ミツルとしては、それが聞ければ十二分に嬉しい。
真城朔
またちょっと迷ったけど結局ミツルの作ったほう。
夜高ミツル
ミツルもやっぱり真城の作った方に箸を伸ばす。
真城朔
自分の不格好な餃子が取られていくのを見ています。
真城朔
さすがにもう心配そうではないけども気にはなる。
夜高ミツル
さすがにできたての熱さはなくなっている様子なので、一口で食べてしまう。
真城朔
真城もいっぱい噛んでから飲み下して、残りも口に含んで
夜高ミツル
プルサティラが見せた、真城と母親の記憶を思い出した。
夜高ミツル
「……俺は、ちょっと、覗き見ただけだけど」
夜高ミツル
それで何かを言っていいものかと少し悩んだが、
夜高ミツル
「……真城が母さんのこと大事に思ってたのも」
夜高ミツル
「ちょっと見ただけだけど、伝わってきた」
夜高ミツル
箸は話を聞いてる内に置いてしまっている。
夜高ミツル
「……それだけ大事で、大好きだったんだろ」
夜高ミツル
「真城のそういう、大切な人の話を聞かせてもらえて嬉しいから」
夜高ミツル
涙を拭った手を、また真城の頬に添えた。
真城朔
今もなお落ちる涙でミツルの掌を濡らしながら、