2021/07/26 朝

真城朔
ミツルの胸にはいつものぬくもりがある。
夜高ミツル
自分よりいくらか低い体温の、そのぬくもりばかりはいつもと変わらない。
真城朔
小さな寝息を立ててミツルの胸に顔を埋めている。
真城朔
指先は、ミツルの寝間着を掴んでいる。
真城朔
きゅ、と篭もった力がそこに皺を作った。
夜高ミツル
静かに背中を撫でる。
夜高ミツル
ミツルが先に目を覚ますのも、こうして真城が起きるのを待つのもいつもと同じ。
真城朔
いつも通りの日常の中で、
真城朔
いつものように、ぼんやりと真城が瞼を上げる。
真城朔
まだ呆けた瞳がうとうととミツルの胸元を見つめている。
夜高ミツル
「……おはよ、真城」
夜高ミツル
様子を窺うように、声をかける。
真城朔
声をかけられてぼうと顔を上げる。
真城朔
焦点が定まるまでに少し時間がかかって、
真城朔
「……ミツ」
真城朔
「おはよう……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
どこか夢うつつに声が返る。
夜高ミツル
軽く頭を撫でたあと、乱した髪を指で整える。
真城朔
されるがままに瞼を伏せた。
真城朔
ミツルから与えられる全てを甘受している。
真城朔
いつものように、だけれど、
真城朔
なにかひとつ、レイヤーを隔てたかのような。
夜高ミツル
うーん……
真城朔
ぼんやりとした違和感。
真城朔
とろりと上げられた瞼は、じっとミツルを見上げている。
夜高ミツル
視線が絡み合う。
真城朔
じ……
夜高ミツル
見られてるな……
真城朔
指は変わらずミツルの服を掴んでいる。
真城朔
拒む色、倦厭する色はない。
真城朔
怯える気配も自責の念も今は薄い。
夜高ミツル
先日の出来事を思えば、こうして黙って受け入れられていることの方が意外で……
夜高ミツル
「……朝飯、食う?」
真城朔
夜色の瞳に感情は薄く、ただミツルの顔を映している。
夜高ミツル
困惑はありつつも、とりあえず普段どおりに声をかける。
真城朔
ミツルからの提案にも大人しく頷いた。
真城朔
少しだけ、
真城朔
反応は遅かった。
noname
 
真城朔
狩りのあとということで、朝食は簡単なもので済まされた。
夜高ミツル
ご飯に味噌汁、目玉焼き。
夜高ミツル
ミツルにはサラダも。
真城朔
いつも通りに手を合わせていただきますを唱和して、
真城朔
いつもよりももくもくと食べて、
真城朔
ごちそうさまののち後片付け。
夜高ミツル
淡々と……
真城朔
やることをした。
夜高ミツル
やることを終わらせて、今は二人並んでソファの上。
真城朔
ぴっとりとミツルに張り付いている。
真城朔
いつもより反応も表情も薄いが、やたらにくっつきたがるところは変わらない。
真城朔
少々過剰になっている節もある。
真城朔
ミツルの服の裾を掴んで、そのまま体重をも預けている。
夜高ミツル
それをいつも通りに受け止めている。
夜高ミツル
腕を回して、頭を撫でる。
真城朔
撫でられている……
夜高ミツル
映画でも見るか……という感じにもならず、部屋は静かそのもの。
夜高ミツル
とは言え、互いに沈黙が苦になるタイプでもない。
夜高ミツル
お互いがいれば。
真城朔
それだけで十分に満たされる。
真城朔
はずなのだが、それはそれとして。
真城朔
何か欠落を埋めたがるような、
真城朔
求めるような切実さが、ミツルの服を掴む指先に僅かに滲む。
真城朔
感情の色の薄い中の、わずかかすかなそれではあるが。
夜高ミツル
「……真城?」
夜高ミツル
服を引かれた感覚に、顔を覗き込む。
真城朔
ぼんやりと顔を上げた。
真城朔
問いをかけられたことを訝しがるように、ゆっくりと首を傾ぐ。
夜高ミツル
目が合う。
真城朔
黒い瞳がミツルを映している。
夜高ミツル
今度はミツルが困ったように首を傾げた。
夜高ミツル
「えーっと……」
