2021/08/23 夕方
夜高ミツル
念の為こちらもエプロンをつけて、やや引いた位置に立っている。
真城朔
狩り明けなので食材をいっぱい買い込みました。
真城朔
というわけで、昼に買ったばかりの豚肉、にんじん、じゃがいも、たまねぎ。
真城朔
豚肉はカレー用のやつとかじゃなくて、普通の薄切り肉。
夜高ミツル
二人の間ではそれがスタンダードになっている。
真城朔
カレールーを取り上げて、裏のレシピを確認している。
真城朔
流石に覚えてるつもりだけどちょっと自信ない……
真城朔
ほどほどに洗ったら、ピーラーを出して皮を剥く。
夜高ミツル
あんまりミツルから口を出すのはよくないので……
夜高ミツル
困っている様子がなければ見守りに徹するぞ、と思っている。
真城朔
なんだかんだやってきているし、そんなに難しい行程でもないので、
夜高ミツル
芽を取り除きはじめたのを見てなるほどになった。
真城朔
普段こういう難しい行程はミツルがやりがち。
真城朔
いっぱい無駄が出た感じがして、ちょっとしょんぼりする。
真城朔
結果、かなり芽の部分が凹ついたじゃがいもがまな板の上にごろごろと並んだ。
夜高ミツル
一緒に料理をし始めた頃を思うと、真城もかなり料理に慣れてきたと思う。
真城朔
だいぶ包丁さばきがまあまあいい感じになってきた。
真城朔
まあまあいい感じになってきた包丁さばきでにんじんを乱切りしてます。
夜高ミツル
皮を剥くにしても切るにしても、危なっかしいところはなくなった。
真城朔
にんじんはアク抜きいらんのでザルにあげる。
真城朔
今も薄切りとかみじん切りとかはあんまり自信ないけど……
真城朔
カレーに入れる玉ねぎは細めのくし切りでいいので、気楽。
真城朔
豚の薄切り肉を広げ、食べやすい感じに切っていく。
夜高ミツル
そんなに神経質にならなくても大丈夫なやつ。
真城朔
切った肉は一旦トレーに戻して、とりあえず包丁とまな板を洗い……
夜高ミツル
高1の時、初めて真城がミツルの家に遊びに来て
真城朔
なので、そんなに緊張する必要はないはずなのだが……
夜高ミツル
やっぱり後ろで見てるのが緊張するんだろうか……
夜高ミツル
最初に見てても大丈夫か確認はしたけど……
夜高ミツル
ということなので、遠慮なくこうして見守っている。
真城朔
ちゃんと大さじを使って指示された量の油を入れます。
真城朔
菜箸で油の様子を見ているけどいまいちよくわからない……
真城朔
わかんないけど熱くなってきた気がするし……
夜高ミツル
最終的に熱くなるから大丈夫だろ……というところはある。
真城朔
肉の炒められるいい感じの匂いと音がします。
真城朔
ほどほどに加熱できたらたまねぎの入ったざるを持ってきて……
夜高ミツル
火を扱ってる様子も、前はもっとこわごわ……という感じだった。
真城朔
たまねぎを入れていたざるを取って、流し台の方へ。
真城朔
アク抜きしていたじゃがいもをざるにあげます。
真城朔
じゅうじゅうになった肉と、だいぶくったりしてるたまねぎが。
真城朔
たまねぎと違ってそんなに気を遣わなくていいという認識……
夜高ミツル
じゅわじゅわ……と具材の熱される音がしている。
真城朔
しばらくそんな感じでやっていたが、ふと手を止めて……
夜高ミツル
計量カップやらスプーンやらは、真城と一緒に料理をするようになってから改めて揃えた。
夜高ミツル
ミツルは3年間の自炊経験でなんとなく目分量で分かるけど、真城はそうではなく……
夜高ミツル
あとは、計量をきちんとしないといけないような料理を以前は作らなかった、というのもある。
夜高ミツル
野菜と肉を、切って炒めて醤油かけて終わり、みたいなのばっかり作ってた。
夜高ミツル
真城と一緒にここに暮らすようになってから、作ったことのないものに挑戦する機会も増えていたので……
夜高ミツル
そういう意味でも、買うにはちょうどよいタイミングだった。
真城朔
料理するときに何かをはかるみたいな仕事を任せられがち。
真城朔
今は淡々とカレーになる前のカレーを煮込み……
