2021/08/22 朝

真城朔
玄関の扉を押し開けて、気遣わしげに振り返る。
夜高ミツル
開けてもらった扉から玄関に入る。
真城朔
ミツルに場所を譲り……
真城朔
扉を閉めて、鍵をしめ、
真城朔
ミツルの足元に屈み込んで靴を脱がせる。
夜高ミツル
「ありがと……」
夜高ミツル
ミツルの上着の右袖は無残に裂け
夜高ミツル
その下は白い包帯がぐるぐると。
真城朔
服にも血が……
真城朔
真城といえば、ミツルの謝辞に首を振り。
真城朔
「これくらいは……」
真城朔
ぼそぼそ言いながらちゃちゃっと自分も靴を脱いで、
真城朔
予め用意してあったブルーシートへと武装を下ろす。
真城朔
ミツルのぶんも外していく……
夜高ミツル
外してもらっている。
真城朔
かちゃかちゃてきぱき。
真城朔
さくっと身軽になりました。
真城朔
心配そうにミツルを見やる。
真城朔
「シャワー」
真城朔
「入る?」
真城朔
「すぐ寝る?」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「シャワーする」
真城朔
「じゃあ」
真城朔
「手伝う……」
真城朔
頷き……
夜高ミツル
「頼む」
真城朔
武装のポーチから、曙光騎士団でもらってきたギプスカバーを取り出した。
真城朔
そのまま二人で脱衣所へ。
夜高ミツル
傷の処置も曙光騎士団でしてもらった。
真城朔
設備が充実してるし、プロがいるし……
真城朔
脱衣所で自分のパーカーを脱ぎ捨てると、ミツルの服をちゃくちゃく脱がしていく。
夜高ミツル
腕を上げたり下ろしたり、脱がしやすいように……
真城朔
してもらいつつ……
真城朔
こういうときはちょっとびっくりするほど手際が良い。
真城朔
さっさとミツルの服を脱がして、包帯を巻いた腕にギプスカバーをはめる。
夜高ミツル
はめてもらう。
真城朔
これで濡れない。
夜高ミツル
便利。
真城朔
この世界にはいいものがある。
真城朔
よくないものもいる。
真城朔
モンスターとか。
夜高ミツル
いるなあ……
真城朔
俺とか……
夜高ミツル
真城は違う。
真城朔
しょぼ……
真城朔
真城は最低限服を着たままで、浴室の扉を開いてミツルを招く。
夜高ミツル
促されるまま、ぺたぺたと浴室に入る。
真城朔
「ちゃっちゃと」
真城朔
「やっちゃう、ね」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「上がったら」
真城朔
「寝る」
真城朔
「だろうし……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
言いながらシャワーヘッドを取り、お湯を出して温度を調べる。
夜高ミツル
バスチェアに腰を下ろしている。
真城朔
これくらいかな……
真城朔
「かけ」
真城朔
「ます……」
真城朔
しょぼしょぼと宣言しつつ、一応ミツルの足元から。
真城朔
まあまあほどほどの温水。
夜高ミツル
温かい。
真城朔
ミツルの顔色を窺いつつ……
真城朔
たぶんだいじょうぶみたい……となったので、身体の方にもかけていく。
真城朔
じゃー……
夜高ミツル
身体にべったりとまとわりついていた血が、お湯で洗い流されていく。
真城朔
きよめきよめ……
真城朔
「頭」
真城朔
「かけまーす……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
かけていく。
真城朔
じゃぶじゃぶ
真城朔
恐る恐る手でお湯をなじませたりもしている。
夜高ミツル
下を向いて目を閉じて、頭を流されている。
真城朔
流し流し……
真城朔
ほどほどに濡れ……
真城朔
シャワーフックにシャワーをかけて、ボディタオルを取る。
真城朔
お湯を止めた。
真城朔
蛇口の方から洗面器にお湯を張ってボディタオルを沈め……
真城朔
ボディソープつけてあわあわにして……
真城朔
「い」
夜高ミツル
左手で顔にかかったお湯を拭いつつ、真城の様子を見ている。
真城朔
「いたかった、ら」
真城朔
「ごめんね」
真城朔
真城の服はお湯で濡れている。
