2021/08/12 午前
真城朔
バイクのエンジン音が、牧場の看板を通り過ぎて止まる。
真城朔
ヘルメットを被ったままバイクから降りて……
夜高ミツル
同じくバイクを降りて、真城のヘルメットも外してやる。
真城朔
リュックから折り畳みの日傘をもたもた取り出している。
夜高ミツル
シートを持ち上げて、収納から自分のリュックを取り出し、ヘルメットをしまい……
夜高ミツル
北海道でも札幌は都会だったので、新鮮。
真城朔
ぽつぽつと歩いている動物たちをぼんやりと見回している……
真城朔
看板うさぎに見守られながら受付を済ませ……
真城朔
一応いろいろ事前にスマホで調べてきはしたけども。
夜高ミツル
1枚のパンフレットを二人で覗き込んでいる。
夜高ミツル
「この、ヤギの哺乳体験が10時からだから」
夜高ミツル
日傘は今はミツルが代わりに持っている。
真城朔
白くてふわふわのこやぎが期待の目で寄ってくる。
真城朔
引っ張られる哺乳瓶をしっかり掴んでいる……
夜高ミツル
「吸いつくっていうか……食らいつくって感じが……」
真城朔
元から大してない語彙力が限界まで落ちている。
真城朔
圧倒されている間に牛乳がなくなってしまった。
真城朔
飼育員さんに空の哺乳瓶を回収してもらい……
真城朔
逃げるでもなくなんとも言えない……笑みのような……なんとも言えない表情で人間を見返している。
夜高ミツル
そのまま毛並みに沿うようにそっと撫でる。
真城朔
ふわふわのアルカイックスマイル気味のこやぎを……
夜高ミツル
「人間に触って大丈夫なら、やぎも痛くないと思う」
真城朔
こわごわと、日傘を持っていない方の手を持ち上げた。
真城朔
言ってから、羊の鳴き声もよく考えたらちゃんと聞いたことないような気がしてきた。
真城朔
体験コーナーを売りにしている牧場なだけあって、いろいろある。
真城朔
結構量がありそうなので、二人で一つにしてもらった。
真城朔
アイスクリーム手作り体験とはいえ、やり方は思いの外簡単。
真城朔
簡単だから体験として売りにできるのだろうが……
真城朔
わからないけど、言われたままに液体を混ぜます。
夜高ミツル
混ぜるのを任せて、ボウルを持ってくるくると回している。
真城朔
ボウルのへりに凍った液体がへばりつくので、
真城朔
色々確認しながら難しいことをしようとすると大変になる。
夜高ミツル
数分そうやって混ぜている内に、だんだんボウルの中身が固くなってくる。
真城朔
へりにくっつく感じが半固体めいてきている。
夜高ミツル
ボウルを回しながら、中身の変化していくのをじっと見ている。
夜高ミツル
ボウルを任せて、固まりつつあるアイスを混ぜていく。
夜高ミツル
お好みの固さになったら食べていいらしい。
真城朔
固形っぽいほうがお腹すぐいっぱいになっちゃう感じする……
夜高ミツル
ヘラでさくっと掬える程度の固さになっている。
夜高ミツル
ウエハースもあるのでそれを1本ずつ添えて、
真城朔
とろふわの白くてちょっと不格好に盛られたアイス。
真城朔
やわらかめオーダーの結果が忠実に出ている。
真城朔
端っこでやわらかめのアイスクリームを掬って
夜高ミツル
それを見て、ミツルもウエハースを手に取る。
夜高ミツル
こないだジェラートを溶かしたのを反省している。
夜高ミツル
そうして、合間にちょこちょこと感想を交わしつつも、無事溶ける前に完食。
夜高ミツル
ボウルとかはスタッフさんが片付けてくれたので、あとはゴミをゴミ箱へ……
夜高ミツル
言いながら、ポケットからパンフレットを取り出して広げる。
真城朔
頷きながら、パンフレットを隣から覗き込んでいます。
夜高ミツル
「ダーツとかも気にはなるけど、せっかくだから動物の方行きたいよなー」
夜高ミツル
パンフレットの上、乗馬体験の文字を指差す。
夜高ミツル
「鳥でも、ニワトリがいるのは分かるけど……」
真城朔
ダチョウコーナーは割となんというか森の中って感じ。
夜高ミツル
ダチョウのモノビとかかなり考えたくないな……
真城朔
めちゃくちゃ走るモノビの有名な話はある……
真城朔
狩りのためにでっかい道路を作ってもらったとかなんとか……
真城朔
モノビほどではないがでかいダチョウを見上げている。
夜高ミツル
飼育員さんから説明を聞き、手の消毒を済ませ……
真城朔
籠ごとに飼育員さんがそっと膝に乗せてくれる、のを見ている。
夜高ミツル
