2021/08/01 昼過ぎ

noname
日曜日。
noname
家族連れでごった返す複合商業施設の地下一階。
noname
レストランだとか、ちょっと洒落たスーパーだとかが立ち並ぶこの店へは、
noname
普段とはちょっと違う買い物をしたい気分だとか、
noname
ついでに100円ショップに行きたいだとか、服を買いたいだとか、
noname
まあそういう感じの用事で来る。
真城朔
今回は服のため。
真城朔
この前の狩りでまたTシャツを血染めにしてしまったし、色々買い足した。
夜高ミツル
狩人の服は消耗品。
真城朔
ついでにこっちの方のスーパーを散策しようとなったが……
真城朔
「…………」
真城朔
服の入った袋を片腕に、
真城朔
もう一方でミツルの手を握る。
真城朔
「人……」
真城朔
八月一周目、夏休み真っ盛りの日曜日。
夜高ミツル
「多いな~……」
夜高ミツル
なんせ1年近く平日も休日もない生活を送ってきたので……
真城朔
こくこく……
真城朔
日曜日の外出はなんとなく避けてきたけど……
真城朔
今日は久しぶりに曇りだし、みたいなノリで出てきてしまった。
夜高ミツル
うっかり。
真城朔
ミツルの手を握り締めて、ぴったりとくっつく。
夜高ミツル
その手を握り返し、通路の端の方に避けつつ……
夜高ミツル
「……平日に出直すか?」
真城朔
「んー……」
真城朔
衣服の入った袋を抱きしめて考え込んでいる。
夜高ミツル
「服は買えたし……」
真城朔
「いつもの方」
真城朔
「行く……?」
真城朔
とかなんとか顔つき合わせてると、
真城朔
ぱち、と瞬き。
真城朔
ミツル越しに何かを見つけたようで、
夜高ミツル
「?」
真城朔
その手を引いて、人混みを軽く分けていく。
夜高ミツル
「わ、」
夜高ミツル
「真城?」
夜高ミツル
手を引かれて歩く。
真城朔
ドラッグストア近くの壁際に、
こども
不安そうに視線を彷徨わせる、一人のこどもの姿があった。
こども
小学生くらい。男の子。
夜高ミツル
あ、と納得する。
夜高ミツル
迷子だ。
こども
涼しげな夏の装いに、やわらかく伸びた腕が日によく焼けている。
真城朔
迷いなくまっすぐその子の前に辿り着いて、膝を折る。
真城朔
「だいじょうぶ?」
こども
問い掛けられたこどもは大きな目を丸くして、
夜高ミツル
ミツルもしゃがみ込む。
こども
けれどまだ言葉の見つからぬまま、目の前の真城と
こども
同じく目線の高さの合うたミツルを見回した。
こども
わずかに唇を震わせている。
夜高ミツル
「親とはぐれちゃったのか?」
夜高ミツル
言ってから、うーん……となって
こども
「……う」
夜高ミツル
「お父さんとか、お母さんとか」
こども
視線を彷徨わせながら、その目端に涙を滲ませる。
こども
小さな肩が強張っている。
こども
おののくように長く言い淀んだあとに、
こども
「お」
こども
「おかあさん……」
こども
そのようにやっと返答を口にした。
真城朔
「…………」
真城朔
ちら、とミツルを見る。
夜高ミツル
気づいて、視線を返す。
夜高ミツル
「……あの……カウンターのとこに連れってってやったらいいのかな?」
真城朔
「たぶん……」
真城朔
ミツルに頷いてからこどもに向き合って、
真城朔
「あるける?」
真城朔
首を傾げて問いかけた。
こども
こくこく頷く。
夜高ミツル
「よし」
夜高ミツル
「お店の人のところに行って、お母さん探してもらおう」
真城朔
「ん」
真城朔
結論が出たので立ち上がり……
真城朔
上がった……
夜高ミツル
よいしょ……
こども
ところの真城の腰に、
こども
おそるおそるにしがみついた。
こども
ひし……
夜高ミツル
しがみついてる……
真城朔
しがみつかれている。
真城朔
片手をミツルと繋ぎ、片手に服の入った袋……
真城朔
おろ……
夜高ミツル
こどもを見て、真城を見る。
夜高ミツル
「あー、俺そっち持つよ」
真城朔
「あ」
真城朔
こちらもこくこく頷いた。
真城朔
袋をミツルへと差し出す。
夜高ミツル
受け取る。
真城朔
「ありがと」
夜高ミツル
頷いて、子供と目線を近づける。
真城朔
ミツルへと渡して、おずおず子どもの背中に手のひらを添えた。
こども
ひし……になっています。
夜高ミツル
「それじゃお兄ちゃん歩けないから」
こども