真城朔
濡れたTシャツが肌に張り付いている。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「右手以外はそんな怪我ないと思うから、大丈夫……」
真城朔
「うん……」
真城朔
ボディタオルを握りしめ。
真城朔
「やりま」
真城朔
「す」
夜高ミツル
「お願いします……」
真城朔
また宣言して、ボディタオルをミツルの肌に添わせていく。
真城朔
肩口から……
真城朔
結構手早い。
真城朔
いつかと打って変わって。
真城朔
さっさ あわあわ……
真城朔
丹念ではなくしゃしゃーっとした手早さ。
夜高ミツル
ちゃっちゃとやると宣言した通りに。
真城朔
肩口から首元、腕、胸元、腰回り、脚と……
真城朔
とりあえず寝る前に清める程度なので
真城朔
デリケートなとこはあんまり気にしなくていいし……
真城朔
つま先もささっと洗って、洗面器のお湯にボディタオルを沈める。
夜高ミツル
全身泡泡になってる。
真城朔
シャワーを取って……
真城朔
お湯を出して、今度は肩からしゃしゃーっとかけていく。
真城朔
流し流し……
夜高ミツル
流され……
真城朔
流せた。
真城朔
「頭、は」
真城朔
「どうする?」
真城朔
一応被ってたし……
真城朔
した方がいいかもとは思いつつ……
夜高ミツル
「んー……」
夜高ミツル
ちょっと悩む。
真城朔
悩んでいるのを見ている……
夜高ミツル
とりあえずいいかな……とも思ったけど……
夜高ミツル
砂埃かぶったし、返り血も浴びたような気するし……
夜高ミツル
「じゃあ、お願い、します」
真城朔
「ん」
真城朔
ちょっと緊張した。
真城朔
「します……」
真城朔
頷いて、改めてお湯を出し……
真城朔
「目」
真城朔
「瞑ってて」
夜高ミツル
「ん……」
真城朔
目を瞑ったのを確認して、
真城朔
「お湯」
真城朔
「かけます……」
真城朔
声をかけ……
夜高ミツル
頷き……
真城朔
よし。
真城朔
かける。
真城朔
お湯を。
真城朔
じゃー……
真城朔
お湯をかけつつ、ミツルの癖の強い髪を指でわしわししていく……
真城朔
お湯が馴染むのにじかんがかかる……
夜高ミツル
癖毛だから……
真城朔
くせ毛に縁のない人生だった。
真城朔
時間をかけてお湯を含ませ、一度シャワーを止め……
真城朔
手桶にお湯を入れ……
真城朔
シャンプーを手に取る。
真城朔
ええと……
真城朔
…………
真城朔
多めにしとこう……
真城朔
多めにシャンプーを出して、手桶のお湯であわあわにして……
真城朔
ミツルの頭に泡をえいや。
夜高ミツル
えいやされた。
夜高ミツル
おとなしく頭を下げている。
真城朔
頑張って泡も馴染ませていきます。
真城朔
泡を馴染ませ……
真城朔
指先で髪を掻き分け……
真城朔
指の腹で地肌をこしこし……
真城朔
ちょっと強め。
夜高ミツル
頭皮に指先の感触。
真城朔
普段だったらもっとこわごわやるけど……
真城朔
「い」
真城朔
「痛かったら……」
夜高ミツル
「大丈夫」
真城朔
「ん……」
真城朔
頷いて洗髪を再開する。
真城朔
ちょっと力強めだけど乱暴ってわけではなく。
真城朔
ミツルのくせ毛に泡を含ませつつわしゃわしゃとやっていく。
真城朔
頭のてっぺんの方から側面とやり……
夜高ミツル
指の動きに合わせて、頭が小さく揺れている。
真城朔
右側面 後頭部 左側面
真城朔
耳の裏もこしこしと……
夜高ミツル
丁寧に洗ってもらっている……
真城朔
そんな調子でうなじまでやり終わり。
真城朔
シャワーヘッドを再び。
真城朔
「かけ」
真城朔
「ます」
真城朔
宣言した。
夜高ミツル
「ん」
真城朔
お湯を出す。
真城朔
お湯を出して、ミツルの頭をざぶざぶ……
夜高ミツル
なんか宣言するときずっと敬語だな……
真城朔
なんか宣言する時ずっと敬語になってる。
真城朔
ざぶざぶじゃぶじゃぶとミツルの頭を洗い流していく。
真城朔
あわがいっぱいでてくる……
真城朔
すごい……
夜高ミツル
流されている。
真城朔
自分で髪やるときはすぐ泡が流れる。
真城朔
