2021/09/01 昼過ぎ
真城朔
昼食を終え、後片付けも済ませ、リビングのソファへと戻ってくる。
真城朔
ミツルの抜糸が済んだとは言え、一応はまだ安静にしたいということで、
夜高ミツル
右腕に貼ってあるガーゼを剥がしていく。
夜高ミツル
ガーゼの下から、ゆっくりと縫合痕があらわになっていく。
真城朔
気持ちしょぼ……になりながらも手は止めず……
真城朔
そのさまにずいぶんとしょぼしょぼになりつつ……
夜高ミツル
落ち込ませるくらいなら自分でしたっていいんだけど、それはそれで落ち込ませるだろうから……
真城朔
ガーゼが貼られていた部分との境界をこしこしと……
夜高ミツル
多少しみはするけども……当たって痛いとかではないので……
夜高ミツル
白い指が傷をなぞって動くのを見ている。
夜高ミツル
また真城を悲しませてしまうな、と思う。
真城朔
その真城はミツルの傷の手当てに集中している。
真城朔
よし……になったので、貼るガーゼを出しました。
真城朔
ミツルの傷をうまく覆う角度を確認している。
夜高ミツル
声かけたら集中が切れそうで黙っている。
夜高ミツル
終わったので、うーんになっている真城に声をかける。
真城朔
医療キットを片付けながら、微妙に釈然としない表情。
真城朔
うーんになりつつ、医療キットをしまいました。
真城朔
ほどほどに使っていくのがいいとはいうけど……
夜高ミツル
「そろそろ出る準備もしてかないとな……」
夜高ミツル
その日に退去する予定で、既に管理会社に連絡してある。
真城朔
真城がスマホの画面に出したのはゴミ収集日のカレンダー。
真城朔
二人が札幌を出ると聞いた曙光騎士団の人が、置いていいって言ってくれてた。
夜高ミツル
「フライパンとか水曜に出さないとだから」
夜高ミツル
問題なく使える機械を捨てるというのも、なんだか……
夜高ミツル
ミツルもしょんぼり……とまではいかないものの、
真城朔
スマホの画面を二人で覗きながら、なんとなくくっついてる。
夜高ミツル
なんだかこればっかり言ってる気がする。
夜高ミツル
元々荷物を増やさないようにしてきたから、そこまで片付けるものもなくはあるけど……
夜高ミツル
普通の引っ越しと比べたら、だいぶやることは少ない。
夜高ミツル
去年の11月に入居してから、おおよそ10ヶ月。
夜高ミツル
この部屋にも、暮らしの中で使ってきたものたちにも、すっかり愛着が湧いてしまった。
真城朔
どこかに腰を落ち着けてゆっくり過ごすなんて久しぶりで……
夜高ミツル
ミツルの方も、真城に身体を寄せている。
夜高ミツル
二人して、ここを離れがたくて、寂しくて
夜高ミツル
その気持ちを分かち合うように、ぴったりと寄り添う。
真城朔
埋められない寂しさを、お互いの熱で補っている。
夜高ミツル
だから、ミツルからも「あとは」の先が思いつかない。
真城朔
ただ、これから先も二人でのんびり過ごせますように。