2021/07/07 夕方

真城朔
カレーの煮えた鍋に蓋をして振り返る。
真城朔
今日は七夕。
真城朔
あいにく天気は曇り雨がち。
夜高ミツル
七夕に星が見えることの方が少ない気がする、みたいな話をした。
夜高ミツル
それでも、せっかくだから何かそれっぽいことをやろうということで。
真城朔
短冊に願い事をするほど無邪気にはなれないけど……
夜高ミツル
さすがにそれは……だった
真城朔
不吉。
真城朔
キッチンに並べられた缶詰、果物、ペットボトルのサイダー。
真城朔
それと小さな星型の型抜き。
真城朔
これはさっきもにんじんをくり抜くのに使った。
夜高ミツル
カレーのにんじんを星型にした。
夜高ミツル
今度はデザートのフルーツポンチを作るのに使う。
真城朔
お星さまのフルーツポンチを作るのだ。
真城朔
「えーと……」
真城朔
作るのだけれど。
真城朔
どうしたものかと視線が泳いで、結局ミツルにたどり着いた。
夜高ミツル
目が合った。
夜高ミツル
「えーと……」
夜高ミツル
「じゃあ、俺が切っていくから、真城は型で抜いてってくれるか?」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく……
真城朔
頷いて型を手に取り……
真城朔
「あ」
真城朔
「器……」
真城朔
戸棚へ……
夜高ミツル
「頼む」
夜高ミツル
見送って、とりあえず桃缶を開ける。
真城朔
それっぽい深めのガラス器を取って戻ってきました。
真城朔
すずしげ~。
真城朔
置きます。
夜高ミツル
「ありがと」
夜高ミツル
シロップの甘い香りが漂う。
真城朔
置いて改めて型抜き器を手に対面キッチンにスタンバイ。
真城朔
頷き返し、ミツルの手が桃缶を開けるのを眺めている。
真城朔
じ……
夜高ミツル
眺められながら、缶の中から桃を取り上げてまな板へ。
真城朔
ももだ……
真城朔
まるまるつやつや
夜高ミツル
半分に切られた形の桃を、包丁で更に切り分ける。
夜高ミツル
スッスッ……
夜高ミツル
4等分。
真城朔
「ん」
真城朔
自分の手元のまな板をそっと差し出した。
夜高ミツル
差し出されたまな板に、カットした桃を乗せる。
真城朔
乗せてもらったので手元に戻し……
真城朔
四等分のうちひとつの……なるべく真ん中に……
夜高ミツル
缶から次の桃を取り出す。
真城朔
なるべく真ん中に……
真城朔
真ん中……
夜高ミツル
取り出し……
真城朔
このあたりか……?
夜高ミツル
真城の手元を見ている。
真城朔
ちら……
真城朔
ミツルの顔を窺う。
夜高ミツル
また目が合った。
真城朔
「こ」
真城朔
「こんな……?」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
頷く。
真城朔
ほ……
夜高ミツル
「その辺で大丈夫」
真城朔
「このへんで……」
真城朔
よいしょと力を込めます。
真城朔
すっと入る。
夜高ミツル
やわらか
真城朔
思い切りと力を込めてやわらかい桃缶をくり抜いた。
真城朔
ちょっとぶ厚めの星ができ……
真城朔
くり抜かれた黄桃もできた。
真城朔
「…………」
真城朔
こっちは……? という視線。
夜高ミツル
ん…………?