真城朔
ゆっくりとまばたきをしている。
夜高ミツル
「その、なんていうか……」
夜高ミツル
「…………」
夜高ミツル
「……大丈夫か?」
真城朔
「?」
真城朔
また首が傾ぐ。
真城朔
「だいじょうぶ」
真城朔
言葉をなぞるようなおうむ返し。
夜高ミツル
「なんか、ぼんやりしてる感じだから……」
真城朔
「ぼんやり……」
真城朔
言葉通りのぼんやりとした声で呟く。
真城朔
「…………」
真城朔
ぽす、と
真城朔
ミツルの肩に顔を寄せる。
夜高ミツル
言ってから、昨日も同じような会話をしたな……と思った。
夜高ミツル
寄せられた頭を見下ろしている。
真城朔
しばらく黙り込んでから、
真城朔
「……わかんない」
真城朔
同じ返事がきた。
夜高ミツル
「……うん」
夜高ミツル
抱え込むように、両腕を回す。
真城朔
ミツルの腕に抱かれる。
夜高ミツル
「わかんないなら、わかんないで大丈夫」
真城朔
少し遅れて、身体が僅かに弛緩する。
真城朔
「…………ん」
真城朔
小さく頷いた。
真城朔
そのまま俯きがちに視線を落としている。
夜高ミツル
背中を撫でる。
夜高ミツル
「無理して大丈夫って言われるよりは、その方がいい」
真城朔
撫でられている……
真城朔
リアクションもまだどこか鈍いまま、でも確かに頷いた。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
ミツルも頷いて、ぎゅ、と抱きしめる。
真城朔
ミツルの腕の中にいる。
真城朔
服を掴む指先にだけ力が篭もった。
真城朔
瞼を伏せて、
真城朔
肩に頬を擦り寄せる。
夜高ミツル
片腕は背中に回したまま、反対の腕で頭を撫でる。
真城朔
滑らかな髪を撫でられている。
真城朔
ミツルが洗ってドライヤーをかけ、手入れをしている髪。
夜高ミツル
サラサラとした感触が、指先をくすぐる。
真城朔
さらさらするする……
真城朔
されるがままにしている。
真城朔
いつもならもう少し甘えるような仕草が見られるけれど、今日はそれも薄く、
真城朔
しかしミツルの手を拒むことはなく。
夜高ミツル
拒まれないので、思うまま撫でて梳いて……
真城朔
うとうと……
夜高ミツル
眠そうになれば、そのまま寝かしつけるように背中を撫でる。
真城朔
背中を撫でられ……
真城朔
じわじわと姿勢が崩れて、頬がミツルの胸元に埋まる。
夜高ミツル
抱きとめる。
夜高ミツル
背中を撫でる手はそのままに。
真城朔
すり、と頬を寄せる。
真城朔
やがてゆっくりと瞼を上げて、
真城朔
眠たげな上目遣いでミツルの様子を窺った。
夜高ミツル
「寝なおす?」
真城朔
「……でも……」
真城朔
とろとろもたもたとした声。
真城朔
「ミツが」
真城朔
「……ミツ、は」
真城朔
「べつに……」
夜高ミツル
「俺ももうちょっと寝たいし」
夜高ミツル
また頭を撫でる。
真城朔
撫でられて、
真城朔
結局瞼を伏せてしまった。
真城朔
「……ん」
真城朔
「うん……」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「ベッド行こうか」
真城朔
「……うん……」
真城朔
頷いて、ゆっくりと
真城朔
どこか恐る恐るにミツルにしがみつく。
夜高ミツル
しがみつく真城の身体の、背中と膝の裏に手を回し、
夜高ミツル
よいしょ……、と抱えて立ち上がる。
夜高ミツル
そのままのたのたとベッドの方に歩を進める。
真城朔
されるがままに脚がゆらゆら揺れている。
真城朔
安心しきってミツルに身体を委ねている。
夜高ミツル
ベッドの前にたどり着くと、その真ん中にそっと真城の身体を下ろす。
夜高ミツル
それから、自分もその隣に潜り込む。
真城朔
おずおずとミツルの身体にしがみつく。
夜高ミツル
エアコンの温度を調整して、タオルケットをかける。
真城朔
頬を擦り寄せて、小さく息をついた。
