2021/09/05 昼過ぎ

真城朔
大掃除をする。
真城朔
家を出るまであと5日。
夜高ミツル
ゴミの日とかも考えて、今日掃除をしようとなった。
真城朔
日曜日だし……
真城朔
休日はあまり外に出たくないので、日曜日は家のことをやる日。
真城朔
最後の日曜日はひときわ気合を入れてそうしようとなった。
真城朔
窓を開けつつ……
真城朔
「俺」
真城朔
「磨いたりとか拭いたり、とか」
真城朔
「そういうのするから……」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「頼む」
真城朔
こくこく……
真城朔
「水回りとか」
真城朔
「する……」
夜高ミツル
「俺は捨てるやつまとめとく」
真城朔
「ん」
真城朔
「お願い」
真城朔
言いつつ腕まくり。
夜高ミツル
まくりまくり……
真城朔
というわけで、真城はとりあえず風呂場の方へと消えました。
真城朔
水音が響いてくる……
夜高ミツル
ゴミ袋を取って広げる。
夜高ミツル
右手にはまだガーゼが貼ってあるが、もう日常生活に大して支障はない。
真城朔
支障はないけど真城が心配するので、こういう仕事を率先してやりたがるようになった。
真城朔
やっています。
夜高ミツル
料理もまだ真城がメインをやってくれてる。
真城朔
今日はピザをこねました。
真城朔
相変わらずちょっと硬いピザ……
夜高ミツル
おいしかった。
夜高ミツル
ゴミ袋を置いて、
夜高ミツル
それから、思い出したように隅においてあったダンボールを取ってくる。
夜高ミツル
スーパーでもらってきた。
夜高ミツル
畳んであるのを開いて……
夜高ミツル
これも一旦置いておく。
真城朔
低温調理器を捨てるのが忍びない……みたいな話を彩花にしたら、
真城朔
じゃあこっちに送ってよという返事が来て、お言葉に甘えることになった。
真城朔
他にも諸々なんか……使いきれなかった調味料とか消耗品的なものとか……
真城朔
そういうのも全然使うので送ってくれという話で。
夜高ミツル
助かる……
夜高ミツル
ということで、それらを送るためのダンボール。
夜高ミツル
整理しつつ、送れるものがあったら入れていこう……ということで
夜高ミツル
ゴミ袋を持って、まずはクローゼットの方へ。
真城朔
真城は風呂場で水垢を落としてます。
真城朔
専用の洗剤を使っている……
真城朔
リビングにはシャワーの水音が響いたり止まったり。
夜高ミツル
ここを出たらまたバイク旅なので、荷物はあまり多くできない。
夜高ミツル
とりあえず一旦クローゼットの中身を全部出して……
真城朔
服は最小限にしてきたつもりだけど、なんだかんだで量が積み重なっている。
夜高ミツル
それなりに……
夜高ミツル
それなりの量を広げた中から、持っていく分だけを選り分けることにする。
真城朔
コートもまだ残ってる。
真城朔
バスローブもある……
夜高ミツル
冬服がまるっと残っている……
夜高ミツル
これは全部捨てるしかないな……
夜高ミツル
冬服はなんとなくまとめて置いておき……
夜高ミツル
夏服を見る。
夜高ミツル
半袖を何枚か持っていけばいいかな……
夜高ミツル
寒くなったら上着を着るなり買い足すなりしよう。
真城朔
真城は風呂場でカビハイターをやっている。
真城朔
スプレーをしゅっしゅと……
真城朔
換気をしつつ、ゴムパッキンとかの黒い汚れをやっています。
真城朔
なので今は水音が止んでいる。
夜高ミツル
半袖のシャツを数着ずつと……Gパンと……
夜高ミツル
選り分けている。
夜高ミツル
あと下着と靴下……
夜高ミツル
こっちは服より多めに……
真城朔
旅の荷物は最低限とはいえ、下着や靴下は清潔にしておきたい。
真城朔
特に靴下はかなり段違いで……
夜高ミツル
場所もそんなに取らないし。
真城朔
札幌に来るまではずっと旅だったので、一応旅荷物のノウハウは残っている。
夜高ミツル
だから持っていく服を選ぶのはすぐに終わった。
真城朔
ということはつまり、それ以外はすべて捨てる服がこんもりと。
夜高ミツル
選んだ服は一旦まとめて積んで避けておき……
夜高ミツル
捨てる服に向かい合う。
夜高ミツル
とりあえず、確実に着ない冬服からゴミ袋へ。
真城朔
色違いのダッフルコートはなかなかの存在感がある。
真城朔
重いし……
真城朔
これを着て二人で公園で雪遊びとかした。
夜高ミツル
北海道の冬に耐えうるコートなので、それなりにしっかりしている。
真城朔
ずっしり
夜高ミツル
公園で遊んだなとか、そのあと風邪引いたな……とか
夜高ミツル
一緒に過ごした冬の記憶が蘇る。
真城朔
覚悟はしていたが、札幌の冬は大変寒く……
真城朔
あまり外に出ず、見事に冬ごもりをしてしまった。
夜高ミツル
それでも、それなりにこのコートの出番もあった。
夜高ミツル
1シーズンしか着ていないコートは、新品並とはいかないまでもまだまだきれい。
真城朔
狩りのときには別の防寒具を着ていたし……
真城朔
全然来年の冬も着られそうなコート。
夜高ミツル
こっちは破ったり汚したりするようなことは全然してなくて……
夜高ミツル
もったいねえ~……
真城朔
とはいえ流石に男物のコートは送れない。
夜高ミツル
流石にな……
夜高ミツル
持っていくわけにもいかない。
夜高ミツル
もったいないけど、捨てるしかない。
夜高ミツル
がさ、とゴミ袋に押し込む。
真城朔
冬服は重く体積もあり、ゴミ袋の底にまあまあの存在感を伴って詰め込まれていく。
夜高ミツル
ふう……
夜高ミツル
捨てていくぞ……
真城朔
その頃風呂場では真城がハイターの泡を流してます。
真城朔
しゃー……
真城朔
おお……
真城朔
白くなってる。
夜高ミツル
冬服をゴミ袋に入れていってる。
夜高ミツル
あんまり色々考えないように……
夜高ミツル
無心……
真城朔
考えると寂しくなりがち。
真城朔
まさにいろいろ考えながら話をして二人でしょんぼりになるのを最近繰り返している。
夜高ミツル
しょぼ……
夜高ミツル
この部屋着あったかくて肌触りがいいからよく着てたなとか……
夜高ミツル
うっかりお茶をこぼしてちょっとシミつくっちゃったんだよなとか……
夜高ミツル
あんまりそういうの考えずに……
真城朔
考えずに……と思うと考えそうにはなるが……
夜高ミツル
思い出してしまう……
夜高ミツル
でも捨てる……
真城朔
捨てなければならない。
真城朔
冬服はそれでもまだましな方で、捨てる他ないと一目でわかるため……
夜高ミツル
ゴミ袋が冬服でいっぱいになったので、次の袋を取ってくる。
夜高ミツル
ばさばさと広げながら、残りの服を見る。
真城朔
札幌の真っ黄色いゴミ袋。
夜高ミツル
めちゃくちゃ黄色い。
夜高ミツル
残りの服……
夜高ミツル
夏服は、出発までの間に着るから取っておいて……
夜高ミツル
冷え込むときもあるかもしれないし、長袖も一応……
夜高ミツル
あと下着と部屋着と……
夜高ミツル
バスローブは……
夜高ミツル
持っていかないのは確実として……
夜高ミツル
残りの日で着……ない……着る……?