真城朔
ぐつぐつの真ん中にあくが浮いているので、ほどほどに……
真城朔
こういう加減がわからないやつが一番むずかしい。
真城朔
まだぐつぐつに煮えた中央にあく的なものが浮いてはいるが……
夜高ミツル
このまま飲むものならともかく、ここからルーを入れるわけだし……
夜高ミツル
そもそも俺が最初に作ったときはアク抜きしなかったような気がする……
夜高ミツル
一人暮らしの男子の雑な料理をしていた。
真城朔
冷蔵庫からレタスを出して、きゅうりとトマトを出して、
真城朔
たまねぎとにんじんに使っていたざるを軽く洗い……
真城朔
ちぎって洗ったレタスを片方に入れて、とんとんと水を切る。
夜高ミツル
サラダはミツルしか食べないから、作ってもらってる感がより強い……
真城朔
一個一個ラップを張って冷蔵庫に入れていく。
真城朔
入れたらまたざるを洗いのまな板と包丁を洗いの……
夜高ミツル
こうして後ろで見てると、一人で料理ってやることが多いな……
夜高ミツル
洗い物くらいできたらよかったんだけど……
真城朔
タイマーを確認すると、まだ5分くらい残ってる。
夜高ミツル
まあ大丈夫だろうとはいえ、火元からは目を離さないほうがいいのはそう。
真城朔
鍋蓋に水滴がいっぱいついててあんまり中が見えない。
真城朔
見てもらっている間に食卓を拭いて戻ってきた。
真城朔
これはもとからだいたい真城がやるやつなので、手際が良い。
真城朔
おしぼりを2つと、スプーンを2つと、箸を1膳。
真城朔
フォークを1本取って、改めてお盆に乗せます。
夜高ミツル
おしぼりやスプーンを1つ1つ並べていく。
夜高ミツル
終わったらお盆の上に台ふきんを乗せてキッチンに戻る。
真城朔
炊飯器の中のお米をひっくり返し直してます。
夜高ミツル
「これ持ってきちゃったけど、まだ使うやつだった?」
夜高ミツル
お盆は置いて、台ふきんを戻しに行った。
真城朔
カレーになる前のいろんな可能性を秘めた何かが見事にカレーに染まっていく。
真城朔
こういう無心にかき混ぜるやつを無心に延々やりがち。
真城朔
しかし永遠にやるわけにもいかないので、ほどほどに止めて……
夜高ミツル
あとはもう邪魔になる心配もないので、真城の傍によって鍋を覗き込む。
夜高ミツル
真城の手にある小皿を取って、流しに持っていく。
真城朔
そうこうしてるうちにまたタイマーが鳴った。
真城朔
いざとなったらおかわりしてもらう感じで……
真城朔
ミツルが並べてくれたコップへと注ぎ注ぎ……
真城朔
スプーンを手に取っただけで、ミツルを見ている。
夜高ミツル
いつもより気持ち長い気がする咀嚼のあと……
真城朔
なんなら朝昼ごはんも似たような感じだった。
夜高ミツル
お互いにさっき味見をしたはずなのだが……
夜高ミツル
「真城が大丈夫と思ったなら、もう大丈夫だと思うな」
夜高ミツル
フォークに持ち替えて、サラダもいただく。
夜高ミツル
「作業の順番で困ったりもなさそうだったし」
夜高ミツル
多分自分が見てなくても大丈夫だったろうなーと思う。
夜高ミツル
「もう教えることそんなにないのかもなー」
夜高ミツル
「だから、あとは一緒に調べて試す感じになってくのかなって」
夜高ミツル
「俺もほら、プロとかじゃ全然ないからな」
夜高ミツル
「前やってた自炊はめちゃめちゃ適当だったし……」
夜高ミツル
スプーンに持ち替えなおして、カレーを一口。
夜高ミツル
初めてミツルが真城に振る舞ったのと同じ料理。
真城朔
同じカレールーを使って、だいたい同じように作った。
夜高ミツル
場所どころではなく、あの頃とは何もかも違いすぎて。
真城朔
二人の関係も暮らしも、何もかもが変わってしまった。
夜高ミツル
真城とこうなるなんて、あの頃には予想してなかったし、できるはずもなかった。
真城朔
ミツルとこうなるなんて、あの頃には考えもしなかったし、考えていいはずがなかった。
夜高ミツル
ミツルと真城が、二人でそれを食べているということ。
夜高ミツル
きっとこの先も何度も何度もこのカレーを作って