真城朔
服越しに肌と肌の触れ合うぬくもりがある。
夜高ミツル
しがみつく身体に腕を回す。
夜高ミツル
ソファでしていたように、それよりも更に、身体を寄せ合う。
真城朔
ぴったりと密着している。
真城朔
胸に頬を預けて、
真城朔
やがて小さな寝息が立ち始めた。
真城朔
背中がゆっくりと上下する。
夜高ミツル
その寝息を乱さないように、そっと抱きしめる。
夜高ミツル
目を閉じる。
夜高ミツル
そのまま、じっと身体を寄せ合っていた。
noname
 
noname
2021/07/26 おやつどき
真城朔
もぞ、とミツルの胸で身じろぎをする。
夜高ミツル
起きたかな、と様子を窺う。
真城朔
果たしてゆっくりと瞼が上がって、
真城朔
朝と同じように、ぼんやりとミツルの胸元を見つめている。
夜高ミツル
「おはよ」
真城朔
顔を上げた。
夜高ミツル
やはり朝と同じように声をかける。
真城朔
「……おはよ」
真城朔
同じようにミツルの顔を見ている。
夜高ミツル
腕は相変わらず背中に回されている。
真城朔
「…………」
真城朔
「ミツ」
真城朔
「おきて……」
真城朔
舌足らずに問いかける。
夜高ミツル
「寝た寝た」
夜高ミツル
「ちょっと早く起きただけ」
真城朔
「…………」
真城朔
じっと見つめている。
夜高ミツル
見られてる……
夜高ミツル
「……寝たぞ? ほんとに」
真城朔
「…………」
真城朔
「ん……」
真城朔
しょぼしょぼと頷いた。
真城朔
あんまり納得していない気配がある……
夜高ミツル
ほんとに寝たけど……
夜高ミツル
あんまり言うとむしろ嘘っぽくなるのでそれ以上は言わない。
夜高ミツル
しょんぼりしている頭を撫でる。
夜高ミツル
わしゃ……
真城朔
しょぼしょぼの頭を撫でられている……
真城朔
「…………」
真城朔
「……ひま」
真城朔
「じゃ」
真城朔
「ない?」
夜高ミツル
「別に」
夜高ミツル
「真城がいるからヒマじゃない」
真城朔
「…………」
真城朔
「でも」
真城朔
「なんにも……」
夜高ミツル
「…………」
夜高ミツル
ちょっと調子戻ってきてるか……?
夜高ミツル
「じゃあ、買い物でも行くか?」
真城朔
顔を上げた。
真城朔
「かいもの」
夜高ミツル
頷く。
夜高ミツル
「買い物」
夜高ミツル
「ほら、狩りの前に冷蔵庫空けたから」
真城朔
「……うん」
真城朔
「あけた……」
真城朔
頷いている。
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「だから、行く?」
真城朔
「…………」
真城朔
「いく……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
どこかぼやぼやとしたリアクションながらも、そのように。
夜高ミツル
頷いて、
夜高ミツル
起き上がって、二人で出かける準備。
真城朔
ぼやぼやと準備をしている。
夜高ミツル
服を着替え、髪を梳かし……
真城朔
大人しく梳かされます。
夜高ミツル
外はまだまだ日が高く、スマホを見れば気温は真夏日。
真城朔
北海道、全然暑い。
真城朔
そりゃ関東よりはマシだけど……
夜高ミツル
今年はかなり暑いらしい……
真城朔
日傘も用意する。
夜高ミツル
お揃いで買った帽子を被り、
真城朔
極力陽射しを避けたいので、足元はサンダルではなくちゃんと靴。
真城朔
手が塞がらないようにリュックを担ぐ。
夜高ミツル
ミツルはサンダル。
夜高ミツル
しっかりと手を繋いで、玄関を開ける。
真城朔
外の眩しさに思わず目を眇めた。
真城朔
一度手を離してから日傘をさして、
真城朔
もう一度しっかりと手を繋ぎ直す。
夜高ミツル
「あっつ…………」
真城朔
頷く。
真城朔
「あつい……」
夜高ミツル
「北海道でもこんな暑いとは思わなかったよな……」
夜高ミツル