夜高ミツル
うーん……
真城朔
一応燃やせるゴミは9日にも出せる。
夜高ミツル
一応残しとくか……?
夜高ミツル
出るまで使う服の上に積まれた。
夜高ミツル
一応……
夜高ミツル
そんな感じで分けて分けて……
真城朔
いると、
真城朔
ちょっと湿った感じの真城がリビングへと戻ってくる。
真城朔
服も髪も濡れてるしバスタオルを被っている……
夜高ミツル
真城の方を向く。
夜高ミツル
「お疲れ」
真城朔
「ん……」
真城朔
こくこく
真城朔
「ミツも」
真城朔
「お疲れ」
真城朔
言って、ゴミ袋に詰め込まれた服を見る。
真城朔
「…………」
夜高ミツル
いっぱいで口が縛ってあるのが1袋、今まさに詰めているのが1袋……
夜高ミツル
「そんな買ってないつもりだったけど」
夜高ミツル
「結構あったな、服」
真城朔
「……うん」
真城朔
こく……
真城朔
「……俺」
真城朔
「えっと」
真城朔
「トイレ……」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「頼む」
真城朔
このままだとしょぼしょぼになっていく……
真城朔
そういう自覚があったのか、話を切り上げるように言い出した。
真城朔
頷き返し、髪をふきふき……
真城朔
リビングを出ていく。
真城朔
ぺたぺた……
夜高ミツル
しょんぼりになりつつあった真城を見送って
夜高ミツル
再び手を動かし始める。
夜高ミツル
持っていかないし、出るまでに着ることもなさそうな残りを袋に詰めて……
夜高ミツル
最後の一枚。
夜高ミツル
入れて、小さくため息をつく。
真城朔
膨らんだ黄色いゴミ袋が並んでいる。
夜高ミツル
まだ使えるものを捨てるのは、それなりに精神力を消費する……
真城朔
中身は二人で着てきた服で……
真城朔
生活の思い出。
夜高ミツル
愛着が……
真城朔
十ヶ月の積み重ね。
夜高ミツル
車だったら全部持っていけたのかな……
夜高ミツル
でもさすがに車を援助してもらうのはな……
夜高ミツル
そもそも免許ないし……
夜高ミツル
不毛なことを考えてしまった。
夜高ミツル
まだ着る服はクローゼットに戻す。
真城朔
すっからかんになったクローゼットに、寂しげに2セットずつの服が並ぶ。
真城朔
ゆらゆら……
夜高ミツル
空白の多くなったクローゼットの隅から、旅用の鞄を取り出す。
真城朔
長いこと使われてこなかった鞄。
真城朔
埃かぶってる……
夜高ミツル
しまってたとはいえ……
夜高ミツル
拭くか……
夜高ミツル
キッチンに行って、未使用の雑巾を取る。
夜高ミツル
軽く濡らして絞り……
夜高ミツル
あんまりぎゅっと絞れないので、そもそも濡らすのを程々にした。
夜高ミツル
クローゼットの前に戻る。
夜高ミツル
まずは鞄の内側を雑巾で拭き……
夜高ミツル
もう一個も……
真城朔
真城は真城で拭き掃除もしてた。
真城朔
背伸びして天井を拭き……
夜高ミツル
内側が終わったら外側……
夜高ミツル
拭き拭き……
真城朔
個室の上の物置きも拭き、換気扇も拭き、壁も拭き……
真城朔
まめまめしく拭いている。
夜高ミツル
きれいになったところに服を……
夜高ミツル
詰め……
夜高ミツル
る前に乾かした方がいいのでは……
夜高ミツル
そんなに濡らしたわけでもないが……
夜高ミツル
乾かすことにした。
夜高ミツル
口を大きめに開いて隅に一旦置き……
夜高ミツル
服……
夜高ミツル
なんか適当な袋に入れとくか……
夜高ミツル
また台所へ行き……
夜高ミツル
畳んだビニール袋を2つ取る。
夜高ミツル
がさごそと開きながら戻って、持っていく服を詰める。
夜高ミツル
これは真城の……
真城朔
捨てた服の量に比べて少なすぎる服の量。
夜高ミツル
こっちは俺の……
夜高ミツル
スーパーのレジ袋に収まる量。
夜高ミツル
それをリュックの隣に置く。
夜高ミツル
これで服の仕分けが終わり……
夜高ミツル
ふう……
真城朔
真城はトイレタンクの蓋を風呂場でごしごし洗ってる。
真城朔
やるといいってあった……
真城朔
古い歯ブラシとか使ってぴかぴかにしている。
夜高ミツル
服はこれでよくて……
夜高ミツル
あと整理……
夜高ミツル
食器とかは6日でよくて……
夜高ミツル
タオル……もまだいいか……
夜高ミツル
一旦ここはこんなもんか……?