自分で髪やる機会、今はもうあんまりだけど……
夜高ミツル
あんまりだなあ
真城朔
今はミツルの髪を洗っている。
真城朔
じゃぶじゃぶ……
夜高ミツル
洗ってもらっている。
真城朔
まあまあ時間をかけて、多分洗い流せました。
夜高ミツル
さっぱり……
真城朔
お湯を止める。
真城朔
「もう」
真城朔
「大丈夫」
真城朔
「目……」
夜高ミツル
「ん……」
真城朔
言いながらタオルを取っている。
真城朔
軽くお湯で絞って……
真城朔
ミツルの髪を拭き……
真城朔
タオルを絞り絞りミツルの身体を拭いていく。
真城朔
「立って」
真城朔
「もらえる?」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
立ち上がる。
真城朔
脚回りも拭いて……
真城朔
真城本人は服があわびしょ。
真城朔
なんだけど、まあいいか……って浴室の扉を開け……
真城朔
流石にまあよくないかも……になってる。
夜高ミツル
あわびしょになってるな……
真城朔
えいっ
真城朔
とりあえず服を脱いじゃった。
真城朔
下着姿。
真城朔
服を雑に絞って脱衣かごに放り込み……
真城朔
ミツルを伴って脱衣所に出ます。
夜高ミツル
ぺたぺた……
真城朔
バスタオルを取って、ミツルの身体を拭いている。
真城朔
無言でぱぱっと……
真城朔
あ……
真城朔
頭がすごいお湯落ちてくる……
真城朔
…………
夜高ミツル
ぽたぽたと……
真城朔
バスタオルをミツルの頭にかぶせた。
真城朔
ごしごし……
夜高ミツル
ちょっと頭を下げる。
真城朔
下げてもらってごしごしやってます。
真城朔
やや豪快め。
夜高ミツル
ごしごしわしわし……
真城朔
押しつけるみたいに水分を取って……
真城朔
改めてミツルの身体を拭いていく。
真城朔
こっちは自分と同じ感覚でいいのでちゃっちゃと。
真城朔
終わったら下着を出し……
真城朔
「あ」
真城朔
「カバー」
真城朔
「とろっか」
夜高ミツル
「あ……」
真城朔
もういいことに気付いた。
夜高ミツル
腕を上げる。
真城朔
手を添えて……
真城朔
なるべく傷に障らないように外していく。
真城朔
外せました。
真城朔
改めて下着を……
真城朔
「……じ」
真城朔
「自分ではく……?」
真城朔
さすがに……という気分になってきた。
夜高ミツル
「……そうしようかな……」
真城朔
「ん」
真城朔
渡し……
夜高ミツル
左手は使えるので……
夜高ミツル
受け取ります。
真城朔
「服」
真城朔
「取ってくる」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
ててて……
真城朔
脱衣所を出ていく。
夜高ミツル
真城を見送り、
夜高ミツル
ややぎこちないながらも下着を履く。
夜高ミツル
引っ張り引っ張り……
真城朔
ミツルがやっている間にバスローブを持って戻ってくる。
真城朔
「だい」
真城朔
「じょうぶ?」
夜高ミツル
「ん……」
夜高ミツル
「大丈夫」
真城朔
心配げ……
夜高ミツル
心配げに見られつつ、なんとかちゃんと履いた。
真城朔
履けたので、ミツルにバスローブをはおらせ……
夜高ミツル
はおらされ。
真城朔
前を閉めて きゅっと結んで
真城朔
よし。
真城朔
「あとは」
真城朔
「寝る?」
真城朔
真城本人は下着姿のまま訊いてくる。
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく……
夜高ミツル
真城が上がってくるまでは起きてるつもりだけど……
夜高ミツル
言ったら急かしてしまうので……
真城朔
「俺」
真城朔
「シャワー、するから」
真城朔
「先に……」
夜高ミツル
頷いて、
夜高ミツル
「シャワー、ありがと」
真城朔
「…………ん」
真城朔
小さく頷いた。
真城朔
しょぼくれ……
夜高ミツル
しょんぼりさせてしまった……
真城朔
下着姿でしょぼくれてる。
夜高ミツル
「……真城が助けてくれなかったら、これじゃ済まなかったよ」
真城朔
「…………」
真城朔
