2021/07/10 昼過ぎ
真城朔
ホットケーキがほんのり甘いので塩気といい感じにバランスが取れる。
夜高ミツル
拭き終わった手を取って、リビングに向かう。
夜高ミツル
真城をソファに座らせて、自分もその隣に腰を下ろし
夜高ミツル
応えがなくても、ミツルの腕が離れることはなく。
夜高ミツル
「楽しかったことはまたしたいし、うまかったものはまた作りたいよ」
夜高ミツル
「これからも、ずっと一緒にいるんだから」
真城朔
こういうセリフだって全部使い古されていて、
夜高ミツル
エアコンの効いた室内で、寄り添う熱があたたかい。
真城朔
抱き寄せられたミツルの胸に顔を埋めている。
真城朔
離れられないのに、と、その続きを呑み込んだ。
夜高ミツル
「真城が俺に気を使って、溜め込むほうが嫌だ」
夜高ミツル
してやれればどれ程いいだろうか、と思う。
夜高ミツル
「それでも、真城が苦しいままで我慢させたり」
真城朔
この問答自体が既に何度も繰り返してきたようなもので。
夜高ミツル
「……無理して笑ってほしいわけじゃない」
夜高ミツル
「真城にきっとつらい思いをさせるって、分かってて」
夜高ミツル
「真城が何回嫌だって言っても一緒にいることを選んだのは、俺だ」
夜高ミツル
「俺はこうして真城といられて、幸せだよ」
夜高ミツル
「真城と一緒にいる以上に幸せなことなんか、ない」
夜高ミツル
「……こうなったこと、今だって少しも後悔してないよ」
夜高ミツル
「もっと早く真城のこと分かってやれてたら、とかは思う……」
夜高ミツル
「真城が苦しんでるの、気づいてやりたかったよ」
夜高ミツル
「言ってもしょうがないことなんだけどな……」
夜高ミツル
「……あの時できなかった分、今はできることをしたいよ」
夜高ミツル
「しなきゃいけないからしてるわけじゃないんだ」
夜高ミツル
「……真城が、俺のことを大事に思って言ってくれてるのは、わかる」
夜高ミツル
「真城がなんて言っても、絶対離れない」
夜高ミツル
いつもミツルが手入れをする髪が、さらさらと手に触れて流れる。
夜高ミツル
この手を離した先で、真城が生きてゆける訳のないことが分かるから。
夜高ミツル
真城を幸せにできるのは自分しかいないことが分かるから。
夜高ミツル
ミツル自身が、真城と一緒にいたいから。