真城朔
ぴかぴかにした蓋を持ってトイレに戻るぞ。
真城朔
ぺたぺた
夜高ミツル
俺も掃除やるか……
夜高ミツル
ゴミ袋を玄関へ持っていく。
真城朔
洗剤を使って中もごしごし……
真城朔
扉が開かれたトイレの中でごしごしやってる気配。
夜高ミツル
ブラシの音が聞こえる。
真城朔
集中してます。
夜高ミツル
ちらっと目を向けると背中が見えた。
夜高ミツル
真剣にやってるので邪魔しないでおこう……
真城朔
忘れがちだがまあまあ身長があるので苦もなくやっている。
夜高ミツル
ミツルと大差ない身長がある。
夜高ミツル
ゴミ袋を玄関に置き。
夜高ミツル
掃除……
夜高ミツル
えーと……
夜高ミツル
高いとこからだから……
夜高ミツル
掃除用具置き場から、ワイパーを取る。
夜高ミツル
先っぽにシートを取り付けて……
夜高ミツル
あとマスクもする。
夜高ミツル
そういえば真城マスクしてなかったな……
夜高ミツル
もう1枚取って真城のところへ。
夜高ミツル
「真城」
真城朔
「ん」
真城朔
はた……
真城朔
振り返る。蓋を嵌め直していたところだった。
夜高ミツル
「服の整理終わって、天井掃除するから」
夜高ミツル
「一応真城もマスク」
真城朔
「あ」
真城朔
「お疲れ……」
真城朔
「マスク」
真城朔
「?」
真城朔
首傾げた。
夜高ミツル
「埃が落ちるから……」
真城朔
「俺」
真城朔
「大丈夫だけど……」
真城朔
ハイターマスクなしでやった……
夜高ミツル
「一応……」
夜高ミツル
気分的に……
真城朔
「一応……」
真城朔
頷いた。
夜高ミツル
埃の舞ってる空気を吸わせたくはなく……
真城朔
「トイレ」
真城朔
「もうすぐ終わる……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「終わったら……」
真城朔
「手伝う?」
真城朔
聞きながら、ミツルへと顔を差し出す。
夜高ミツル
マスクをかけてやりつつ……
真城朔
かけてもらってます……
夜高ミツル
「そうだな、頼む」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく
真城朔
「ありがと」
真城朔
かけてもらった。
夜高ミツル
頷きを返す。
真城朔
「終わったら、行く」
真城朔
「ね」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「じゃあ天井やってるな」
夜高ミツル
言って、ワイパーを取ってリビングへ。
真城朔
見送り……
真城朔
改めて便座を拭き直してます。
真城朔
もくもく……
夜高ミツル
くるくるとワイパーの柄を伸ばす。
夜高ミツル
届くかな……
夜高ミツル
よいしょと天井に向ける。
夜高ミツル
ぺたっ
夜高ミツル
シートが天井に当たる。
夜高ミツル
そのまますー……と拭いていく。
真城朔
なんだかんだ十ヶ月でホコリがついてるらしく……
真城朔
ふわ……と落ちてきたりする。
夜高ミツル
見た感じは汚れてる気はしなかったんだけど……
夜高ミツル
ていうか下を向いてるのに埃がつくもんなんだな……
夜高ミツル
とか思いつつ。
夜高ミツル
すい……すい……
夜高ミツル
ワイパーで天井を拭いていく。
夜高ミツル
拭いていく途中で、はたと寝室のベッドが目に入る。
夜高ミツル
埃落ちそうだな……
真城朔
二人で毎晩過ごしてきたベッド。
真城朔
あと数日間もお世話になる。
夜高ミツル
リビングの掃除している間は間仕切りを閉じればいいにしても、どうせ向こうも掃除するし……
夜高ミツル
なんか埃がかからないように……
夜高ミツル
ちょっと考えて、それからぱたぱたと玄関の方に向かう。
真城朔
トイレからはじゃー……と水音。
真城朔
マスクをした真城がこんなものだろうか……と、一歩引いてトイレの中を見回している。
夜高ミツル
俺しか使ってない場所を掃除させたの、ちょっと申し訳ないな……
夜高ミツル
掃除用具置き場からブルーシートを取り出す。
真城朔
「ん」
真城朔
トイレの方から出てくる。
真城朔
ミツルがブルーシートを出すのを見て首を傾げた。
夜高ミツル
視線の先に気づいて、
夜高ミツル
「ベッドに埃が落ちるから」
夜高ミツル
「敷いとこうかなって」
真城朔
なるほど……になっている。
真城朔
「手、洗ったら」
真城朔
「そっち……」
真城朔
てつだう……? になっている。
真城朔
「…………」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「戻る」
夜高ミツル
「頼む」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく……
夜高ミツル
頷きを返して、リビングへ。
真城朔
ミツルを見送ってから、洗面所に行く。
真城朔
丹念に手を洗っている……
夜高ミツル
そのまま通り過ぎて寝室に入る。
夜高ミツル
ばさ……とブルーシートを広げて、ベッドにかける。
夜高ミツル
よし……
夜高ミツル
ブルーシート、便利。
真城朔
手を洗い終えたのか、ブルーシートを広げたミツルのところに戻ってくる。
真城朔
「天井……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
手伝う……?
