2021/08/07 朝

noname
朝から快晴。
noname
締め切ったカーテンの隙間から陽光がさす。
真城朔
のをむずがるように、真城の顔がミツルの胸に埋まっていた。
夜高ミツル
いつものように、ミツルの方が先に目を覚まして
夜高ミツル
寄せられた頭をそっと撫でている。
真城朔
二人共服を着ていない朝。
真城朔
肌と肌が直接に触れ合っている。
夜高ミツル
最低限の後始末をしただけで、身体を重ねた跡がそこかしこに残っている。
真城朔
むにゃむにゃ……
夜高ミツル
ベッドにも、二人の身体にも、色々と……。
真城朔
まれによくこんな感じにはなる。
真城朔
特に真城の誕生日以降は……
夜高ミツル
だんだん頻度が上がってきてる。
真城朔
歯止めが効かない というよりは
真城朔
効かせていない というか……
夜高ミツル
真城が望むならそのようにしたい、という気持ちが強い。
真城朔
そうしてもらうのに甘えている。
真城朔
甘えて寝落ちて……
真城朔
すよすよ……
夜高ミツル
こうして朝を迎える。
真城朔
穏やかな朝。
夜高ミツル
触れる手つきも、穏やかそのもの。
真城朔
真城はミツルの腕の中で時折身じろぎをしたり、
真城朔
触れてくる手のひらに頭を寄せたり、
真城朔
無意識……
夜高ミツル
そうして甘える仕草に、好きだな、と思う。
真城朔
ミツルの腕の中で安心しきって眠っている。
夜高ミツル
指で髪を梳いたり、背中を撫でたり。
真城朔
されるがまま……
夜高ミツル
寝顔を眺めながら、延々とそうしている。
真城朔
いつものように、いつもよりもいささか長い時間をそのように過ごして、
真城朔
ようやっと真城がぼやぼやと瞼をあげる。
真城朔
焦点の合わぬぼんやりとした瞳。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「おはよ、真城」
真城朔
ぼー…………
真城朔
「…………」
真城朔
「……お」
真城朔
「はよ……」
真城朔
ぼうっとしている。
夜高ミツル
ぼんやりしてるな……
真城朔
か細い声。
夜高ミツル
頭を撫でている。
真城朔
撫でられるままに……
真城朔
撫でられ……
真城朔
ぼや……
夜高ミツル
「起きれるか?」
夜高ミツル
「もうちょい寝る?」
真城朔
「…………」
真城朔
「ん…………」
真城朔
肯定気味の声が返ってくるが、
真城朔
瞼はおもたげ。
夜高ミツル
まだ眠そうだな……
真城朔
うつらうつら……
夜高ミツル
二度寝するならそれでいいという感じで撫でている。
夜高ミツル
休日だし……
夜高ミツル
休日も平日もないけど……
真城朔
カレンダーの休日は人が多いからあんまり外に出ない。
真城朔
結局うとうととまた眠りについてしまった。
夜高ミツル
すやすやと寝息が立っている。
真城朔
穏やかな寝息。
真城朔
ミツルの胸にまた頬を寄せる。
真城朔
体温が直接触れている。
夜高ミツル
あたたかくて、心地いい。
夜高ミツル
…………
夜高ミツル
俺も寝るか……
夜高ミツル
真城の背中に腕を回して、目を閉じた。
noname
~それから~
真城朔
しばしして、変わらずミツルの胸の中。
夜高ミツル
真城を抱きしめた姿勢のまま、ぼやぼやと目を覚ます。
真城朔
すーすー……
真城朔
穏やかで安穏とした寝息は変わらずに。
夜高ミツル
それを邪魔しないのも同じく。
真城朔
先程の光景をまた繰り返し……
真城朔
またゆっくりと真城が瞼を上げる。
夜高ミツル
「おはよ」
夜高ミツル
と二度目の挨拶。
真城朔
「…………」
真城朔
「おはよう……」
真城朔
こちらも二度目。
夜高ミツル
さっきよりちょっとはっきりしてる。
真城朔
ちょっとまし。
真城朔
ぼーっとはしている。
真城朔
あさによわい……
真城朔
ねおちたし……
夜高ミツル
「起きれるか?」
夜高ミツル
と、これもまた二度目の確認。
真城朔
「ん」
真城朔
「ん……」
真城朔
こく……
真城朔
こく……
真城朔
いまだ眠たげながら一応は頷いている。
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「そろそろ……」
真城朔
「あさごはん」
真城朔
「とか」
真城朔
うとうとと言い募っている。
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
先に自分の身体を起こして、
真城朔
ミツルが食べないのを気にする。
夜高ミツル
それから真城の身体を抱き起こす。
真城朔
抱き起こされている……
夜高ミツル
よいしょ……
真城朔
されるがままになっていると眠たげに瞼が落ちたりもするが……
夜高ミツル
「先にシャワーしてから飯にするか」
真城朔
「……ん」
真城朔
「する……」
真城朔
一応ちゃんと応答がある。
夜高ミツル
あるなあ。
真城朔
こくこく……
夜高ミツル
真城を支えながら、ベッドを下りる。
真城朔
支えられています。
真城朔
立ってる。立ってはいる。
真城朔
時折まぶたを上げたりもする。
夜高ミツル
隣から支えつつ、風呂場へ移動する。
真城朔
ほてほて……
真城朔
朝の風呂場は眩しい。
夜高ミツル
風呂にはカーテンないからなー
真城朔
なんか全体的に白いし……
真城朔
窓から差し込んだ日光が照り返してぴかぴか
真城朔
まぶし……になってる。
夜高ミツル
ぴかぴかの風呂場のバスチェアに真城を座らせる。
真城朔
大人しく座らせられました。
真城朔
ときおり瞼を開けようと最初は頑張ってて……
真城朔
がんばってたが……
夜高ミツル
「真城?」
真城朔
「ん」
夜高ミツル
シャワーの温度を確かめながら声をかける。
夜高ミツル
「大丈夫か?」
真城朔
「んー……」
真城朔
こくこく頷きはする。
真城朔
「おき」
真城朔
「て」
真城朔
「る……」
真城朔
ごしごしと目を擦っている。
夜高ミツル
寝そう……
真城朔
ごしごし しぱしぱ
夜高ミツル
「シャワーかけるぞー」
真城朔
「ん」
真城朔
「うん……」
真城朔
こくこく……
夜高ミツル
ちゃんと返事をするのを待って、それからシャワーを当てる。
真城朔
あてられています。
真城朔
しゃー……
真城朔
ほどよい温度のお湯に肌が清められていく。
夜高ミツル
浴室にほかほかと湯気が満ちる。
真城朔
ほかほかもくもく……
真城朔
ここちもよく……
夜高ミツル
全身を軽く流してシャワーを止める。
夜高ミツル
フックに戻し……
真城朔
ぼや……
真城朔
ミツルの動きをぼんやり見上げてます。
真城朔
ぬれねずみ
夜高ミツル
