2021/03/04 朝
夜高ミツル
その上に目玉焼きとソーセージを乗っけたもの。
真城朔
真城の方は目玉焼きもソーセージも半個ずつ。
夜高ミツル
ミツルも同じく半分の目玉焼きに、ソーセージは数本。
夜高ミツル
「……真城が俺の誕生日祝ってくれたから」
夜高ミツル
「俺もお祝いしたいなあって思うんだけど」
真城朔
ミツルの顔を見たり まだ少し残ってるちらし寿司を見たり
夜高ミツル
真城の視線が行ったり来たりするのを眺めて、
夜高ミツル
「……まあ、本当にすぐじゃなくていいから」
夜高ミツル
「いやまあ、食ってる最中に聞いたのは俺だけど……」
夜高ミツル
それから午前中に細々とした家事をやっつける。
夜高ミツル
洗濯物を畳んでるときとかかなりそういう感じ。
真城朔
ほぼ毎日ちゃんと畳んでいるとだんだん洗濯物をたたむのにも慣れてきた。
夜高ミツル
二人分の洗濯物がそこそこきれいに畳まれている。
夜高ミツル
ミツルがあまり細かいところを気にしないのもあって、そこそこ止まり。
夜高ミツル
特にすることがなくなると、大体いつもこう。
夜高ミツル
そうしながら手を繋いでいたり、頭を撫でたり……
真城朔
そしていつものように真城がミツルの肩に頭を預ける。
夜高ミツル
肩に腕に、真城のぬくもりと体重を感じる。
夜高ミツル
「真城にも、欲しいと思ってほしいって……」
夜高ミツル
こうなるんじゃないかな……とは思ってはいた。
夜高ミツル
真城はほしいものとかは思いつかないんじゃないだろうかって。
夜高ミツル
もちろん、望んでもらえるならそれが一番で
夜高ミツル
「真城がいてくれたらそれで嬉しいみたいな」
夜高ミツル
真城の身体に腕を回して、掌を頭に乗せる。
夜高ミツル
「……そんなに喜んでもらえてるなら嬉しいけど」
夜高ミツル
これくらいだったらいくらでもするし……
夜高ミツル
自分の誕生日に言われた、「これだと特別感がない」を反芻している……。
夜高ミツル
頭に乗せているのとは反対の手を伸ばす。
夜高ミツル
「俺は俺がしたいことを勝手にしてるだけだから」
夜高ミツル
ぽろぽろと溢れる涙が、ミツルの指先を濡らしていく。
夜高ミツル
「望んでくれるならそれが一番嬉しいけど」
夜高ミツル
「でも、そうできないからって申し訳ないとか」
夜高ミツル
「気に病んだり、つらい思いをしたりとかなくて……」
夜高ミツル
「そうだったら、そうなれたらいいとは思ってる」
夜高ミツル
「俺にできることってそんなになくて……」
夜高ミツル
「何かを解決してやったりとか、そういうのはできなくて……」
夜高ミツル
「だから、力不足は悔しいなって思うけど」
夜高ミツル
涙がこぼれ落ちるその度に、指先がそれを拭った。
夜高ミツル
ミツとはいられない、一緒にいるのはよくないと、
夜高ミツル
それにはお構いなしで、ぴったりと身体を寄せ合う。
夜高ミツル
自分の身体にも腕を回して、縋りついて、
夜高ミツル
好きだというその言葉にも、別に答えを求めているわけじゃない。
夜高ミツル
ささやくように、また好きだと繰り返す。
夜高ミツル
少しの隙間も作らないとばかりに身を寄せ合う。
真城朔
その身体からやがてゆっくりと力が抜けていく。
夜高ミツル
力が抜けると、よりぴったりと密着する。
真城朔
触れ合いそのものを噛みしめるようなくちづけを繰り返し、
真城朔
しかしやがて、真城の舌先がミツルの唇を舐めた。
夜高ミツル
その形を、感触を、確かめるように何度も舌を絡め、
夜高ミツル
互いの熱が、互いをどんどんと高めていって、
真城朔
だから唇が離れるまでもひどく時間がかかった。
真城朔
ゆっくりと唇が離されて、間を繋いだ濡れた糸が途切れて、
真城朔
ゆっくりと開いた瞳の熱ももう隠しきれるものでなく。
真城朔
切迫した瞳が至近距離からミツルを見つめている。
真城朔
大丈夫、とは真城は何度も繰り返してきていたことだが。
夜高ミツル
聞きかけてから、散々に力任せに抱き寄せて今更だな、と気づいた。
夜高ミツル
こうすることだって、怪我して以来控えていた。
真城朔
またひときわ強く、握りしめる手に力が籠もっていた。