しょぼくれながら視線を落としているが……
夜高ミツル
「真城のおかげで、これくらいで済んだ」
夜高ミツル
「後遺症も残らないだろうって話だったし」
真城朔
「…………ん」
真城朔
「うん……」
真城朔
しょぼしょぼしつつ頷いている。
夜高ミツル
わしゃ、と頭を軽く撫でて……
真城朔
なでられ……
夜高ミツル
「だから、ありがとう」
真城朔
ちらりとミツルの顔を窺った。
真城朔
「……うん」
真城朔
もう一度頷き……
夜高ミツル
頷きを返して
夜高ミツル
ずっと下着姿でいさせるのもなんなので、脱衣所を出ていく。
真城朔
見送り……
真城朔
脱衣所の扉を閉める。
真城朔
すぐに浴室の扉が開いて、閉まる音が聞こえてくる。
真城朔
シャワーの音も……
夜高ミツル
ぽてぽてと寝室に向かう。
夜高ミツル
シャワーの音が遠くなる。
夜高ミツル
ベッドに腰を下ろす。
真城朔
しゃー……
夜高ミツル
あっ、装備の片付け……
夜高ミツル
いや、さすがに片手で刃物を扱うのはな……
夜高ミツル
もし失敗して怪我したら、泣くのは真城だし……
夜高ミツル
よくないな……
夜高ミツル
よくないので、おとなしくベッドに腰掛けている。
真城朔
そうこうしているうちにシャワーの音が止まり……
真城朔
浴室の扉の開く音と……
真城朔
それからそうかからずに、真城が顔を出す。
真城朔
さっきちゃっかりバスローブ二着用意してきていた。
夜高ミツル
そちらに目を向ける。
真城朔
バスローブ姿で髪は湿ったままぺったりしている。
真城朔
頭にタオルを被ってわしゃわしゃやりつつ……
真城朔
ベッドに来ます。
真城朔
「…………」
真城朔
「寝てて」
真城朔
「よかった」
真城朔
「のに……」
夜高ミツル
「まだそんなに眠くなかったから」
真城朔
「…………」
真城朔
微妙に納得できてない表情になりつつ、ミツルの隣に腰掛ける。
真城朔
「まだ」
真城朔
「寝ない?」
夜高ミツル
「寝る」
夜高ミツル
「真城は?」
真城朔
「…………」
真城朔
「とりあえず」
真城朔
「寝る……」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「寝よ」
真城朔
「ん……」
真城朔
こくこく……
夜高ミツル
もぞもぞとベッドの真ん中に移動していく。
真城朔
その左隣へと……
真城朔
身を添える。
夜高ミツル
いつもなら抱きしめて眠るところだけど……
夜高ミツル
今はできないので、仰向けに。
真城朔
寄り添う。
真城朔
濡れた髪のほかほかの気配。
夜高ミツル
それでも顔だけは隣に向けて
夜高ミツル
左手で真城の手を取る。
真城朔
手を取られ、
真城朔
おそるおそるに握り返す。
真城朔
ずっと同じ、浮かない表情。
夜高ミツル
指を絡める。
夜高ミツル
内心の反省や後悔はあれど、真城には柔らかい表情を向けている。
真城朔
「…………」
夜高ミツル
「おやすみ」
真城朔
「お」
真城朔
「や、すみ」
真城朔
詰まりづまりに、それでも答える。
夜高ミツル
もぞ、と少し身体を寄せて、
夜高ミツル
目を閉じる。
真城朔
ぬくもりを隣に。
真城朔
ぴたりと寄り添う、いつもより高い熱の気配を感じながら。
夜高ミツル
カーテンの隙間から差し込む陽の光をよそに、眠りにつく。
真城朔
外には安穏の鳥の声が響いていた。
noname
 
夜高ミツル
もぞ、と身じろぎのあと。
真城朔
ぬくもりはその隣にない。
夜高ミツル
ぱ、と目を覚ます。
真城朔
真城はミツルの隣にはおらず、
真城朔
代わりにベッドのすぐ近くで、洗濯物を畳んでいた。
真城朔
バスタオルたたみたたみ……
真城朔
横に置き……
夜高ミツル
それを見て、身体を起こそうとして、
夜高ミツル
ついいつものように両手をつきかけて……
夜高ミツル
「~~~っ」
真城朔
はた、と目を瞬き。
真城朔
畳み掛けていたタオルを放り出して、ミツルへと身を乗り出した。
真城朔
「ミツ」
真城朔
「大丈夫?」
夜高ミツル
「だいじょーぶ…………」
夜高ミツル
今度はちゃんと左腕を使って、身体を起こす。
真城朔