しゅこしゅことシャンプーを手に取る。
真城朔
しゃんぷーだしてる……
真城朔
だしてる……というのを見ている……
夜高ミツル
泡立て泡立て……
夜高ミツル
「頭やるぞー」
真城朔
「ん……」
真城朔
頷き……
真城朔
ぼー……
夜高ミツル
あわあわになった手で真城の頭に触れる。
真城朔
ぼーっとミツルの手元を見てます。
真城朔
あわあわが頭に……
真城朔
ぼや……
真城朔
あっ
真城朔
きゅっと目を閉じた。
夜高ミツル
わしゃわしゃと頭を洗っていく。
真城朔
あらわれている。
真城朔
ぜんぶされている。
真城朔
すっかり良い心地になっており……
真城朔
うとうとうつらうつら
夜高ミツル
「真城ー」
真城朔
「んー…………」
真城朔
夢うつつの声。
夜高ミツル
眠そうだなあ
真城朔
半分寝てるまである。
夜高ミツル
わしわしと手を動かしつつ
真城朔
されてます。
夜高ミツル
「上がったら寝ていいから、もうちょっと起きててな」
真城朔
「……ん」
真城朔
「でも……」
真城朔
もにゃむにゃと声を出している
夜高ミツル
気持ちいつもより急ぎめにやっていく。
夜高ミツル
「でも?」
真城朔
「あさ……」
真城朔
「ごはん……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「つくる……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「いっしょ」
夜高ミツル
「作れそうならやろうな」
真城朔
「ん……」
真城朔
こくらこくら……
真城朔
一応頷いているはずなのだが……
夜高ミツル
ヤバいな……
真城朔
頷いているつもり。
夜高ミツル
頭がふらふらしてる……
真城朔
すわってない
真城朔
座ってはいる。
夜高ミツル
手を離して、シャワーを取ってお湯を出す。
夜高ミツル
「流すぞー」
真城朔
「ん」
真城朔
こく……
夜高ミツル
再びシャワーを当てる。
真城朔
あわあわを流されています。
真城朔
真城の髪は濡れるとひときわぺたん……になる。
真城朔
ぺたんになるしうなじにはりつくし……
夜高ミツル
張りついてる。
真城朔
頭の丸みがさらに。
夜高ミツル
こうして流してると、そろそろ髪切らないとなーとか思いがち。
夜高ミツル
前回切ってからそんなに経ってないので、今はまだ大丈夫そう。
真城朔
すっかり髪を切るのも堂に入ってきている。
真城朔
切られるのも……
真城朔
見送るのは……
真城朔
…………
夜高ミツル
そっちは慣れない……
夜高ミツル
毎回息を切らして帰ってくる。
真城朔
いつまでもいや……
真城朔
いまはいっしょ
夜高ミツル
いっしょ。
夜高ミツル
頭を流し終わって、シャワーを離す。
真城朔
ぬれねずみで大人しくしている。
夜高ミツル
お湯を止める前に、ボディタオルを濡らして軽く絞る。
夜高ミツル
早めに終わらせた方が良さそうなのでリンスは省略。
真城朔
されなくても割と問題ない。
真城朔
男だし……
夜高ミツル
ホテルにいつもあるので使うようになり、ここに入居した時に買った。
真城朔
使ってもらっている。
夜高ミツル
なんかいい……多分……やると……
真城朔
よくわかんないけど……
夜高ミツル
ないよりサラサラする気がする……
真城朔
らしい……
真城朔
今日はなし。
夜高ミツル
寝そうだから……
夜高ミツル
ボディソープを出して、タオルを泡立てる。
真城朔
もうすっかり目を閉じてしまっている。
真城朔
シャンプーは終わったのに……
夜高ミツル
「身体洗うぞー」
夜高ミツル
と言って、とはいえ頭ほど待つ必要もないので
夜高ミツル
背中にあわあわになったタオルを当てる。
真城朔
「ん……」
真城朔
当てられてからやっと返答がきた。
真城朔
こっくり頷いてる。なんとか起きてる。
夜高ミツル
床に膝立ちになって、横から真城の身体を支えるようにくっついている。
夜高ミツル
左手を添えて支えつつ、右手のタオルで身体を洗う。
真城朔
支えられて洗われて……
夜高ミツル
骨の浮く薄い背中をタオルが擦る。
真城朔
普段は低めの体温がシャワーで温まっている。
真城朔
「ん」
真城朔
「んー……」
真城朔
むにゃむにゃと声が漏れている。
真城朔
むにゃむにゃとした声なので、割と牧歌的な方。
夜高ミツル
むにゃむにゃしてるな……
夜高ミツル
背中から首元を洗い、
夜高ミツル
今度は後ろから抱え込むように前に手を伸ばす。
真城朔
うつら……
真城朔
滑らかな肌が密着している。
夜高ミツル
濡れた肌がぴっとりと。
真城朔
ここちがよい……
夜高ミツル
胸元をタオルがやわらかく擦る。
夜高ミツル
そのまま鎖骨、首と洗い上げて、
真城朔
白い肌が白い泡に清められている。
真城朔
つ、と肌を雫が垂れ落ちるのも、今日はぼんやりと、いつものお風呂の光景。
夜高ミツル
それからタオルを下ろしてお腹と脇腹のあたり。
真城朔
筋肉の薄い平たい腹部。
夜高ミツル
改めて、どこからあの膂力が出てくるのか不思議な程の薄さ。
真城朔
ぺたぺただし割れてもいないし……
真城朔
なまっちろい。
夜高ミツル
細い。
夜高ミツル
細くて薄い胴体の次は、右腕。
真城朔
同じように細いその腕を取られるままに。
夜高ミツル
あわあわごしごし……
真城朔
ねむねむうとうと……
夜高ミツル
腕から手のひらから指先まで……
夜高ミツル
急ぎ目でやってはいるんだけども……
真城朔
丹念にされてここちよさそう。
真城朔
よりうとうとにもなる。
夜高ミツル
なってるな……
真城朔
きもちがよいので……
夜高ミツル
右側が終わると、同じように左腕も。
真城朔
だらりと右腕が降りている。
夜高ミツル
うとうとなのを支えながらなので多少大変ではあるけど、
夜高ミツル
こういうのも初めてではない。
夜高ミツル
もたつく部分はあれど、そう困るところもなく洗っていく。
真城朔
寝落ちた翌朝などけっこうこうなりがち……
真城朔
敏感になってしまっている時よりずっと困らない。
真城朔
お互いに。
真城朔
ねむい。
夜高ミツル
ねむいな~
夜高ミツル
左腕も同様に指の先まで泡で包んで
夜高ミツル
今度は脚の方に手を伸ばす。
真城朔
すんなり伸びた脚を……
夜高ミツル
ごしごしあわあわ
真城朔
傷一つない。
真城朔
狩りで傷を負うことはあっても。
真城朔
今はすべらか。
夜高ミツル
傷を負わないでいてくれるのが一番ではあるけれど、
夜高ミツル
それはそれとして、痕の残らないことは純粋によかったと思う。
真城朔
白い肌に白い泡が、脚の方にもよくなじむ。
