2021/08/29 昼過ぎ
真城朔
カーテンを締め切って電気をつけた部屋の中、
真城朔
二人でよく作っては冷凍してきたミニハンバーグ。
真城朔
今回も一人だけど多めに作って、ちゃんと冷凍もした。
夜高ミツル
多めの肉をむにむにと捏ねるのを見ていた。
真城朔
ミツルが怪我をしてからこちら、そのように真城が一人で料理をしてきたわけだが……
真城朔
(レシピを見てもらうなどの手伝いはあったにせよ……)
夜高ミツル
明日、包帯を取って抜糸してもらえることになっている。
夜高ミツル
今更だったので、思い当たるまでちょっとの間。
夜高ミツル
「薬飲んでたから、結構大丈夫だったよ」
夜高ミツル
「今は痛くないようになってるんだって」
夜高ミツル
怪我をせず、真城に心配をかけずにできたら、どれほどよいことか。
真城朔
できることなら、ミツルを狩りに連れていきたくはないのだけれど……
真城朔
それを言っても聞いてもらえないことを知っているので、黙っている。
夜高ミツル
最初は随分と反対されたのを押し切って、一緒に狩りに行っている。
真城朔
なっているけど、口に出すとやっぱりミツルを困らせるから……
夜高ミツル
なんだかんだでお互い黙ってしまっている。
真城朔
穏やかな昼下がりに黙りこくって並んでいる。
夜高ミツル
左手でゆるゆると真城の真っ直ぐな黒髪を梳いている。
夜高ミツル
「…………怪我しないよう、もっと、気をつける」
夜高ミツル
沈黙を破って出たのは、結局そんな当たり前の言葉。
真城朔
返す言葉も似たようなもので、幾度となく繰り返されてきたような。
夜高ミツル
「真城には、いつも助けてもらってるよ」
夜高ミツル
しばらく言葉の続きを待っていたが、俯かれてしまった。
夜高ミツル
こうして心を痛めさせて、時には泣かせて、
夜高ミツル
それでも、真城を一人で狩りに行かせる方がずっと嫌だ。
真城朔
ミツルの胸に頬を預けて、今もなお俯いている。
夜高ミツル
逃げずに、ずっとミツルの隣にいてくれている。
夜高ミツル
それを求めて、こうして抱きしめて寄り添い合うようになったのも、
夜高ミツル
何度も離れかけて、すり抜けそうになって、
夜高ミツル
ずっとこうしているためなら、なんだってする。
真城朔
真城からは、あまり前向きなことは言えない。
夜高ミツル
望めない時は、ミツルが真城の分まで望む。
夜高ミツル
左手で抱き寄せている背中に、そっと右の手も回す。
夜高ミツル
力こそあまり込められないが、久方ぶりに両腕で抱きしめる。
夜高ミツル
「ちょっと動かすくらいは、ほら、歩いてても自然に動いたりとかあるし」
夜高ミツル
「真城と一緒なら元気でいれるよ、俺は」