真城朔
うーん…………
夜高ミツル
「リビングがあとちょっとで、こっちがまだ」
夜高ミツル
「でも天井はすぐ終わると思うから……」
夜高ミツル
から……どうしようかな……
真城朔
「……窓?」
夜高ミツル
とりあえずワイパーを再び手に取る。
夜高ミツル
「あ、そうだな」
夜高ミツル
「……」
夜高ミツル
「窓大丈夫か?」
夜高ミツル
「眩しくないか」
真城朔
「だいじょうぶ……」
真城朔
こくこく……
真城朔
「拭くくらい」
真城朔
「へいき」
夜高ミツル
「……ん」
夜高ミツル
「じゃあ頼む」
真城朔
「うん」
真城朔
頷き……
真城朔
「……ありがと」
夜高ミツル
「キツかったら代わるからな」
真城朔
「ん」
真城朔
「がんばる……」
真城朔
言って、新しい雑巾を取りに。
夜高ミツル
こういう所で変に無理はしないだろうともう分かるので、
夜高ミツル
任せて天井の掃除を再開する。
真城朔
洗面所で雑巾を濡らしている……
夜高ミツル
すいすい……
真城朔
戻ってき……
真城朔
ミツルが天井を拭いているのをぼんやり眺めつつ、窓際へ。
真城朔
カーテンのあいた窓際へ近寄り……
真城朔
う……
夜高ミツル
ちら……とそちらへ目を向ける。
真城朔
まぶし……になってる
真城朔
なってるけど、そのまま窓ガラスに雑巾を這わせ……
真城朔
ふきふき……
真城朔
窓はゆうてちょこちょこ拭いてたので、そんなに汚れているわけでも。
夜高ミツル
大丈夫そうなので、自分の掃除を再開する。
夜高ミツル
といってもリビングはもうあらかた拭き終わったので……
夜高ミツル
ワイパーを下ろして、寝室へ。
真城朔
背伸びして上の方を拭いたりしている。
真城朔
とどくぞ。
真城朔
拭き終わったので窓を一度閉め……
真城朔
拭けなかった側を拭いている。
夜高ミツル
ベッドは保護したので、気兼ねなく寝室の天井も拭ける。
夜高ミツル
慣れてきたのですいすいやっている。
真城朔
すいすいふきふき……
真城朔
分担作業。
夜高ミツル
こっちはリビングより狭いし……
真城朔
内側を拭けたので、改めて窓を開け……
真城朔
ベランダの方へ出る。
真城朔
まぶし……
夜高ミツル
狭いのですぐ終わった。
真城朔
眩しいけど、ちょっと涼しくなってきたな……と思う。
夜高ミツル
リビングへ戻る。
真城朔
ベランダにいます。
夜高ミツル
「天井終わった」
夜高ミツル
「代わろうか?」
真城朔
「ん」
真城朔
首振り……
真城朔
「力、入れて」
真城朔
「拭くから……」
真城朔
眩しげにしつつ答える。
真城朔
外側は結構汚れが……
夜高ミツル
「……ん」
夜高ミツル
「頼む」
夜高ミツル
怪我してなければ……
真城朔
こくこく……
真城朔
目を細めながら窓の外側を拭き始めます。
真城朔
窓越しに逆光のシルエット。
夜高ミツル
不甲斐なさを感じながら、ワイパーのシートを外す。
夜高ミツル
結構ホコリついてる……
真城朔
日々の蓄積が。
夜高ミツル
溜まるもんだな……
夜高ミツル
汚れたシートはゴミ箱へ。
夜高ミツル
新しいシートを取り付ける。
夜高ミツル
壁をやっていくぞ。
真城朔
外側はけっこう汚れてるため……
真城朔
うーん……
真城朔
一旦ベランダから戻ってくる。
真城朔
洗面所の方へ行き……
真城朔
バケツに水を張って戻ってきました。
夜高ミツル
壁を拭いている。
真城朔
「壁……」
真城朔
「終わったら、棚とか」
真城朔
「拭いて」
真城朔
「床?」
夜高ミツル
「かな」
夜高ミツル
高いとこから順番にだから……
夜高ミツル
頷いている。
真城朔
「ん……」
真城朔
頷き……
真城朔
「がんばろ」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
こくこく……
真城朔
して、ベランダへ。
真城朔
バケツを置いてじゃぶちゃぷ……
真城朔
絞り……
夜高ミツル
再び壁と向き合う。
真城朔
ふき……ふき……
真城朔
秋の風が吹いている。
夜高ミツル
横に拭いてみたり縦に拭いてみたりしてたが……
夜高ミツル
縦がやりやすい気がするな……
夜高ミツル
上から下にすい~っとやっている。
夜高ミツル
拭き……拭き……
真城朔
窓の外側にはまあまあ黒っぽい汚れもついてたりして……
真城朔
それをよいしょよいしょと拭いている。
真城朔
雑巾が汚れているのを確認したら、バケツに浸しざぶじゃぶと……
夜高ミツル
ちょっとずつ横にずれながら壁をやっていっています。
夜高ミツル
単純作業。
真城朔
お互い淡々と単純作業やってる。
真城朔
片方の窓が終わったため、窓を閉め……
真城朔
もう一方をふきふき……
夜高ミツル
二人でもくもくと拭いている。
真城朔
もくもく淡々
真城朔
窓を拭き終わり……
真城朔
ベランダ掃除……
夜高ミツル
たまにシートの裏を確認し……
夜高ミツル
あっ結構汚れてる……
夜高ミツル
替えよ……
夜高ミツル
新しいシートに付け替える。
真城朔
窓を開けます。
真城朔
そのまま室内のミツルに、
真城朔
「ベランダの、掃除」
真城朔
「このまま……」
真城朔
「する……」
真城朔
宣言……
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「よろしく」
真城朔
「うん」
真城朔
まぶしいけど……
真城朔
がんばる。
真城朔
ベランダ掃除用のほうきとちりとりを取る。
真城朔
とりあえず掃いていく……
夜高ミツル
壁を拭いています。
夜高ミツル
単純作業ではあるけど、天井より面積が広い……
夜高ミツル
ので、その分時間がかかりはする。
真城朔
力はいらないものの、広い。
夜高ミツル
せっせ……
真城朔
よいしょ……
夜高ミツル
リビングが終わったら寝室へ。
真城朔
ちりとりにゴミを集め……
真城朔
部屋に戻ってくる。
真城朔
「ゴミ袋」
真城朔
「借りる……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
こく……
真城朔
よいしょ
真城朔
持っていきます。
真城朔
ベランダ際でゴミ袋に掃いたゴミを入れている。
夜高ミツル
見送って寝室を拭いている。
真城朔
どこから飛んできたやらちょっとした葉っぱとか……
真城朔
ゴミを入れ、ゴミ袋を戻し……
真城朔
あとはスプレー洗剤と水拭き。
夜高ミツル
こっちにも窓あるけど、これは自分たちで外側拭くの無理だろうな……とか思ったり。
夜高ミツル
そんなに大きく開かないタイプ。
真城朔
丹念に磨いていく。
