2021/03/21 3時過ぎ
夜高ミツル
眩しさに目を細めて、うとうとと腕の中の真城を抱き寄せる。
真城朔
抱き寄せられればそのままミツルの胸に頬を預けて、小さく息を吐いた。
夜高ミツル
やがて意識がはっきりしてくるにつれ……
夜高ミツル
自分たちの、そして周囲の状態が目に入ってくる。
真城朔
脱ぎ捨てたくしゃくしゃのバスローブだとか……
夜高ミツル
破り捨てられたなんらかの包装や、使用済みのその中身とか……
夜高ミツル
それから自分たちの身体にも、乾いてこびりついて体液の痕がそこかしこに。
夜高ミツル
いつもは身体くらいはきれいにしてから寝るものだが……
夜高ミツル
正直いつ寝入ったのかもあんまり覚えてない。
夜高ミツル
先に起きた時、ミツルが真城を置いてベッドを出ることはほとんどない。
夜高ミツル
とはいえさすがにこのままにしておくわけにもいかなかった。
真城朔
胸元の真城からむにゃむにゃとした声があがった。
夜高ミツル
離れようとしていたのが、びくっと静止する。
真城朔
少しだけ空いた距離を埋めるように身体を寄せる。
夜高ミツル
こうして甘えるような仕草を見せられるのには、どうしても弱い。
夜高ミツル
けど、やっぱりこのままにもしておけない。
夜高ミツル
しっかり布団をかけ直してやってから、ベッドを抜け出す。
真城朔
改めて寝入ってしまったようですやすやと寝息を立て続けている。
夜高ミツル
濡れタオルとお湯を張った洗面器を手に持って、再び足早に寝室へと戻る。
真城朔
薄い身体に濡れて乾いてこびりついた体液の跡。
夜高ミツル
鎖骨の辺りにタオルを当てて、胸元から拭っていく。
夜高ミツル
その度になるべく気にしないように気にしないように……と念じながら再開する。
夜高ミツル
一度タオルを離して、サイドテーブルに置いた洗面器につける。
夜高ミツル
せめてなるべく手早く済ませようと思いつつ、タオルを腰に当てる。
真城朔
不意に内腿がミツルの手を挟むように閉じ合わされた。
真城朔
目を閉じるとともに、唇が軽く突き出される。
夜高ミツル
いやこれは寝込みを襲ったとかそういうわけではなく……とか
夜高ミツル
待つような仕草をされると、身を乗り出す。
夜高ミツル
真城に望まれれば、求められれば、そうされるがままに。
真城朔
結局また汗だのなんだのにまみれてくったりとベッドに転がっている。
夜高ミツル
……結局起きた時とさほど変わらない状態になっている。
夜高ミツル
ゴミが増えた分ひどくなっているとも言える。
夜高ミツル
謝ると結局真城に気にさせそうな気がする……。
夜高ミツル
「……風呂はもうちょっと休んでからにするか」
真城朔
撫でられて、おずおずとミツルの胸に頬を寄せる。
真城朔
妙な呻き声を漏らしながらますます泣き始めた。
夜高ミツル
震える背中に、皮膚の固い掌が触れている。
真城朔
肩甲骨と背骨の浮く背を撫でられて安堵の息をついては、
真城朔
首を竦めて肩を縮めて、ミツルの身体に隠れるように寄り添って。
夜高ミツル
息を詰める度に、掌が呼吸を助けるように背中を優しく叩く。
夜高ミツル
腕の中に閉じ込めるように抱きしめている。
真城朔
そうして長く泣き続け、やがて窓の外が明るくなってくる頃。
真城朔
ミツルの胸に頬を預けてぼんやりと放心している。
夜高ミツル
真城が落ち着くまで撫でたり言葉をかけたり、
真城朔
ひとまず泣き止みはしてミツルに身体を委ねている。
夜高ミツル
その仕草を受け止めて、寄せられた頭に口づけるように顔をうずめる。
真城朔
静かに涙を落としながらぽつぽつと言葉を漏らして、
夜高ミツル
「真城がつらい思いを少しでも忘れてられるなら」
夜高ミツル
「クラブからも、それ以外の狩人とかからも」
夜高ミツル
「……真城のことなら、巻き込んでもらわない方が困る」
夜高ミツル
「俺の人生は真城のために使うって決めたんだから」
真城朔
涙は今も頬を濡らし、ミツルの胸を濡らしている。
夜高ミツル
眠ってしまったことに気づいて、腕を緩める。
夜高ミツル
起こさないように、控えめに抱きしめる。
夜高ミツル
実際のところ、保証できるものは何もない。
夜高ミツル
ミツルの気持ちに嘘がなくても、どうにもならないことが世の中には多すぎる。
夜高ミツル
D7から真城を奪い返せたのだって、ミツルだけの力じゃない。
夜高ミツル
狩りも、今のところはなんとかできているが、この先もそうとは限らない。
夜高ミツル
信じていなければ、きっと立ち向かってすらいけない。
夜高ミツル
これ以上真城から何も奪わせたりしない。
夜高ミツル
腕の中のぬくもりを抱きしめて、目を閉じる。