2021/08/07 朝
noname
締め切ったカーテンの隙間から陽光がさす。
真城朔
のをむずがるように、真城の顔がミツルの胸に埋まっていた。
夜高ミツル
いつものように、ミツルの方が先に目を覚まして
夜高ミツル
最低限の後始末をしただけで、身体を重ねた跡がそこかしこに残っている。
夜高ミツル
ベッドにも、二人の身体にも、色々と……。
夜高ミツル
真城が望むならそのようにしたい、という気持ちが強い。
真城朔
真城はミツルの腕の中で時折身じろぎをしたり、
夜高ミツル
そうして甘える仕草に、好きだな、と思う。
夜高ミツル
寝顔を眺めながら、延々とそうしている。
真城朔
いつものように、いつもよりもいささか長い時間をそのように過ごして、
夜高ミツル
二度寝するならそれでいいという感じで撫でている。
真城朔
カレンダーの休日は人が多いからあんまり外に出ない。
夜高ミツル
真城を抱きしめた姿勢のまま、ぼやぼやと目を覚ます。
真城朔
されるがままになっていると眠たげに瞼が落ちたりもするが……
夜高ミツル
ぴかぴかの風呂場のバスチェアに真城を座らせる。
真城朔
ときおり瞼を開けようと最初は頑張ってて……
夜高ミツル
シャワーの温度を確かめながら声をかける。
夜高ミツル
ちゃんと返事をするのを待って、それからシャワーを当てる。
夜高ミツル
あわあわになった手で真城の頭に触れる。
夜高ミツル
「上がったら寝ていいから、もうちょっと起きててな」
夜高ミツル
手を離して、シャワーを取ってお湯を出す。
真城朔
真城の髪は濡れるとひときわぺたん……になる。
夜高ミツル
こうして流してると、そろそろ髪切らないとなーとか思いがち。
夜高ミツル
前回切ってからそんなに経ってないので、今はまだ大丈夫そう。
夜高ミツル
お湯を止める前に、ボディタオルを濡らして軽く絞る。
夜高ミツル
早めに終わらせた方が良さそうなのでリンスは省略。
夜高ミツル
ホテルにいつもあるので使うようになり、ここに入居した時に買った。
夜高ミツル
ボディソープを出して、タオルを泡立てる。
夜高ミツル
と言って、とはいえ頭ほど待つ必要もないので
夜高ミツル
背中にあわあわになったタオルを当てる。
夜高ミツル
床に膝立ちになって、横から真城の身体を支えるようにくっついている。
夜高ミツル
左手を添えて支えつつ、右手のタオルで身体を洗う。
真城朔
普段は低めの体温がシャワーで温まっている。
真城朔
むにゃむにゃとした声なので、割と牧歌的な方。
夜高ミツル
今度は後ろから抱え込むように前に手を伸ばす。
真城朔
つ、と肌を雫が垂れ落ちるのも、今日はぼんやりと、いつものお風呂の光景。
夜高ミツル
それからタオルを下ろしてお腹と脇腹のあたり。
夜高ミツル
改めて、どこからあの膂力が出てくるのか不思議な程の薄さ。
夜高ミツル
うとうとなのを支えながらなので多少大変ではあるけど、
夜高ミツル
もたつく部分はあれど、そう困るところもなく洗っていく。
真城朔
敏感になってしまっている時よりずっと困らない。
夜高ミツル
傷を負わないでいてくれるのが一番ではあるけれど、
夜高ミツル
それはそれとして、痕の残らないことは純粋によかったと思う。
夜高ミツル
脚の方もやっぱりつま先まできれいにして
真城朔
わしゃわしゃ洗ってもらえているのが見える……
夜高ミツル
「飯作るのも、家事も、一緒にしてるし」
夜高ミツル
「真城が嫌じゃないならさせてもらえると嬉しい」
夜高ミツル
頷いたのを見て、手を動かすのを再開する。
夜高ミツル
あまり刺激しないように気をつけつつ、敏感な箇所はタオルではなく手で洗っていく。
真城朔
ちょっと太腿が緊張気味に跳ねたりはしたけど……
夜高ミツル
伸びた背筋にお湯が当たり、泡を流していく。
夜高ミツル
お湯だけがさらさらと流れるようになると、シャワーを離す。
夜高ミツル
真城から離したシャワーを、今度は自分の頭からかける。
真城朔
自分も同じようにしてあげられたら……というようなふうには
夜高ミツル
シャンプーを出そうとしたところで不意に手を止めて
夜高ミツル