夜高ミツル
きれいな肌をタオルで擦っている。
夜高ミツル
脚の方もやっぱりつま先まできれいにして
夜高ミツル
反対側も同様に。
真城朔
こっくり首が振れて身体が傾きかけ、
真城朔
はた……
夜高ミツル
慌てて腕が支える。
真城朔
支えられてしぱしぱと目を瞬く。
夜高ミツル
「もうちょいで終わるから」
夜高ミツル
「あとちょっと起きててな」
真城朔
「……ん」
真城朔
「うん……」
真城朔
素直にこくこく頷いている。
真城朔
「…………」
真城朔
「ごめん……」
真城朔
なんかしょぼになりはじめた。
夜高ミツル
「え~」
夜高ミツル
「謝られることなんもないけどな」
夜高ミツル
そう言って、また手を動かす。
真城朔
「…………」
真城朔
「で」
真城朔
「でも」
真城朔
俯いている。
夜高ミツル
「したくてしてるし」
真城朔
わしゃわしゃ洗ってもらえているのが見える……
真城朔
「なんでも」
真城朔
「かんでも……」
夜高ミツル
洗っている。
真城朔
ぼそぼそ……
真城朔
洗われている。
夜高ミツル
「俺がそうしたいから」
夜高ミツル
とまた主張する。
真城朔
「……お」
真城朔
「俺」
真城朔
「なんにも……」
真城朔
「できてない」
真城朔
「し……」
夜高ミツル
「してもらってるよ」
夜高ミツル
「飯作るのも、家事も、一緒にしてるし」
真城朔
「それ、は」
真城朔
「なんていうか……」
真城朔
「あたりまえの……」
真城朔
「せ」
真城朔
「生活」
真城朔
「だし」
真城朔
「いっしょに……」
夜高ミツル
「んー……」
夜高ミツル
「俺はこういうのするのが好きだから」
真城朔
「…………」
夜高ミツル
「真城が嫌じゃないならさせてもらえると嬉しい」
真城朔
「……ミツ」
真城朔
「は」
真城朔
「こういうの」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「たのしい……?」
夜高ミツル
「楽しいよ」
真城朔
「…………」
真城朔
「たのしい……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「そっ」
真城朔
「か」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
とまた頷いて
夜高ミツル
「だから、できると嬉しい」
真城朔
「……う」
真城朔
「うん……」
真城朔
一応頷いた。
夜高ミツル
頷いたのを見て、手を動かすのを再開する。
真城朔
されています。
夜高ミツル
両脚を洗い終えて、最後は脚の間に。
真城朔
ぼんやりとされるがままになっている。
真城朔
さすがにけっこう目が覚めてきている……
真城朔
あぶなかったため……
真城朔
でもまぶし……
夜高ミツル
まぶしいな~
真城朔
目がしぱしぱする……
真城朔
こすったりはしてます。
真城朔
こし……
夜高ミツル
あまり刺激しないように気をつけつつ、敏感な箇所はタオルではなく手で洗っていく。
真城朔
ちょっと太腿が緊張気味に跳ねたりはしたけど……
真城朔
意識して力を抜いていく。
真城朔
背が丸くなっている……
夜高ミツル
なるべく手短に済ませる。
夜高ミツル
あわ……
真城朔
あわあわじゃぶじゃぶ……
真城朔
なんだかんだしまくった翌朝だから……
夜高ミツル
しまくった……
夜高ミツル
しまくった跡を洗って落としていく。
真城朔
きれいにしてもらっています。
夜高ミツル
洗い終えて、手を離す。
夜高ミツル
シャワーを取ってお湯を出す。
真城朔
明るい浴室にきらきらと……
夜高ミツル
流すぞ、と声をかけ
夜高ミツル
背中にシャワーを当てる。
真城朔
「ん……」
真城朔
頷き……
真城朔
気持ち背筋を伸ばした。
夜高ミツル
伸びた背筋にお湯が当たり、泡を流していく。
真城朔
しゃわわ~……
真城朔
浴室の床を泡混じりのお湯が流れていく。
真城朔
のをぼんやり見下ろしている。
夜高ミツル
やがて床を流れる泡の量が減っていき、
夜高ミツル
お湯だけがさらさらと流れるようになると、シャワーを離す。
真城朔
すっきりさっぱり。
真城朔
きれいなぬれねずみになりました。
夜高ミツル
つやぴか……
真城朔
びちゃびちゃ
夜高ミツル
真城から離したシャワーを、今度は自分の頭からかける。
夜高ミツル
真城にお湯がかからないように……
真城朔
ぼや……とミツルの様子を見ている。
真城朔
座ったまま見上げている……
真城朔
こういう時、実のところ
真城朔
自分も同じようにしてあげられたら……というようなふうには
真城朔
思わなくもないのだけれども……
真城朔
とにかく……
真城朔
あんまり……
真城朔
自信がない…………
夜高ミツル
見られてるな……
夜高ミツル
「…………」
夜高ミツル
シャンプーを出そうとしたところで不意に手を止めて
真城朔
じ……
夜高ミツル
真城を振り返る。
真城朔
目が合った。
真城朔
はた……
真城朔
目を瞬いている。
夜高ミツル
「真城も」
夜高ミツル
「やってみるか?」
夜高ミツル
「…………」
夜高ミツル
やってみるかって言い方もどうなんだ?
真城朔
「え」
真城朔
「あ」
真城朔
「う……」
真城朔
きょど……になった。
真城朔
視線が彷徨う。
夜高ミツル
なんか変なこと言ったな……って気持ちにじわじわなってきた。
真城朔
「お」
真城朔
「俺」
真城朔
「うまく、ない」
真城朔
「から……」
真城朔
「…………」
真城朔
俯いてしまった。
夜高ミツル
「俺も、別に、うまいわけでは……」
真城朔
「ミツは」
真城朔
「じょうず……」
真城朔
「なんでも……」
真城朔
しょぼしょぼ……
真城朔
しょぼしょぼ話してるが、今は風呂場。
夜高ミツル
「なんでもではさすがに……」
真城朔
お互い裸。
真城朔
「でも……」
真城朔
しょぼしょぼになってます。
夜高ミツル
あんまり押し問答してると湯冷めさせそうだな……
真城朔
実際のところ湯冷めが心配なのは真城よりミツルの方なのだが……
夜高ミツル
風邪とか引かないとはいえ気になる。
真城朔
しょんぼりしてます。
真城朔
ちら……
真城朔
しょぼ……
夜高ミツル
しょぼにさせてしまった……
真城朔
「ごめん……」
真城朔
なんか謝った。
夜高ミツル
「いや……」
夜高ミツル
「変なこと言ってごめんな……」
夜高ミツル
改めて、しゅこ……とシャンプーを手に取る。
真城朔
首を振っている……
真城朔
「俺が……」
真城朔
「もっと」
真城朔
「うまかったら……」
真城朔
何が?