真城の腰に細い腕を回している。
夜高ミツル
「手つないでもらおうな?」
こども
「う」
こども
一度こく……と頷いて
真城朔
差し伸べられた手を、真城の手が握り込む。
夜高ミツル
「ん」
真城朔
よく焼けた小麦色の小さな指先と、白い指が絡み合う。
夜高ミツル
頷いて、姿勢を戻す。
こども
「…………」
こども
俯いている。
真城朔
微笑んで、その手を軽く引いてやる。
真城朔
「だいじょうぶ」
真城朔
「いこ」
真城朔
「ね」
夜高ミツル
「お店の人がお母さん呼んでくれるから」
夜高ミツル
「そしたらすぐ迎えに来てくれるよ」
こども
「……うん」
こども
「うん……」
こども
目端に涙を溜めている。
真城朔
ミツルと顔を合わせると、
真城朔
その手を引いて歩き出した。
真城朔
建物真ん中のインフォメーションセンターで、三人並んでぼんやりと人の行き交うさまを見つめている。
真城朔
インフォメーションセンターのお姉さんに報告して、お名前と特徴とをアナウンスしてもらい、
真城朔
今はのんびり待ちの姿勢。
こども
足を止めたからもうよかろうと、また真城の腰にくっついてる。
夜高ミツル
くっついてるな~
夜高ミツル
まあ自分と真城だったら、真城の方が怖くないよな……と思う。
こども
ぎゅ……になっている。
真城朔
のをちょっと微笑んで見下ろして、頭をなでよし……
真城朔
しゃがんで目線を合わせてたりもしたけどしがみつきたがるのでこっちに落ち着いた。
夜高ミツル
それで少しでも安心するならと、もう離れるように言うこともなく。
真城朔
三人のんびり人の行き来を眺めていると……
真城朔
「あ」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
また目を瞬く。
真城朔
人混みの方を少し行儀悪くも指差して、
真城朔
こどもの方に声をかける。
真城朔
「おかあさん?」
夜高ミツル
こどもと一緒に、真城の指差す先を見る。
 
と、指差した先には大急ぎで人混みをかき分けるご婦人の姿が。
こども
それを認め、表情を緩ませて頷いた。
 
たいへんに感謝の言葉を重ねられ頭を下げられ、
 
お気になさらずとかお気をつけてとかなんかそんな感じの文句で場を濁し、
真城朔
同じように母親に張りついた子供に、ばいばい、と手を振り見送る。
夜高ミツル
見えなくなるまで見送って……
真城朔
ほ、になった。
夜高ミツル
「見つかってよかったな」
真城朔
こくこく……
真城朔
夏休みで、帰省のついでに買い物に来たとからしかった。
夜高ミツル
慣れない場所でこの人混みじゃな……
真城朔
人が多い。
真城朔
もう用事は済んだけど、なんとなくすぐに動く気にもなれず
真城朔
ミツルに軽くくっついた。
夜高ミツル
きゅ、と手を握る。
真城朔
握り返す。
真城朔
小さく息をついた。
真城朔
「よかった……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
安心したのかちょっとくったりしている。
夜高ミツル
「……どっかでちょっと休憩してくか?」
真城朔
「んー……」
真城朔
悩むような声を出したのはわずかの間で、
真城朔
割とすぐに首を縦に振った。
夜高ミツル
「ん」
真城朔
ミツルの手を握り締める。
夜高ミツル
「ドトールか……サーティーワンか……」
夜高ミツル
「あ」
真城朔
「?」
夜高ミツル
「あの、ジェラートのとこ」
夜高ミツル
「あそこ行ってみるか?」
真城朔
きょと、とまばたきをして
真城朔
こくこく頷いた。
真城朔
「いく……」
夜高ミツル
頷いて、
夜高ミツル
「あっちの方だったよな、確か」
真城朔
「うん」
真城朔
駅とは逆の……
真城朔
インフォメーションセンターを挟んで向かい側の方。
夜高ミツル
人混みを分けて、てくてくと向かっていく。
真城朔
二人手を繋ぎながら……
真城朔
あった。
真城朔
イートインスペース付きのジェラートショップ。
夜高ミツル
空いているか心配だったが、無事二人座れる席具合。
真城朔
荷物を置いて席を取り……
真城朔
それができるくらいの広さ
真城朔
二人でレジの前に立つ。
真城朔
いろんな種類が並んでいる……
夜高ミツル
いっぱいある……
夜高ミツル
こういうとき、悩みがち
真城朔
いろとりどり。