なんか変なこと言ったな……って気持ちにじわじわなってきた。
夜高ミツル
あんまり押し問答してると湯冷めさせそうだな……
真城朔
実際のところ湯冷めが心配なのは真城よりミツルの方なのだが……
夜高ミツル
改めて、しゅこ……とシャンプーを手に取る。
夜高ミツル
「……やりたくないなら無理しないでいいし」
夜高ミツル
「やりたいなら、うまかったらとか気にしないでいいけどな」
夜高ミツル
「俺も最初は結構……よくわかんなかったし……」
夜高ミツル
十分に泡立ってもまだもこもこやっている。
夜高ミツル
「じゃあ真城もやってみたらうまくできるかもじゃないか?」
夜高ミツル
「真城もやってみないと分からないと……いうか……」
夜高ミツル
「真城がしてくれるなら、なんでも嬉しいよ」
夜高ミツル
出された手に、もこ……と自分の手から泡を移す。
真城朔
真城の指がミツルの濡れた髪に泡をなじませていく。
真城朔
わからない。自分の髪よりも量が多いため……
夜高ミツル
「……もうちょい力入れてやっても大丈夫だぞ」
真城朔
慎重にやっているので、どうにもこうにももたもたしている。
真城朔
しているんだけど、後ろからだとわからないし……
真城朔
やっているのが一番長かったが、思い出したように側頭部に手を回したり
夜高ミツル
散々に触れ合ってきたはずだが、こうして頭を洗ってもらう感触はなんだか新鮮。
真城朔
なっていたが、結局シャンプーを足している。
真城朔
泡を足して、逆側の側頭部をわしゃわしゃし始めた。
真城朔
やや過剰な泡がもこもこになって耳にかかっている……
夜高ミツル
髪をかき分けて、指先と泡の触れる感覚が心地良い。
真城朔
やっているが、耳にかぶっているのには気づけていない……
真城朔
集中しているとその部分以外への意識が疎かになる。
夜高ミツル
真城が力加減するのが大変そうなのは分かるので、とりあえず任せている。
真城朔
考え込んだが、流石にいくらなんでも三周はないという結論を出したらしい。
真城朔
水圧まあまあ弱めのシャワーをかけていきます。
真城朔
しかし水圧弱めのシャワーとミツルの癖のある髪質は相性が悪い。
夜高ミツル
こんな感じとばかりに、手で髪をわしゃわしゃと。
真城朔
がんばって時間をかけて、なんとかしてます。
真城朔
髪をかき分けてはシャワーを当て、温水を流し……
真城朔
できただろうか……みたいな感じで止まっている。
夜高ミツル
見えないが、感覚的にこんだけやったら大丈夫かな……という気はする。
真城朔
そのシャワーを片手にミツルの頭をかき分け点検……
夜高ミツル
とまた言って、真城のぺったりした頭を撫でる。
真城朔
肩に片手を添えて、もう片手でよいしょよいしょと……
夜高ミツル
ミツルの方は真城と違って傷跡がちらほらと。
夜高ミツル
力の弱くなった箇所でなんとなく察する。
真城朔
見えないけど頷いて、改めて手を動かし始めた。
夜高ミツル
見えないけどなんとなく雰囲気は伝わった。
夜高ミツル
見られつつ、背中以外を自分で洗っていく。
真城朔
あんまりもたもたされるのよくなかったかな……
夜高ミツル
とはいえ全身べたべたなのであまり疎かにもせず
夜高ミツル
全身を泡だらけにしたところで、シャワーを取る。
真城朔
お湯の出ているシャワーを受け取り、ミツルの後ろに立ち……
夜高ミツル
腋の下のような落ちにくいところは自分で手でやっている。
真城朔
シャワーを手に終えた……? みたいな顔になっている。
真城朔
してないけど別に寒そうな素振りでもなく……
夜高ミツル
何かするとまたもたつくのが目に見えてるので、とりあえず上がるか……になった。
真城朔
長々と時間をかけて風呂からあがり、やっとこさ二人で台所に立つ。
真城朔
それはそれとして気を取り直してごはんです。
夜高ミツル
「ローストビーフがあるから、それと~……」
真城朔
定期的にローストビーフを作っているすごい家だぞ。
真城朔
なんとなくミツルの後ろから覗き込んでいる。
夜高ミツル
「あとは目玉焼きと味噌汁とって感じでいいか?」
真城朔
