2021/07/24 深夜
noname
ST シーン表(10) >
にぎやかな飲食店。騒ぐ人々に紛れつつ事態は進行する。
noname
飲み屋の立ち並ぶ通りの裏で、魔女の痕跡を追うて二人歩き回る。
真城朔
真城のだらりと下げられた左腕から血が落ちて、
真城朔
ぽた、ぽたと暗いアスファルトを濡らしていた。
夜高ミツル
その様を見て、気遣わしげに問いかける。
真城朔
魔女は吸血鬼よりも性質が悪い。一般人を狙う魔女を追い払うために血戒を使いもした。
真城朔
恋人たちの浮気心を煽って弄ぶ、とだけ言えばかわいらしいものにも思えるが、
真城朔
そういった他愛のない欲望から魔女が引き起こす惨禍のことはよく知っているため。
真城朔
存外短気で狩人に刃を向けることにも躊躇がないようだったし、素直にご退場願うべく今晩も狩りに勤しんでいる。
真城朔
表の飲み屋から人々の笑い声が響く。続く日常。表向きのもの。
真城朔
切り裂かれたパーカーからぱくりと口を開けた傷が見える。
真城朔
止血も億劫がってこうして魔女を追い続けているが、
夜高ミツル
「せめて、血が止まる程度だけでも……」
夜高ミツル
血の匂いなど、誰でも変わらないはずなのに
夜高ミツル
真城の血の匂いはいつだって、不思議とそれと分かる。
夜高ミツル
反対の手で、真城の頭を自分の首筋に寄せる。
真城朔
幾度となく牙を立て、血を啜ってきたミツルの首に
真城朔
抱き込むようにミツルの背の側から肩を掴み、
真城朔
慣れた場所に、いつものように、食らいつく。
真城朔
同じ場所に、愛撫に似た舌先の濡れた熱が触れる。
夜高ミツル
その痛みも、熱も、何度も受け入れてきた。
真城朔
滴る血液を舐め取っては、肉ごとに吸い上げて糧を得る。
夜高ミツル
血を吸い上げられて、すぅ、と体温の下がるような感覚。
夜高ミツル
それを追うように、内側から熱が湧き上がる。
真城朔
腕の中には熱心に熱烈にミツルを貪り耽溺する、
真城朔
夢中になって血を啜っていた真城の牙が、不意に一度離れる。
真城朔
それが睦事の仕草と相違ないことを知っている。
真城朔
何か求めるような明確な、けれど同時に不明瞭な意図でもって、
真城朔
受け止めるミツルの身体へと擦り寄せられる。
夜高ミツル
それに応えるように、ミツルの腕にも力がこもる。
夜高ミツル
真城が漏らす吐息。傷口から立つ濡れた音。
夜高ミツル
夜闇に浮かぶ白い頬に、そっと指を這わせる。
真城朔
ひくりと肌が震えて、しかしそれを拒まない。
真城朔
つい先程までミツルの血を啜っていた唇が濡れている。
真城朔
縋るような指の仕草も、傾けられる身体の重みも、
真城朔
繰り返してきた情事の際のそれと限りなく近い。
真城朔
歓びをもってそれを受け入れてしまうのも変わらない。