出かける度に言ってる気がする。
真城朔
「うん……」
夜高ミツル
暑い暑い言いながらも手は離さず、距離もぴっとりと寄り添うように。
真城朔
並んで二人、街道を歩いた。
真城朔
ぱんぱんになったリュックをどっさりとテーブルに置く。
夜高ミツル
色々買った。
真城朔
冷蔵庫は空だし、暑いから頻繁に買い出しには出かけたくないし。
夜高ミツル
しばらく買い物に出ずに済む程度に色々。
真城朔
二人で協力して冷蔵庫にものを詰めていく。
真城朔
リレー
夜高ミツル
詰め詰め……
夜高ミツル
空の冷蔵庫がいっぱいになっていく。
真城朔
冷凍庫にも詰めていくぞ。
真城朔
食パンもとりあえず冷凍しちゃう。
夜高ミツル
肉もすぐ使うやつ以外は冷凍庫に。
真城朔
えいやえいやと詰め込んでいき……
真城朔
冷蔵庫に入れなくてもいいものも然るべき場所に収めていって……
夜高ミツル
収納完了。
真城朔
ふー。
真城朔
になっています。
真城朔
汗ばんだ額を拭っている。
夜高ミツル
ミツルも滲んだ汗を拭う。
真城朔
「ミツ」
真城朔
「のみもの……」
夜高ミツル
「あー」
真城朔
「なにか……」
夜高ミツル
「飲む」
夜高ミツル
「飲もう」
真城朔
こくこく……
夜高ミツル
閉めた冷蔵庫をまた開いて、麦茶のポットを取り出す。
真城朔
グラスを並べています。
夜高ミツル
並べてもらったグラスに冷えた麦茶を注ぐ。
夜高ミツル
とぽぽ……
真城朔
氷ぽちゃぽちゃ
真城朔
二人で食卓へ。
真城朔
いつもどおり並んで腰を下ろします。
夜高ミツル
麦茶に浮かんだ氷がからころ音を立てている。
真城朔
すずしげ。
夜高ミツル
ポットも机に置き……
真城朔
麦茶を飲みます。
真城朔
飲んでいる。
夜高ミツル
ごくごく飲んでいる。
真城朔
ちまちま飲んでます。
夜高ミツル
一気飲みした。
真城朔
ミツルほど喉が渇かない。
真城朔
一気飲みの様子をぼんやり見ている。
夜高ミツル
飲み干すと、グラスを置いておかわりを注ぐ。
真城朔
じ……
夜高ミツル
とぽぽぽ
真城朔
いっぱい飲む……
夜高ミツル
いっぱい汗をかいたからいっぱい飲んでいる。
夜高ミツル
二杯目はさすがにもうちょっと勢いも控えめ。
真城朔
ミツルほどは汗をかかない……
真城朔
並んでゆっくりと。
真城朔
くぴくぴこくこく……
夜高ミツル
並んで麦茶を飲んでいる。
真城朔
とはいえなんだかんだ一杯飲み干して、
真城朔
グラスを抱えてほうと息をついた。
夜高ミツル
「おかわりいる?」
夜高ミツル
息をつく真城に尋ねる。
真城朔
ちょっと考え込む。
真城朔
「……半分くらい」
真城朔
そ、とグラスを差し出した。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
言われた通り、グラスの中程までお茶をそそぐ。
真城朔
注いでもらっている。
真城朔
「ありがとう」
夜高ミツル
ポットを置いて、また並んでグラスを傾ける。
真城朔
ちびちびと味わうように飲んでいます。
真城朔
少しは調子が戻ってきた感じもあるが、
真城朔
どこか反応が鈍いのと、表情の変化の薄いのは相変わらず。
真城朔
それでもミツルに寄り添うように座っている。
夜高ミツル
戻るきざしの見えたのは良いことだ。
夜高ミツル
麦茶を飲みながらも、ぴったりと寄り添う真城の様子を窺っている。
真城朔
両手をグラスに添えて、ぼんやりと正面を見ている。
真城朔
膝を崩した姿勢。
夜高ミツル
やっぱりぼんやりはしてるけど……
夜高ミツル
「……このあと、飯の前に先に風呂入る?」
真城朔
ミツルを向いた。
真城朔
ゆっくりとミツルを向いて、それから少ししてから小さく頷く。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
頷きを返す。
真城朔
「…………」
真城朔
グラスを手にミツルを見ている。