真城朔
なんかいろいろしつこい汚れも根気よく拭いて磨けばなんとかなると思っている。
真城朔
腕力と体力があるため……
真城朔
こしこし……
夜高ミツル
こっちは力のいらない作業をしている。
真城朔
適切な役割分担。
真城朔
ちょっとまぶしい……
夜高ミツル
外の作業をやらせてしまっている……
真城朔
でも適切だし……
真城朔
これだけ夜にやるのもなんだかだし……
夜高ミツル
夜にやると汚れ見落としそうでもある……
真城朔
まぶし……になりつつ熱心に磨いています。
真城朔
時折バケツで汚れをどうにかし……
真城朔
外なだけあって結構汚れが……
夜高ミツル
クローゼットの扉なんかも拭いている。
夜高ミツル
拭き……
真城朔
もくもく拭き作業。
真城朔
手すりを拭いています。
夜高ミツル
寝室も一通り終わり……
夜高ミツル
あっ間仕切り
夜高ミツル
がらがら……と仕切りを閉める。
夜高ミツル
拭き拭き……
真城朔
間仕切り、ほとんど使わなかった。
真城朔
ほとんどっていうか……使わなかった……
夜高ミツル
使わなかったな……
真城朔
人呼ばないから……
夜高ミツル
出してないからあんまり汚れてない気もするんだけど……
夜高ミツル
一応……
夜高ミツル
拭いています。
真城朔
ねんのため
真城朔
だいじ……
夜高ミツル
仕切ってあると結構狭いなこっち……
夜高ミツル
ずっと全開だったから全然気にしてなかった。
真城朔
寝るだけの部屋になっちゃう。
夜高ミツル
ベッドとクローゼットがあるだけ。
夜高ミツル
端まで拭けたので、リビング側に出る。
夜高ミツル
閉め直して……
夜高ミツル
反対側を拭いていく。
真城朔
真城は手すりを終えて床を拭いています。
真城朔
んしょんしょ……
夜高ミツル
間仕切りを拭き拭き……
夜高ミツル
せっせと拭いていく。
真城朔
こしこし……
真城朔
じゃぶ……
夜高ミツル
拭き拭き……
真城朔
そんなに広いベランダではないし、4階なので……
真城朔
ほどほどに汚れてはいるけど……
夜高ミツル
拭き終わり……
夜高ミツル
間仕切りを元に戻す。
夜高ミツル
がらごろ……
夜高ミツル
見慣れた風景に戻った。
真城朔
繋がってるとそんなに狭い感じしない。
夜高ミツル
広いな……という気持ちさえある。
真城朔
二人で過ごしてきた部屋。
夜高ミツル
すっかりここが家のような気持ちになってしまった。
真城朔
十ヶ月間もいたから……
夜高ミツル
こんなに長くいるつもりじゃなかったのに……
真城朔
つい。
夜高ミツル
ワイパーのシートを外しつつ、ベランダの方へ。
夜高ミツル
ゴミ袋に外したシートを捨てる。
真城朔
最後の仕上げをやっている。
真城朔
雑巾であと一巡……
真城朔
大きめにふきふき。
夜高ミツル
こっちあとちょっとで終わりそうだな……
真城朔
バケツに雑巾を浸し……
真城朔
近くにいたミツルと目が合った。
夜高ミツル
ぱち……
真城朔
はた……
真城朔
雑巾を手に見つめ合う……
夜高ミツル
「壁、終わったから」
真城朔
「ん」
夜高ミツル
「棚の上とか拭くな」
真城朔
「お願い……」
真城朔
「こっち、も」
真城朔
「たぶん」
真城朔
「もうすぐ……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「したら」
真城朔
「…………」
真城朔
「玄関……?」
真城朔
同じほうき使うし……
夜高ミツル
「そうだな」
真城朔
「ん」
真城朔
「する……」
真城朔
頷き……
夜高ミツル
頷く。
真城朔
ベランダの床を拭くのを再開します。
夜高ミツル
ワイパーはまだ使いそうなので、とりあえず壁際に立て掛けておく。
夜高ミツル
雑巾……
夜高ミツル
あ、そういや掃除用にシート買ってあったな……
夜高ミツル
そっちを使おう。
真城朔
ベランダを拭き終わり、バケツを手に戻ってきたが……
真城朔
「…………」
真城朔
うーん……という顔をしている。
夜高ミツル
掃除シートのパックを開けている。
真城朔
汚れた水……
真城朔
普段だったら風呂場に流すけど……
真城朔
風呂場きれいにしちゃった……
真城朔
…………
夜高ミツル
「?」
夜高ミツル
立ち止まった真城を見て首をひねる。
真城朔
はた……
真城朔
目が合った。
真城朔
「あ」
真城朔
「……と」
真城朔
「水……」
真城朔
バケツを軽く掲げる。
真城朔
実際軽く掲げられる。
夜高ミツル
「……あ」
真城朔
「洗面所で」
真城朔
「大丈夫かな……?」
夜高ミツル
「あ~」
真城朔
大きなゴミが浮いているとかではない。
真城朔
掃いたし……
夜高ミツル
バケツの中を覗き……
真城朔
まあ汚れた水……って感じ。
真城朔
半透明に黒い。
夜高ミツル
風呂場……は掃除してもらったもんな……
真城朔
先にしちゃった……
夜高ミツル
「……うん」
夜高ミツル
「大丈夫だと思う」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく……
真城朔
「最後に」
真城朔
「きれいにする……」
真城朔
めいっぱい……
夜高ミツル
「ん」
真城朔
決意を込めて控えめに頷き……
真城朔
洗面所の方へと消えます。
真城朔
慎重に水を流している音が聞こえる。
夜高ミツル
シートでテレビの上を拭いている。
夜高ミツル
薄いテレビに掃除で落ちたホコリが積もっている……
夜高ミツル
画面に側面に、全体を拭いていく。
夜高ミツル
ふきふき……
真城朔
洗面所から戻ってき……
真城朔
ベランダからほうきとちりとりを取り……
夜高ミツル
テレビが終わったので、その下のテレビ台。
真城朔
今度は玄関の方へ消えます。
真城朔
掃いている……
夜高ミツル
積もったホコリを拭き取っていく。
夜高ミツル
この辺は天井や壁と違って普段から掃除していたので慣れてる。
夜高ミツル
ので、丁寧にやってもまあまあさっさと終わる。
夜高ミツル
テレビ台が終わったらサイドボード。
夜高ミツル
新しいシートを出して……
夜高ミツル
こっちも上面にホコリが落ちて積もってる。
夜高ミツル
のを、拭き取り……
真城朔
ホコリ、日々の積み重ねという趣がある。
夜高ミツル
側面も拭く。
夜高ミツル
ぴかぴか……
真城朔
感謝を込めてぴかぴかにしている。
真城朔
のは玄関の真城も同じで……
真城朔
靴箱の中とかも雑巾で拭いて……
真城朔
ほこり……
真城朔
あんま使わなかったから……
真城朔
淡々とやってます。
真城朔
汚れはあんまりない。
夜高ミツル