夜高ミツル
「……やりたくないなら無理しないでいいし」
夜高ミツル
「やりたいなら、うまかったらとか気にしないでいいけどな」
真城朔
「…………」
真城朔
しょぼ……になりつつ曖昧に頷いています。
夜高ミツル
「俺も最初は結構……よくわかんなかったし……」
夜高ミツル
泡立て泡立て……
夜高ミツル
十分に泡立ってもまだもこもこやっている。
真城朔
「そ」
真城朔
「そう……?」
真城朔
首をひねっています。
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「でも」
真城朔
「ミツ」
真城朔
「ずっと」
真城朔
「うまい……」
夜高ミツル
「そうかな……」
夜高ミツル
「じゃあ真城もやってみたらうまくできるかもじゃないか?」
真城朔
「……?」
真城朔
首を傾げた……
夜高ミツル
「俺が最初からうまくできてたなら」
夜高ミツル
「真城もやってみないと分からないと……いうか……」
真城朔
「俺」
真城朔
「うまくない……」
真城朔
謎の強固な主張をしている。
夜高ミツル
「…………」
夜高ミツル
「真城がしてくれるなら、なんでも嬉しいよ」
夜高ミツル
「俺は」
真城朔
「…………」
真城朔
おろ……になってきた。
真城朔
視線が彷徨っている……
真城朔
迷っています。
夜高ミツル
「上手じゃなくても」
夜高ミツル
「真城がしてくれることは嬉しい」
真城朔
「い」
真城朔
「痛くする」
真城朔
「かも……」
夜高ミツル
「しないだろ、真城は」
真城朔
「わ」
真城朔
「わかんない……」
真城朔
「指、ひっかけて」
真城朔
「髪」
真城朔
「抜けちゃう」
真城朔
「とか……」
夜高ミツル
「そしたら、次から気をつけたらいい」
真城朔
「次……」
真城朔
おろおろになっている。
夜高ミツル
「真城、手出して」
真城朔
「う」
真城朔
おろつきながらもおそるおそる手を出した。
真城朔
白い手のひらが天井を向いている。
夜高ミツル
出された手に、もこ……と自分の手から泡を移す。
真城朔
うつされていく……
真城朔
あわあわもこもこが……
夜高ミツル
乗せました。
夜高ミツル
あわ……もこ……
真城朔
あわを渡されました。
真城朔
惑ったような瞳でミツルを見て、
真城朔
おずおずとバスチェアから腰を上げ……
夜高ミツル
もう一脚のバスチェアに腰を下ろす。
真城朔
その後ろに立ち……
真城朔
そっ……とミツルの頭にあわあわを乗せた。
夜高ミツル
目を閉じ、軽く頭を下げている。
真城朔
おそる……おそる……
夜高ミツル
おそるおそる触れられている……
真城朔
真城の指がミツルの濡れた髪に泡をなじませていく。
真城朔
だいぶ慎重な手つき。
真城朔
力加減激弱。
真城朔
もこもこあわあわをなじませなじませ……
真城朔
なじませ……
真城朔
うーん…………
夜高ミツル
慎重にしてもらっているなあ。
真城朔
足りているんだろうか……
真城朔
わからない。自分の髪よりも量が多いため……
夜高ミツル
「……もうちょい力入れてやっても大丈夫だぞ」
真城朔
「あ」
真城朔
「う、ん」
真城朔
おろ……になりつつ
真城朔
ちょっと指に力を入れました。
真城朔
指に力を入れるというか……
真城朔
やっと地肌に指が直接触れたというか……
真城朔
さわ……さわ……
夜高ミツル
頭皮に指先の触れる感触。
真城朔
髪をかきわけかきわけ……
真城朔
洗うと撫でるの中間くらいの感触。
真城朔
中間? かなり撫でる寄りかもしれない……
真城朔
髪に泡を絡めてもそもそとやったり……
真城朔
やってみたり……
夜高ミツル
やってみている……
真城朔
慎重にやっているので、どうにもこうにももたもたしている。
真城朔
泡が目元を流れていったりとか……
真城朔
しているんだけど、後ろからだとわからないし……
真城朔
わかっていません。
夜高ミツル
目を閉じているので大丈夫ではある。
夜高ミツル
がんばってくれているな……と思う
真城朔
頭の天辺をわしゃわしゃとやったり……
真城朔
やっているのが一番長かったが、思い出したように側頭部に手を回したり
真城朔
みみのうら……
真城朔
泡……
真城朔
足りてないんじゃないか……?
真城朔
…………
夜高ミツル
散々に触れ合ってきたはずだが、こうして頭を洗ってもらう感触はなんだか新鮮。
真城朔
わかんなくなっている。
夜高ミツル
なんか止まってる……
真城朔
なっていたが、結局シャンプーを足している。
真城朔
しゅこしゅこ……
真城朔
手元であわあわ……
夜高ミツル
足してる音が聞こえる……。
夜高ミツル
泡立ててる……
真城朔
泡を足して、逆側の側頭部をわしゃわしゃし始めた。
真城朔
やや過剰な泡がもこもこになって耳にかかっている……
夜高ミツル
あわあわもこもこ……
夜高ミツル
髪をかき分けて、指先と泡の触れる感覚が心地良い。
真城朔
慎重にやっている。
真城朔
やっているが、耳にかぶっているのには気づけていない……
真城朔
集中しているとその部分以外への意識が疎かになる。
真城朔
最後にうなじのあたりを指でかきわけ……
真城朔
こしこし……
真城朔
わしゃわしゃ
夜高ミツル
触れられている。
夜高ミツル
されるがままに委ねる。
真城朔
ゆだねられている……
真城朔
なんとなく不安になってもう一周している。
真城朔
相変わらず力はたいへんに弱め。
夜高ミツル
2周目が始まった……
夜高ミツル
もうちょい力入れてもいいけど……
真城朔
わしゃわしゃ……
真城朔
おずおず……
夜高ミツル
真城が力加減するのが大変そうなのは分かるので、とりあえず任せている。
真城朔
なんとか二周目を終え……
真城朔
「…………」
真城朔
考え込んだが、流石にいくらなんでも三周はないという結論を出したらしい。
真城朔
シャワーを取って、お湯を出し……
真城朔
「お」
真城朔
「お湯……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
しゃー……
真城朔
「かける」
夜高ミツル
頷く。
真城朔
こくこく……
真城朔
なんか宣言みたいになっちゃった。
夜高ミツル
宣言されました。
真城朔
水圧まあまあ弱めのシャワーをかけていきます。
真城朔
じゃー……
真城朔
じゃぶ……
夜高ミツル
しゃわわ……
真城朔
慎重に時間をかけて流しています。
真城朔
しかし水圧弱めのシャワーとミツルの癖のある髪質は相性が悪い。
真城朔
なかなか泡が落ちきらず……
真城朔
苦戦……
夜高ミツル
「……手でした方がいいかも」
真城朔
「て」
夜高ミツル
こんな感じとばかりに、手で髪をわしゃわしゃと。
真城朔
「えっ、と……」
夜高ミツル
かき分け……泡を流し……
真城朔
片手にシャワーを持ち……
真城朔
ミツルの手に重ねるような感じで……