夜高ミツル
「じゃあ溜めてくるか」
真城朔
「……ん」
真城朔
「俺」
真城朔
「着替え」
真城朔
「とか」
夜高ミツル
「ん、頼む」
夜高ミツル
頷いて、グラスの中身を飲み干して
真城朔
ぼんやりと頷いて、こちらも僅かな残りを飲む。
真城朔
食卓にグラス2つ並べたまま、それぞれ腰を上げた。
noname
 
真城朔
お風呂を上がって、夕飯は冷しゃぶ。
真城朔
真城はいつもよりもたついたけれど、そんなに大変なメニューでもなく。
真城朔
食卓のグラスに改めて氷を入れて、麦茶を注ぎ直している。
夜高ミツル
二人の間に冷しゃぶの大皿。
夜高ミツル
あとはそれぞれにご飯と味噌汁と。
夜高ミツル
取り皿も互いの手元に。
真城朔
たれは手元でかける感じで。
夜高ミツル
そんな感じでセットして……
夜高ミツル
準備ができたらいつものように手を合わせる。
真城朔
並べて並んで座りまして。
真城朔
手を合わせます。
夜高ミツル
「いただきます」
真城朔
「いただきます」
真城朔
いつも通り。
夜高ミツル
箸を取り、大皿に伸ばす。
夜高ミツル
肉とレタスを同じくらい取り皿に取る。
夜高ミツル
ミニトマトもちょこちょこと乗せ……
真城朔
おずおずと迷いつつ……
真城朔
肉を多めに取ります。量で言えばミツルよりも少ないけど。
真城朔
レタスはちょっと。トマトは何個か。
夜高ミツル
くるりとタレをかける。
夜高ミツル
このタレがなんか結構色々をかけあわせていて……
真城朔
レシピを調べた手作りのタレで……
真城朔
ねぎのみじん切りとか生姜のすりおろしとか入ってる。
真城朔
ので、味が濃い。
夜高ミツル
色々入れた。
真城朔
真城もかけます。
真城朔
たれは真城が作った。
真城朔
混ぜるやつは真城が担当すること多め。
夜高ミツル
分量通りに測って混ぜてでやりやすい。
夜高ミツル
タレのかかった肉とレタスを一枚ずつとって、口に運ぶ。
夜高ミツル
ぱくっ
真城朔
ミツルを見ています。
夜高ミツル
ぱりぱりもぐもぐ……
真城朔
じ……
真城朔
箸を止めてミツルの様子を窺っている。
夜高ミツル
見られながら、もくもくと食べている。
夜高ミツル
飲み込む。
真城朔
じ……
真城朔
見てます。
夜高ミツル
「うまい」
夜高ミツル
と、真城に視線を返して微笑む。
夜高ミツル
「タレうまいなー」
真城朔
ちょっとほっとしました。
真城朔
「よ」
真城朔
「かった」
夜高ミツル
「冷しゃぶってポン酢のイメージだったけど、こういうのもいいんだな」
真城朔
「うん」
真城朔
「いろいろ」
真城朔
「ある……」
真城朔
こくこく頷いている。
夜高ミツル
「ポン酢よりこっちの方が好きかも」
夜高ミツル
「味が、なんか……しっかりしてる?」
真城朔
「ねぎ」
真城朔
「あるから?」
真城朔
「ポン酢」
真城朔
「落ちちゃう」
真城朔
「し」
真城朔
底に……
真城朔
食べ終わったら……
夜高ミツル
「落ちるなー……」
夜高ミツル
底に溜まる……
真城朔
こくこく……
真城朔
自分のぶんを見下ろしていたが
真城朔
よいしょと一切れ口に運んだ。
真城朔
もぐむぐ……
夜高ミツル
じ……
夜高ミツル
今度はミツルが様子を見ている。
真城朔
見られている……
夜高ミツル
いつもの光景といえばいつもの光景。
真城朔
長く咀嚼をしている。
真城朔
いつもより顎の動きが遅いような気がする……
夜高ミツル
ゆっくり食べてる……
夜高ミツル
ゆっくり食べるのを眺めている。
夜高ミツル
箸は……完全に止まっている。
真城朔
ゆっくり食べ……
真城朔
ゆっくり飲み込みました。
真城朔
「…………」
真城朔
ミツルに頷く。
真城朔
「味」
真城朔
「しっかり……」
夜高ミツル
「な」
夜高ミツル
頷いている。
真城朔
頷き返す。
真城朔
「お肉」
真城朔
「おいしい」
真城朔
「し」
真城朔