腕を回して支え起こし……
夜高ミツル
ふう……
真城朔
ミツルの顔色を窺っている。
夜高ミツル
「……おはよ」
真城朔
「おはよ」
真城朔
「う」
夜高ミツル
なんか間の抜けたタイミングになってしまった……
真城朔
「…………」
真城朔
ミツルの身体を支えつつ、視線を落としている。
夜高ミツル
「……大丈夫、だ」
真城朔
「……ん……」
真城朔
うつむきがちに頷いている。
真城朔
「お」
真城朔
「なか、とか」
真城朔
「減ったり……」
真城朔
「とか……」
夜高ミツル
「ん……」
夜高ミツル
結構空いている……。
真城朔
「頼む?」
夜高ミツル
「そうだな」
夜高ミツル
「なんか頼も」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく……
真城朔
枕元のスマホを取る。
夜高ミツル
横から一緒に見る。
夜高ミツル
いつもの出前サイト。
真城朔
スマホを覗き込まれても大丈夫な仲。
真城朔
もにもに調べ……
真城朔
「あ」
真城朔
「ここ……」
真城朔
「串……」
夜高ミツル
「串」
真城朔
炭火居酒屋とかいうお店。
夜高ミツル
「うまそう」
真城朔
「食べやすそう」
真城朔
「だし……」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「ここにする?」
真城朔
「しちゃおっか」
真城朔
「盛り合わせとか」
真城朔
「楽……」
真城朔
あんまり種類とかわかんないし……
夜高ミツル
「いいな、盛り合わせ」
真城朔
「頼もっか」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
頷く。
真城朔
「ん……」
真城朔
もにもにと……
真城朔
頼みました。
夜高ミツル
頼んでもらった。
真城朔
スマホを置き……
真城朔
「あ」
真城朔
「残り」
真城朔
「畳んじゃうね」
夜高ミツル
「あ」
夜高ミツル
洗濯物……
真城朔
腰を上げ……
真城朔
床に座り直して畳み始める。
真城朔
ゆうてそんなに量ない。
真城朔
服もダメになっちゃったやつあるし……
夜高ミツル
ミツルもベッドを出て……
夜高ミツル
隣に腰を下ろす。
真城朔
タオルを畳んで、大丈夫だった服を畳んで……
真城朔
もうすっかり慣れた手つき。
夜高ミツル
畳むくらいなら手伝えるかなって思ったけど……
夜高ミツル
真城がてきぱきやっているので手を出すところがなかった。
夜高ミツル
量もなかったし……。
真城朔
ちゃっちゃと終わらせました。
真城朔
ちなみに玄関の方を見るとブルーシートも片付けられてる。
真城朔
ミツが寝てる間にみんな済ませた……
真城朔
洗濯物も畳み終えたので、それらを定位置に戻し……
夜高ミツル
済ませてもらってた。
夜高ミツル
「ありがと」
夜高ミツル
「洗濯物」
夜高ミツル
「玄関も」
真城朔
「ん……」
真城朔
戻してきてミツルの隣に座る。
真城朔
こくこく頷いている。
真城朔
「……俺」
真城朔
「できること」
真城朔
「する……」
夜高ミツル
「……ありがとう」
真城朔
「…………」
真城朔
「うん……」
真城朔
こくこく……
夜高ミツル
再び礼を告げて、身体を寄せる。
真城朔
ぴっとり。
真城朔
寄り添われている。
真城朔
今は風呂上がりではなく、いつもどおりの体温。
真城朔
服もバスローブ姿じゃないし……
真城朔
真城は……
真城朔
「…………」
真城朔
「着替える?」
真城朔
そういえば……になった。
夜高ミツル
ミツルはバスローブ。
夜高ミツル
「あ」
夜高ミツル
「うん、頼む」
真城朔
「ん」
夜高ミツル
出前の人来るしな……
真城朔
さすがに……
真城朔
戸棚からいつもの室内着を出してくる。
真城朔
ミツルのバスローブを脱がし脱がし……
夜高ミツル
脱がされ……
真城朔
室内着の下を広げて差し出し……
真城朔
脚を差し込める感じで……
夜高ミツル
片足ずつ差し込む。
夜高ミツル
えいしょえいしょ……
真城朔
両脚が入ったら腰あたりまで引き上げ……
真城朔