真城朔
わしゃわしゃ……
真城朔
ながしながし……
夜高ミツル
重ねられてる。
真城朔
がんばってます。
真城朔
がんばって時間をかけて、なんとかしてます。
真城朔
している。
夜高ミツル
されている。
真城朔
おそるおそるの指先。
真城朔
髪をかき分けてはシャワーを当て、温水を流し……
真城朔
うーん……
真城朔
んー……
真城朔
「…………」
真城朔
できただろうか……みたいな感じで止まっている。
真城朔
まじまじ
真城朔
眺めてもいる。
夜高ミツル
手が止まった。
夜高ミツル
見えないが、感覚的にこんだけやったら大丈夫かな……という気はする。
真城朔
シャワーは流れ続けている……
真城朔
そのシャワーを片手にミツルの頭をかき分け点検……
真城朔
さわさわ……
真城朔
うーん……
真城朔
「だ」
真城朔
「だいじょう」
真城朔
「ぶ……?」
真城朔
疑問形。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
自分でもぺたぺたと触ってみて
夜高ミツル
「大丈夫そう」
真城朔
心配そうに見ている。
真城朔
ほっ……
真城朔
はた……
真城朔
思い出したようにシャワーを止めた。
真城朔
よし……
夜高ミツル
目元のお湯を手で拭って、目を開ける。
夜高ミツル
「ありがとう」
真城朔
おろ……
真城朔
「う」
真城朔
「うん」
真城朔
「…………」
真城朔
「痛く」
真城朔
「とか……」
夜高ミツル
「全然」
真城朔
「ちゃ」
真城朔
「ちゃんと」
真城朔
「洗えてた……?」
夜高ミツル
「丁寧にしてもらって嬉しかった」
真城朔
「う」
真城朔
「うまく、できて……」
夜高ミツル
「できてた」
夜高ミツル
「気持ちよかったよ」
真城朔
ほ…………
真城朔
シャワーを持ってほっとしてます。
夜高ミツル
「ありがとうな」
真城朔
「ん……」
夜高ミツル
とまた言って、真城のぺったりした頭を撫でる。
真城朔
撫でられてる。
真城朔
うれしげ……
夜高ミツル
なでなで……
真城朔
朝の風呂場です。
夜高ミツル
ボディタオルを手に取る。
夜高ミツル
取り……
夜高ミツル
真城を見る。
真城朔
目が合う。
真城朔
? になる。
夜高ミツル
? になられて一瞬止まり……
夜高ミツル
考え……
夜高ミツル
「……背中」
真城朔
「せなか」
夜高ミツル
「擦ってもらっていいか?」
夜高ミツル
常識的な範囲に落ちついた。
真城朔
ぱち……
真城朔
こくこく頷いた。
真城朔
ミツルからボディタオルを受け取り……
真城朔
ボディソープをあわあわにしています。
夜高ミツル
渡して、バスチェアに座っている。
真城朔
ミツルの後ろ側に回り……
真城朔
よいしょよいしょと洗い始めた。
真城朔
やっぱり力はたいへんに弱め。
夜高ミツル
軽く背を曲げている。
真城朔
あわあわんしょんしょ……
真城朔
ミツルの背中をボディタオルが滑っている。
真城朔
肩に片手を添えて、もう片手でよいしょよいしょと……
真城朔
真剣。
夜高ミツル
やってもらっている。
真城朔
やっています。
夜高ミツル
ミツルの方は真城と違って傷跡がちらほらと。
真城朔
傷を見つけるたびにしょんぼりする。
真城朔
しょんぼりして、よりソフトタッチに洗う。
真城朔
そっ……
真城朔
慎重。
夜高ミツル
「……痛くないから、大丈夫だぞ」
夜高ミツル
力の弱くなった箇所でなんとなく察する。
真城朔
「う」
真城朔
でも……とか
真城朔
もごもご言ってる。
真城朔
手が止まってしまった……
夜高ミツル
「大丈夫」
真城朔
「…………」
真城朔
しょぼ……
夜高ミツル
「もう痛くないよ、どれも」
真城朔
小さく頷いた。
真城朔
後ろだから見えないんだわ。
夜高ミツル
見えない。
真城朔
見えないけど頷いて、改めて手を動かし始めた。
夜高ミツル
見えないけどなんとなく雰囲気は伝わった。
夜高ミツル
再び背中をタオルが擦る感触。
真城朔
相変わらず慎重な手つきではある。
真城朔
背中流すに慎重もなにもないのだが……
真城朔
慎重。
夜高ミツル
慎重だな……
真城朔
肩から肩甲骨の方をわしゃわしゃとやり……
夜高ミツル
大事にしてもらってるな、と思う。
真城朔
だんだんと下がり……
真城朔
部位ごとに丁寧にしている。
夜高ミツル
してもらっている。
真城朔
丁寧にやり、腰の方まで洗い終わり……
真城朔
「…………こ」
真城朔
「こんな」
真城朔
「感じ……?」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
振り返る。
夜高ミツル
「ありがと」
真城朔
ボディタオルを差し出す。
真城朔
「ん……」
真城朔
おずおず頷いた。
夜高ミツル
受け取ります。
真城朔
手持ち無沙汰な感じになった。
真城朔
なり……
真城朔
隣のバスチェアに腰掛けた。
真城朔
ミツルを見ている……
夜高ミツル
見られつつ、背中以外を自分で洗っていく。
夜高ミツル
わしゃ……
夜高ミツル
真城にしたのよりかなりササッと
真城朔
はやい……
夜高ミツル
ごしわしゃ……
真城朔
あんまりもたもたされるのよくなかったかな……
夜高ミツル
とはいえ全身べたべたなのであまり疎かにもせず
真城朔
見ています。見るな。
夜高ミツル
見られている……
夜高ミツル
洗い……
夜高ミツル
全身を泡だらけにしたところで、シャワーを取る。
夜高ミツル
お湯を出し……
真城朔
「あ」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
うっかり声が出たが……
夜高ミツル
真城を見る。
真城朔
出してから どうしよ……になっている……
真城朔
「…………」
夜高ミツル
黙り込んだ真城を見て……
夜高ミツル
シャワーを差し出す。
夜高ミツル
「頼んでいいか?」
真城朔
差し出された。
真城朔
「う」
真城朔
「うん……」
真城朔
受け取った。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「じゃあ任せた」
真城朔
お湯の出ているシャワーを受け取り、ミツルの後ろに立ち……
真城朔
流し流し……
真城朔
流しています。
夜高ミツル
流されていく。
真城朔
あわあわじゃぶじゃぶ
真城朔
ざざー……
夜高ミツル
床を泡が流れていく。
真城朔
上から下までシャワーを当てていきます。
真城朔
ねっしん……
真城朔
しんけん……
夜高ミツル
任せている……
夜高ミツル
頭よりはだいぶサッと流れていく。
真城朔
自然に流れゆく。
真城朔
前の方も流すし……
真城朔
手ではあんまり触らない……
夜高ミツル
腋の下のような落ちにくいところは自分で手でやっている。
真城朔
やってもらいつつ……
真城朔
流し終えました。
真城朔
終えた……?