夜高ミツル
星型の穴が空いた桃に目をやる。
真城朔
おろ……
真城朔
おろ……になりつつ型から星型の黄桃を取り出した。
夜高ミツル
星型に抜くと星型に抜かれた残りができるぞ。
真城朔
星型と残りが並んだ。
真城朔
「ど」
真城朔
「どうしよ……」
真城朔
「これ」
真城朔
「入れる?」
夜高ミツル
「ん~…………」
真城朔
びみょうなかんじ……
夜高ミツル
にんじんをくり抜いた残りは切って普通に入れたけど……
真城朔
結構量としてはそれなりで……
夜高ミツル
これ全部入れたら結構な量になるな……
夜高ミツル
「……残ったやつは、分けといてくれ」
真城朔
「ん」
真城朔
「わける……」
夜高ミツル
「後で俺食べるよ」
真城朔
「え」
真城朔
「……と」
真城朔
「じゃあ」
真城朔
「器に……」
真城朔
新しい器を取りに行きます。
夜高ミツル
「ん」
真城朔
小ぶりのガラス器を持ってきて、丁寧に入れました。
真城朔
それから続きに取り掛かり……
真城朔
ちまちま……
夜高ミツル
ミツルの方もやっと桃を切るのを再開する。
夜高ミツル
とすとす……
真城朔
作業としては大変に単純作業。
真城朔
くり抜いた星型を大きなガラス器に。
夜高ミツル
切っては器に入れ……
真城朔
そうでない方をミツル用の小さな器に。
真城朔
ミツルの切った器から果物をまな板に並べては、それを繰り返す。
真城朔
型抜きにはそんなに……苦労しないぞ!
真城朔
「あっ」
夜高ミツル
桃を切り終えて、次はキウイ……
夜高ミツル
を取ったところで、真城に目を向ける。
真城朔
型を抜くときに力を込めすぎ……
真城朔
指が力余って……
真城朔
星型がだいぶぐんにゃりな感じに……
夜高ミツル
型抜きあるあるが発生している。
真城朔
「…………」
真城朔
調子に乗った。
夜高ミツル
「……大丈夫大丈夫」
夜高ミツル
「ちゃんと星の形になってるから」
真城朔
「ん……」
真城朔
こくこく……
真城朔
頷いて
真城朔
せめてこれ以上形が崩れないように
夜高ミツル
頷きを返す。
真城朔
なるべくそっ……っとフルーツポンチの器へ入れた。
真城朔
そ……
真城朔
黄色い星が透明な器の底に積み重なっている。
夜高ミツル
星だなあ
夜高ミツル
改めて、キウイの皮を剥いていく。
夜高ミツル
スル……スル……
夜高ミツル
キウイは皮が滑りにくいところがいい。
真城朔
残った黄桃の型を抜いていたが
真城朔
いつしかぼんやりとミツルがキウイの皮を剥くのを見ている。
真城朔
ぼー……
夜高ミツル
キウイと向き合っている……
夜高ミツル
いたのが、皮を全部剥いて顔を上げ、
夜高ミツル
見られているのに気がつく。
真城朔
ぱちっ……
真城朔
すぐ目が合う。
夜高ミツル
合いがち。
真城朔
見つめ合っている。
夜高ミツル
対面で作業をしていると、こういう謎の時間が発生することがある。
真城朔
あっている……
真城朔
今まさにあっています。
真城朔
「?」
真城朔
首を傾げた。
夜高ミツル
ミツルも首を傾げた。
夜高ミツル
謎の時間。
夜高ミツル
もしかしてキウイを切るのを待たれているのか……?
真城朔
でも手元にまだ黄桃ちょっと残ってる。
夜高ミツル
はて……?
夜高ミツル
とりあえず困っているわけではなさそうなので、改めて手元に目線を落とした。
真城朔
しばらくぼんやりそうするのも見ていたが……
真城朔
はっ
真城朔
になり、真城も自分の手元へと視線を向ける。
真城朔
作業を再開……
夜高ミツル
謎の時間が終わった。
真城朔
謎の時間だった。
夜高ミツル
とすとすとキウイを輪切りにしていく。
真城朔
黄桃の残党をひとつひとつ片付けています。
真城朔
さっきより丁寧にやっている。
真城朔
そっと抜いて……そっと入れて……
夜高ミツル
輪切りにするのは皮を剥くより簡単ではやい。
真城朔
星型の残りを器に入れて……
真城朔
真城はまた手際があまりよくないので……
夜高ミツル
丁寧にやってる!
