真城朔
それなりに長くのんびり過ごして、もうそろそろ夕暮れ時。
夜高ミツル
日の沈むところを見るかということで、外に出てきた。
真城朔
外の風景を眺めながら食べられる場所があった……
真城朔
事前に調べていた通りレストランは高級感がすごくてちょっとこわかった。
真城朔
テイクアウトもあったけど、お弁当食べておなかいっぱいだったので……
夜高ミツル
帰りにまだ残っていれば買って帰ろうとなった。
夜高ミツル
夕暮れの光に、山の輪郭が浮かび上がっている。
夜高ミツル
傾いた日の前ではあんまり帽子が役立たない……
夜高ミツル
オレンジ色の光に照らされながら、二人で日の沈む様を眺める。
真城朔
日が沈むにつれて当然暗くなってくるので、一個一個の光が映えてくる。
夜高ミツル
「街の明かりって、宇宙からも見えるんだっけ……」
夜高ミツル
そんな感じの写真をなんかで見た気がする。
夜高ミツル
話している間にもどんどんと空は暗くなり
真城朔
暗くなった世界にちかちかぴかぴか、人の営みの光。
夜高ミツル
ミツルと真城も、いつもならあの光の中にいる。
真城朔
今日だけはちょっと高いところから、人の暮らしと街並みを見下ろしている。
夜高ミツル
「普段あの中にいるときは別になんとも思わないのに」
夜高ミツル
「こうして上から見るときれいだよなあ」
夜高ミツル
真城とだったらどこへでも、と本気で思ってるけど
夜高ミツル
「俺は真城がいればそれでいいけど……」
夜高ミツル
「どうせなら二人で色々できる方が楽しいしな」
夜高ミツル
こうして身を寄せ合っていれば、あたたかい。
真城朔
のんびり話しているうちに、すっかり暗くなった。
真城朔
暗い街並みに、電灯のひとつひとつがイルミネーションに光ってる。
夜高ミツル
遠くまで地上を埋め尽くす光、光、光……
真城朔
車の光が、この距離からではゆっくりと流れていく。
夜高ミツル
眼下には、散々駆けずり回ってきた札幌の夜の街。
真城朔
数日後にはまた駆けずり回る予定があるけど……
夜高ミツル
多分お互いに、こういう時間が必要だったのだろうと思う。
夜高ミツル
それよりも前からずっと、真城は気の休まるときがなかっただろうし……
夜高ミツル
そういえばいつだったか、人間の暮らしなんて久しぶりとか言ってたな。
夜高ミツル
「あんまり外出ないでいいようにして……」
夜高ミツル
「いつか二人でちゃんと住むなら、札幌でもいいのかもな」
夜高ミツル
「沖縄は気温もだけど、日差しが厳しいらしいし」
夜高ミツル
「まあ、沖縄の次決めてないけど、そこも気にいるかもだからなー」
夜高ミツル
「ちょっと……だいぶ……気が早かったな」
夜高ミツル
「北海道にいたっていうか、札幌にいたって感じだったしな」
真城朔
よくわかんないまま北海道の地名をあげている。
夜高ミツル
涙を拭っていた手を背中に回して、そのまま抱き寄せる。
夜高ミツル
夜風に吹かれて、より一層に互いの熱が心地よい。
真城朔
夜闇に包まれて、より一層に互いの熱に安堵する。
夜高ミツル
「札幌にいる内も、出てからも、どこでも」
真城朔
夜景をいっぱい堪能してしまったので、当然もはやとっぷり夜。
真城朔
これで下山なんてできるはずがないので、帰りはミニケーブルカーとロープウェイ。
真城朔
ついでにレストランのテイクアウトで色々買った……。
真城朔
他にも買ったやつは家に帰ってから食べようとなり……
夜高ミツル
ちょうど観覧車のゴンドラのような感じ。
夜高ミツル
こっちはロープウェイと違って上から吊ってるわけではないけど……
真城朔
潜めた声で答えて、でもよかった、と頷いている。
真城朔
前後がガラス張りになってるから、夜景がよく見える。
夜高ミツル
ガラス越しに、街の灯りが少しずつ近づいてくるのが見える。
真城朔
流れていく木と遠くの夜景をぼんやり眺めつつ……
夜高ミツル
他の客に混じってケーブルカーを降りる。
夜高ミツル
「しっぽがあるとちょっとそれっぽい……」
夜高ミツル
「あーいや、登りに買っていくのか……」
真城朔
でもここにしか売ってないって書いてある……
夜高ミツル
こんな局所的なところで北海道の名を背負ってる……
真城朔
服なら多少はと思うが、ちょっと主張が強すぎる。
夜高ミツル
3種類ある中から、味噌味のものを1パック手に取る。
夜高ミツル
最後に、ガラス越しの夜闇をバックに佇むもーりすくんをちらっと見て……
夜高ミツル
昼に見たらもうちょっとかわいいのかな……
真城朔
むしろケーブルカーよりも夜景がよく見える。
夜高ミツル
「1時間かけて登った距離も、あっという間だな」
真城朔
ミツルの顔を窺って、同意が得られたことにちょっとほっとする。
夜高ミツル
「こうしてロープウェイの上から見るのと、山を登りながら見るのとじゃ全然違うもんな」
夜高ミツル
もしかしたら他にもっと歩きやすいルートがあるのかもしれないが……
夜高ミツル
「歩く人は、明るい内に帰ってるんじゃないかなあ」
真城朔
実際はいるらしいが、今の二人には想像がついていない。
真城朔
ぼんやり近づきつつある札幌の夜景を見下ろしている。
夜高ミツル
夜の森は青々というよりは黒々……という感じで。
夜高ミツル
この下を夜歩く人がいるなんて思えない……
真城朔
普段もっと危ないことをしている二人だが……
夜高ミツル
危ないことをしてる分、他の危険はできるだけ避けたい二人。
夜高ミツル
展望台でも言ったようなことを繰り返す。
夜高ミツル
頷きあっている内に、ロープウェイが駅舎に入っていく。
真城朔
駅舎の中、ロープウェイのアナウンスを聞く。
真城朔
ケーブルカーよりは長かったけど、自分で登るよりは当然。