真城朔
シャワーを手に終えた……? みたいな顔になっている。
夜高ミツル
終えた。
夜高ミツル
「ありがと、真城」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく……
真城朔
はっ
真城朔
お湯を止めます。
真城朔
きゅっ……
夜高ミツル
シャワーをフックにかけ……
夜高ミツル
「上がるか」
夜高ミツル
「冷えてないか?」
真城朔
目を瞬く。
夜高ミツル
言って、真城の頬に触れる。
真城朔
触れられます。
真城朔
頬はまあまあ平熱のひんやりめ。
夜高ミツル
ほかほかしてない……
真城朔
してない。
真城朔
してないけど別に寒そうな素振りでもなく……
真城朔
きょと……
夜高ミツル
寒そうではないのはよかったけど……
真城朔
目を丸くしてミツルを見ている。
夜高ミツル
「……上がるか」
夜高ミツル
何かするとまたもたつくのが目に見えてるので、とりあえず上がるか……になった。
真城朔
「うん」
真城朔
ミツルに頷くと、おずおずと腰を上げた。
真城朔
長々と時間をかけて風呂からあがり、やっとこさ二人で台所に立つ。
真城朔
気分的には朝ごはんなのだが……
夜高ミツル
時計を見るとなんと正午を回っていた。
真城朔
びっくりした……
夜高ミツル
お昼ごはんを作ります。
真城朔
それはそれとして気を取り直してごはんです。
真城朔
お昼です。
真城朔
「何」
真城朔
「する?」
真城朔
いつものようにとりあえずは訊く。
夜高ミツル
「ローストビーフがあるから、それと~……」
真城朔
「ん」
夜高ミツル
冷蔵庫開け……
真城朔
定期的にローストビーフを作っているすごい家だぞ。
夜高ミツル
他に特に作り置きもないので……
真城朔
なんとなくミツルの後ろから覗き込んでいる。
真城朔
見えたところで何がどうということもない。
夜高ミツル
「あとは目玉焼きと味噌汁とって感じでいいか?」
夜高ミツル
「あ、サラダも」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく頷いた。
真城朔
「朝ごはん」
真城朔
「って感じ……」
真城朔
昼だが。
夜高ミツル
「だなー」
夜高ミツル
昼です。
真城朔
昼なんだよな……
真城朔
指示を待ってます。
夜高ミツル
「味噌汁の具は……」
真城朔
「うん」
夜高ミツル
「ナスと玉ねぎとかかなー」
真城朔
「なすとたまねぎ」
真城朔
復唱。
真城朔
「…………」
真城朔
「夏……」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「夏だし」
真城朔
「うん」
真城朔
頷き返している。
真城朔
「夏」
夜高ミツル
「味噌汁任せていいか?」
真城朔
「する……」
真城朔
こくこく……
真城朔
きり……
夜高ミツル
「頼む」
夜高ミツル
頷きを返し……
真城朔
「がんばる……」
真城朔
茄子を受け取ります。
夜高ミツル
渡した。玉ねぎも。
真城朔
もらって調理台の方へ。
真城朔
えいしょとまな板を出して置いている。
真城朔
包丁を使うやつは基本的にはさっさとやっちゃうぞ。
真城朔
被るとちょっとめんどくさいぞ。という認識がついている。
夜高ミツル
ちょっとめんどくさい。
真城朔
あ……
真城朔
でもその前に鍋……
真城朔
結局やや右往左往してるな……
真城朔
右往左往しつつ、鍋に水を張って、顆粒だしをぱっぱと入れて、
真城朔
火にかける。
真城朔
前はこの作業のひとつひとつにもいちいちミツルにおうかがいを立てていた。
夜高ミツル
右往左往を見守りながら器を出してレタスをちぎっている。
真城朔
水の量とか……だしの加減とか……
真城朔
みそ汁はかなり頻繁に作るので、さすがに自信が持て始めている。
夜高ミツル
あんまり訊かれなくなった。
真城朔
目分量
夜高ミツル
それはそれとして見守っている……
夜高ミツル
ちらちらと……
真城朔
真城も火を一応ちらちら……
真城朔
ちらちらしながら玉ねぎの皮を剥いている。
真城朔
ぺりぺり
夜高ミツル
火を見るのは大事。
真城朔
火はこわい
真城朔
皮を剥いたら横に切って、上下を落として……
夜高ミツル
レタスちぎり、プチトマトのせ……
真城朔
さく……さく……とやや厚めの薄切り。
夜高ミツル
ドレッシングかけ……
夜高ミツル
サラダは一人分。
真城朔
薄切りのつもりのやや厚め切り。
真城朔
ましろサラダたべない
真城朔
はっぱ食べない生き物
夜高ミツル
食べない。
夜高ミツル
ミツルは食べるので食べる。
真城朔
食べられはする
真城朔
そのぶんおなかはふくらむ……
真城朔
切れた玉ねぎを沸騰しかけのだし汁にえいや。
夜高ミツル
サラダの器を食卓へ。
真城朔
茄子にとりかかっている。まずは縦。
真城朔
次はななめ……
夜高ミツル
戻ってきたらナスを切ってた。
真城朔
玉ねぎよりも柔らかいので切りやすいような、
真城朔
手元が狂ったら怖いような……
真城朔
とす……とす……みたいなリズム。
夜高ミツル
ゆっくりやった方が安全。
真城朔
とんとんとん……にはなかなかなれない。
夜高ミツル
難しいな~
真城朔
ミツルの包丁さばきはハイレベルな領域。
真城朔
に真城からは見えている。
夜高ミツル
冷凍庫からご飯の入ったタッパーを2つ取り出して、レンジに入れる。
夜高ミツル
ぴっぴっと操作して、温め開始。
真城朔
なんとかなすを切って……
真城朔
…………
真城朔
鍋の様子を見て、おたまをとって、ちょっとぐるぐる……
夜高ミツル
今度は冷蔵庫を開けて、卵とローストビーフを取り出す。
真城朔
たまねぎに火が通りつつあるか見てる。
真城朔
うーん……
夜高ミツル
ちゃんと火の通りにくい具材から入れててえらい。
夜高ミツル
ローストビーフは一旦置いて、鍋の隣にフライパンを出す。
真城朔
ミツルが隣に来たので……
真城朔
ちら……になった。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
ちら……されて真城の方を見る。
真城朔
「あ」
真城朔
「えっと」
真城朔
「鍋……」
真城朔
指さした。
夜高ミツル
見る。
真城朔
ぐつぐつ煮えてる。
真城朔
玉ねぎがまあそろそろ半透明かな……みたいな感じ。
真城朔
「なす」
真城朔
「入れて、も」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