真城朔
ていねいに……こころをこめて……
夜高ミツル
切り終えたキウイを置いて、2個目を手に取る。
真城朔
星型にくり抜いた残りもミツが食べるから丁寧に扱わなきゃで……
夜高ミツル
適当でもいいんだけど、大事にしてくれてるのは嬉しい。
夜高ミツル
再びキウイの皮を剥いていく。
真城朔
でもなんだかんだ終わったので、キウイに移ります。
真城朔
器を取る。
夜高ミツル
剥き剥き……
真城朔
ちょっとおかためのキウイ。
真城朔
黄桃より型抜きしやすい感じ……
夜高ミツル
今日買ってきたばっかり。
真城朔
力を込めるのは得意だし……込め過ぎちゃうのが怖いだけで……
真城朔
型を抜く瞬間は思い切り。
真城朔
型から抜く瞬間の方がこわい。
真城朔
けど、黄桃よりはちょっと簡単。
真城朔
真ん中に白い部分の浮いた星ができた。
夜高ミツル
最後の皮を三角コーナーに落として、また輪切りにしていく。
真城朔
ここなんて言うんだろう……
夜高ミツル
真ん中の白いとこ……
真城朔
素朴な疑問が脳裏に過ぎってミツルを見た。
夜高ミツル
視線を感じて、また顔を上げた。
真城朔
また目が合った。
真城朔
「…………」
真城朔
おず……
真城朔
おろ……
夜高ミツル
「どうかした?」
真城朔
「え」
真城朔
「と」
真城朔
「…………」
真城朔
まな板を軽く傾けて示し……
真城朔
「キウイの、ここ」
真城朔
「白いとこ」
真城朔
「名前」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「うん?」
真城朔
「知らないな、って……」
夜高ミツル
首を捻った。
夜高ミツル
「俺も……」
真城朔
真城もひねった。
夜高ミツル
かしげ……
夜高ミツル
はてな……
真城朔
顔を見合わせ……
真城朔
疑問符。
夜高ミツル
「真ん中の白いとこ……」
夜高ミツル
「としか……」
真城朔
「うん……」
真城朔
白いとこを見下ろしている。
真城朔
「緑のとこは……」
真城朔
「果肉……?」
夜高ミツル
「多分……」
夜高ミツル
「あ、芯か……?」
夜高ミツル
「真ん中」
真城朔
「芯……」
真城朔
「かも」
真城朔
そうかも、になっている。
真城朔
「芯」
夜高ミツル
「多分……?」
真城朔
「多めの星だな、って」
夜高ミツル
「そうだな…………」
夜高ミツル
また首を捻った。
真城朔
「白い星……」
夜高ミツル
「レシピのやつってこんな感じじゃなかったな……?」
真城朔
キウイの星をフルーツポンチに入れて。
真城朔
次をくり抜こうとして……
真城朔
あれ? になった。
夜高ミツル
手元のキウイを見下ろしている。
真城朔
「…………」
真城朔
「そういえば……?」
夜高ミツル
「…………」
夜高ミツル
「こうじゃなくて…………」
夜高ミツル
包丁で今切った方向を示し……
真城朔
見ています……
夜高ミツル
「こう切るんだったのか……?」
真城朔
輪切りではなく……
夜高ミツル
縦向きに包丁を当てました。
夜高ミツル
「こうだな……」
夜高ミツル
「多分こう……」
真城朔
「…………」
真城朔
「た」
真城朔
「たべたら」
真城朔
「これも、おいしい」
真城朔
「と、思う」
夜高ミツル
「…………そうだな」
夜高ミツル
頷いた。
真城朔
こくこく……
真城朔
頷いて、改めて型抜きをはじめました。
夜高ミツル
でも今度は縦切りにしていくぞ。
真城朔
輪切りが一個と縦切り一個。
夜高ミツル
模様違いのキウイの星が……
真城朔
いろんなおほしさまができます。
真城朔
輪切りを丁寧に一個一個お星さまにしていく。
真城朔
白い部分がまんなかでぴかぴか。
夜高ミツル
改めて縦切りにされた方も積まれました。
夜高ミツル
型抜き待ち。
真城朔
器が待ってるのを見てはた……になり、ちょっとスピードをあげる。
真城朔
ちょっと……気持ち……
真城朔
急ぎすぎると今度こそ穴を開けてしまいそうで……
夜高ミツル
「焦らないで大丈夫だからな」
真城朔
「ん」
真城朔
「う、ん」
真城朔
何度も頷く。
真城朔
「しっかりやる……」
真城朔
意気込み。
夜高ミツル
やる気を感じる。
真城朔
がんばっています。
夜高ミツル
頷きを返して、苺のパックを手に取る。