サイドボードの次は、ベッドのヘッドボードも拭く。
夜高ミツル
拭き……
夜高ミツル
寝室は物が少ないからこれくらい。
夜高ミツル
リビングの方もそんなにないが……
夜高ミツル
ゴミ袋に使用済みのシートを捨て。
真城朔
ゴミ袋の溜まってる感もなかなか大掃除って感じになってきた。
真城朔
服が詰まっているのとちょっと趣が違う……
夜高ミツル
使用済みの掃除シートがいっぱい捨ててあったり……
夜高ミツル
大掃除感。
夜高ミツル
新しいシートを出して、テーブルを拭く。
真城朔
いっぱい食事をしたテーブル。
夜高ミツル
いつも二人並んで食事をした。
夜高ミツル
正面にはソファもあって、ベッドかキッチンでなければ大体ここにいた気がする。
真城朔
広いような狭いような部屋。
真城朔
十ヶ月をともに過ごした。
夜高ミツル
その内には、この十ヶ月も短いものに感じるのだろうか。
夜高ミツル
わからないけど、少なくとも今は
夜高ミツル
長くこの部屋で過ごした、という感覚がある。
夜高ミツル
こうなってから初めて、二人でゆっくりと日々を過ごした。
真城朔
ホテルを転々とする旅の暮らしではなく、帰るべき場所のある生活をした。
夜高ミツル
積み重ねた日々の思い出がある。
夜高ミツル
気づかない箇所に溜まったホコリなんかからも、過ごしてきた時間の長さを感じる。
真城朔
ホテル暮らしでは見ることのないホコリ。
真城朔
日々の蓄積。
真城朔
玄関からほうきとちりとりを手に真城が戻ってくる。
真城朔
ベランダへ……
真城朔
置きました。
真城朔
網戸を閉めながら……
真城朔
「靴箱」
真城朔
「ホコリ」
真城朔
「いっぱいだった……」
夜高ミツル
対面キッチンのカウンターを拭いていた。
夜高ミツル
「あー」
夜高ミツル
「靴箱まではあんま掃除してなかったもんな……」
夜高ミツル
玄関自体はしてたけど……
真城朔
「あんま使わないから……」
真城朔
こく……
夜高ミツル
「使わなかったなー」
真城朔
「靴」
真城朔
「あんまり」
夜高ミツル
狩り用と日常用、あとはせいぜいミツルのサンダルくらい。
真城朔
「なかったから……」
真城朔
手を洗いに洗面所へと戻っていく。
真城朔
じゃー……
真城朔
いっぱい洗う。
夜高ミツル
その音を聞きながら、カウンターをピカピカにしている。
夜高ミツル
ルーターが隅に置いてあるので避けて……
夜高ミツル
よく見たらルーター自体にも結構ホコリが……
真城朔
蓄積だなあ。
真城朔
戻ってきた。
真城朔
いろいろふいてる……
真城朔
「……あと」
真城朔
「どうしよ……」
真城朔
「床……?」
夜高ミツル
拭きつつ……
夜高ミツル
んー……とちょっと思案する。
夜高ミツル
床より高いとこはこれで大体できたはず……
夜高ミツル
ソファはカバーを換えればよくて……
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
頷く。
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく……
真城朔
では……
真城朔
クローゼットを開け……
真城朔
掃除機を取り出しています。
夜高ミツル
というところで、カウンターも拭き終わる。
真城朔
コードを繋ぎつつ……
真城朔
「あ」
真城朔
「ミツ、掃除機」
真城朔
「する?」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「俺」
真城朔
「家具……」
夜高ミツル
「拭くの終わったからやる」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく
夜高ミツル
シートを捨てつつ……
夜高ミツル
真城の方へ行って、掃除機を受け取る。
真城朔
渡します。
真城朔
そこでふと……
真城朔
「あ」
真城朔
「寝室の窓」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
拭いてなかった……
夜高ミツル
「あー」
真城朔
ベランダに夢中になっちゃって……
真城朔
「後で」
真城朔
「やる……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく……しつつ
真城朔
ベッドの端を掴んで持ち上げます。
真城朔
流石にベッドをまるごと持ち上げるのではなく、傾ける感じで……
夜高ミツル
掃除機のスイッチを入れ、作ってもらった空間に掃除機を差し入れる。
真城朔
その気になれば振り回したり投げたりできるけど、狭い室内なので……
夜高ミツル
ブオー……
真城朔
吸い取られている ホコリが
夜高ミツル
物が落ちてないか確認したりもしつつ……
真城朔
ベッドの片側を持ち上げたままぴったり静止。
夜高ミツル
安定感……
夜高ミツル
真城が家具を持ち上げてくれるので、結構普段から下も掃除できている。
夜高ミツル
ので、そこまでヤバい量のホコリが溜まってる……という感じではない。
真城朔
床の掃除は定期的にやっているので、まあまあいつもどおり。
真城朔
壁とか天井はしない……
真城朔
調べたら三ヶ月に一度はとか書いてあってびっくりしたけど……
夜高ミツル
三ヶ月……? になった。
夜高ミツル
二人でびっくりした。
真城朔
一回もしてこなかった。
真城朔
ベッドをしっかり掴んで持ち上げています。
真城朔
しんどそうな様子は一切ない。
夜高ミツル
いつもこんな感じでやっている。
真城朔
いつもどおりの作業なのでてきぱきと……
夜高ミツル
ベッドの下から掃除機を抜く。
真城朔
そっ……とベッドを下ろす。
真城朔
力がないと地味にこのそっとが難しいのだが……
真城朔
真城はらくらく。
夜高ミツル
らくらくやってもらっている。
真城朔
テレビ台を持ち上げ……
夜高ミツル
またその下に掃除機をかける。
真城朔
淡々。
夜高ミツル
慣れてる。
真城朔
その調子で食卓とソファもやっていく。
夜高ミツル
真城に持ち上げてもらってる間に掃除機をかけ……
夜高ミツル
すいすい……
真城朔
終わったら置き……
真城朔
そんな調子で真城が障害物をどかしながら掃除機をかけていく。
真城朔
廊下や洗面所も……
夜高ミツル
すいすいとやっていく。
真城朔
すいすいと掃除機が終わりました。
夜高ミツル
スイッチを切る。
真城朔
ふー。
真城朔
「あとは」
真城朔
「床、ワイパーと」
真城朔
「寝室の窓と」
真城朔
「洗面所と……」
真城朔
「台所は、今度で……」
真城朔
それくらい……?