包丁を使うやつは基本的にはさっさとやっちゃうぞ。
真城朔
被るとちょっとめんどくさいぞ。という認識がついている。
真城朔
右往左往しつつ、鍋に水を張って、顆粒だしをぱっぱと入れて、
真城朔
前はこの作業のひとつひとつにもいちいちミツルにおうかがいを立てていた。
夜高ミツル
右往左往を見守りながら器を出してレタスをちぎっている。
真城朔
みそ汁はかなり頻繁に作るので、さすがに自信が持て始めている。
真城朔
皮を剥いたら横に切って、上下を落として……
真城朔
切れた玉ねぎを沸騰しかけのだし汁にえいや。
真城朔
玉ねぎよりも柔らかいので切りやすいような、
夜高ミツル
冷凍庫からご飯の入ったタッパーを2つ取り出して、レンジに入れる。
真城朔
鍋の様子を見て、おたまをとって、ちょっとぐるぐる……
夜高ミツル
今度は冷蔵庫を開けて、卵とローストビーフを取り出す。
夜高ミツル
ちゃんと火の通りにくい具材から入れててえらい。
夜高ミツル
ローストビーフは一旦置いて、鍋の隣にフライパンを出す。
真城朔
玉ねぎがまあそろそろ半透明かな……みたいな感じ。
真城朔
まな板の上でちょっと変色し始めていたなすを
夜高ミツル
フライパンの上に手を出して、温まり具合を確認している。
真城朔
となりでお出汁がぐつ……ぐつ……になってる。
真城朔
気づかれないまままな板と包丁を洗い終わって、戻ってくる。
真城朔
だいたい大さじ2をちょっと多いくらいで……
真城朔
お玉に入れてからだし汁に沈めて、箸で溶く。
真城朔
ミツルが皿とかの準備に行っているので、一応火の前キープ。
真城朔
ミツがやってるなら大丈夫だとは思うけど……
夜高ミツル
入れてる横で、フライパンの蓋を開けてみる。
夜高ミツル
蒸気が抜けるのを待って、目玉焼きの状態を確かめる。
夜高ミツル
フライパンを傾けても目玉の形が変わらないくらい。
真城朔
みそ汁もちょっと煮えてきたので火を止めた。
夜高ミツル
焼けてるので、白身のくっついたところを切って……
真城朔
皿は用意してもらえたのでおしぼりとか台ふきんとか……
真城朔
台ふきんを湿らせて食卓を拭きに行く。拭いている。
夜高ミツル
そういえば拭く前にサラダを持っていってしまった……
夜高ミツル
レンジからあつあつになったタッパーを取り出す。
夜高ミツル
運んでもらってる間にローストビーフを切る。
夜高ミツル
肉の塊をすっ……すっ……と薄切りにしていく。
夜高ミツル
そんなに残ってなかったので端まで切っちゃう。
真城朔
盛り付けてもらったローストビーフも持っていきます。
真城朔
ミツルが目玉焼きを持ってきてくれたので、あとはみそ汁。
夜高ミツル
目玉焼きの皿をそれぞれの定位置の前に置き……
夜高ミツル
野菜から食べるといいらしいとよく聞くので……
夜高ミツル
しながら、視線を感じて真城に目を向ける。
夜高ミツル
それが当たり前になってきていることを、改めて喜ばしく思う。
夜高ミツル
「でも作れるのもあと1ヶ月ちょいか……」
真城朔
なんだかんだここでの暮らしも終わりが見えてきた。
真城朔
色んな言い訳が被さって生活を長くやっている。
夜高ミツル
熱中症も危ないし、真城も日差しに弱いし……
夜高ミツル
少なくとも一人の頃は絶対買わなかったような肉を……
夜高ミツル
贅沢なものをなぜかしょっちゅう食べている。
真城朔
家でののんびりが一番気楽ということに気づいてしまい……
夜高ミツル
「もうちょっと出かけやすいかと思ったんだけどな……」
夜高ミツル
半年以上暮らしてきて、なんのかんの言い訳つけてあまり外出しなかったことに思いを馳せている。
夜高ミツル
「次に来たときでもいいけど、いつになるか分かんないし」
夜高ミツル
ローストビーフを取って、目玉焼きと一緒に口に運ぶ。
真城朔
結局こうしてゆったりしているのがかなり性には合っている。
真城朔
冬が来て、春が来て、夏が来るのもあっという間だったから、
夜高ミツル
楽しい時間の過ぎるのは早いとか言うけど、まさにそんな感じで。
真城朔
せめてそれをできる限り、きちんと楽しみたかった。