2021/03/04 夕方頃 浴室
夜高ミツル
湯を張った浴槽に、いつものように二人で入る。
真城朔
脱力した様子でミツルの肩に頭を預けている。
真城朔
すっかりミツルに身体を委ねて四肢を投げ出している。
夜高ミツル
体重を受け止めて、ぴっとりと寄り添いあう。
夜高ミツル
抱き込んでいるので当然、真城の頭がすぐ近くにある。
真城朔
少しだけ顔をミツルの方に向けてちらちらと……
夜高ミツル
特に意味のない動作だったのでなんとなく気まずくなっている。
夜高ミツル
少し身体を離して、真城の背中に視線を移す。
真城朔
真城も少し腰を浮かして、ミツルに背中を晒すように。
真城朔
背骨と肩甲骨が浮いているのだけが見て取れる。
夜高ミツル
白く薄い背中を、確かめるように手で触れる。
夜高ミツル
先程も散々触れたり抱き寄せたりしてはいたのだけど
夜高ミツル
こうして背中を眺めるのは、案外風呂でもなければ機会が少ない。
真城朔
いつも向き合ってばかりで、背中を見せることがほとんどない。
真城朔
背中に触れれば濡れてしっとりした肌の感触。
真城朔
真城は相変わらず時折ミツルの様子を窺うようにしながらその背を触れられている。
夜高ミツル
傷が残らないことには、純粋によかったと思う。
夜高ミツル
それで真城が無茶をしがちなのは複雑だけど……。
夜高ミツル
ミツルだって真城に怪我なんかしてほしくないのだが……。
夜高ミツル
でもまあ、現にこの通りきれいに治っており。
真城朔
ミツルの心中を知って知らずか、触られるがままに任せている。
夜高ミツル
先よりももっとひどい怪我が治るのも見ていて、
夜高ミツル
だから真城の頑丈さについては重々承知ではあるんだけど。
夜高ミツル
でも、真城が怪我をすればいつも不安で、心配で。
夜高ミツル
知っていたからって慣れるものではない。
夜高ミツル
もちろん怪我をしないのが一番ではあるけれど。
真城朔
背中を丸めているとますます背骨が浮くような気がする。
真城朔
ミツルを押しのけない程度の僅かな動きではあるが。
夜高ミツル
傷口のあった箇所を辿るように位置をずらして、再び口づける。
真城朔
丸めた背中をそのままに身体を強張らせている。
真城朔
ミツルの感触が離れたのを感じてか上体を振り向いた。
夜高ミツル
先程まで唇を寄せていた背中に、胸板が触れる。
真城朔
弛緩した身体がミツルの腕の中に収まっている。
真城朔
とはいえやや身の置きどころがなくなってきたのかまたぎこちなく背を丸めてしまった。
夜高ミツル
真城が丸くなった分、ミツルも背を丸めてぴっとりと肌を重ねる。
夜高ミツル
「多分あのまましてたらまたしたくなるし……」
夜高ミツル
何度かやらかした末に風呂でするとよくないという教訓を得た。
真城朔
風呂上がりのほかほかで、ソファにくったりと寝そべっている。
夜高ミツル
床のクッションに座って、寝そべる真城を窺っている。
真城朔
ソファの縁に顎を預けてふにゃになっている。
真城朔
くぐもった声がさらに消え入るような掠れ声に。
夜高ミツル
濡れているので、なおさらにその丸みがよく分かる。
夜高ミツル
「嬉しいと思ってもらえるならよかったなって……」
夜高ミツル
「だからってあんまり真城に無理させるのはよくないなって……」
夜高ミツル
「でもあんまり真城がそう言ってくれるのに甘えるのは……」
真城朔
顔の前に並べた握り拳に口元を埋めるような形になっている。
夜高ミツル
「いや、いっぱいってどの位なのかなって……」
夜高ミツル
「でも、真城に負担をかけたくはなくて……」
夜高ミツル
結局さっきも言ったようなことを繰り返す。
夜高ミツル
「特に今日はこないだ怪我したばっかりだし」
夜高ミツル
「あんまりこう、病み上がり……病み上がりではないけど……」
夜高ミツル
怪我をしたのが土曜の夜中で……今日は木曜だからまだ一週間経ってなくて……
夜高ミツル
「毎回こんな疲れさせたらよくないから……」
夜高ミツル
言葉を探しながら、手のひらが真城の頭を撫でる。
真城朔
べっちゃりスタイルがちょっとずつ丸くなってきている。
真城朔
布団を被っていないだけのそういう生き物になろうとしている節がある。
夜高ミツル
「無理させたくないのはそうなんだけど……」
夜高ミツル
「……すること自体は俺だって嫌じゃないから」
夜高ミツル
「ずっと触ってたいし、抱きしめてたくて……」
夜高ミツル
「本当にダメな時は絶対うんって言わないの」
夜高ミツル
「……たくさんしたいのは俺もそうなんだって」
真城朔
ミツルの言葉にはどうしても逡巡を挟んだけれど。
夜高ミツル
「……狩りをやめてほしいとか、そういう」
夜高ミツル
「真城がしてほしいことかそうじゃないか」