夜高ミツル
「そんな感じだな……」
夜高ミツル
なんだかんだで大掃除となると結構かかったな……
夜高ミツル
物が多いわけでもないのに……
真城朔
定期的に掃除してるつもりだったけど……
真城朔
「窓と、洗面所」
真城朔
「やる……」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「頼む」
真城朔
こくこく
真城朔
新しい雑巾を引っ張り出している。
夜高ミツル
掃除機をしまいにクローゼットへ。
夜高ミツル
コンセントを抜き……
夜高ミツル
コードしまい……
夜高ミツル
するする……
真城朔
洗面所で濡らして絞り……
<
真城朔
寝室の方で拭いている。
真城朔
そんなに内側はかからないし、外側もまあ……
真城朔
こっちの窓は小さい。
真城朔
ベランダに出てちょっと高いところに腕を伸ばさないといけないのが大変なくらいで……
夜高ミツル
掃除機のダストカップを外してゴミ袋の方へ。
夜高ミツル
蓋を外すと、ホコリの固まりがどさっと……
夜高ミツル
とんとんとホコリを落とし、蓋を閉め……
夜高ミツル
袋縛っちゃお
夜高ミツル
ホコリが散らないようゴミ袋の口を縛る。
夜高ミツル
ぎゅっ
真城朔
さっさと内側を拭き終わり、ベランダに出ている。
真城朔
まぶし……
真城朔
寝室の方へと消えます。
夜高ミツル
縛ったゴミ袋を玄関に出して、新しいゴミ袋を出してくる。
夜高ミツル
ダストカップをはめて掃除機をしまい……
夜高ミツル
改めてワイパーに取り掛かる。
夜高ミツル
シートをつけて、床を拭いていく。
夜高ミツル
とりあえずさっきゴミ袋置いてた辺りから……
夜高ミツル
ホコリが落ちてそうなので。
真城朔
ミツルがワイパーをやっていると、真城がベランダから戻ってくる。
真城朔
そこまで雑巾汚れてない……
夜高ミツル
小さい窓だしなー
真城朔
あんまりだった。
真城朔
そのまま洗面所に行き……
真城朔
始めてる気配。
真城朔
シンク下収納から洗剤とか出して……
真城朔
雑巾は……
真城朔
……
夜高ミツル
さっきのホコリは大体取れたので一度シートを換え……
真城朔
外拭いたやつもう使いたくない気がする……
真城朔
古いタオル使っちゃお……
夜高ミツル
改めて部屋の端からやっていく。
真城朔
もう捨てると思うと、いいか、になった。
夜高ミツル
あと数日で捨てちゃう。
真城朔
配管とかも拭いてます。
夜高ミツル
床にワイパーをかけていく。
夜高ミツル
さっき掃除機かけたから、さすがに汚れてる感じはない。
夜高ミツル
なんかこぼしたときもすぐ雑巾で拭いてきたし……
真城朔
まめにやってきた。
夜高ミツル
なんせずっと家にいたから……
夜高ミツル
時間に余裕がありまくった。
夜高ミツル
きれいに掃除して使ってきた。
真城朔
家にいるから汚れがあると気になるし……
夜高ミツル
きれいな床をさらにきれいにしていくぞ。
真城朔
こちらもきれいにしている。
真城朔
収納スペースをふきふき……
真城朔
こういうとこにもほこりがつく……
真城朔
あっ
真城朔
蜘蛛の巣……
真城朔
ごめんね……
真城朔
破壊。
夜高ミツル
ワイパーは家具を持ち上げなくても下を掃除できるので
夜高ミツル
姿勢を低くしながらその辺もかけ……
真城朔
収納スペースを拭き終わり、洗剤とかをもどしもどし……
夜高ミツル
リビングが終わったらシートを取り替えて寝室を……
真城朔
鏡を拭き……とやっていく。
夜高ミツル
寝室はやっぱりリビングよりすぐ終わる。
夜高ミツル
寝室のあとは廊下。
真城朔
鏡も事あるごとに拭いてきたのですぐ終わる。
真城朔
鏡の中の収納のが普段やってない方……
真城朔
出して中のスペースを磨くを繰り返している。
夜高ミツル
普段掃除してきた箇所とそうでない箇所の差が出ている。
夜高ミツル
床はしてきた方なので、廊下もすぐ終わる。
夜高ミツル
洗面所の様子を窺う。
真城朔
鏡の中を拭いてます。
真城朔
ゆうてそんなにものもないんだよな……
真城朔
歯ブラシセットを戻し……
真城朔
鏡を閉じる。
夜高ミツル
「床終わった」
真城朔
「あ」
真城朔
「お疲れ……」
真城朔
「あと、こっち」
真城朔
「シンクとか……」
真城朔
スポンジを取っている。
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「洗濯機の、下」
真城朔
「きれいにできたら」
真城朔
「よかったんだけど……」
真城朔
固定されてるから……
夜高ミツル
「工具ないと外せないからな……」
夜高ミツル
「なんか手伝おうか?」
真城朔
「んー……」
真城朔
ちょっと考えて、首を振った。
真城朔
「片付けとか……」
真城朔
「しておいて、くれたら」
真城朔
「あとはたぶん……」
夜高ミツル
「分かった」
夜高ミツル
頷く。
真城朔
「お願い」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
また頷いて、後片付けのために洗面所を後にした。
真城朔
洗面所のシンクをぴかぴかに磨き終わって帰ってくる。
真城朔
とてとてリビングに戻ると……
夜高ミツル
「おつかれ」
真城朔
「ん」
真城朔
「ミツこそ……」
夜高ミツル
食卓の上におやつの準備がしてある。
真城朔
視線を向け、
真城朔
「あ」
真城朔
「準備」
真城朔
「してくれてた……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
テーブルの方へ……
真城朔
てこてこ
夜高ミツル
テーブルにゼリーとスプーンが並べてある。
夜高ミツル
横には麦茶の入ったコップも。
真城朔
大掃除が終わった後のご褒美にしよう、と
真城朔
ちょっといいとこのスーパーで買ってきたゼリー。