真城朔
なやむ……
真城朔
手を繋ぎながら悩んでいる。
真城朔
むむむ……
真城朔
「…………」
真城朔
結局ミツルを見てしまった。
夜高ミツル
見られた……
真城朔
じ……
夜高ミツル
あわ……
夜高ミツル
「……あ~」
夜高ミツル
「これ、うまそう」
夜高ミツル
悩んだ挙げ句に結局、
真城朔
ミツルの示したほうを見る。
夜高ミツル
スタッフおすすめとある、トリプルフルーツソルベのポスターを指す。
真城朔
とりぷるふるーつそるべ……
真城朔
「夏」
真城朔
「って感じ」
夜高ミツル
マスカットとマンゴーといちご。
真城朔
期間限定ってあるし……
夜高ミツル
頷いている。
真城朔
「ミツ」
真城朔
「それにする?」
夜高ミツル
「そうしようかな」
真城朔
こくこく……
真城朔
何故か真城が頷いているが……
真城朔
「…………」
真城朔
じ、と向き直り……
夜高ミツル
見てるな……
真城朔
「……あんまり」
真城朔
「いっぱいは……」
真城朔
食べられないから……
真城朔
とかもそもそ言ってる。
真城朔
言ってると後ろから人が来た。
真城朔
あわあわと場所を譲ってミツルにくっつく。
夜高ミツル
「余ったら食うから、好きなやつ頼めばいいよ」
夜高ミツル
真城を寄せながら、ちょっと脇の方からジェラートたちを覗き込んでいる。
真城朔
「ん」
真城朔
「でも」
真城朔
うーん……
真城朔
ミツルにくっつきながら考え込み……
真城朔
「…………」
真城朔
「だ」
真城朔
「ダブル」
真城朔
「でも……?」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
頷いている。
真城朔
「ん……」
真城朔
頷き……
真城朔
でもまだためらい 考え込み……
真城朔
「…………」
真城朔
「フランボワーズ」
真城朔
「と」
真城朔
「チョコラータ……?」
真城朔
何故か疑問形でミツルに確認した。
夜高ミツル
「ん」
真城朔
おろ……になっている。
夜高ミツル
確認されたので頷く。
真城朔
ほ……
夜高ミツル
「じゃあ、それにしよう」
真城朔
こくこく
真城朔
ミツルにくっついている。
夜高ミツル
改めて、トリプルフルーツソルベと、フランボワーズとチョコラータのダブルを注文する。
真城朔
隣で見ています。
真城朔
じ……
夜高ミツル
見られながらお会計。
真城朔
盛りつけてもらったのを二人で受け取り……
真城朔
やっとこ席に戻った。
真城朔
ふい……
夜高ミツル
注文に時間かかりがち。
夜高ミツル
二人して悩むものだから……
真城朔
こういうなんかフレーバーを選ぶ系だとなおさら……
夜高ミツル
いっぱいあって……全部おいしそうで……
真城朔
組み合わせみたいな感じになるとさらに……
真城朔
ミツルの前には爽やかな三色、真城の前には重たげな二色。
真城朔
黒いスプーンが添えられている。
夜高ミツル
一緒にいただきますをして
夜高ミツル
まず、一番上にあるマスカットの部分をすくう。
真城朔
します
真城朔
手を止めてミツルの様子を見ている。
夜高ミツル
ぱく。
真城朔
じ……
夜高ミツル
舌の上に、ひんやりとした冷たさと甘さが広がる。
夜高ミツル
「マスカットの味する」
真城朔
「マスカット」
夜高ミツル
そりゃそう、という感想を口にした。
真城朔
「ジューシーマスカット」
真城朔
「だから……」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「さっぱりしてる感じ」
真城朔
「夏」
真城朔
夏だな~
真城朔
ミツルの話を聞く方に夢中で手が動いていない。
夜高ミツル
ポップにもでっかく夏って書いてあった。
夜高ミツル
「そっちは?」
夜高ミツル
さすがにジェラートなので、軽く促す。
真城朔
「えっと……」
真城朔
促されてあわあわと
真城朔
迷ってから、フランボワーズの方をすくった。
真城朔
赤い……
夜高ミツル
赤いなあ
真城朔
ミツルの方のイチゴソルベの方も赤いけど、なお赤い。
真城朔
ぱく……
真城朔
もくむく舌を動かし……
夜高ミツル
見て……
夜高ミツル
見てから、促しておいて自分も手が止まってることに気づいた。
真城朔
「……なんか」
真城朔
「高級感……?」
真城朔
首を傾げた。
夜高ミツル
