2021/03/03 夕方
真城朔
ソファに座っていた真城はぼんやりと顔を上げ、キッチンの方を向いた。
夜高ミツル
男二人暮らしには縁の薄いものではあるが。
夜高ミツル
まあこれくらいはあやかってもいいだろうと、今日はちらし寿司を作ることにした。
夜高ミツル
スーパーに行っても特設コーナーができてるしで、じゃあ作るかーとなった。
夜高ミツル
二人でキッチンに立ち、揃いのエプロンをつける。
真城朔
のんびりぼんやり買ってきたちらし寿司の素がキッチンにあります。
真城朔
長方形の包装のそれを取り上げてまじまじと眺めている。
夜高ミツル
「まあ俺も酢飯扇ぐのと具を乗っけるくらいしかしたことないけど」
夜高ミツル
「ご飯にそれを混ぜたら具材入りのやつができる」
夜高ミツル
「具は俺が作るから、真城にはそっちをやってもらおうかなって」
夜高ミツル
「そうそう、ぱたぱた~って扇いで……」
夜高ミツル
「手だとちょっと大変すぎると思う……」
夜高ミツル
「チラシとか……何枚か重ねて折って……」
真城朔
改めてまじまじとちらし寿司の作り方を見ていますが
夜高ミツル
シンク下からボウルとしゃもじを取り出す。
夜高ミツル
それを横目に自分の方も具材を作る準備をしていく。
真城朔
ちらし寿司の素を包装の中から取り出して……
夜高ミツル
鍋を取り出して、水を入れて火にかける。
夜高ミツル
まずは火を使うものから……ということで
真城朔
ミツルの方をちらちらと見ながらボウルにごはんをよそってます。
夜高ミツル
ボウルは真城が使っているので、深めの皿に卵を割る。
夜高ミツル
割った卵を、白身を細かくするように箸でといていく。
真城朔
ほかほかのごはんで揮発した酢飯のにおいが漂ってくる。
夜高ミツル
「ヘタと筋取らないといけないのを忘れてたなって……」
真城朔
しゃもじとボウルから手を離してミツルの方に行きます。
夜高ミツル
事前にレシピ確認したからいいだろってふわっとやっていくとこうなる。
真城朔
でも料理をしながら逐一確認するのは面倒……
夜高ミツル
いつもは真城に確認してもらったりするけど、今日は真城も手が塞がってるから……
夜高ミツル
「ここの……ヘタのとこをポキって折って……」
真城朔
筋取れてない組からまた取って、同じようにやっていく。
真城朔
真城がいちいち慎重なので1.5くらいかもしらん。
夜高ミツル
折っては筋を引っ張り、また折っては引っ張り……
真城朔
そんな量があるわけでもないのですぐ終わりました。
真城朔
気持ちはずんだ足取りでボウルへと戻ります。
夜高ミツル
途中で明らかに沸騰しすぎてたのでちょっと火を弱めた。
夜高ミツル
鍋に塩を入れて、今しがた筋取りしたばかりの絹さやも入れる。
真城朔
まだほかほかの酢飯を見下ろして怪訝そうな顔になった。
夜高ミツル
「なんか……そういえばなんでだろうな……?」
真城朔
パッケージうちわで扇いでいましたが、それだと表面しか冷めないことに気づきました。
夜高ミツル
「扇がないで冷めるのを待つでもよさそうなのにな」
夜高ミツル
なんでだろうなあになりつつ鍋の火を止めて、流しにザルを置く。
真城朔
気付いたので、左手でパッケージうちわを持ちます。
真城朔
暖房を強めに効かせているとはいえ冬の北海道で寒いので
真城朔
熱を使って料理してるとなんとなく暖を取れる感じがある。
夜高ミツル
蛇口を捻って、絹さやも水で冷ましていく。
真城朔
お米を冷まし冷まししながらそちらを見ています。
夜高ミツル
台の隅の方にザルを置いて、次に取りかかる。
夜高ミツル
「あとでまとめて切ってこうかなって思ってた」
真城朔
さすがにいくらなんでも自分の任せられた工程が簡単すぎることに気付いているぞ。