ほ…………
夜高ミツル
「いいと思う」
真城朔
「いれる……」
真城朔
「あり」
真城朔
「がと」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
こくこく頷き……
真城朔
まな板の上でちょっと変色し始めていたなすを
真城朔
ざざー
真城朔
えいやー
真城朔
ぐつぐつの鍋に投下。
夜高ミツル
投入されていった。
真城朔
ちょっと火を弱める……
夜高ミツル
隣のコンロの方は火をつける。
真城朔
おたまでちょっとかき混ぜて……
真城朔
包丁とまな板を洗いに行きます。
夜高ミツル
ちょっと待ち……
夜高ミツル
フライパンの上に手を出して、温まり具合を確認している。
真城朔
となりでお出汁がぐつ……ぐつ……になってる。
夜高ミツル
そろそろよさそう……
真城朔
真城は流し台でじゃぶじゃぶ
夜高ミツル
あっ
夜高ミツル
隣の火をちょっと弱める。
真城朔
さりげないフォローをしてもらっている
真城朔
気づいていない。
夜高ミツル
した。
夜高ミツル
フライパンに油を引き……
夜高ミツル
こんこんと卵を割って落とす。
夜高ミツル
2つ。
真城朔
気づかれないまままな板と包丁を洗い終わって、戻ってくる。
夜高ミツル
卵に塩コショウを振っている。
真城朔
具が煮えてるか眺め……
真城朔
眺め……
真城朔
…………
真城朔
結局ミツルをちら……とした。
夜高ミツル
見られた。
夜高ミツル
目が合う。
真城朔
合った
真城朔
「え、っと」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「これ」
真城朔
「もう……」
真城朔
また鍋指さしてる。
夜高ミツル
再び鍋を覗き込む。
真城朔
なすもだいぶ煮えてる。
真城朔
火を弱めたくらいだし……
真城朔
全体的に紫っぽい色合いのだし汁に。
夜高ミツル
「うん、大丈夫そう」
夜高ミツル
頷く。
真城朔
ほっ
真城朔
「みそ」
真城朔
「入れる」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
こくこく……
真城朔
火を止めた。
真城朔
冷蔵庫から味噌を取ってきて、戻ってくる。
夜高ミツル
フライパンの方もちょっと火を弱め……
夜高ミツル
カップに水を入れてくる。
真城朔
味噌の量はちゃんと大さじを使います。
夜高ミツル
ちょろ……と水を差し
夜高ミツル
蓋を閉める。
真城朔
だいたい大さじ2をちょっと多いくらいで……
真城朔
お玉に入れてからだし汁に沈めて、箸で溶く。
真城朔
ちゃかちゃか……
真城朔
ちらちらと目玉焼きの方を見ていた。
夜高ミツル
見てくれている。
真城朔
蓋がしめられてしまった。
夜高ミツル
透明の蓋が水蒸気で曇っている。
夜高ミツル
内側に水滴がいっぱいついてる。
夜高ミツル
皿とかを準備しています。
真城朔
蓋越しに黄卵の鮮やかな色。
真城朔
ミツルが皿とかの準備に行っているので、一応火の前キープ。
夜高ミツル
味噌汁のお椀と……目玉焼きの皿と……
夜高ミツル
ローストビーフの皿は一枚でいいな……
真城朔
お玉で軽くかき混ぜたりしつつ……
真城朔
目玉焼きの方も……
真城朔
ミツがやってるなら大丈夫だとは思うけど……
真城朔
一応見ます。
真城朔
はっ
夜高ミツル
色々出して火の前に戻ってくる。
真城朔
みそ汁の方そもそも火を入れてない……
真城朔
入れた。弱火。
夜高ミツル
入れてる横で、フライパンの蓋を開けてみる。
夜高ミツル
もく……
真城朔
ぶわ……
夜高ミツル
蒸気が抜けるのを待って、目玉焼きの状態を確かめる。
真城朔
ちらちら見てます。
夜高ミツル
フライパンを傾けても目玉の形が変わらないくらい。
真城朔
焼けてる……
真城朔
は……
真城朔
みそ汁もちょっと煮えてきたので火を止めた。
真城朔
蓋をする。これでよし。
真城朔
「ミツ」
夜高ミツル
焼けてるので、白身のくっついたところを切って……
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「準備」
真城朔
「残り」
真城朔
「する……」
夜高ミツル
「ん、ありがと」
真城朔
「ん」
夜高ミツル
こちらも火を止める。
真城朔
いつものように頷いて、踵を返す。
真城朔
皿は用意してもらえたのでおしぼりとか台ふきんとか……
真城朔
台ふきんからだな……
真城朔
台ふきんを湿らせて食卓を拭きに行く。拭いている。
夜高ミツル
そういえば拭く前にサラダを持っていってしまった……
夜高ミツル
皿に目玉焼きを一つずつ移す。
夜高ミツル
移してる後ろで、レンジが鳴った。
真城朔
サラダの器も持ち上げて下を拭いてます。
真城朔
戻ってきたらおしぼりを作る。
夜高ミツル
レンジからあつあつになったタッパーを取り出す。
真城朔
お湯で濡らして絞って……
夜高ミツル
温めたご飯を茶碗に移していく。
夜高ミツル
片方は多めに、もう片方は控えめに……
真城朔
控えめにしてもらってる。
真城朔
おしぼりとお箸を運んでます。
真城朔
戻ってきて、盛ってもらったごはんも……
真城朔
ミツルの顔をちらと見て……
夜高ミツル
頷く。
夜高ミツル
「頼む」
真城朔
「ん」
真城朔
頷き返した。
真城朔
また持ってく。
夜高ミツル
運んでもらってる間にローストビーフを切る。
真城朔
往復
真城朔
飲み物は……うーんと……
真城朔
「麦茶」
真城朔
「大丈夫?」
夜高ミツル
肉の塊をすっ……すっ……と薄切りにしていく。
夜高ミツル
「うん」
真城朔
冷蔵庫を開けながら……
真城朔
許可が出たのでそのようにする。
真城朔
夏の朝なので。
真城朔
昼だが……
夜高ミツル
「寝る前に作ったのだから大丈夫」
真城朔
「ん」
真城朔
コップ二つ出して注ぎ、それも持っていき。
夜高ミツル
そんなに残ってなかったので端まで切っちゃう。
夜高ミツル
切った。
夜高ミツル
それを皿に盛り付け……
夜高ミツル
まな板と包丁は流しに。
真城朔
盛り付けてもらったローストビーフも持っていきます。
夜高ミツル
手を洗い、拭いて……
夜高ミツル
目玉焼きの皿を手に、食卓に行く。
真城朔
だいたいの準備が整っている。
真城朔
ミツルが目玉焼きを持ってきてくれたので、あとはみそ汁。
真城朔
「みそ汁」
真城朔
「盛ってくる」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