前開きの室内着に袖を通させていく。
真城朔
普段やたらめったらおろつくくせにこういうときはてきぱきする。
夜高ミツル
てきぱきと着せてもらっていく。
真城朔
前のボタンもしめていき……
夜高ミツル
指先が動くのをなんとなしに眺めている。
真城朔
一個一個……
真城朔
できました。
夜高ミツル
お着替え完了。
真城朔
室内着のミツルが無事完成。
真城朔
脱いだバスローブは抱え上げ……
真城朔
立ち上がり……
真城朔
脱衣所の方へ。
夜高ミツル
全部やってもらってしまっている……
真城朔
戻ってきました。
真城朔
ミツルの隣に座る。
夜高ミツル
再び身体を寄せる。
真城朔
ぴと……
真城朔
おずおずと真城からも身を寄せる。
真城朔
少しだけ……
夜高ミツル
くっつきあう。
真城朔
夕日の射し込む部屋の中。
夜高ミツル
実際のところ、あれもこれも世話をしてもらうのは申し訳ない、というのは……
夜高ミツル
思わないはずはなく……。
夜高ミツル
ないのだけど。
夜高ミツル
あまり謝るとむしろ真城の負担になってしまうのが分かるので。
真城朔
実際既にしょぼついている。
夜高ミツル
これ以上落ち込ませたくない……
夜高ミツル
ので、あんまりそういう部分は表に出さないようにしている。
真城朔
正直真城も気を遣わせているのは理解しているのだが……
真城朔
理解しており……
真城朔
しょぼ
夜高ミツル
しょんぼりさせてしまってる……
真城朔
しょぼ……になっているとインターホンが鳴った。
真城朔
顔を上げる。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「出てくる」
夜高ミツル
腰を上げる。
真城朔
「あ」
真城朔
「…………」
真城朔
「うん……」
真城朔
迷ったが……
真城朔
頷いた。
夜高ミツル
支払いはクレカで済んでるので、手ぶらで玄関に向かう。
noname
まあまあよく来る配達員さんが届けてくれ……
夜高ミツル
受け取ってお礼を言って……
夜高ミツル
焼き鳥の包みは一旦玄関の棚に置いて、扉を閉める。
真城朔
扉が閉まった音が聞こえたので出てきた。
真城朔
ぱたぱた……
夜高ミツル
がちゃ、と鍵も閉める。
真城朔
「ありがと……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
焼き鳥の包みを取ります。
真城朔
「食べよっか」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「あったかい内に食べよう」
真城朔
「ん」
真城朔
というわけで、食卓の準備。
真城朔
ミツルのぶんの米もあっためて……
真城朔
箸ではなくスプーンを添える。
真城朔
あとお茶とかおしぼりとかも揃え……
夜高ミツル
食卓を整えてもらう。
真城朔
けっこう食卓整える役目は真城になりがちなので元から慣れてる。
真城朔
ミツルに料理的な部分をやってもらうため……
夜高ミツル
ミツルの方はやや落ち着かなさはありつつ……。
真城朔
ととのいました。
真城朔
並んで座り……
夜高ミツル
真城が手を合わせるのを待って……
真城朔
合わせてミツルを待つ。
真城朔
お見合い
夜高ミツル
待たれてた。
夜高ミツル
「いただきます」
真城朔
「いただきます」
夜高ミツル
ミツルの方は手を合わせられないので、言うだけで。
真城朔
真城は手を合わせつつ、唱和。
真城朔
並べた串焼きを見下ろす。
真城朔
12種類。
真城朔
らしい。
真城朔
全部種類が違うのはわかるんだけど……
夜高ミツル
色々ある。
真城朔
いろいろある……ということがわかる。
真城朔
「……これ」
真城朔
うちひとつを指差す。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
見る。
真城朔
「なんか、刺さってるやつ」
真城朔
「一切れ一切れ」
真城朔
「違う感じ……」
夜高ミツル
「あ」
夜高ミツル
「ほんとだ」
夜高ミツル
「なんだろこれ……」
夜高ミツル
なんか……色々……
真城朔