夜高ミツル
そちらは任せて、フライパンを取り出す。
夜高ミツル
「そうだなー、俺だったら普通に半分に切るかな」
夜高ミツル
「もっと小さい方がよかったらそれでもいい」
夜高ミツル
「真城がこれくらいだったら食べやすいって大きさになってたら」
夜高ミツル
コンロの火をつけるのをちょっと待って見守っている。
夜高ミツル
大丈夫そうなので、フライパンを火にかける。
真城朔
切れたのを脇に避けて続きをやっていっています。
真城朔
手際は良くないが切るだけなので流石にちゃくちゃく進んでいく。
真城朔
なったことで手が止まったことに逆に気付いた。
夜高ミツル
「まあ俺は3年くらいやってるからなー」
夜高ミツル
「でも真城も俺くらいだったらすぐなれると思うけどな」
夜高ミツル
「あー、でも春になったらしばらくできなくなるしな……」
夜高ミツル
フライパンを傾けて、厚みが均一になるように……
夜高ミツル
「もっと色々教えてやれたらいいんだけどなー」
夜高ミツル
「そう思ってくれるならよかったけど……」
真城朔
これ手で押さえる必要もしかしてないんじゃない? というものぐさな気付きによりペースがちょっと上がっている。
夜高ミツル
「真城とこうやって並んで飯作れるのが、単純に」
夜高ミツル
ある程度卵が固まってきた所で、火を止めて蓋をする。
夜高ミツル
ネットで薄焼き卵の作り方を確認したらそうするといいって書いてあった。
夜高ミツル
「俺もよく真城にレシピ確認してもらってるし」
夜高ミツル
「最初は分かんないのが当たり前だしな」
夜高ミツル
「俺は真城と一緒のことができて楽しいよ」
夜高ミツル
「真城が待っててくれるなって思いながら作るのも好きだけど」
夜高ミツル
ミツルの方もそんなに見栄えにこだわる方ではないので……。
夜高ミツル
食べやすい大きさにちゃんと切れてるからばっちり!
夜高ミツル
端の方に箸を入れてちょっと持ち上げてみて……
夜高ミツル
真城が洗ってくれたまな板の上に、薄焼き卵を乗せる。
夜高ミツル
「……そっちもう大丈夫そうな感じか?」
真城朔
かんぴょうとかにんじんとかしいたけとかれんこんとかが混ぜ込まれた……
夜高ミツル
薄焼き卵の端のパリパリの部分をスッと切り落としていく。
夜高ミツル
ちらし寿司なら細かく刻んでかけるといいと書いてあったのであとでそうすることにする。
夜高ミツル
薄焼き卵を4等分の幅に切って重ねて……
夜高ミツル
とん、とん、とんと端から細切りにしていく。
真城朔
お皿を持ってきて しゃもじを添えたボウルを抱えて
真城朔
盛り付けるかと思いきや隣からミツルの包丁使いを見ています。
夜高ミツル
さすがに少しゆっくりめに包丁を動かしている。
夜高ミツル
糸というほど細くもないけど、程々の細さでそれなりにサイズの整った錦糸卵が生産されていく。
夜高ミツル
「なんか……綺麗にできると達成感があるというか……」
夜高ミツル
「錦糸卵初めてだからちょっと緊張したけど」
真城朔
手が埋まってなかったら小さく拍手したかも知れない。
夜高ミツル
焦がさないか、破かないか、切るのに失敗しないかで3つハードルがあった……
真城朔
盛り付けに来たはずのボウルをすっかり抱え込んでいる。
夜高ミツル
錦糸卵はちょっと脇によけて、切り落とした端っこを刻んでいく。
夜高ミツル
こっちは形を気にする必要がないので手早く。
真城朔
普通のご飯茶碗よりまあ少ないくらいの量を……
夜高ミツル
食べれる量が増えてるのが分かる度に嬉しい。
夜高ミツル
二人で暮らして数ヶ月、いつもくらいとかいつもより多めとか、そういう指示で伝わるようになった。
真城朔