真城朔
そのあたりで輪切りの方が終わったので、縦切りを取る。
真城朔
こっちは……1切れにつき1個じゃなくて
真城朔
2個くらい取れる……きがする……
真城朔
ので、そのようにしていく。
真城朔
抜き抜き……
夜高ミツル
ちなみに芯(暫定)はミツルが食べる器行きになっている。
夜高ミツル
した。
真城朔
された……
真城朔
ミツがそうするのならそうらしい……
真城朔
そんな感じで抜いています。
夜高ミツル
ザルを取り出して、苺を軽く水洗いする。
夜高ミツル
じゃー……
夜高ミツル
こういうの、予めやっておけばよかったなと、やりながら気づく。
夜高ミツル
よくある。
夜高ミツル
苺を傷つけないように気をつけつつ、キッチンペーパーで水気を取る。
真城朔
計画性がないので、いつも後から気づく。
真城朔
いきあたりばったり……
真城朔
これはこれで楽しみみたいな……
真城朔
フルーツポンチ作るのも結構急に思い立ったし……
夜高ミツル
ネットで七夕っぽいもの調べてたら見つけて、いいなってなった
夜高ミツル
水気を切った苺を切っていく。
真城朔
今度は白い部分が少ないキウイの星を作ってます。
夜高ミツル
真ん中あたりに包丁を入れようとして、
真城朔
種が縦に並んでいる……
夜高ミツル
これだと結構分厚くなるな……?と気づく。
夜高ミツル
今度は切る前に気づいた。
真城朔
気付くのが早くなった。
真城朔
真城はミツルの気付きに気付かずキウイを抜いている。
真城朔
さっきよりちょっと型から出すときに気を使う感じになった……
夜高ミツル
少しずらして、1/3あたりの位置に包丁を入れる。
夜高ミツル
す……
夜高ミツル
程々の厚みになった。
夜高ミツル
ので、このくらいでよさそう。
真城朔
キウイの型抜きに集中……
夜高ミツル
残った2/3を半分に。
真城朔
しているが、結構減ってきたので
真城朔
次はどうかな……と思ってミツルの手元を窺う。
夜高ミツル
苺が切られています。
真城朔
切られている……
夜高ミツル
ヘタを取り、1/3ずつ切り……
真城朔
一応手元は動かしてます。
夜高ミツル
赤い部分は型抜き待ちに
夜高ミツル
赤い部分のほとんどなくなった真ん中エリアは、ミツルが食べる方の器に積まれていく。
真城朔
首を傾げた。
真城朔
「それ」
真城朔
「抜かない?」
真城朔
真ん中エリアのいちごを見る。
夜高ミツル
「んー」
夜高ミツル
「赤いとこなくなったから……」
夜高ミツル
なくなってはないが、星型にできるほどはない。
真城朔
「んー」
真城朔
似た感じの生返事しつつ、曖昧に頷いた。
真城朔
「端っこ」
真城朔
「星にするね」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
やっていきます。
夜高ミツル
写真でも……多分……真ん中の方は使ってなかったはず……
真城朔
キウイが終わったので、器を取る。
真城朔
いちごをまな板に並べて戻し……
真城朔
今までで一番繊細な作業が要求される気がする。
夜高ミツル
もくもくいちごを切っている。
真城朔
小さいので……
夜高ミツル
小さい……
夜高ミツル
小さいのを切っていってます。
真城朔
うっかりつぶれちゃいそうで……
夜高ミツル
小さいしたくさんあるから、ちょっと時間がかかる。
真城朔
「…………」
真城朔
はたになった。
真城朔
その場を移動し……
夜高ミツル
「……?」
真城朔
箸立てからスプーンを取って戻ってきた。
真城朔
「これ」
真城朔
スプーンの持ち手の方を示し……
夜高ミツル
移動して戻ってくるのを見ていた。
夜高ミツル
「あ」
夜高ミツル
理解した。
真城朔
いちごの型を抜いた型抜きに持ち手の側を入れて……
真城朔
えいしょっ。
真城朔
いちごが出てきました。
夜高ミツル
出てきた。
真城朔
「こう」
真城朔
「する……」
真城朔
今更だけど……
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
頷いている。
真城朔
頷き返して、作業を再開する。
夜高ミツル
そうだな そうしたらよかったな……
夜高ミツル
気づきが遅がち。
真城朔
途中で気づけて……よかった!