「するよな、なんか」
真城朔
頷いている。
夜高ミツル
頷いて、いちごの部分をすくってぱくり。
真城朔
「いちごとかの……」
真城朔
「ベリーの味だけど」
真城朔
「あまずっぱい感じの……」
真城朔
ミツルのいちごソルベと見比べている。
夜高ミツル
「こっちも食ってみる?」
真城朔
「え」
真城朔
「あ」
夜高ミツル
カップを差し出す。
真城朔
こくこく頷いた。
真城朔
差し出されるその前に、
真城朔
自分のフランボワーズを掬い……
真城朔
「ミツ」
真城朔
「も」
真城朔
スプーンを差し出した。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
差し出されたスプーンを口に含む。
真城朔
「ん」
夜高ミツル
もく……
真城朔
「どう?」
夜高ミツル
「やっぱこっちの方がいちごよりちょっと酸味が強い感じするな」
真城朔
「フランボワーズ」
真城朔
「だから……?」
真城朔
なにがだからなのかわからないが……
夜高ミツル
頷いている。
真城朔
ミツルに頷き返す。
真城朔
おずおずとミツルの差し出したいちごソルベを掬おうとし……
真城朔
自分のカップを一度テーブルに置いて、ミツルの持つカップに手を添える。
夜高ミツル
ミツルの手に真城の手のひらが重なる。
真城朔
ミツルよりも温度の低い指先。
真城朔
よいしょ、と一口ぶん控えめに掬い上げて
夜高ミツル
ジェラートを持っていたのでいつもよりさらにひんやり。
真城朔
いちごソルベをぱくり。
真城朔
もくむく
夜高ミツル
じ……
夜高ミツル
結局その様子を見てしまっている。
真城朔
「……ん」
真城朔
「こっち」
真城朔
「甘い……」
真城朔
ふにゃ、と表情を緩めた。
夜高ミツル
「な」
夜高ミツル
頷く。
真城朔
頷き返す。
真城朔
「こっちの方が」
真城朔
「いちご」
真城朔
そりゃいちごソルベとフランボワーズだからな……という話なのだが……
夜高ミツル
いちごだな~
真城朔
堪能しているその手元で、ジェラートが既にじわじわ溶け始めている。
夜高ミツル
「そうだ、こっちも」
夜高ミツル
マスカットをすくう。
真城朔
「ん」
夜高ミツル
「多分チョコの前に食べた方がいい」
夜高ミツル
味の濃いものの前に……
真城朔
確かに……になった。
真城朔
頷いて、口を開く。
夜高ミツル
そこにスプーンを持っていく。
真城朔
ぱく……
真城朔
口を閉じて舌で味わいながら顔を引く。
真城朔
もくむく……
夜高ミツル
見ている……
真城朔
頷く。
真城朔
「あまい……」
真城朔
「さわやか……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
語彙力の限界。
夜高ミツル
「夏っぽい」
真城朔
「うん」
真城朔
「すっきりした感じの……」
真城朔
いちごはすっぱみある
夜高ミツル
少し柔らかくなりつつあるジェラートにスプーンを差す。
夜高ミツル
マンゴーのとこ。
真城朔
フランボワーズはもっとすっぱい……
真城朔
ミツルがマンゴーを掬うのを見ている
夜高ミツル
「……ちょっと溶けてきてる」
夜高ミツル
まだちょっとしか食べてないのに……
真城朔
「え」
真城朔
あわわ……
真城朔
手元のジェラートも見下ろした。
真城朔
ほんとだ……
夜高ミツル
「のんびりしすぎたな……」
夜高ミツル
ぱく、とマンゴーを口に運ぶ。
真城朔
こくこく あわあわ
真城朔
チョコラータを掬っている。
真城朔
ほんとだ……に再びなっている。
夜高ミツル
やわらかジェラート。
真城朔
やわらかジェラートをたべます。
真城朔
でもやわらかくてもおいしい。
真城朔
「チョコ」
真城朔
「濃い……」
夜高ミツル
「マンゴーも、この3つだと一番濃い感じ」
真城朔
「マンゴー……」
真城朔
ちょっと考え込む。
真城朔
「もとも、けっこう」
真城朔
「濃い感じの……」
真城朔
イメージ……
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「なんか……濃厚な……?」
真城朔
こくこく……
真城朔
「果肉が……」
真城朔
「こう」
真城朔
「密度……?」
真城朔
柔らかくなりかけなのを思い出して慌てて手元のを掬った。
真城朔
フランボワーズとチョコラータをちょっと混ぜた感じに。
