2021/07/25 夕暮れ

noname
傾いた夕日が部屋を薄橙に染めている。
真城朔
胸の中には抱き慣れたぬくもり。
真城朔
穏やかな寝息の音。
夜高ミツル
その熱を、寝息の穏やかなのを感じながら
夜高ミツル
「……………………」
夜高ミツル
一足先に目を覚ましたミツルは、寝る前の様々なことに思いを馳せていた。
夜高ミツル
反省…………
夜高ミツル
反省を…………していたはずだが……
真城朔
真城は胸元ですやすや眠っている。
真城朔
熟睡……
夜高ミツル
よく寝てる……。
夜高ミツル
反省をしていたのは事実だが、それはそれとしてあのようになったのもまた事実だった。
夜高ミツル
ただでさえ疲れているところに、負担をかけさせてしまった……。
真城朔
本人はそんなことないとかお互い様とか言い張るだろうが……
夜高ミツル
言うだろうな……。
夜高ミツル
色々と気にさせてしまうのも申し訳ない。
真城朔
もぞ……
真城朔
ミツルの胸に頬を擦り寄せる。
夜高ミツル
「…………」
夜高ミツル
そっと頭を撫でる。
真城朔
「ん」
真城朔
「んー……」
真城朔
ふにゃ、と笑み崩れて頭がミツルの手に寄った。
夜高ミツル
寄せられた頭を、ゆるゆると撫でている。
真城朔
むにゃむにゃと不明瞭な眠たげな声を漏らしている。
真城朔
すり、と頭をミツルの手に預け、
真城朔
「……つ」
真城朔
「ミツ……」
夜高ミツル
「……真城」
真城朔
むにゃむにゃすやすや……
夜高ミツル
よく寝てるな……
夜高ミツル
疲れさせたな…………
真城朔
それからも結構長いことむにゃすようにゃうにゃやり……
夜高ミツル
それを起こさずに見守っているのはいつものこと。
真城朔
胸に顔を埋めたり……
真城朔
すり……
夜高ミツル
抱きしめたり、頭を撫でたり髪を梳いたり……
真城朔
惰眠を貪るだけ貪って、やがて、
真城朔
んん、と大して変わらない寝ぼけ声を漏らし。
真城朔
ぼんやりと瞼を上げた。
夜高ミツル
「おはよ、真城」
真城朔
「ん」
真城朔
「うん……」
真城朔
ぼや……と頷いて
真城朔
「おはよ」
真城朔
「ミツ……」
真城朔
ぼー……
夜高ミツル
ぼんやりしている……
真城朔
あまりものを考えられていなさそうな顔でミツルを見ている。
夜高ミツル
「…………」
夜高ミツル
「……とりあえず、飯とか食う…………?」
真城朔
「めし」
真城朔
「…………」
真城朔
こくこく頷いた。
真城朔
「たべる……」
真城朔
ミツがおなかすいてるとおもう……になってる。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「…………身体、大丈夫か?」
真城朔
「からだ」
真城朔
「…………」
真城朔
ぼや……
夜高ミツル
「だるかったり……」
真城朔
また一拍置いてから首を振った。
真城朔
もぞもぞとミツルの胸にまた身を擦り寄せる。
夜高ミツル
「……なら、よかった」
真城朔
「うん」
真城朔
「へいき……」
夜高ミツル
すり寄せられた身体に腕を回している。
真城朔
抱きしめられると心地が良くてまたうとうとになってくるが……
真城朔
なってきている……
真城朔
なりつつ……
真城朔
「ミツ」
真城朔
「ごはん……」
真城朔
とろとろした声でどうにか訴えている。
夜高ミツル
「……ん」
夜高ミツル
「あ、うん」
真城朔
とろとろねむねむ
夜高ミツル
「……起きれるか?」
真城朔
「……うん」
真城朔
「おきる……」
真城朔
もぞもぞ……
夜高ミツル
一緒にのそのそと身体を起こし……
真城朔
緩慢な動きで身を起こしている……
真城朔
とりあえず二人で起きて、スマホで調べて出前を頼み……
夜高ミツル
ハンバーグの出前を2人分。