真城朔
やっています。ちまちま。
夜高ミツル
こちらもやはりちまちまと……
真城朔
だんだんとうまいやり方を覚えていっている。
真城朔
学びが……あるぞ!
夜高ミツル
ちまちまとやっていき、1パック分の苺を切り終えた。
夜高ミツル
成長してる えらい
真城朔
それを片端からお星さまにしています。
真城朔
のびるましろ
夜高ミツル
のびのび……
真城朔
料理は経験ゼロでしたので……
真城朔
教えてもらうたび……ちょっとずつのびる……
夜高ミツル
伸びしろがいっぱいある。
真城朔
伸びましろ
夜高ミツル
苺が終わったので、今度はりんごに。
夜高ミツル
これで果物は最後だ。
真城朔
真城もちまちまといちごをやっていますが
真城朔
スプーンを覚えたのでちょっとペースがあがりました
真城朔
学びによる進歩
夜高ミツル
皮を剥いていく。
真城朔
ふと顔を上げて、ぼんやりとそれを見る。
真城朔
皮剥きをしているとなんとなく眺めてしまう……
夜高ミツル
ひと繋がりにスルスルと……とはいかないが、まあ危なげはなく。
真城朔
じょうずなので……
夜高ミツル
スル……スル……
真城朔
てぎわがよい。ようにみえる。
真城朔
すごい……と思う。
夜高ミツル
バイト先なんかだともっと上手い人がいたものだが……
夜高ミツル
今は他の人と比べる機会はないし、真城が褒めてくれるならいいか、と思う。
真城朔
すごい、と思っています。
真城朔
ミツはなんでもできる……
夜高ミツル
なんでもはできない……
夜高ミツル
皮を剥くことはできる。
真城朔
今まさにできている。
真城朔
真城はなんとか型抜きができています。
夜高ミツル
見守られながら、まるっと皮を剥き終わりました。
真城朔
星のいちごをフルーツポンチの器へ。
真城朔
残った端っこをミツル用の器へ。
真城朔
なんかうさぎの餌みたいな感じになってきてちょっと申し訳なさがないでも……
真城朔
けっこうな量じゃない? これ……
夜高ミツル
食える食える。
夜高ミツル
余裕!
真城朔
俺があんまり食えないからって……みたいな気持ちが湧きつつあり……
夜高ミツル
りんごをまな板に置いて、どう切るか考えている。
真城朔
ちょっとしょぼしょぼ型を抜いている。
夜高ミツル
えーっと……
夜高ミツル
半分に切って……いや……
夜高ミツル
型のサイズがあれだから……
夜高ミツル
これは輪切りでいけそう。
夜高ミツル
今度こそ!
