2021/05/03 夜
noname
ちょっと奮発した出前をとって、二人で夕飯を済ませた後。
真城朔
結局夕方まですやすや眠り、荷物の整理も洗濯も掃除もできずにいる……
夜高ミツル
片付けだのは本当に明日に回すつもりらしい。
真城朔
落ち着かなさそうに困ったように視線を彷徨わせている……
真城朔
しばらく往生際悪く視線を彷徨わせていたが……
夜高ミツル
気が済んだところで、本当はいつまでもできるから気が済むとかないが……
夜高ミツル
とにかく身体を離して、今度こそ立ち上がった。
真城朔
のろのろと自分もパーカーを脱ぎ始めていますが……
夜高ミツル
どんどん脱いでは洗濯機に放り込んでいく。
夜高ミツル
途中で動きを止め、気の進まなげな真城をじっと見つめる。
夜高ミツル
「もし、俺が嫌ったり、変に思ったり、」
真城朔
触れる手を振り払うこともしないで、ただ言い募る。
真城朔
ぬくもりを惜しむようにミツルの腕を目線で追ったが、
夜高ミツル
真城の手を取って、浴室のドアを開ける。
夜高ミツル
いつものように、真城をバスチェアに座らせる。
夜高ミツル
途中でん?って思ったけどまあいいかになった。
夜高ミツル
自分でもおかしなことを言った気がするが、突っ込まれなかったのでいいことにした。
夜高ミツル
はじめて真城を風呂に入れる時に洗うのを手伝って以来、それが習慣になっている。
真城朔
なんだかそもそもこれもおかしいような気がしているのだけれど……
夜高ミツル
ミツルもなんかおかしい気がしたことはあったんだけど……
真城朔
ぞくりと腰を揺らめかせて内股をすり合わせる。
夜高ミツル
触れる度に返される反応に、熱が上がる感覚。
夜高ミツル
こういう時、ミツルもよくないな……と思ったりする。
真城朔
泡に塗れた身体に汗が滲んだところで判別はつかず、
真城朔
ただとろりと肌を滑る水滴にすら息を乱して、俯く。
夜高ミツル
いつも通りつま先まで丁寧に洗いあげて、手を離す。
夜高ミツル
シャワーを取るために立ち上がれば、興奮を隠すことも難しく。
真城朔
自然突きつけられる形になったそこが、蕩けた瞳に映る。
真城朔
こうして素肌を触れ合わせること自体久しいのだから、
真城朔
ぎくりと腰が浮いて、バスチェアと床のこすれる音がする。
夜高ミツル
流された泡の下から、白い肌が浮かび上がる。
真城朔
どうにか呼吸を整えようと息を吸い込んでいる。
夜高ミツル
シャワーをフックに戻して、しゃがみ込む。
真城朔
寄せられた身体の、背中に腕が回ってしまう。
夜高ミツル
浴室の湯気が、相手の熱が、さらに熱を煽っていく。
真城朔
触れ合う粘膜の心地に思考を灼き尽くされてしまえばこんなもの。
夜高ミツル
愛撫をするでもなく、ただ強く抱きしめて
夜高ミツル
いつの間にか浴槽の湯がすっかり冷めてしまったことにも、互いの熱に溺れて気づかなかった。
夜高ミツル
ぐてぐての真城の髪をタオルでせっせと拭いている。
夜高ミツル
寝そうだな、と思っているので静かにしている。
真城朔
いっぱいして お風呂で そのつもりなかったから
夜高ミツル
バスタオルをのけて、手で直接真城の髪に触れる。
夜高ミツル
ドライヤーをかけた方がいいとは思うけど……疲れてる感じだし……
夜高ミツル
このくらい乾いてたらまあ大丈夫かなって加減。
夜高ミツル
身体を真城の方に向けて、ソファの前に腰を下ろしている。
夜高ミツル
真城、真城と何度も飽きることなく名前を呼んで。
真城朔
そうしてミツルの手のひらに頭を寄せている。
夜高ミツル
どこかぼんやりしている真城の顔を見つめて、
夜高ミツル
今みたいな状態を、きっと真城はよくないと言うのだろうな、と思う。
夜高ミツル
桜を見て、花のほころぶように笑っていたのを覚えている。
夜高ミツル
……ずっとこうさせていたいと、願うことは
夜高ミツル
それも、きっとよくないことなのだろう。
真城朔
そう事あるごとに繰り返す唇も、今はゆるく呼吸を繰り返すのみ。
夜高ミツル
自身の罪を悔いて、よくないと嘆くのも真城の一部だ。
夜高ミツル
それを取り上げるなら、きっと吸血鬼にして心を奪うのと変わらない。
夜高ミツル
安心して微睡むような時間をできるだけ多く、長く。
夜高ミツル
そうやって過ごさせたいと、思っている。
夜高ミツル
寝るのを邪魔するつもりはなくて…………
真城朔
その手に頬を委ねるようにして吐息を漏らしている。
夜高ミツル
頬から手を離して、真城の身体の下に両腕を差し入れる。
夜高ミツル
それでも抱き上げられないほどではないのは経験済みだ。
夜高ミツル
よいしょ……と気合いを入れて、脱力した身体を持ち上げる。
夜高ミツル
世間ではお姫様抱っことも呼ばれている。
夜高ミツル
腕や脚を怪我していなくてよかった……と思った。
真城朔
腕や脚だったらもっと真城が介護に気を張っていただろう。
夜高ミツル
そこまでしなくてもいいくらい気を使ってもらってる。
夜高ミツル
辿り着いたベッドの真ん中に、真城を横たえる。
夜高ミツル
サイドテーブルのリモコンを取って、部屋の電気を落とす。
真城朔
それを許した相手にたっぷりと愛された後だということ。
夜高ミツル
横たえられた身体に布団をかけて、隣に潜り込む。
真城朔
骨の浮く、けれど柔らかな肌が服越しに触れる。
夜高ミツル
二度とないようにと心に決めたはずなのに。
夜高ミツル
願いの強さは、けれど良い結果をもたらしてくれたりはしない。
夜高ミツル
どれほど強く願っても誓っても、モンスターの前では無力。
真城朔
必要なものは、結局、確かな強さに他ならない。
真城朔
それがあって、初めて土俵に立つことができる。
夜高ミツル
どれほど傷つけられても、真城はきっと狩りをやめることはない。
夜高ミツル
ならばミツルにできることは、今より少しでも
夜高ミツル
真城のように特別な力もないミツルにできることは、きっとそれくらいしかない。