2021/02/26 満月の一日前
夜高ミツル
武器を検めて、消耗品も揃っているか確認して。
真城朔
真城本人の武装はむしろシンプルなのでどちらかというとミツルのための物が多い。
夜高ミツル
八崎にいた頃からしていることだから、それなりに慣れた作業のはずなのだが……
真城朔
磨いた杭を一つ一つベルトのホルスターに収めていく。
真城朔
そういうもの、そうするものとして受け入れている。
真城朔
当たり前の日常としての心構えができている。
夜高ミツル
のろのろと動いていた手が、やがて止まる。
真城朔
杭を全てホルスターに収め、それをまとめてカバーで覆い……
夜高ミツル
「……先月、あんな大怪我したばっかりで……」
夜高ミツル
「大した怪我じゃないことないだろ……」
夜高ミツル
駄々をこねているだけだと、自分でも分かっている。
夜高ミツル
そもそも狩りに行かないでほしいと散々言われてきたのは自分の方で。
夜高ミツル
そう言ってきたのはミツルの方で、だからこの要求を通す正しい理屈はない。
夜高ミツル
「急に、困らせるようなこと言って……」
夜高ミツル
「狩りを続けることになるだろうって、分かってて一緒にいるのは俺で」
夜高ミツル
「それで、二人で行こうって決めたのに……」
夜高ミツル
「今、こうして一緒にいられてうれしくて」
夜高ミツル
「……だから、狩りに行かせるのが怖い」
夜高ミツル
「狩りに行かないでほしいって言われてきたのは俺の方で」
夜高ミツル
「……俺は、俺が必要だと思ったことをやってる」
夜高ミツル
「……真城にやめてほしいって言われてもやってるんだから」
夜高ミツル
「なのに、俺だけワガママ通そうとした……」
夜高ミツル
寄せられた真城の熱と、涙で胸元が濡れる感触。
夜高ミツル
「それでも、一緒にいるって決めたのは俺だ」
夜高ミツル
「俺も、真城に嫌な思いさせたくないのに」
夜高ミツル
「真城はそうするだろうって、プルサティラに聞かされてたから」
夜高ミツル
「……それが、真城が生きていくのに必要ならって」
夜高ミツル
「だから、今ワガママ言ってるのは俺の方で」
夜高ミツル
「真城が思ってることを話してくれるのは嬉しい」
真城朔
抱きしめられたまま、テーブルの上に並べられた医療キットに手を伸ばす。
夜高ミツル
一度真城から離れて、消耗品のストックに手を伸ばす。
真城朔
色々揃えてポーチに細々とした品を戻している……
夜高ミツル
箱を自分の方に寄せて、中からガーゼを取り出して。
真城朔
できた……になっていたところからミツルに視線を戻す。