真城朔
小さめの型を使ってます。
真城朔
いちごは数が多くて小さいのでちょっと大変。
夜高ミツル
計画が定まったので、りんごを転がして包丁を当てる。
夜高ミツル
そのまま輪切りにしていく。
真城朔
切られている……
真城朔
りんごを輪切りにするの、結構珍しい光景。
夜高ミツル
始めてする。
真城朔
なかなか豪快……
夜高ミツル
世にも珍しいりんごの輪切りが生産されていく。
夜高ミツル
とん とん……
真城朔
おお~……
真城朔
うっかり手が止まっていたのではたとなり、いちごに戻ります。
真城朔
ちまちま
真城朔
いちごを型抜きするの、かなりちまちま感が増す。
夜高ミツル
ちいさいものを扱っている。
真城朔
小さい星をいっぱい作ってます。
真城朔
作ってはフルーツポンチの器に入れ……
真城朔
切れ端を切れ端の器へ……
夜高ミツル
その内にりんご一個が輪切りになった。
真城朔
「あ」
真城朔
「切れた?」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「確か」
真城朔
「それ」
真城朔
「最後……」
真城朔
「くだもの」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
頷く。
真城朔
「い」
真城朔
「いそぐ……」
真城朔
いちごを片付けにペースアップします。
真城朔
実際そんなに遅れていたわけでもなく……
真城朔
スプーンでペースアップしたし……
真城朔
いちごを片付けて、よし。になり
真城朔
輪切りのりんごをまな板に並べる。
夜高ミツル
「あんまり急がなくても大丈夫だからなー」
真城朔
「ん」
真城朔
「うん……」
真城朔
こくこく……
真城朔
しつつも急いでいたので……
真城朔
「あ」
真城朔
スプーンの尻が元気に星型りんごをへし折ってしまった。
夜高ミツル
言って、冷蔵庫の扉を開け、
夜高ミツル
「?」
夜高ミツル
ところてんを取り出して振り向いた。
真城朔
割れた星が……
夜高ミツル
あ……
真城朔
「…………」
真城朔
「き」
真城朔
「気をつける……」
真城朔
まなびに……
真城朔
していく……
夜高ミツル
学んでいる……
夜高ミツル
頷いた。
夜高ミツル
「ゆっくりで大丈夫」
真城朔
急がないのが、大事。
真城朔
「うん……」
真城朔
しょぼしょぼ頷いています。
真城朔
慎重に作業を再開しました。
夜高ミツル
再開したのを見て、流しへ。
夜高ミツル
さっきいちごに使ったザルを取り、そこにところてんをあける。
夜高ミツル
軽く水洗いしていく。
真城朔
焦らなければ多分今までで一番楽なりんごの型抜き。
夜高ミツル
じゃばば……
真城朔
果肉がたいへんしっかりしているので……
真城朔
ちらちらミツルの方を見る余裕も出てくる。
真城朔
「ところてん……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「たぶん」
真城朔
「食べるの」
真城朔
「はじめて……?」
夜高ミツル
「ん、マジか」
真城朔
「たべない……」
夜高ミツル
「はじめてがちょっと変わり種になったな」
真城朔
頷いている。
夜高ミツル
「まあ俺もそんなに食べたことないけど」
真城朔
「なんか……」
真城朔
「………………」
真城朔
何か言いかけて、うーん……になった。
夜高ミツル
「なんか……夏って感じの味がする」
真城朔
「う」
真城朔
「うん」
夜高ミツル
「今度普通に食ってみるか」
真城朔
こくこく頷いた。
真城朔
しきりに頷いている。
真城朔
「うん」
真城朔
「ふつう」
真城朔
「普通に食べる……」
真城朔
「あ」
真城朔
「今日も」
真城朔
「食べる」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
なんかしょぼしょぼになりながら型を抜いています。
夜高ミツル
水を止めて、軽く水気を落としながら。
夜高ミツル
「甘くして食うのは俺も始めてだから」
真城朔
星のりんごをフルーツポンチに入れていく……
夜高ミツル
「どうなるか楽しみ」
真城朔
「……う」
真城朔
「うん」
真城朔
「うん……」
真城朔
「たのしみ」
真城朔
「だよ」
夜高ミツル
「な」
真城朔
「……ん」
夜高ミツル
水気を切りつつ、これちょっと短くした方がいいかな?と思い当たる。
夜高ミツル
一つの器から取り分けるし……
夜高ミツル
手を伸ばしてキッチンばさみを取り
真城朔
型抜きをしつつミツルを見ている。
夜高ミツル
ザルの中のところてんをちょきちょきと切っていく。
夜高ミツル
ほどほどに短く……
真城朔
てぎわがいい……と思っています。
真城朔
自分もがんばろう……と思って型抜きに向き合う。
夜高ミツル
多分このくらい切れば食べやすい……
真城朔
向き合い、ちゃんとやり、やっていきます。
夜高ミツル
やっている。
夜高ミツル
やった。
真城朔
最後の一切れにきました。
夜高ミツル
多分これ以上はやりすぎになる。
真城朔
まんまるいとこに一個一個星型を開ける。
夜高ミツル
器に入れようと思ったところで、はたと
夜高ミツル
彩り的に……先に切った果物たちが上にあるべきなのでは……?