いろいろ……
真城朔
首をひねっている。
真城朔
ほかはまあだいたい同じやつが刺さってるけど……
真城朔
「……今日は」
真城朔
「ミツ」
真城朔
「食べたいやつ、食べて」
真城朔
いつもそうしてもらいたいと思ってるけど……
夜高ミツル
お互いそう思ってる。
真城朔
「怪我、なおすの」
真城朔
「お肉」
真城朔
「いっぱい」
真城朔
「大事……」
夜高ミツル
「そうだな……」
夜高ミツル
頷く。
夜高ミツル
結構血を流したのも確か。
真城朔
こくこく……
真城朔
血肉。
真城朔
ちょうどレバー的なのもある。
夜高ミツル
「とりあえずレバー……?」
夜高ミツル
左手をのばす。
真城朔
「レバー」
真城朔
「いいかも」
真城朔
頷いている。
夜高ミツル
血肉をつくるといえばレバーというイメージ。
真城朔
鉄分がいっぱい。
真城朔
ミツルを見守ってます。
夜高ミツル
見守られつつ、串にかぶりつく。
真城朔
じー
夜高ミツル
もくもく……
真城朔
まじまじ……
夜高ミツル
ごくり
真城朔
じー
夜高ミツル
「うまい」
真城朔
ほ……
真城朔
少し微笑んだ。
夜高ミツル
「レバー、給食で出てくるとまずいんだよな……」
真城朔
「ちゃんと」
真城朔
「処理されてない」
真城朔
「とか……?」
夜高ミツル
「かも……」
夜高ミツル
「いっぱい作るもんな、給食……」
真城朔
「お店とは」
真城朔
「わけが……」
夜高ミツル
「丁寧に下処理とかできないよなー」
真城朔
「栄養、ある」
真城朔
「から」
真城朔
「そこはよくても……」
夜高ミツル
「うん……」
夜高ミツル
「これはちゃんとうまい」
真城朔
「さすが」
真城朔
「お店」
真城朔
頷いている。
夜高ミツル
2かけ目をかじる。
真城朔
見ている……
夜高ミツル
もくもく……
真城朔
まじまじ……
夜高ミツル
飲み込んで……
真城朔
ミツがレバーたべてる……
夜高ミツル
食べてます。
真城朔
ちょっと安心。
真城朔
安心?
真城朔
まあ安心はある……
夜高ミツル
内臓をやられたわけではないので、食欲は普通にある。
真城朔
よかった……
夜高ミツル
「……真城、食べないのか?」
真城朔
「ん」
真城朔
「んー……」
真城朔
曖昧な声を出している。
夜高ミツル
曖昧だな……
真城朔
曖昧な声を出して笑っている……
夜高ミツル
「……これ」
夜高ミツル
半分残っているレバー串を差し出す。
夜高ミツル
「一口いる?」
真城朔
「ん」
真城朔
「んー……」
真城朔
また曖昧な声をして……
真城朔
「レバーは」
真城朔
「ミツ、食べたほうが」
真城朔
「いいんじゃないかな」
夜高ミツル
「ん……」
夜高ミツル
そうかも……となったので
夜高ミツル
おとなしく引き下がる。
夜高ミツル
すごすご……
真城朔
ほ……
真城朔
「……じゃ、あ」
真城朔
「これ……」
真城朔
つくねを指差す。
真城朔
「これ、食べてみる」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
こくこく頷く。
真城朔
「みよう」
真城朔
「かな」
真城朔
頷き返し……
真城朔
そろそろと取ります。つくねを。
夜高ミツル
見てる。
真城朔
串にまとわりついたつくね……
夜高ミツル
手元にレバー串を持ったまま……
真城朔
「ミツも」
真城朔
「食べて、ね」
夜高ミツル
「……ん」
夜高ミツル
釘を差されてしまった。
夜高ミツル
レバーの残りを食べます。
真城朔
食べているのを見つつ……
真城朔
つくね串の先端を齧ります。
真城朔
かじ……
夜高ミツル
もくもく……
夜高ミツル
もぐもぐしながら見てる。
真城朔
お互いを見ながら串を齧っている。
夜高ミツル
隣り合わせで……
真城朔
串を齧っています。
真城朔
飲み込む。つくねは咀嚼しやすい。
真城朔
「……ん」
真城朔
頷いている。
真城朔
「おいしい」
真城朔
「よ」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
少し遅れて飲み込み……
真城朔