とりあえず普段と同じくらいを盛りつけてから……
夜高ミツル
そういうことに、時折ふと二人で過ごす日々が当たり前になったことを感じる。
夜高ミツル
冷蔵庫からメインの具を取り出して、台に並べる。
夜高ミツル
パックの中身はマグロとサーモンの盛り合わせ。
夜高ミツル
せっかく作るんだから豪勢にやろうとなった。
真城朔
ととのえ終わってその残りを見下ろしている。
夜高ミツル
皿に盛られた米の上に刻み卵をちらし……
夜高ミツル
「今日も出られないんじゃないかと思ってた」
夜高ミツル
パックを出したまま手が止まっていたのに気づいて、
夜高ミツル
刺し身のパックに手を伸ばして、開ける。
夜高ミツル
「……金曜はちょっと暖かいらしいけど」
夜高ミツル
いい感じの小さな切り落としがたくさん入っている。
夜高ミツル
「もうちょっと暖かくなったら北海道も観光行きたいな」
夜高ミツル
いい感じの切り落としを、いい感じにちらしていく。
夜高ミツル
「とりあえずタクシーで近場回ってみようぜ」
夜高ミツル
「電車はまあ……人の少なそうな時間ならだな」
夜高ミツル
あっまな板洗ってもらう前にこれも切ればよかったな……。
真城朔
絹さやのざるを持ってスタンバイしています。
夜高ミツル
受け取ったボウルから絹さやをぱらぱらと……
夜高ミツル
緑が入るとかなり彩り豊かな感じになる。
夜高ミツル
きらきらのぷちぷちたちを丁寧に乗せていく。
真城朔
キッチンばさみを洗い終えて戻ってきた真城もそう思いました。
夜高ミツル
北海道だなあと思いながら、いくらの盛り付けも終わりました。
夜高ミツル
お茶は任せて、ちらし寿司の皿を食卓へ。
夜高ミツル
台所に行き、箸を二膳取って戻ってくる。
夜高ミツル
どこから行くか迷うけど具がたくさんあるからどこから箸をつけても何かしらある。
夜高ミツル
「真城が作ってくれた酢飯もちゃんとできてる」
真城朔
食べるペース遅いのでそういう時間が多いのはいつものこと……
夜高ミツル
お互いに相手が食べるのを眺めて手が止まりがち。
夜高ミツル
「いくら自体いつぶり? って感じなんだけど」
夜高ミツル
「でも千葉のいくら絶対こんなんじゃなかったと思う」
夜高ミツル
「千葉のはもっとふにゃふにゃしてた気がする……」
夜高ミツル
湯呑を手に持ったままなんとなく真城を眺めている。
夜高ミツル
「向こうのスーパーでいくらも刺し身も買ったことないけど……」
夜高ミツル
「でも子供の頃家で買ってたのと比べても違う気がするな」
夜高ミツル
「真城と一緒に作ったから余計うまいのかも」
夜高ミツル
それを見てやっと思い出したように箸を取る。
夜高ミツル
具沢山の豪勢なそれを、じっくりと味わう。
夜高ミツル
「北海道いる内にまた作ってもいいかもな」
真城朔
全然っていうかめちゃめちゃおいしかったけど……
夜高ミツル
「これ酢飯一から作ると多分全然大変さ違うからなー」
真城朔
かなり突発的ちらし寿司だったから今回は……
夜高ミツル
そんな話をしながら食器を流しへ持っていき……
真城朔
冷蔵庫に入れた酢飯の残りをタッパーに詰める。
夜高ミツル
いつもどおりに片付けが終わると、これもいつもどおりに並んでソファに腰掛ける。
真城朔
ここに入居したのは11月なので、もう4ヶ月も住んでいるのだが。
夜高ミツル
「北海道周るのは流石に厳しいだろうけど」
夜高ミツル
「それでも住んでるんだから色々は行けるだろうし」
夜高ミツル
「平日ならあんまり人多くないだろうし」
夜高ミツル
「じゃあ春が来るまでにそういうとこ探してみるか」
真城朔
頭をミツルの手のひらにそわせるようにしながら、
真城朔
少し差のある体温を溶け合わせるようにしながら、