夜高ミツル
という……気づきを得……
真城朔
最後の一個を抜き終わり……
真城朔
ミツルの気付きには気付かずに器へと投入。
真城朔
ふー。
真城朔
いっぱいあけた……
夜高ミツル
あっ
真城朔
「?」
夜高ミツル
「あ~」
夜高ミツル
「えーと……」
夜高ミツル
「……ちょっとスプーン貸してくれ」
真城朔
「うん」
真城朔
差し出しました。
夜高ミツル
受け取ります。
真城朔
残りの果肉のかけらもそれ用の器に移し……
真城朔
まな板と型抜きを持って流し台へ。
真城朔
じゃぶじゃぶ……
真城朔
ミツルが使ってたぶんもまとめて洗い始めた。
夜高ミツル
受け取ったスプーンを底の方に差し込んで、軽くかき混ぜる。
夜高ミツル
「……あ、ありがと」
真城朔
「ん」
真城朔
おしごと……
真城朔
手が空いたら皿を洗うぞ! というのが染み付いている。
夜高ミツル
洗ってくれてるのに礼を言って、また手元に目を向ける。
夜高ミツル
やわらかい果物をつぶさないように、中身をまぜてまぜて……
夜高ミツル
いい感じに彩りの果物が上に出てきた……
夜高ミツル
よかった。
真城朔
器も洗えるやつは洗って……
真城朔
手を拭き……
真城朔
フルーツポンチのところに来た。
真城朔
「できた?」
真城朔
ちょっと汁が少ない気もした。
真城朔
首を傾げる。
夜高ミツル
「もうすぐ」
夜高ミツル
フルーツを気持ち真ん中に寄せて、はしっこにぐるっとところてんを盛り……
夜高ミツル
最後にサイダーを取る。
真城朔
「あ」
真城朔
そうだそうだ……
真城朔
そのために買ったんだった……
夜高ミツル
プシッと軽快な音を立てつつ蓋を開けて、静かに器に流し入れる。
真城朔
おおー……
夜高ミツル
しゅわ……
真城朔
視線をフルーツポンチの器に合わせ……
夜高ミツル
注ぎ……
真城朔
料理台に手を添えて……
真城朔
じー……
夜高ミツル
見守られながら、ペットボトルが空になった。
夜高ミツル
「できた」
真城朔
「できた」
真城朔
「……できた」
夜高ミツル
頷く。
真城朔
繰り返して、真城も頷く。
真城朔
「お星さま……」
真城朔
じー……
真城朔
器を横から眺めて笑っている。
夜高ミツル
サイダーの中に、色とりどりの星が浮かんでいるのがよく見える。
夜高ミツル
ラップを取って、ぴ、と引き出し
夜高ミツル
「じゃあ、一旦冷蔵庫に入れとくか」
真城朔
「?」
真城朔
「あ」
真城朔
そういえば……
夜高ミツル
「カレー食お」
真城朔
「うん」
夜高ミツル
器にラップを被せる。
真城朔
「カレーのあと」
真城朔
「だね」
夜高ミツル
「ん」