手を重ねたまま、指先でうさぎに触れている。
真城朔
真城とミツルの重なった手に前脚を乗せてくる。
真城朔
グレーの体毛にやや紛れがちな黒い目と視線が合っている。
夜高ミツル
空いている方の手でうさぎの背中に触れる。
真城朔
うさぎは毛づくろいをやめて籠の上でまるくなっている。
夜高ミツル
ポケットに手を突っ込んでスマホを取り出す。
真城朔
どうすればいいか分からないで身体を固めています。
夜高ミツル
片手でカメラを起動して、ちょっと身体を引き……
真城朔
うさぎは顔を上げて周囲を見回し始めている。
真城朔
そのままぎこちない手つきですい……って背中の方まで撫でる。
真城朔
お尻の方までは触らないでねって飼育員さんに言われた……
真城朔
ぎこちない手つきでうさぎを撫でているだけの動画が撮れている。
真城朔
うさぎは鼻先ふすふすさせながらきょろきょろしてる。
夜高ミツル
うさぎの前脚の下に手を差し入れて、よいしょ……と真城の腕からどかす。
夜高ミツル
今日何かしらの動物を見る度に言ってる気がする。
真城朔
今は籠の上で後ろ脚を使って毛づくろいしてる。
夜高ミツル
「ふれあいコーナーに出てきてる子だから、大丈夫なんだろうとは思うけど……」
真城朔
くるのに従って、結局おずおず頭を撫でている。
夜高ミツル
それでもだいぶ緊張の解けたらしいのを、にこにこと眺めている。
真城朔
籠ごと飼育員さんに回収されていくうさぎに小さく手を振っている。
真城朔
氷菓子ならそんなにお腹に残らないんだけど……
夜高ミツル
「喫茶っぽいとこがあるみたいだから、そこ行ってみるか」
真城朔
喫茶のメニューはなんか思ったより喫茶って感じだった。
真城朔
たぶん本格的に牧場っぽい料理が食べたい人はあっちのバーベキューとかのお店に行くんだろうな……
夜高ミツル
羊を見た後だと、なんだかな……という気持ちになった。
真城朔
券売機で買うらしいので、メニューを眺めつつ……
夜高ミツル
「せっかくだからそれっぽいやつ食べたいよな……」
真城朔
ソーセージ食べるから甘いやつはちょっと……
夜高ミツル
券売機にお札を入れて、ぴっぴっと今しがた決めたメニューを押していく。
夜高ミツル
夏休みということで、それなりに親子連れの人たちがいる。
真城朔
テーブルに置かれた番号札をぼんやりと眺めている。
夜高ミツル
「ダチョウがいるのも、なんで? だし……」
夜高ミツル
真夏の日差しの下で連れ回すのをちょっと悩みもしたけど……
真城朔
いつもの唱和ののち、オリジナルソーセージに箸を伸ばす。
夜高ミツル
包みを開けると、フォカッチャに挟まれていたのはベーコンとレタス。
真城朔
わかんないな……と思いながらソーセージを齧っています。
真城朔
向かいでミツルがフォカッチャにかじりつくのを見ている。
夜高ミツル
「いいベーコンって感じするよな、なんか」
夜高ミツル
カップとスプーンを真城の方に差し出す。
真城朔
ミツルの方にカップとスプーンを差し出します。
真城朔
頷いて、思い出したようにソーセージをかじる。
夜高ミツル
それを見て、ミツルもまたフォカッチャサンドを一口。
真城朔
もぐもぐしながらリアクションを待っている。
真城朔
口の中に入っているのでもがもがした声にはなるものの、頷いている。
夜高ミツル
でも大きいし結構お得なような気もする……。
夜高ミツル
そんな感じで喋ったり眺めたり食べたり……
真城朔
ちょっと早めに完食してミツルが食べ終わるのを眺め……
真城朔
これなのかな……になったりした。違う気もする。
真城朔
最終的に特に目的もなく野原に腰を下ろしている。
真城朔
日傘をさしてぼんやりとそういった光景を眺めている。
夜高ミツル
夏の日差しではあるものの、高原なので風は涼しい。
夜高ミツル
このくらいか……? と両腕を広げている。
真城朔
なんか他の珍しい動物は珍しい動物……みたいな感じだったけど
夜高ミツル
大きさ以外は普通のうさぎとそんなに変わらなくて……
夜高ミツル
広げた己の両腕を見て、改めてしみじみしている。
夜高ミツル
「冬はさすが北海道って感じだったけど」
夜高ミツル
暑いけど、千葉の夏よりはちょっとマシな感じはある。
真城朔
吸血鬼とか魔女とかモノビーストとか無縁な感じで……
夜高ミツル
そんな物騒なもの全部、このままずっと無縁ならいいのに、とは
真城朔
ミツルの内心を知ってか知らずか、心地よさそうに目を細めている。