夜高ミツル
小さくてお高めの……
夜高ミツル
「飲み物麦茶でよかったか?」
真城朔
「うん」
真城朔
「ありがと」
真城朔
ミツルの隣に座る。
真城朔
二つ並んだ夕張メロンのゼリー。
真城朔
薄くていいやつ……
夜高ミツル
白とオレンジの鮮やかなパッケージ。
夜高ミツル
を、前に手を合わせる。
夜高ミツル
「いただきます」
真城朔
「いただきます」
真城朔
ミツルも手を合わせられるようになっている。
真城朔
よろこばしいこと……
夜高ミツル
真城が色々助けてくれたおかげで……
真城朔
もととはいえば……
真城朔
真城朔
スプーンを取ります。
夜高ミツル
取る。
真城朔
プラの蓋を外し……
夜高ミツル
ぺりぺり……
真城朔
いいゼリーなので蓋が二重。
真城朔
鮮やかなオレンジ色のゼリーが顕わになる。
夜高ミツル
「わー」
夜高ミツル
「メロンのにおい」
真城朔
「すごい……」
真城朔
「あまいにおい」
夜高ミツル
「すごいな~」
夜高ミツル
オレンジ色に、すっとスプーンを差し入れる。
真城朔
なめらか……
真城朔
見るからに いいやつ って感じのつやつやな感じ。
夜高ミツル
つやつやぷるぷるのゼリーをスプーンに乗せて口に……
夜高ミツル
ぱくっ
真城朔
ちゅるり。
真城朔
「……うん」
真城朔
「あまい……」
真城朔
こくこくと頷いている。
真城朔
当初のように味を噛みしめるというより、
真城朔
自然と感じられる甘みへの感想が口をついて出ている、というふうになってきた。
夜高ミツル
頷く。
夜高ミツル
「メロンの味がすごい……」
真城朔
「こう……」
真城朔
「芳醇?」
夜高ミツル
「だな……」
夜高ミツル
「濃い……」
真城朔
「本場の本気……」
真城朔
スプーンでまたゼリーをすくっている。
真城朔
ゼリーは同じくらいのペースで食べられる。
夜高ミツル
ミツルも二口目をすくって食べる。
真城朔
じ……
夜高ミツル
もむもむ……
夜高ミツル
「食感もなんか」
夜高ミツル
「普通のゼリーと違う感じで……」
真城朔
「うん」
真城朔
「果肉……?」
夜高ミツル
「生っぽい感じ……」
真城朔
「ふんだん……」
真城朔
それっぽい言葉を拙く並べている。
夜高ミツル
「口当たりがなめらか……」
真城朔
「のうこうでなめらか」
夜高ミツル
頷き合う。
真城朔
こくこく……
夜高ミツル
そして、それっぽい言葉をいくつか並べたあとは結局……
夜高ミツル
「うまいな」
真城朔
「おいしい……」
真城朔
いつもの通りに……
夜高ミツル
素朴な感想。
真城朔
割と結局いつもこう。
真城朔
味わいながらまくまくと食べる。
夜高ミツル
もくもく……
真城朔
食べ進めつつ……
真城朔
「……北海道」
真城朔
「おいしかった」
真城朔
「ね」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「色々食べたなー」
真城朔
「いっぱい作って」
真城朔
「いっぱい食べた……」
真城朔
「お寿司とか……」
真城朔
「すごかったし……」
夜高ミツル
「すごかったな……」
真城朔
「どこで食べてもおいしい……」
夜高ミツル
「回転寿司でもすごい」
真城朔
「うん」
真城朔
適当に行った回転寿司でも……
夜高ミツル
もうスーパーのパックの寿司とか買えなそう……みたいな話をした。
真城朔
北海道以外で寿司を……? みたいな感じに。
夜高ミツル
ぜいたくを知ってしまった……
真城朔
おそろしいこと……
夜高ミツル
おそろしい……
夜高ミツル
今もぜいたくなゼリーを食べている。
真城朔
ぜいたくなゼリーがおいしい。
真城朔
二人で並んで食べていると、ますますおいしい。
夜高ミツル
甘くてメロンの味がしておいしい……
真城朔
メロンの味が濃くておいしい……
真城朔
二人揃ってこの程度の解像度。
夜高ミツル
何を食べても大体こう。
真城朔
本人たちは満足している。
夜高ミツル
食レポするために食べてるわけじゃないし……
夜高ミツル
一緒に食べておいしかったらそれでいい。
真城朔
二人で食を楽しむために食べている。
真城朔
そして、その目的は成し遂げられている。
真城朔
二人で食べ物を選んで、二人で料理して、二人で食べて……
真城朔
この部屋で、そういう生活を繰り返してきた。
夜高ミツル
十ヶ月。
夜高ミツル
過ごしてきたのが、もう残り5日。
真城朔
そう思うとあっという間に思えて……
真城朔
ちょっと寂しくなって、ミツルに身を寄せる。
夜高ミツル
それに気づいて、ミツルからも真城に寄り添う。
真城朔
ぴったり……
真城朔
カーテンを閉め直した窓はけれど開かれていて、
真城朔
ゆったり穏やかな秋の風。
夜高ミツル
関東ならまだ残暑も厳しいだろうが、北海道は涼しい。
真城朔
少し早い夏の終わりを、メロンゼリーの味と共に味わっている。
夜高ミツル
しみじみと。
真城朔
のんびりと。
真城朔
贅沢な食の味だけではなく、
真城朔
贅沢な時間の使い方も、こうして覚えてしまった。
夜高ミツル
何か特別なことをするでもなく、こうしてただ二人でいる。
夜高ミツル
学校にも行かず、仕事もせず……
真城朔
考えれば考えるほどにとびきりの贅沢。
真城朔
きっと、本当はだめなことなんだろうとも思うけど……
夜高ミツル
いつまでもこうしてはいられないとも思う。
夜高ミツル
収入がなければ当然金は尽きる。
真城朔
十ヶ月があっという間だったように、時間もまた有限。
夜高ミツル
この先一緒に過ごす時間の全部を、こんな風に贅沢に使うことはきっとできない。
夜高ミツル
だから、味わえるうちに味わっている。
真城朔
その贅沢を過ごした部屋に、ささやかな感謝の大掃除を終えて。
夜高ミツル
名残は尽きないけど、旅立ちの準備をして。
真城朔
こうして二人、北海道を噛みしめている。