「さっぱり……」
真城朔
ぽつぽつとなんとか言い募る。
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
言い募る言葉に逐一頷く。
真城朔
「夏」
真城朔
「って感じ」
真城朔
「で」
真城朔
「…………」
夜高ミツル
「夏だなー」
真城朔
「うん……」
真城朔
こくこく……になっている。
夜高ミツル
「このくらい味が濃いのもいいよな、夏は」
夜高ミツル
「あと肉もだけど、レタス食べるのにいい感じがする」
真城朔
頷いてます。
真城朔
自分の取皿に視線を落とし……
真城朔
ちょっとだけのレタスと肉をつまみ上げて、口に含む。
真城朔
むぐむぐ
夜高ミツル
「レタスにポン酢だとちょっと水っぽい感じになっちゃうんだよな……」
夜高ミツル
「なってたんだなって、これ食べて思った」
夜高ミツル
言って、自分もまた一口。
真城朔
口を動かしながら頷いている。
真城朔
ミツルを見ている……
夜高ミツル
もくもく……
真城朔
もぐむぐ
夜高ミツル
ミツルの視線はというと、やはり真城の方に……
真城朔
飲み込んだ。
真城朔
視線が合っている。
夜高ミツル
もく……
夜高ミツル
飲み込み……
真城朔
ミツルに視線を返しながら、
真城朔
少なめのご飯に箸を伸ばしたりなどした。
真城朔
もくもく食べる。
夜高ミツル
隣に座って、互いに視線をやりながら食べ進めていく。
真城朔
ある意味いつも通りの光景で……
真城朔
真城のほうが先に食べ終わった。
夜高ミツル
大体いつも、真城の方が先に箸を置く。
真城朔
量が少ないのでまあまあ必然。
真城朔
大人しくミツルの食べ終わるのを待っている。
真城朔
遠慮なくミツルを見つめている。
夜高ミツル
残りの冷しゃぶを取り皿に取り、タレをかけ、ぱくぱくと食べていく。
夜高ミツル
ご飯も食べる。ご飯に合う味をしている。
真城朔
普段よりも無表情ながら、ミツルを見つめる眼差しに変化はない。
夜高ミツル
真城に見つめられながら、程なくして皿の上がきれいに空になった。
夜高ミツル
こくこくと麦茶を飲んで……
夜高ミツル
グラスを置く。
夜高ミツル
手を合わせる。
真城朔
合わせます。
夜高ミツル
「ごちそうさまでした」
真城朔
「ごちそうさまでした」
noname
 
真城朔
食器を洗い、夕飯の片付けを済ませてそのあと。
真城朔
ソファで二人。
真城朔
ぴったりとくっついている。
夜高ミツル
やはりテレビもつけないままで。
夜高ミツル
静かな部屋。
夜高ミツル
肩に腕を回し、細い身体を抱き寄せている。
真城朔
相変わらずどこかぼんやりと……
真城朔
けれど縋るようにくっついている。
夜高ミツル
それを受け入れ、促すように、体重を受け止めている。
真城朔
おそるおそるゆっくりと、
真城朔
胸に頬を擦り寄せる動物めいた仕草。
夜高ミツル
肩に回していた手を少し持ち上げて、頭を撫でる。
真城朔
撫でられる。
夜高ミツル
わしゃ、と撫でては指先で髪を梳き
夜高ミツル
整えてはまた撫でる。
真城朔
頬を擦り寄せた姿勢のまま固まってされるがままにしていたが……
真城朔
ちょっとだけ、やはり恐る恐るに、頭をミツルの手のひらに寄せる。
夜高ミツル
寄せられた丸い頭を撫でている。
夜高ミツル
大切なものに触る手つき。
真城朔
それをぼんやりと、
真城朔
同時にどこかこわごわと、
真城朔
けれど間違いなく、受け入れてはいる。
夜高ミツル
受け入れられている。
真城朔
その手から逃れることはない。
真城朔
拒むこともしない。
真城朔
ただ、どこかぎこちなさというか、
真城朔
どこか、なにか一枚、隔てたような。
真城朔
打てば響く、というのとは真逆の感覚。
夜高ミツル
昨日よりは少しマシになったとは思うんだけど……
真城朔
ぎゅ……
真城朔
その割にはミツルにしがみつきたがる。
真城朔