真城朔
赤と黒……
夜高ミツル
ちょっと急ぎめで食べていく……
真城朔
それを口に含む。
真城朔
「あ」
真城朔
「やっぱり」
夜高ミツル
「うまい?」
真城朔
「ん」
真城朔
頷いて、
夜高ミツル
「サーティーワンとかでそんな感じのあるもんな」
真城朔
また頷く。
真城朔
同じように合わせて掬ったのをミツルに差し出した。
夜高ミツル
それをまた、ぱくりと口に含む。
真城朔
「こういう」
真城朔
「なんか」
真城朔
「すっぱい……ベリー系? と」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「チョコって」
真城朔
「こう……」
真城朔
わたわたと……
夜高ミツル
舌の上で味わいながら頷いている。
夜高ミツル
「相性いいよな、なんか」
夜高ミツル
「うまいな」
真城朔
「うん」
真城朔
「だから、それで」
真城朔
「ダブル……」
真城朔
溶けかけのダブル。
真城朔
を掬って食べる。
夜高ミツル
「なるほどなー」
真城朔
もくむくおいしそうに……
夜高ミツル
「こっちも」
夜高ミツル
今度はミツルがマンゴーの部分をすくって、真城に差し出す。
真城朔
「ん」
真城朔
口元の味わっているのをちょっと急いで飲み下し……
真城朔
ぱく、と食べた。
夜高ミツル
溶けかけのマンゴー。
真城朔
舌で味わい……
真城朔
「すごい」
真城朔
「つよい」
真城朔
味が……
真城朔
つよい果物
夜高ミツル
「マンゴーってなんか、強いよな……」
夜高ミツル
頷いている。
真城朔
「つよい……」
真城朔
「アルフォンソマンゴー」
真城朔
「だし」
真城朔
なんかつよそうな名前
夜高ミツル
「アルフォンソってなんだ……?」
真城朔
「…………」
真城朔
「?」
夜高ミツル
他の2つはジューシーと果実たっぷりなのに……
真城朔
よくかんがえなくてもわからない……
夜高ミツル
わからない。
夜高ミツル
二人して?になっている。
真城朔
顔をつき合わせて ? に……
真城朔
「で、も」
真城朔
「おいしい」
真城朔
「よ」
真城朔
とにもかくにも……
夜高ミツル
「そうだな」
夜高ミツル
こくこく……
夜高ミツル
「よくわかんないけどうまい」
夜高ミツル
「アルフォンソマンゴー」
真城朔
「うん」
真城朔
頷き返して、自分の手元のだいぶ柔らかくなったジェラートを掬う。
真城朔
もはや混ざった何かになりつつある部分を意図的に。
真城朔
それをぱくりと食べて味わっている。
夜高ミツル
マスカットの部分をすくって食べる。
夜高ミツル
高く盛られてるので、ここが溶けるとヤバい……
真城朔
崩れる……
真城朔
流石に溶けてくるとジェラートに集中し始める。
夜高ミツル
もくもくと……
真城朔
二人で食べてます。
夜高ミツル
たまに相手に食べさせたりもするけど、おしゃべりはひかえめに……
真城朔
控えめにしつつ。
真城朔
「ジェラート」
真城朔
「おいしいね」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
にこにこもくむぐ
夜高ミツル
ジェラートはおいしいし、
夜高ミツル
真城も嬉しそうなのでよかった。
真城朔
ちょっと変わった買い物のつもりが予定外のこともあったけど……
真城朔
舌でジェラートを味わいつつ……
真城朔
「あの子」
真城朔
「すぐ来てくれて、よかった」
真城朔
「ね」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「よかった」
真城朔
「よかった……」
夜高ミツル
もう迎えに来る人のいない二人で、こどもに迎えのあったことを喜ぶ。
真城朔
迎えに来る人もないからこその、二人飛び出して今は北海道。
真城朔
気にかけてくれる人はいるけれど……
夜高ミツル
今は目の前の相手が全て。
真城朔
そんな相手と、溶けかけたジェラートを二人で食べている。
真城朔
「ミツ」
真城朔
はい、と
真城朔
完全に混ざっているフランボワーズとチョコラータを差し出した。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
混ざりあったそれをぱくり。
真城朔
そうしたささやかなひと時が、今の二人には一番大事だった。