夜高ミツル
チーズが入ってるやつとシャリアピンソースのと……
真城朔
種類の違うやつを……
真城朔
お米は家のを温めて。
真城朔
二人で食卓を囲んでいます。
真城朔
待っている間はなんか疲れてたからかなりぼんやりしていた……
真城朔
くっついて……
夜高ミツル
ぼや……
真城朔
ぴと……
真城朔
今は並んで食卓の前。
夜高ミツル
出前の夕食を前に手を合わせる。
夜高ミツル
「いただきます」
真城朔
「いただきます」
真城朔
唱和。
真城朔
真ん中に並べた二種類のハンバーグのうち
真城朔
ちょっと迷ってシャリアピンの方を箸で割って取った。
真城朔
どちらがどちらとか決めずに食べたいようにの並べ方
真城朔
もくもくもぐもぐ……
夜高ミツル
なら、とチーズが入ってる方を一口分取る。
真城朔
もぐもぐしながらミツルを見た。
夜高ミツル
箸で割った断面からチーズが見える。
夜高ミツル
それを口に運んで……
夜高ミツル
真城に視線を返す。
夜高ミツル
もぐ……
真城朔
じ……
真城朔
しばらく咀嚼をしてから飲み込み……
真城朔
「おいし?」
夜高ミツル
頷いて、飲み込む。
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「チーズが入ってる」
夜高ミツル
「…………」
真城朔
「入ってる……」
夜高ミツル
言ってからそりゃそうだと思った。
真城朔
チーズを見ます。
真城朔
おずおずと箸を伸ばした。
夜高ミツル
入っているのを頼んだので、入っている。
真城朔
小さめに割って、小さく盛ったご飯に乗せる。
真城朔
乗せつつ……
真城朔
「えっと、そっちの……」
真城朔
ええと……
夜高ミツル
「なんだっけ……」
夜高ミツル
「玉ねぎのやつ……」
真城朔
「うん」
真城朔
なまえでてこない
真城朔
「も、おいしい」
夜高ミツル
玉ねぎのやつが乗っている方を見た。
真城朔
「よ」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「なんか……」
真城朔
「思ったより和っぽい感じ」
真城朔
「しょうゆ……?」
夜高ミツル
ミツルも今度はそちらに箸を伸ばし、割る。
夜高ミツル
「へー」
夜高ミツル
「洋な感じの名前なのにな」
夜高ミツル
忘れたけど……
真城朔
「意外」
夜高ミツル
だな、と頷いて、玉ねぎのソースのかかったハンバーグを口へ。
夜高ミツル
もくもく……。
真城朔
向かいでもくもくチーズの入ったハンバーグを食べています
夜高ミツル
真城の言ったように、醤油の味がする。
真城朔
もぐもぐもくもく……
夜高ミツル
米も食べ……
真城朔
おいしいとは言いつつ普段よりぼんやり食べている。
真城朔
おいしいのはほんと。
夜高ミツル
「…………」
夜高ミツル
ぼんやりしている様を、ちらちらと気にしている。
真城朔
もくもくもぐもぐ
真城朔
元から少食だし、咀嚼は長いしなので
真城朔
それほどおかしいというわけでもないのだけれども……
真城朔
ぼーっとしている。
夜高ミツル
話をするなら食べ終わってからの方がいいだろうと、
夜高ミツル
今は言及せず箸を進める。
夜高ミツル
気にはしている。
真城朔
真城ももくもくと食べている。
真城朔
もくもくと食べ……
真城朔
お腹いっぱいになったのか箸を置いた。
真城朔
まあまあいつもどおりには食べている。
夜高ミツル
いつもどおり、真城が食べきれなかった分はミツルが平らげて
真城朔
隣に座って待っている。
夜高ミツル
皿の上がきれいになくなったところで箸を置く。
夜高ミツル
手を合わせ、
真城朔
合わせます。
夜高ミツル
「ごちそうさま」
真城朔
「ごちそうさまでした」
真城朔