密着したがる。
夜高ミツル
真城がそうしたがるなら、ミツルが拒むことはない。
夜高ミツル
受け入れ、抱き寄せ、触れている。
真城朔
受け入れられている。
真城朔
なのにどこか緊張感がある。
真城朔
安堵を得られていない。安寧に浸ることができていない。
真城朔
身体の芯を強張らせて、ミツルとの接触を求めている。
夜高ミツル
大丈夫だと伝えるように、やわらかく頭を撫でている。
真城朔
それを喜んで受け入れるくせに、いつまでも気が抜けずにいる。
夜高ミツル
空いている腕を真城の背中に回す。
夜高ミツル
そのまま抱き寄せて、より一層身体を寄せ合う。
真城朔
ぴと……
真城朔
ゆっくりとミツルの胸に頬を寄せた。
真城朔
顔を埋めてじっとしている。
夜高ミツル
背中を撫でる。
真城朔
薄着に浮いた背骨の感触がある。
夜高ミツル
その上の、薄い肉の感触。
夜高ミツル
幾度となく触れてきた感触がある。
真城朔
繰り返し触れられてきた肌に浮くその線を、幾度となくなぞられてきた。
真城朔
あの夜も。
夜高ミツル
「…………」
夜高ミツル
大丈夫かと訊ねると、わからないと真城は言った。
夜高ミツル
多分、それが分かるようにミツルが手伝うこともできるのだと、思う。
真城朔
今はただ、縋るようにミツルに密着している。
夜高ミツル
……同時に、そうしたら真城は傷つくだろうなとも思う。
夜高ミツル
薄い背中を撫でる。
真城朔
今はどこかに緊張感を伴いながらも、
真城朔
燻る熱とは無縁のおだやかなさま。
夜高ミツル
真城を傷つけたくない。
夜高ミツル
だから、今はまだもう少し様子を見たかった。
真城朔
真城はミツルの内心を知ってか知らずか、その胸に顔を埋めている。
夜高ミツル
頭を背中を撫で、静かにふたりの時間を過ごす。
真城朔
どこか落ち着かない様子で、その時間に浸っている。
夜高ミツル
いつもならば、こうしていると真城がうとうとしてきたりするのだが……
夜高ミツル
今はその様子がない。
真城朔
昨日も今日もいっぱい眠って……
真城朔
あまり疲れるようなこともしてなくて……
夜高ミツル
いっぱい寝たな……
真城朔
ちょっと買い物に行っただけではぜんぜんつかれない
夜高ミツル
いつもは真城のほうが後から起きてくるくらいなので意識しないが、本当は真城は眠る必要はないのだという。
真城朔
休養は要るけれど、それが眠りである必要は必ずしもない。
夜高ミツル
あれだけ寝れば眠気が来なくもなるか……。
夜高ミツル
「……真城」
夜高ミツル
背中を撫でながら、胸に顔を埋める真城を見下ろす。
真城朔
「?」
真城朔
ゆっくりと顔を上げてミツルの顔を見た。
夜高ミツル
「ちょっと、散歩でも行かないか?」
真城朔
「さんぽ」
真城朔
単語をなぞるようなおうむ返し。
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「最近暑くて買い物くらいしか外出れてなかったし」
夜高ミツル
「夜くらいさ」
真城朔
「…………」
真城朔
頭の中で何かを整理するような沈黙ののち。
真城朔
「……ん」
真城朔
控えめに頷いた。
真城朔
「散歩」
真城朔
「いく……」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「行こ」
真城朔
もう一度頷く。
真城朔
そうと決まったら、二人で出かける準備をする。
夜高ミツル
風呂に入って部屋着になっていたので、また着替え直して……
真城朔
虫除けスプレーもする 昼もした
真城朔
ミツルだけ……
夜高ミツル
代わりというわけでもないが、昼は真城には日焼け止めを塗るのだけど
夜高ミツル
今は夜なのでそれも必要ない。
真城朔
財布だけポケットに突っ込んで……
真城朔
日傘も帽子もいらない。
夜高ミツル
だから用意もささっと済んで
真城朔
二人手を繋いで、外に出る。