ぱたぱた……
真城朔
普通めに盛ったやつと、ちょっとのやつ。
夜高ミツル
目玉焼きの皿をそれぞれの定位置の前に置き……
真城朔
持って戻ってきます。
真城朔
配膳。
真城朔
腰掛け。
夜高ミツル
真城が座ったので、手を合わせる。
夜高ミツル
「いただきます」
真城朔
「いただきます」
真城朔
唱和。
夜高ミツル
いつもの。
真城朔
箸を取り……
真城朔
うーんと……
真城朔
ごうせいにローストビーフから……
夜高ミツル
同じく箸を取る。
夜高ミツル
とりあえずサラダから箸を伸ばす。
真城朔
ご飯にちょっと乗せて、
夜高ミツル
野菜から食べるといいらしいとよく聞くので……
真城朔
身体に気を使ってくれているとうれしい。
真城朔
目玉焼きも箸で半分に切って乗せる。
夜高ミツル
真城が喜ぶので気を使う。
真城朔
ちょっととろっとなる。
夜高ミツル
葉っぱをもしゃもしゃしている。
真城朔
それをごはんと合わせて……
真城朔
もぐ……
真城朔
もぐもぐしながらミツルを見ている。
夜高ミツル
ぱりぱりもしゃもしゃ……
夜高ミツル
しながら、視線を感じて真城に目を向ける。
真城朔
じ……
真城朔
もぐもぐ……
真城朔
よく口を動かして咀嚼しています。
夜高ミツル
よく噛んでるなあ
真城朔
よく噛み、味わっている。
真城朔
ようやっと飲み込んで……
夜高ミツル
味わってもらっている。
真城朔
「……ん」
真城朔
「おいしい」
夜高ミツル
それが当たり前になってきていることを、改めて喜ばしく思う。
真城朔
表情を緩めた。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「よかった」
真城朔
「ローストビーフ」
真城朔
「こんな感じに食べるの」
真城朔
「贅沢……」
真城朔
今更のように立ち返っている。
夜高ミツル
「そうだなー」
夜高ミツル
「でも作れるのもあと1ヶ月ちょいか……」
真城朔
「ん……」
真城朔
ぼんやりとカレンダーを見る。
夜高ミツル
今は8月頭。
真城朔
なんだかんだここでの暮らしも終わりが見えてきた。
真城朔
最初は春までの予定だったのが……
夜高ミツル
すっかり長居してしまった……
真城朔
心地がよくて……
夜高ミツル
真夏のバイク旅は多分大変だし……
真城朔
家を出ちゃうと基本どたばたになるし……
真城朔
色んな言い訳が被さって生活を長くやっている。
真城朔
みそ汁を飲む。
真城朔
ずず……
夜高ミツル
熱中症も危ないし、真城も日差しに弱いし……
夜高ミツル
「作れる間にいっぱい食おうな」
真城朔
「うん」
夜高ミツル
ローストビーフに箸を伸ばす。
真城朔
「たべる……」
真城朔
真城も箸を伸ばした。
夜高ミツル
「うん」
真城朔
赤めのお肉……
夜高ミツル
ご飯の上に乗せて、一緒に箸で取る。
夜高ミツル
ぱく……
夜高ミツル
もぐもぐ……
真城朔
もぐもぐむぐむぐ
真城朔
単品で食べてもおいしい。
夜高ミツル
肉と米と一緒でもおいしい。
真城朔
どう食べてもおいしい……
真城朔
いいお肉を……いい感じにしているため……
真城朔
値段はなかなか。
夜高ミツル
なかなか……な感じ。
夜高ミツル
少なくとも一人の頃は絶対買わなかったような肉を……
夜高ミツル
贅沢に……
夜高ミツル
贅沢なものをなぜかしょっちゅう食べている。
夜高ミツル
うまい。
真城朔
真城が生好みなばかりに……
真城朔
おいしい。
真城朔
食べつつ……
真城朔
「なんか……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「こうしてるの」
真城朔
「だけ、で」
真城朔
「楽しいから……」
夜高ミツル
「……うん」
夜高ミツル
噛みしめるように返事をして、笑う。
真城朔
「あんまり」
真城朔
「どっか行ったり、とか」
真城朔
「少なかった」
真城朔
「ね」
夜高ミツル
「そうだなー」
真城朔
みそ汁の具を取って、食べている。
真城朔
もぐもぐ
夜高ミツル
「やっぱ人多いしな……」
夜高ミツル
「観光してみたいような場所」
真城朔
「うん……」
真城朔
「みんな、来る……」
夜高ミツル
「なー」
真城朔
なんだかんだ……
真城朔
家でののんびりが一番気楽ということに気づいてしまい……
夜高ミツル
「思ったより暑かったし……」
真城朔
こくこく……
真城朔
「北海道でも」
真城朔
「意外と」
真城朔
「夏」
夜高ミツル
「もうちょっと出かけやすいかと思ったんだけどな……」
真城朔
「なかなか……」
夜高ミツル
「夏は夏だったな……」
真城朔
頷く。
真城朔
ローストビーフを齧った。
真城朔
もぐもぐ
夜高ミツル
目玉焼きを箸で割る。
夜高ミツル
「出る頃には涼しくなってるだろうし」
夜高ミツル
「どっか1箇所……2箇所くらい……」
夜高ミツル
言いつつも……
夜高ミツル
半年以上暮らしてきて、なんのかんの言い訳つけてあまり外出しなかったことに思いを馳せている。
真城朔
「どこか」
真城朔
「行ってみる?」
真城朔
ローストビーフを飲み込んでから。
夜高ミツル
「せっかくだしな」
夜高ミツル
「次に来たときでもいいけど、いつになるか分かんないし」
真城朔
「北海道、は」
真城朔
「さすがに……」
真城朔
これから南に行くのに……
夜高ミツル
「さすがにな~」
夜高ミツル
「何年後って感じだからな……」
真城朔
「食べ終わったら」
真城朔
「ちょっと、調べてみる」
真城朔
「とか」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「してみよっか」
夜高ミツル
「見てみよう」
真城朔
「ん」
夜高ミツル
ローストビーフを取って、目玉焼きと一緒に口に運ぶ。
真城朔
真城も残りの目玉焼きを齧っている。
真城朔
外出する話をしつつ、
真城朔
結局こうしてゆったりしているのがかなり性には合っている。
夜高ミツル
あと一ヶ月。
夜高ミツル
きっとあっという間なんだろうな。
真城朔
冬が来て、春が来て、夏が来るのもあっという間だったから、
真城朔
きっと、秋が来るのもあっという間。
夜高ミツル
こうしてるだけで楽しいと
夜高ミツル
真城が言ってくれたことを反芻する。
夜高ミツル
楽しい時間の過ぎるのは早いとか言うけど、まさにそんな感じで。
真城朔
ローストビーフを大切に味わうように、
真城朔
せめてそれをできる限り、きちんと楽しみたかった。