いつもの唱和。
真城朔
ぼやぼやしつつ食器を片付けようと立ち上がる。
夜高ミツル
食器を重ねて、一緒に台所へ。
真城朔
ぼやぼやと洗い……
夜高ミツル
出前の分は使い捨て容器で来たから、いつもより少なめ。
真城朔
取り皿とお茶碗とお箸とコップくらい
真城朔
すぐ終わった。終わりました。
夜高ミツル
終わった。
夜高ミツル
手を拭いてリビングに戻る。
真城朔
ついていきます。
夜高ミツル
二人並んでソファに腰を下ろし……
真城朔
ぴと……
夜高ミツル
「…………」
真城朔
「?」
夜高ミツル
どう切り出すか、ちょっと悩んだが
夜高ミツル
「……真城、大丈夫か?」
真城朔
「?」
真城朔
首を傾げて、
真城朔
また逆方向に首を傾げた。
夜高ミツル
結局直球に。
夜高ミツル
「なんか……ぼんやりしてる感じというか……」
真城朔
「ぼんやり……」
夜高ミツル
「…………疲れてる?」
真城朔
「…………」
夜高ミツル
「もうちょっと寝るか?」
真城朔
考え込んでいる。
真城朔
けっこう長く考え込んだ。のちに。
真城朔
「……わかんない……」
夜高ミツル
「…………そっか」
夜高ミツル
言って、抱き寄せる。
真城朔
抱き寄せられて、ミツルに身体を委ねる。
真城朔
いつものように。
真城朔
「いっぱい」
真城朔
「いっぱい、寝たし……」
真城朔
「別に……」
真城朔
だいじょうぶとはおもうけど、とか、もごもごと曖昧に言っている。
夜高ミツル
「……まあ、今日明日はゆっくりしよう」
真城朔
「……ん」
夜高ミツル
背中を撫でている。
真城朔
撫でられ……
真城朔
ミツルにぴっとりくっついている。
夜高ミツル
昨夜のことについて話をしようとは思っていたものの、そういう感じにできないままふにゃふにゃと真城に触れている。
真城朔
真城は真城でぼんやりとミツルに密着しており……
真城朔
真顔のままミツルの胸に顔を埋めている。
夜高ミツル
そういう心持ちでない時に無理に切り出したくはなく……。
夜高ミツル
結果として、お互い黙ってくっついている。
真城朔
ぼや……
夜高ミツル
やっぱり……疲れさせてしまっただろうか……。
真城朔
無言無表情でぎゅ……になっている。
夜高ミツル
悲しんでいない様子なのはとりあえずよかったけど……。
夜高ミツル
………………
夜高ミツル
昨夜のことを思い出す。
夜高ミツル
魔女のせいだと、言い訳はしたくなかった。
夜高ミツル
真城は自分のせいだと言うだろうか。それも嫌だ。
夜高ミツル
自分のすることは自分の責任だと言ってきた以上は、そこから逃げたくない。
真城朔
腕の中には真城のぬくもりがある。
真城朔
散々に掻き抱いた真城の熱が。
夜高ミツル
社会的によくないのは勿論だが、
夜高ミツル
何より真城を傷つけるし、危険に晒す行いだった。
夜高ミツル
他の狩人の前で、行為をしていたことを晒されもした。
夜高ミツル
魔女のせいだった、どうしようもなかったでは気をつけられない。
夜高ミツル
意思の強さでは抵抗できない場面がないとは言わないが、それでも最初から諦めるのでは大違いだ。
真城朔
真城はミツルの胸に頬を寄せている。
真城朔
昨晩の件について考えているのか考えていないのか、よくわからないぼんやりとした表情。
夜高ミツル
何を思っているのかは分からないが、昨夜の件が影響していないはずはなく。
夜高ミツル
やわやわと、まるい頭を撫でる。
真城朔
撫でられれば頭を擦り寄せる。
真城朔
動物の反射めいた仕草で。
夜高ミツル
真城を守ると決めた。傷つけさせまいとしてきた。
夜高ミツル
もう、こんなことを繰り返してはいけない。
夜高ミツル
腕の中に真城のぬくもりを、輪郭を確かめながら。
夜高ミツル
一人、決意を新たにしていた。