「なんか……」
真城朔
「つくねのイメージと、違う」
真城朔
「っていうか……」
真城朔
「…………」
夜高ミツル
「ちがう」
真城朔
「ジューシー……?」
夜高ミツル
おうむがえし。
夜高ミツル
「へー」
真城朔
「ミツも」
真城朔
「後で、食べよ」
真城朔
「残すし……」
真城朔
言いつつ、一口。
夜高ミツル
「ん」
真城朔
一口が小さいのでそんなに減ってはいない。
真城朔
2/3くらいは残ってる。
夜高ミツル
「ありがと」
真城朔
「ん……」
真城朔
もぐむぐしながら頷く。
夜高ミツル
言って、最後のレバーを口に。
真城朔
そんな感じで串を食べていく。
真城朔
レバー以外はなんか全体的に……
真城朔
真城が一切れくらい食べて……
夜高ミツル
ミツルが残りをもらった。
真城朔
なんか食べ残し食べさせてるみたいで申し訳なさはある……
夜高ミツル
ミツルが先に食べて真城に渡すパターンもあったし……
真城朔
串を食べました。
真城朔
手を合わせるのは真城だけ。
夜高ミツル
「ごちそうさまでした」
真城朔
「ごちそうさまでした」
真城朔
唱和。
真城朔
改めて手を拭き……
真城朔
「片付け」
真城朔
「俺、する」
真城朔
お盆に色々とまとめていきます。
真城朔
乗せ乗せ……
夜高ミツル
「ありがとう」
真城朔
「ん……」
真城朔
頷き
真城朔
キッチンの方へ。
真城朔
じゃぶじゃぶ洗ってます。皿を。
真城朔
まあ今回もそんなに量ない。
夜高ミツル
やや落ち着かなさはありつつも、真城がしてくれることに甘える。
真城朔
串を乗せた平皿と取皿と箸とコップとミツルのお茶碗と……
真城朔
まあそんくらいなので、そんなにかかりません。
夜高ミツル
いつも一緒にやっていることを真城だけに任せるのは落ち着かない……。
真城朔
拭くのは今日はなしで……
真城朔
乾いたら戻そ……
真城朔
戻ってくる。
夜高ミツル
ミツルはソファに移動している。
真城朔
移動してる……
真城朔
おず……
真城朔
おずおずと隣に腰掛けました。
夜高ミツル
身を寄せる。
真城朔
寄せられる。
真城朔
おそるおそるくっつく。
夜高ミツル
左手を真城の手に重ねる。
真城朔
おろ……
真城朔
手を重ねられて、戸惑ったようにミツルの顔を見る。
夜高ミツル
視線が合う。
真城朔
「…………」
真城朔
すぐ俯いてしまった。
夜高ミツル
俯いてしまった真城に、更に身体を寄せる。
真城朔
寄せられる……
真城朔
逃げはしない。
夜高ミツル
「……真城のおかげで、助かってる」
夜高ミツル
「ありがとう」
真城朔
「…………」
真城朔
「うん……」
真城朔
控えめながら頷く。
真城朔
「……もっと」
真城朔
「いっぱい」
真城朔
「いろいろ」
真城朔
「する……」
真城朔
「ご飯、作る」
真城朔
「し」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「そもそも、家事……」
真城朔
「ミツのおかげ」
真城朔
「で」
真城朔
「できるように、なってる」
真城朔
「から」
夜高ミツル
「ずっと一緒にしてきたもんな」
夜高ミツル
「頼りにしてる」
夜高ミツル
言って、頭を撫でる。
真城朔
撫でられる……
真城朔
「……ちゃんと」
真城朔
「する、よ」
真城朔
「だから」
真城朔
「大丈夫」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「ありがとう」
真城朔
「…………」
真城朔
「あした」
真城朔
「カレー、とか」
真城朔
「作ろっか」
夜高ミツル
「いいなー」
夜高ミツル
「食いたい」
真城朔
「……ん」
真城朔
ぎこちなく微笑む。
真城朔
「俺、一人で」
真城朔
「たぶん」
真城朔
「できる……」
真城朔
「から」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「真城ならできるよ」
夜高ミツル
撫でている。
真城朔
撫でられている。
夜高ミツル
「楽しみにしてる」
真城朔
「……うん」
真城朔
「がんばる……」